歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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番外編

釣りって楽しい!

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「んーーっ!! 重いっ!!」

「大丈夫、私が一緒に支えるから」

征哉さんが自分の釣竿を船に固定して、さっと僕の後ろに回って一緒に竿を持ってくれる。

「いいか。魚のタイミングに合わせるんだ。動き回る魚がふっと力を抜いた瞬間に引っ張るぞ」

「はい!」

一緒に竿を持ちながら、魚に引っ張られる感覚を手のひらに感じさせる。
まだだ、まだだ……。

手のひらに集中させる。

すると、ふっと力が抜けたような感覚を覚えた。
今だ! と思った瞬間、

「今だ!」

と征哉さんの声が聞こえた。
それに反応するようにグッと竿をあげると、魚が海から飛び出してきた。

「わぁー! 釣れたー!! おっきなお魚!!! 真っ赤なお魚だよ!」

僕が喜びの声をあげると、魚はビタン! と大きな音を立てて船の床に落ちた。

「おおー! すごいな、一花! アカムツじゃないか。これはすごいぞ!」

「あかむつ?」

「ああ。すごく美味しい魚で高級魚と言われてるんだぞ。刺身でも塩焼きでも煮付けでもなんでも美味しいからあとでこれを料理して食べよう」

「わぁー! 楽しみ!!」

「二階堂、一花が魚を釣り上げたところをちゃんと撮ったか?」

「もちろんでございます。あとでお楽しみくださいませ」

「わぁ、二階堂さん。ありがとう!!」

さっきは無我夢中でどうやってお魚が釣れたか覚えてないもんね。

「さぁ、一花。もう一度釣りを楽しもう」

「はーい。パパー、お魚さんの餌、つけてほしいな」

「ああ、私がつけよう」

パパにお願いするとすぐにつけてくれる。

そして今度は征哉さんと一緒に釣竿を振った。

またお魚さん釣れたらいいなぁ。
なんてお思っていると、今度は征哉さんのところにお魚さんが来たみたい。

「一花、一人で釣竿持っていられるか?」

「はい。大丈夫です! 征哉さん、頑張って釣ってください!!」

「ああ、大物を釣り上げるから楽しみにしててくれ」

僕からさっと離れて固定していた釣竿を持ち上げる。
グッと釣竿を引きながらリールを巻くその姿がかっこいい。

勢いよく征哉さんが竿をあげると魚がビタン! とまた音を立てて船の床に落ちた。

「わっ! 今度のもおっきい!」

「おお、金目鯛だぞ。これも煮付けにすると美味しいんだ」

「わぁー! 美味しいお魚! 征哉さん、すごーい!」

「ははっ。一花のアカムツがもっとすごいよ」

「じゃあ、私も大物を狙おうかな」

「パパー、頑張ってー!」

「ああ、任せておけ。私が麻友子と同じ真鯛を釣って、美味しい刺身を食べさせよう」

パパは嬉しそうに餌をつけるとヒョイっと遠くに飛ばした。
釣りをしているパパもかっこいいな。

「おー、引きが来たぞ!」

パパはクイクイと釣竿を動かして、リールを巻き始める。

「パパ、すごいな……」

「一花、釣りは楽しいか?」

「うん。とっても楽しい!」

ぼーっとパパを見つめていると征哉さんに尋ねられて答えた。

「そうか、じゃあ私も一花との釣り用に船を買うかな」

「えっ? 今、なんて言ったんですか? ちょっと聞こえなかった」

「いや、なんでもない。いい天気でよかったなって言ったんだ」

「はい。本当に楽しいです。今度は直くんたちも一緒にこれたらいいな」

「ああ。そうだな。そういうのも楽しいかもしれないな」

きっと征哉さんも釣りが楽しいんだな。
みんなで楽しいことができて僕は嬉しい。

「一花ーっ、釣れたぞ!!」

「わぁー! パパーすごーい!!」

パパは釣りあげた魚の口に指を入れて僕に見せる。
尻尾がバタバタと震えている。

パパは僕に見せると嬉しそうに小さなプールみたいなところに魚を入れた。
僕と征哉さんが釣った魚も一緒にそこで泳いでいる。

それからもアジとかサバとか、もう一匹アカムツとかたくさん釣れて僕は大満足だった。

「じゃあ、マリーナに戻って釣った魚で料理してもらおうか」

「わぁー、食べたい!!」

釣竿を片付けて、運転席に戻る。
ゆっくりと港に向かって動き始めた。

船の動きに身体を預けていると、なんだか眠くなってきた。
いっぱい身体を動かしたからかな。でももうちょっとだけ運転席から海を見たかったんだけどな。

「一花、眠いならあっちにベッドがあるぞ」

「うーん、ここがいい」

「そうか。じゃあ征哉くん、頼むよ」

パパのそんな声が聞こえたと思ったら、僕の身体はゆっくりと倒された。
征哉さんが膝に僕の頭を乗せてくれて、背中をトントンと叩かれるとそのまま気持ちよくなって眠ってしまった。

釣りって、本当に楽しかったな。
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