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番外編
クリスマスの朝 <寛人&空良のパパママ編>
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寛人&空良のパパ…寛海
ママ…茜音 です。
* * *
「――ね、茜音。もうそろそろ起きないと、秋芳たちとの約束に遅れてしまうぞ」
「う……ん」
ああ……失敗した。
昨夜、クリスマスイブだからといって少し張り切りすぎたか。
二人きりでクリスマスを過ごすようになって随分となるが、昨夜の茜音はいつにも増して妖艶で我慢ができなくなってしまった。
きっとこの前我が家に遊びにきてくれた寛人と空良のラブラブっぷりに私も、そして茜音も当てられ過ぎておかしくなってしまっていたのかもしれない。
クリスマスのためにわざわざ用意してくれた可愛らしい下着で誘ってくるものだから、つい我慢ができなくなってしまったのだ。
年甲斐もなく恥ずかしいが、茜音が幾つになっても綺麗すぎるのだから仕方がない。
60近くなってもまだまだ茜音を前にすると、昂りを抑えることができないのだからどうしようもないのかもしれない。
とりあえず、みんなとの約束の時間までにはもうしばらくある。
それまでもう少し寝かせておくか。
私ができることを全て終わらせておけば、あとはのんびり茜音の準備だけに時間を使うことができるな。
よし。
私は急いで飛び起きてさっと着替えを済ませ、朝食の支度に取り掛かった。
茜音の好きなものだけを用意して、寝室に戻る。
まだ茜音は眠っているようだ。
こっそりクローゼットを開け、今日出かけるための服を準備しておいた。
これでいいだろう。
そっとベッドに上がり、可愛らしい寝顔をこちらに向けている茜音の唇にチュッと重ね合わせ、
「茜音、おはよう。そろそろ起きる時間だぞ」
と声をかけると、さっきまで閉じていた瞼がゆっくりと開き綺麗な瞳を見せてくれた。
「う……ん、ひ、ろみさん」
「ふふっ。身体は大丈夫か?」
「う、ん……へい、き。あっ、でも……」
「どうした?」
「おこして……」
「ふふっ。ああ、おいで」
茜音が細く綺麗な腕を私の伸ばしてくるのを抱きしめながら、起こしてやると
「ひろみ、さん……おはよう」
すっかり目が覚めたらしい茜音からキスを返してくれた。
ああ、このままベッドに押し倒したくなってしまうが、ここは我慢だ!
本当に魅力的な妻がいると、いつでも本能と理性の戦いだな。
「今日は茜音の好きなパンケーキを焼いているぞ」
「わぁっ! 嬉しいわ。あの蜂蜜かけましょう!」
「ああ、そうだな」
この前、寛人たちが来てくれた時に手土産で持って来てくれた百花蜜の蜂蜜は、久嗣の息子・凌也くんから紹介してもらったもので、パートナーである理央くんも、そして我が家の可愛い息子空良のお気に入りでもあるらしい。
――パンケーキにかけて食べたらすごくおいしかったです。
空良が目を輝かせて教えてくれる姿が可愛くて、今日の朝食はこれにしようと決めていた。
「ああ、そういえばもう寛人から空良の動画が届いているんじゃないか?」
「ああっ!! そうだわっ!!」
茜音は私に抱きついていた腕をさっと離し、ベッド横のテーブルに置いていたスマホを手にした瞬間、この上なく嬉しそうに微笑んだ。
ずっと待っていたものが届いたのだから仕方がない。
自分にそう言い聞かせるが、そのあまりにも可愛らしい笑顔に嫉妬してしまう。
ああ、私は幾つになっても狭量だな。
「寛海さん、見て! 動画が送られて来ているわ」
「ああ、よかった。じゃあ、朝食を食べながら楽しむとしようか」
「ええ。あ、ねぇ……寛海さん」
「どうした?」
「抱っこして連れて行ってください」
「――っ!! ああ、喜んで」
嬉しそうにスマホを抱きしめる茜音を軽々と抱き上げ、リビングへ連れていく。
「ああ、いい匂い」
本当にいつになっても愛らしいな。
茜音を椅子に座らせ、温かい紅茶を目の前に置く。
茜音が嬉しそうにパンケーキにたっぷりと蜂蜜をかけている間に、スマホに送られてきた動画をテレビで見られるようにセットした。
「わぁっ! 見て、寛人さんっ! かっこいいスニーカーだよ!!」
「ああ、それはいいな。空良によく似合ってる」
画面の中から空良の嬉しそうな声とそれを見守る寛人の甘ったるい声が聞こえる。
私たちといる時には聞いたことがない声だな。
本当に空良といる時が幸せでたまらないんだろうな。
私が茜音と一緒にいる時のように……。
「さすが、麗花さんの選んだ靴ね。本当に空良によく似合ってる」
「ああ、そうだな。茜音の選んだコートもよく似合うと思うぞ」
「ふふっ。だといいんだけど……」
それからしばらく箱を開けては大喜びする空良の姿を微笑ましく眺めながらパンケーキを食べていると、
「あっ! 私のプレゼント!」
見ると、茜音の贈った箱を手にとっているのが見える。
「これはなんだろうな……わぁっ!! 可愛いっ!! これ……あっ、お母さんからだ!!! 寛人さん、これこっちにいる時から着てもいい?」
「ああ、母さんも喜ぶと思うぞ」
屈託のない笑顔で嬉しそうにメッセージカードを読み、何度も何度もコートを胸に当てる空良の姿に心が温かくなっていく。
こんなにも喜んでくれるとは茜音も嬉しいだろうな。
そっと茜音に目をやると、茜音が目を潤ませている。
「茜音? どうした?」
「あんなに喜んでくれるなんて……嬉しくて」
「ああ、そうだな。それによく似合ってる。きっとコートを着た姿も寛人が送ってくれるよ」
「ええ、そうね。ああ楽しみだわ」
「後で他の動画も送ってくるのだろう?」
「そうなの! サンタさんが来たところも送ってもらえることになってるから、それをみんなで鑑賞するのよ!! って、わっ! そろそろ準備しなきゃ!」
「ふふっ。急がないでいいよ。もう今日の服は決めておいたし、まだ時間は大丈夫だよ」
「寛海さん……ありがとう」
いや、クリスマスの朝に久しぶりの家族団欒を過ごしたようなそんな気分に私の方がお礼を言いたいくらいだ。
空良の笑顔は何よりも我が家を明るくしてくれるな。
ママ…茜音 です。
* * *
「――ね、茜音。もうそろそろ起きないと、秋芳たちとの約束に遅れてしまうぞ」
「う……ん」
ああ……失敗した。
昨夜、クリスマスイブだからといって少し張り切りすぎたか。
二人きりでクリスマスを過ごすようになって随分となるが、昨夜の茜音はいつにも増して妖艶で我慢ができなくなってしまった。
きっとこの前我が家に遊びにきてくれた寛人と空良のラブラブっぷりに私も、そして茜音も当てられ過ぎておかしくなってしまっていたのかもしれない。
クリスマスのためにわざわざ用意してくれた可愛らしい下着で誘ってくるものだから、つい我慢ができなくなってしまったのだ。
年甲斐もなく恥ずかしいが、茜音が幾つになっても綺麗すぎるのだから仕方がない。
60近くなってもまだまだ茜音を前にすると、昂りを抑えることができないのだからどうしようもないのかもしれない。
とりあえず、みんなとの約束の時間までにはもうしばらくある。
それまでもう少し寝かせておくか。
私ができることを全て終わらせておけば、あとはのんびり茜音の準備だけに時間を使うことができるな。
よし。
私は急いで飛び起きてさっと着替えを済ませ、朝食の支度に取り掛かった。
茜音の好きなものだけを用意して、寝室に戻る。
まだ茜音は眠っているようだ。
こっそりクローゼットを開け、今日出かけるための服を準備しておいた。
これでいいだろう。
そっとベッドに上がり、可愛らしい寝顔をこちらに向けている茜音の唇にチュッと重ね合わせ、
「茜音、おはよう。そろそろ起きる時間だぞ」
と声をかけると、さっきまで閉じていた瞼がゆっくりと開き綺麗な瞳を見せてくれた。
「う……ん、ひ、ろみさん」
「ふふっ。身体は大丈夫か?」
「う、ん……へい、き。あっ、でも……」
「どうした?」
「おこして……」
「ふふっ。ああ、おいで」
茜音が細く綺麗な腕を私の伸ばしてくるのを抱きしめながら、起こしてやると
「ひろみ、さん……おはよう」
すっかり目が覚めたらしい茜音からキスを返してくれた。
ああ、このままベッドに押し倒したくなってしまうが、ここは我慢だ!
本当に魅力的な妻がいると、いつでも本能と理性の戦いだな。
「今日は茜音の好きなパンケーキを焼いているぞ」
「わぁっ! 嬉しいわ。あの蜂蜜かけましょう!」
「ああ、そうだな」
この前、寛人たちが来てくれた時に手土産で持って来てくれた百花蜜の蜂蜜は、久嗣の息子・凌也くんから紹介してもらったもので、パートナーである理央くんも、そして我が家の可愛い息子空良のお気に入りでもあるらしい。
――パンケーキにかけて食べたらすごくおいしかったです。
空良が目を輝かせて教えてくれる姿が可愛くて、今日の朝食はこれにしようと決めていた。
「ああ、そういえばもう寛人から空良の動画が届いているんじゃないか?」
「ああっ!! そうだわっ!!」
茜音は私に抱きついていた腕をさっと離し、ベッド横のテーブルに置いていたスマホを手にした瞬間、この上なく嬉しそうに微笑んだ。
ずっと待っていたものが届いたのだから仕方がない。
自分にそう言い聞かせるが、そのあまりにも可愛らしい笑顔に嫉妬してしまう。
ああ、私は幾つになっても狭量だな。
「寛海さん、見て! 動画が送られて来ているわ」
「ああ、よかった。じゃあ、朝食を食べながら楽しむとしようか」
「ええ。あ、ねぇ……寛海さん」
「どうした?」
「抱っこして連れて行ってください」
「――っ!! ああ、喜んで」
嬉しそうにスマホを抱きしめる茜音を軽々と抱き上げ、リビングへ連れていく。
「ああ、いい匂い」
本当にいつになっても愛らしいな。
茜音を椅子に座らせ、温かい紅茶を目の前に置く。
茜音が嬉しそうにパンケーキにたっぷりと蜂蜜をかけている間に、スマホに送られてきた動画をテレビで見られるようにセットした。
「わぁっ! 見て、寛人さんっ! かっこいいスニーカーだよ!!」
「ああ、それはいいな。空良によく似合ってる」
画面の中から空良の嬉しそうな声とそれを見守る寛人の甘ったるい声が聞こえる。
私たちといる時には聞いたことがない声だな。
本当に空良といる時が幸せでたまらないんだろうな。
私が茜音と一緒にいる時のように……。
「さすが、麗花さんの選んだ靴ね。本当に空良によく似合ってる」
「ああ、そうだな。茜音の選んだコートもよく似合うと思うぞ」
「ふふっ。だといいんだけど……」
それからしばらく箱を開けては大喜びする空良の姿を微笑ましく眺めながらパンケーキを食べていると、
「あっ! 私のプレゼント!」
見ると、茜音の贈った箱を手にとっているのが見える。
「これはなんだろうな……わぁっ!! 可愛いっ!! これ……あっ、お母さんからだ!!! 寛人さん、これこっちにいる時から着てもいい?」
「ああ、母さんも喜ぶと思うぞ」
屈託のない笑顔で嬉しそうにメッセージカードを読み、何度も何度もコートを胸に当てる空良の姿に心が温かくなっていく。
こんなにも喜んでくれるとは茜音も嬉しいだろうな。
そっと茜音に目をやると、茜音が目を潤ませている。
「茜音? どうした?」
「あんなに喜んでくれるなんて……嬉しくて」
「ああ、そうだな。それによく似合ってる。きっとコートを着た姿も寛人が送ってくれるよ」
「ええ、そうね。ああ楽しみだわ」
「後で他の動画も送ってくるのだろう?」
「そうなの! サンタさんが来たところも送ってもらえることになってるから、それをみんなで鑑賞するのよ!! って、わっ! そろそろ準備しなきゃ!」
「ふふっ。急がないでいいよ。もう今日の服は決めておいたし、まだ時間は大丈夫だよ」
「寛海さん……ありがとう」
いや、クリスマスの朝に久しぶりの家族団欒を過ごしたようなそんな気分に私の方がお礼を言いたいくらいだ。
空良の笑顔は何よりも我が家を明るくしてくれるな。
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