天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

文字の大きさ
149 / 233

あん、ゔぁん、しょー、しる、ぶ、ぷれ

しおりを挟む
「わっ!」

理央くんは目の前で起こったことに驚きを隠せないみたい。
そりゃあそうだよね、突然目の前から人が見えなくなっちゃったんだもん。

「りょう、やさぁん……」

何か悪いことをしてしまったのかと目にいっぱい涙を溜めて隣にいる観月さんに助けを求める理央くん。

観月さんは放心しながらも、理央くんをそのまま抱き上げて抱きしめた。

「理央……今の……」

「あのね、凌也さんに喜んでもらいたくてリュカさんに教えてもらったの……でも、僕のフランス語聞き取れなかったみたい……うっ、ぐすっ……」

「――っ、理央が、俺のために……理央っ! ありがとう!! 嬉しいよ!!」

「でも、注文、できなかったよ……」

「そんなことない! 大丈夫だ! お店の人は可愛い理央がフランス語を話したからびっくりしただけだよ」

観月さんは理央くんを優しく抱きしめながら笑顔でそういうと、店員さんに向かって何か話し始めた。

すると、店員さんは何度も大きく首を縦に振ってみせた。

「エヴァンさん、今観月さんなんて言ったの?」

「ああ、この子の注文をちゃんと聞いてやってくれって言ったんだ。というか、最初から伝わっていたはずだがな」

「やっぱり? 伝わりましたよね? でも、どうしてあんなふうになっちゃったんですか?」

「ふふっ。リオたちが我が家に来た時、ジュールにフランス語で挨拶したのを覚えているか?」

「うん。もちろん! すっごく可愛かったから覚えてます」

「あの時、それを聞いたジュールが膝から崩れ落ちそうになったのをジョルジュが抱き留めただろう?」

「あっ! そういえば……」

あの時の情景が甦ってくる。

『ぼんじゅーる、ぱぴー』
『あんしゃんて!』
『じゅ、しー、うーるーどぅぶ、らんこんとれ!』

ふふっ。理央くんと空良くんと佳都さんの可愛い挨拶にパピーが倒れそうになったんだっけ。
可愛すぎてびっくりしたって。

「ああ、もしかしてあの店員さんも?」

「ああ、そうだ。特にリオの発音は小さな子が必死に喋っているみたいで可愛いらしいからな。至近距離で言われたらああなってしまうのも無理はない。ユヅルがここでショコラショーを頼んだ時も同じような感じになっただろう? あれも同じだ」

「そういえば……」

あの時、店員さんは目の前からいなくなりまではしなかったけれど、目を丸くして僕のことをずっと見ていたっけ。
だから僕は聞き取れなかったかと思って悲しかったんだ。
もう一度注文すると、ちゃんと伝わってショコラショーが買えたんだよね。

受け取る時にお礼を言ったらその時は今の店員さんと同じように目の前からいなくなっちゃったんだよね。
あの時は寒いからってエヴァンさんは言っていたけど、もしかしてあれも今日と同じだったのかも。

「今、ミヅキが声をかけたから、次は必ず注文を受け付けてくれるよ」

エヴァンさんがそう言ってくれたから、

「理央くん! 頑張って!」

と応援すると、理央くんは観月さんに抱きかかえられたまま、もう一度

『あん、ゔぁん、しょー、しる、ぶ、ぷれ』

と必死に涙を堪えながら注文をした。

すると、顔を真っ赤にした店員さんが、

D’accord承知しました!』

と言って、すぐにヴァンショーをカップに入れてくれた。
手渡されたヴァンショーを理央くんが受け取る前にさっと観月さんが受け取る。
理央くんを抱きかかえたままなのに、片手を離してもびくともしないって……すごいな。

『Merci!』

観月さんがお礼を言うと、まだほんのり涙声の理央くんが続けて

『める、しぃ』

と言うと、店員さんは今度は崩れ落ちこそしなかったけれど、真っ赤な顔で理央くんを見つめていた。

「ふふっ。理央くん、よかったね。ちゃんと買えたね!!」

「うん、僕頑張ったよ! ねぇ、凌也さん、びっくりした?」

「ああ、びっくりしたし嬉しいよ。このヴァンショー飲むのが楽しみだな」

「ふふっ。よかったぁ」

ラブラブな二人の隣で、僕もエヴァンさんのためにヴァンショーを注文する。
まだ顔が赤いままの店員さんだったけれど、今度はすんなりカップに注いでくれた。

「エヴァンさん、嬉しい?」

「ああ、最高だな。私にもミヅキにもいいサプライズだったよ」

そう言って、僕を抱きしめてくれた。


「お待たせー!!」

ミシェルさんたちが取ってくれていたテーブルに向かうと、ちょうどみんなも飲み物を持って戻ってきた。

「いいタイミングだったね」

「うん、じゃあ食べようか」

ミシェルさんの声掛けで、食事が始まる。

やっぱり最初はショコラショー。
ヴァンショーを飲むエヴァンさんと乾杯するようにカップを近づけて、ゆっくりと口につけると温かいショコラショーの甘みにホッとする。

「おいしっ!!」

「そうか、じゃあ私も味見しようか」

そういうと、エヴァンさんは僕の唇にそっと重ねて唇についたチョコレートを舐めとった。

「ああ、本当に美味しいな」

嬉しそうなエヴァンさんの表情に僕の心はもっともっと温かくなった。
しおりを挟む
感想 237

あなたにおすすめの小説

隊長さんとボク

ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。 エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。 そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。 王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。 きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。 えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...