イケメンスパダリ医師は天涯孤独な彼を放っておけない

波木真帆

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番外編

空良がなりたいもの

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空良が高卒認定試験に合格して、進路を決めた時のお話。
リクエストをいただいたので書いてみました。
時系列的には、フランスに行く前になります。
楽しんでいただけると嬉しいです♡


  *   *   *

<side寛人>

「改めて、空良。高卒認定試験、合格おめでとう!!」

「ありがとうございます、寛人さん」

空良と理央くんがずっと頑張って勉強していた高卒認定試験に合格し、お互いの頑張りを称え合うために、観月たちと四人で食事に出かけ、それから数日経って今度は両親が空良のお祝いをしたいということで実家で父の手料理と母のおすすめケーキを振る舞ってもらい、今日は三度目のお祝い。ようやく二人だけの幸せの時間がやってきた。

どこかに美味しいものでも食べに行こうかと言ったけれど、空良は誰にも邪魔されることなく、二人だけのお祝いがいいと言ってくれた。

だから、俺は空良の好きなものを作り、こうして二人っきりの夜を過ごしている。

空良の好きな葡萄ジュースをワイングラスに注ぎ、赤ワインを注いだ俺のグラスと乾杯をして合格を祝った。

「空良、どうだ? 美味しいか?」

「はい。寛人さんのご飯……すっごく美味しいです!!」

空良と暮らすまではそこまで自炊をしていたわけじゃないが、特別料理が苦手だったわけでもない。
観月が理央くんに手料理を振る舞って、理央くんが幸せそうに食べているのを見ると、俺も愛しい空良に俺の手料理を食べてもらいたくなった。
元々、始めたら凝り性でもある俺だから、父に料理を習ったり自分でも勉強しているうちにあっという間に上手くなって、今ではあらかたのものは作れるようになった。これも空良を愛する力のおかげだろう。

満足そうに俺の料理を完食してくれた空良を抱きかかえて、ソファーに座って、これからのことを話し合う。

「なぁ、空良」

「はい。なんですか?」

「空良は今回の試験に合格したことで、大学を受験する資格が得られたわけだが、この先の将来を考えているか? 前に聞いた時は、俺のように医者になりたいって話をしてくれたな。それは今でも変わらないか?」

空良がなりたいというのならそれを頭から反対することはしたくないが、医師は時に辛い宣告をしなければいけない。優しすぎる空良には、医師は向いていない気がする。

それに順調に勉強を進めて、医師の国家試験に合格したとする。しかし、そこから二年間臨床研修を受けなければ、医師として働くことはできない。俺はそれが我慢できないんだ。

自分の独占欲で空良のやりたいことを狭めたくはないが、自分が臨床研修を経験した身としては、空良には行かせたくないと思ってしまう。

俺はそんな気持ちを持ちながら、空良に将来のことを問いかける。空良は何ていうだろう?

「あの、僕……」

少し言いづらそうに見つめてくるが、空良の言葉が聞きたい。

「いいよ。正直に言ってくれ」

空良がどうしても医師になりたいというのなら、俺自身や両親、それに他の人脈を全て使ってでも、空良が臨床研修を受ける時には、俺がそばにいるように認めてみせる。それくらいの覚悟はできているんだ。

「理央くんが……観月さんの、お手伝いができるように法律のお勉強をして、秀吾さんみたいにパラリーガルになるって言ってて、すごくいいなって思って……。だから、僕は寛人さんのそばでお手伝いができるように、お医者さんじゃなくて、周りでお手伝いする人になれたらなって……」

「えっ? 医者じゃない、手伝い?」

「はい。あ、でも看護師さんとかじゃなくて……その、寛人さんの病院の事務とか秘書とか経理みたいなことができたらなって……そうしたら、寛人さんはお医者さんの仕事に専念できるでしょう? だから、もし大学に行けるなら、医学部じゃなくて、経済学部とか、そういうところの方がいいのかなって……。だから、あの……ごめんなさい!」

「どうして、謝るんだ?」

「お医者さんになりたいって言ってたのに、勝手に希望を変えてしまって……寛人さんをがっかりさせるかなって思ったらなかなかいえなくて……」

「空良は謝らなくていいよ。俺も、空良に医師ではなくて俺のそばで働いてほしいなって思ってたから、今、ものすごく嬉しいんだよ」

「本当、ですか?」

「ああ。空良がどうしても医師になりたいっていうのなら、応援しようと思っていたけど、空良は俺のことをよく気遣って動いてくれるし、そばにいてくれたら仕事が捗るだろうなって思っていたんだ」

「――っ!! 寛人さんっ、よかった! 嬉しいっ!!」

空良が満面の笑みで抱きついてきてくれる。だが、俺の方がもっともっと喜んでるよ。
ああ……空良を臨床研修に行かせなくて済む。それがどれだけ嬉しいか……。

「じゃあ、頑張って勉強しような。経済学部ならいい先生がいっぱいいるし、空良も楽しく勉強できるぞ」

あとは俺の特別講師の件をどうするかだが……そこはあとでゆっくり考えよう。
まずは空良が経済学部を選んでくれたことを喜ぶとしよう。

「空良……進路が決まったお祝いに、これからたっぷり愛し合おうか?」

「はい。寛人さん……連れて行ってぇ……」

ああ、もう本当にかわいいな。
俺は空良を抱きかかえて、寝室へ向かった。


それからしばらく経って、空良が経済学部を受けることにしたと観月に伝えると、

「やっぱりな。絶対に医学部に行かせるわけがないと思ったよ」

と笑われた。どうやら、俺の気持ちは観月にはバレバレだったみたいだ。
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