歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

文字の大きさ
174 / 310

可愛い姿

しおりを挟む
「私は一花のことを一日も忘れたことはなかった。このランドセルは一花が触れてくれるこの時をずっと待っていたんだよ。私は一花がこうして胸に抱きしめてくれるだけで嬉しいよ」

「お父さん……ありがとう。僕、このランドセル……大切にします!」

「ああ、そうしておくれ」

ランドセルを抱いた一花に寄り添いながら涙を流すお義父さんをみながら、私はある提案を持ちかけた。

「このまま、このランドセルを保管するのもそれはそれで素晴らしいことだと思うのですが、これをリメイクするのはどうでしょう?」

「りめいく? 征哉さん、それってなんですか?」

「このランドセルの革を使って、他のものに作り変えることだよ。ほら、母さんが昔作っていたマフラーを解いてゾウのセイとチカの可愛い帽子とセーターに作り直していただろう?」

「あっ!」

私がプレゼントした一花のお気に入りのゾウのぬいぐるみと、saraさんに会いにいった時に対となるぬいぐるみだからと贈られたゾウ――温泉から帰宅後に一花が悩みに悩んでチカと名付けた――に、編み物を教える傍ら、母がぬいぐるみたち用の帽子とセーターを編むのに、昔のマフラーを解いて作っていたことを思い出して伝えた。

「あんなふうに材料は一緒で、違うものに新たに作り変えるのをリメイクというんだ。このランドセルはとても可愛らしいけれど、大人になった一花が使うのは難しいだろう? でも物は使ってこそ価値があると思うんだ。だから、このランドセルを使って、一花が使えるような小物に……そうだな。一花だったら、たとえばこれから勉強するときに使えるペンケースに作り変えるのもいいと思うよ」

バッグや財布、キーケースにリメイクすることが多いようだが、どれも一花が使う物ではなさそうだ。
一花に財布を持たせることはないし、元々荷物も持たない子だ。

「ああ、スマホのケースや、スマホを入れるバッグもいいね」

ペンケースやスマホ関連のものなら、一花でも手元に置いて使えるだろう。

「なるほど、それはいいアイディアだな。一花、。どう思う?」

「僕……このまま置いておきたい気持ちと、せっかくなら大切に使いたい気持ちがあって……あの、これをぬいぐるみの僕が背負えるくらいの小さなランドセルにして、残りで作れるものを作るっていうのは難しいですか? 僕、ランドセルを背負った姿をお父さんにもお母さんにも見せたいです……」

「――っ、一花っ!!」

一花の言葉に、お義父さんは再度涙を流して一花を抱きしめる。

「ありがとう、一花。嬉しいよ、一花がそこまでこのランドセルを大切に思ってくれて……」

「だって、お父さんが僕のために選んでくれたんですよ。それが嬉しいから……」

「じゃあ、一花の願い通りにできる工房を探しておくよ」

「はい。征哉さん、ありがとうございます。あの……それまではこのランドセル、近くに置いていていいですか?」

「ああ、もちろんだよ。これは一花のものだからな」

お義父さんがそういうと、一花は嬉しそうにランドセルを胸に強く抱きしめた。

「そうだ! 少し小さいかもしれないが、ベルトを伸ばしたら背負うことはできるかもしれないな。一花、やってみるか?」

「はい!! お願いします」

嬉しそうに差し出したランドセルの肩のベルトを長めに調節して背負わせてやると、やはり少し小さかったもののランドセルは綺麗に一花の背中におさまった。

「――っ、一花っ! よく似合うよ。なぁ、征哉くん」

「はい。本当ですね。一花。こっち向いて」

この姿から小学生の頃の一花を想像する。
ああ、本当に可愛い。

あまりにも可愛すぎて写真を撮ると、お義父さんも隣でパシャパシャと写真を撮り出した。

いろんな角度からランドセルを背負った一花の写真を撮りまくりながら、

「征哉くん、あっちに座らせてみようか」
「征哉くん、私も一緒に撮ってくれないか?」

というお義父さんの要望にも答えた。

「ああ、一花がランドセルを背負った姿を見たいという私の夢が叶ったよ。ありがとう」

「僕もすごく嬉しいです」

一花はランドセルを下ろしてからもずっとそれを離すことなく抱きしめていた。

よほど自分のランドセルは嬉しいのだろう。
小学生にとってランドセルは自分の宝物のようだからな。

一花がこんなに喜んでいるところを見ると、実際はとんでもないものを使わされていたような気がする。
それでも文句言わずに使っていたのだろうな……。

昔の辛い記憶を消すことはできないが、これからたっぷりと上書きしてやろう。
それが一花の生涯のパートナーとして私がやれることだ。
しおりを挟む
感想 545

あなたにおすすめの小説

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

処理中です...