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番外編
幸せになろう
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「ソレデハ、ユビワの、コウカンを、しましょう」
司祭の言葉に佳都くんが俺の元に駆け寄ってきた。
「悠木さん、おめでとう」
「ああ、ありがとう」
佳都くんからこうやって祝いの言葉を言われるとなんだか感慨深いものがある。
――佳都くん、俺は本気だよ。俺ならいつでも君を笑顔にしてあげる。こんな辛い思いなんて絶対させないよ。綾城のことなんて忘れさせてやるよ。
綾城と佳都くんが初めて喧嘩をしたあの日、佳都くんを助手席に乗せてそんな言葉をかけたっけ。
もちろん、佳都くんがそんな俺の言葉に乗るなんて思ってなかったし、俺自身も本気ではなかった。
ただ、綾城があんなに執着するほど愛した人に興味があったんだ。
それでも断ってくれと思いながら、あの言葉を告げた。
これを簡単に受け入れるようなら、彼は綾城の運命の相手ではないと結論づけたかったのかもしれない。
佳都くんがどんな反応をするか、試していたんだな俺は。
結局、何も悩むそぶりも見せずに即答で断られてホッとしたんだ。
でも今ならわかる。
あの時、佳都くんに空良と同じ匂いを感じたんだ。
その時から俺は自分の相手も男かもしれないと予感めいたものを感じていたのかもしれないな。
実際に空良と出会ったのは二人の喧嘩からすぐのことだったし。
二人のおかげで俺は躊躇いもなく、空良への思いに納得できたのかもしれない。
ああ、そういえば、空良と出会って、自分の思いの正体にいち早く気づかせてくれたのは、観月だったな。
綾城と佳都くんに性別なんて関係なく愛し合うことを教わり、そして、観月に自分の思いを教えられたんだ。
だから俺はそんな二人の前で、最愛の人との一生の愛を誓おう。
「空良……俺たちの、結婚指輪だよ」
小箱を開け、空良に見せると頬を赤らめて満面の笑みを見せる。
「とっても綺麗です……」
うっとりとした目で指輪を見つめる空良の綺麗な左手をとる。
これで空良が俺の夫になるんだ……。
そう思ったら急に手が震えてきた。
今までどんな時だって緊張したことなんてなかったのに。
それほど俺にとって空良は特別な存在だということだろう。
ふぅと深呼吸をしながら、空良の細い薬指に滑らせると指輪は輝きを放ちながら所定の場所で止まった。
どんな指輪にしようかと正直ドレスよりも悩んだ結婚指輪は、細いプラチナで小さなダイヤが一つついただけのシンプルな指輪だったけれど、最初から空良の指にあったかのようにもうすっかり馴染んでいた。
まるで一体化しているようなその指輪を空良は嬉しそうに見つめる。
ああ、悩んだ甲斐があったな。
「寛人さん……僕も」
「ああ、頼むよ」
空良は嬉しそうに小箱から俺の指輪を受け取り、俺の指に嵌めてくれた。
「お揃いの指輪って、いいですね」
「ああ、そうだな。空良……一生外さないでくれ」
「はい。寛人さんも……あ、でもお仕事中は無理かな?」
「大丈夫、手袋をつければ問題ないよ」
「そうなんですね、よかったぁ」
その笑顔に心を奪われる。
いや、もうとっくに奪われているのだからその表現は間違っているか。
でも、俺はきっとこの指輪が目に入るたびに、空良のこの笑顔を思い出すだろう。
そして、また好きになる。
空良……俺の心は一生お前のものだよ。
「ソレデハ、ちかいの、キスを」
司祭の言葉にマリアベールからすでに見えている空良の頬が少し赤くなる。
こんなに可愛い顔を晒すなんて……。
でも、今日だけだからな。
空良を抱き寄せて、唇を重ねる。
甘く柔らかな唇から離れたくないと本能的に訴えてくる。
少し長いかと思いつつも、俺は空良の唇を味わってゆっくりと離した。
「寛人さん……」
「ごめん、空良が可愛くて離せなかった」
そういうと、仕方がないとでもいうように優しい笑顔を見せてくれた。
そんな優しさに俺はいつも甘やかされてばかりだな。
その後、結婚証明書にサインをすることになった。
「佳都さんたちの時のことを思い出しますね」
「ああ、そうだな。今日もきっと証人のサインはあるはずだぞ」
「わぁ、なんだか嬉しいですね」
確かに。
形式だけかもしれないが、本当に認められたんだという気持ちになる。
誰が証人になってくれるのだろうと思っていると、俺たちの前には綾城と佳都くんが立った。
「あの時と反対だな」
「ああ。お前の時は絶対に俺がしようって思っていたから、願いが叶って嬉しいよ」
「観月に嫉妬されそうだけど……」
「いや、観月は気にしないよ。お前の証人になったことを喜ぶはずさ」
「ありがとう」
俺たちの名前の下に書かれた綾城と佳都くんの名前。
それだけで実感するものだな。
これで俺たちは、正真正銘の夫夫だ。
空良……幸せになろう。
司祭の言葉に佳都くんが俺の元に駆け寄ってきた。
「悠木さん、おめでとう」
「ああ、ありがとう」
佳都くんからこうやって祝いの言葉を言われるとなんだか感慨深いものがある。
――佳都くん、俺は本気だよ。俺ならいつでも君を笑顔にしてあげる。こんな辛い思いなんて絶対させないよ。綾城のことなんて忘れさせてやるよ。
綾城と佳都くんが初めて喧嘩をしたあの日、佳都くんを助手席に乗せてそんな言葉をかけたっけ。
もちろん、佳都くんがそんな俺の言葉に乗るなんて思ってなかったし、俺自身も本気ではなかった。
ただ、綾城があんなに執着するほど愛した人に興味があったんだ。
それでも断ってくれと思いながら、あの言葉を告げた。
これを簡単に受け入れるようなら、彼は綾城の運命の相手ではないと結論づけたかったのかもしれない。
佳都くんがどんな反応をするか、試していたんだな俺は。
結局、何も悩むそぶりも見せずに即答で断られてホッとしたんだ。
でも今ならわかる。
あの時、佳都くんに空良と同じ匂いを感じたんだ。
その時から俺は自分の相手も男かもしれないと予感めいたものを感じていたのかもしれないな。
実際に空良と出会ったのは二人の喧嘩からすぐのことだったし。
二人のおかげで俺は躊躇いもなく、空良への思いに納得できたのかもしれない。
ああ、そういえば、空良と出会って、自分の思いの正体にいち早く気づかせてくれたのは、観月だったな。
綾城と佳都くんに性別なんて関係なく愛し合うことを教わり、そして、観月に自分の思いを教えられたんだ。
だから俺はそんな二人の前で、最愛の人との一生の愛を誓おう。
「空良……俺たちの、結婚指輪だよ」
小箱を開け、空良に見せると頬を赤らめて満面の笑みを見せる。
「とっても綺麗です……」
うっとりとした目で指輪を見つめる空良の綺麗な左手をとる。
これで空良が俺の夫になるんだ……。
そう思ったら急に手が震えてきた。
今までどんな時だって緊張したことなんてなかったのに。
それほど俺にとって空良は特別な存在だということだろう。
ふぅと深呼吸をしながら、空良の細い薬指に滑らせると指輪は輝きを放ちながら所定の場所で止まった。
どんな指輪にしようかと正直ドレスよりも悩んだ結婚指輪は、細いプラチナで小さなダイヤが一つついただけのシンプルな指輪だったけれど、最初から空良の指にあったかのようにもうすっかり馴染んでいた。
まるで一体化しているようなその指輪を空良は嬉しそうに見つめる。
ああ、悩んだ甲斐があったな。
「寛人さん……僕も」
「ああ、頼むよ」
空良は嬉しそうに小箱から俺の指輪を受け取り、俺の指に嵌めてくれた。
「お揃いの指輪って、いいですね」
「ああ、そうだな。空良……一生外さないでくれ」
「はい。寛人さんも……あ、でもお仕事中は無理かな?」
「大丈夫、手袋をつければ問題ないよ」
「そうなんですね、よかったぁ」
その笑顔に心を奪われる。
いや、もうとっくに奪われているのだからその表現は間違っているか。
でも、俺はきっとこの指輪が目に入るたびに、空良のこの笑顔を思い出すだろう。
そして、また好きになる。
空良……俺の心は一生お前のものだよ。
「ソレデハ、ちかいの、キスを」
司祭の言葉にマリアベールからすでに見えている空良の頬が少し赤くなる。
こんなに可愛い顔を晒すなんて……。
でも、今日だけだからな。
空良を抱き寄せて、唇を重ねる。
甘く柔らかな唇から離れたくないと本能的に訴えてくる。
少し長いかと思いつつも、俺は空良の唇を味わってゆっくりと離した。
「寛人さん……」
「ごめん、空良が可愛くて離せなかった」
そういうと、仕方がないとでもいうように優しい笑顔を見せてくれた。
そんな優しさに俺はいつも甘やかされてばかりだな。
その後、結婚証明書にサインをすることになった。
「佳都さんたちの時のことを思い出しますね」
「ああ、そうだな。今日もきっと証人のサインはあるはずだぞ」
「わぁ、なんだか嬉しいですね」
確かに。
形式だけかもしれないが、本当に認められたんだという気持ちになる。
誰が証人になってくれるのだろうと思っていると、俺たちの前には綾城と佳都くんが立った。
「あの時と反対だな」
「ああ。お前の時は絶対に俺がしようって思っていたから、願いが叶って嬉しいよ」
「観月に嫉妬されそうだけど……」
「いや、観月は気にしないよ。お前の証人になったことを喜ぶはずさ」
「ありがとう」
俺たちの名前の下に書かれた綾城と佳都くんの名前。
それだけで実感するものだな。
これで俺たちは、正真正銘の夫夫だ。
空良……幸せになろう。
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