歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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番外編

釣りに行こう!

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そしてあっという間に船釣り当日の朝。
必要なものは全てお義父さんがやってくれているから私たちはマリーナに向かうだけでいいと言われている。

参加者は私たちとお義父さん。
そして、櫻葉家の執事の二階堂さんと、我が家の執事の牧田。
海釣りだから万が一のために人手は多いほうがいいということで決まった。
お義父さんは船舶免許を持っているが、二階堂さんも同じく免許を持っているため安心だ。

ここから待ち合わせ場所のマリーナまでは撥水加工のついた青いパーカーだけを着せずに、タートルネックのセーターと釣り用の黒いズボンを穿かせ、私も揃いになるように服を合わせて車に乗り込んだ。
牧田の運転でマリーナまで向かう。思ったほどの混雑はなく予定通りの時間に到着した。

「わぁー! お船がいっぱい!! ここは水族館があったところの海ですか?」

「いや、あそことは違うところだよ、まぁ沖に進んでいったら繋がるだろうけどね。ここは船の駐車場みたいな場所かな。さて、お義父さんの船はどこだろうな」

最初から疲れさせないように一花を支えながらマリーナを歩いていると、

「一花ーっ! 征哉くん! こっちだ!」

お義父さんの声が聞こえた。

その声のするほうに視線を向けると、周りより一際大きな船の上にお義父さんの姿を見つけた。

「あっ、パパー!!」

一花が嬉しそうに手を振ると、お義父さんも笑顔で手を振っていた。

「すぐにそっちに行くから」

そういうが早いか、さっと降りてきて乗り口に立っている。

「一花、手を伸ばしてこっちにおいで」

「はーい」

一花に怖がる様子は一切ない。
まぁ、これだけ大きな船だとあまり揺れも少ないだろう。
船酔いだけが心配だが、それは動いてみないとわからない。
一応即効性の船酔いの薬も持って来ているから様子を見て飲ませることにしよう。

「わぁー、これがお船の上ですか。すごい!」

楽しそうな一花を見ながら、私と牧田も乗り込んでようやく出発。
一花はあの青いパーカーと一緒にみんなでライフベストもつけて準備万端だ。

「一花、ここから少し沖に行くからそこでいっぱい魚を釣ろう。釣った魚は後で捌いてみんなで美味しく食べような」

「わぁー! 楽しみー!!」

「では出発させるよ」

操舵室に向かうお義父さんに

「パパ、僕……運転するパパを見たいです」

と一花のかわいいおねだりが聞こえる。

「おお、そうか。おいで、一緒に船が進むのを見よう」

海を見たのもあの温泉旅行が初めてだった一花にとっては、海の上を進むのは驚くべき体験だろう。
そこを邪魔する気は全くない。

操縦席の隣にある椅子に座らせると、一花ははしゃいでいた。

ゆっくりと船が動き出すと嬉しそうに笑っていた。
それをすかさず牧田と二階堂さんが写真と動画を撮っていく。
私はせっかくの親子の時間を邪魔しないように見守っていた。

「征哉さま。今日は旦那さまと一花さまのおでかけをお許しくださり、ありがとうございます」

「いえ、この船釣りは一花が望んだことですから。お義父さんは一花の願いを叶えてくれただけですよ。私には何もいうことはありません」

「それでも、旦那さまにとって今日のこの日がどれだけ楽しみだったか……。あんなに嬉しそうな旦那さまを拝見できて私は本当に嬉しいんです」

ずっとお義父さんのそばで一花が見つかるのを諦めずに支え続けてあげていた二階堂さんだからこそ、あの二人のツーショットは涙無くしては見られないものだろう。

「今日だけではなく、これからもいっぱいお義父さんの楽しそうな姿を見られますよ。一花はずっとお義父さんの息子ですから」

「――っ、はい。そうですね。征哉さま。ありがとうございます」

お義父さんのためだけでなく、この二階堂さんのためにも、これからも一花との二人の時間を作ってあげられるようにしたいものだ。


船はようやく釣り場のポイントに到着したようだ。

かなり沖まできたから大物も期待できる。

「さぁ、船首に出ようか」

外に出るとやはり海風があって冷えるが、一花は大丈夫そうだ。

「一花の釣竿はこれだよ」

「わぁ、僕のー! すごい!!」

一花のは見ただけで特注品だとわかる。
お義父さんがか弱い一花でも釣りが楽しめるように作らせたのだろう。
さすがだな。
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