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心の準備が……
「っ、せ、んせ……」
驚きで身体がこわばるのに、押し返すことができない。
先生の逞しい胸が頬に当たって、少し速い鼓動が伝わってくる。
先生が、緊張してる?
それを感じているうちに、不思議とさっきまでの動揺がゆっくりと落ち着いていった。
ほんのり香る先生の匂いと、落ち着く温もり。
抵抗しようとしていた力が、気づけば抜けていた。
「隼人くん……」
頭上から落ちてくる声は、いつもより少しだけ低くて柔らかい。
「今の言葉……冗談じゃないんだな?」
その問いに、胸がどくんと大きく跳ねる。
「じょ、冗談なんかじゃ……」
自分でも驚くくらい、小さくて震えた声だった。
でも溢れでた言葉は本音だ。あんなこと、冗談で言えない。
ゆっくりと身体を離される。
けれど、背中に回された腕はそのままだ。
至近距離で先生の顔が見えてドキドキする。
「良かった、嬉しいよ」
真っすぐに俺を見つめる目。
その目が心から喜んでいるように見えて、胸が高鳴る。
先生の、こんな顔……初めてだ。
「私も、隼人くんが好きだよ。愛してる」
「っ!」
ものすごく直球な言葉に、顔が一気に熱くなる。
「あ、あの……せ、せんせい……」
言葉がうまく出てこない。
頭が真っ白になる。
そんな俺を見て、先生は小さく笑った。
「そんな顔をされると、こちらのほうが困ってしまうな」
そう言いながら、そっと頬に手が触れる。
それがたまらなく優しくて、ドキドキが止まらない。
このまま何かが起きてしまいそうで、怖いくらいに意識してしまう。
もちろん、俺だってそんな気持ちがないわけじゃないけど……
まだ心の準備が……
「隼人くん」
名前を呼ばれて、先生を見つめる。
「このまま、もう少し……」
その先の言葉を聞く前に、
「ぐぅぅ……」
間の抜けた音が、静かな部屋に響いた。
「す、すみません……」
慌ててお腹を抑えたけれど、はっきり聞かれてしまっただろう。
穴があったら入りたい、とはこのことだ。
さっきまでのドキドキした空気が一気にどこかへ飛んでいく。
なんでこのタイミングでお腹なんか……恥ずかしすぎて、先生の顔が見られない。
思わず顔を覆うと、くすっと笑う声が頭上から聞こえた。
「ごめん、ごめん。ご飯にしよう」
「ほんと、すみません」
「いや、いいんだ」
優しくそう言って、ぽん、と頭を軽く叩かれる。
「このままだったら、止まれそうになかったから」
さらりとそう言って、先生は俺に笑みを向けた。
「大事なことは、ご飯の後でゆっくり、と。ね」
ぱちん、とウインクされて、心臓が大きく跳ねる。
「ほら、ご飯にしよう」
さっと手を取られて、一緒にダイニングに向かった。
昨日と同じ席に座ろうとすると、先生が自分の隣の椅子を引く。
「隼人くんの席は、こっち」
「え、あの……」
「ほら、おいで」
笑顔で呼ばれて断る理由もない。
おずおずと腰を下ろすと、先生は嬉しそうにキッチンに行き、料理を運んできてくれる。
「さぁ、食べよう」
先生が隣に座ると、距離の近さに一気に緊張が戻ってくる。
目の前には美味しそうな料理が並んでいるのに、俺の意識は全て先生に向いてしまっていた。
「隼人くん?」
「え、あっ、いただきます」
声をかけられて、慌てて箸を持つ。
でも、緊張してしまっているのかなんだか箸づかいがおぼつかない。
「慌てないでいいよ。ほら、あーん」
さっと目の前に一口サイズのハンバーグを差し出されて、俺は反射的に口を開けてしまった。
「どう?」
「んーひー、れす」
もぐもぐと口を動かしながら答えると、先生は嬉しそうに笑っていた。
驚きで身体がこわばるのに、押し返すことができない。
先生の逞しい胸が頬に当たって、少し速い鼓動が伝わってくる。
先生が、緊張してる?
それを感じているうちに、不思議とさっきまでの動揺がゆっくりと落ち着いていった。
ほんのり香る先生の匂いと、落ち着く温もり。
抵抗しようとしていた力が、気づけば抜けていた。
「隼人くん……」
頭上から落ちてくる声は、いつもより少しだけ低くて柔らかい。
「今の言葉……冗談じゃないんだな?」
その問いに、胸がどくんと大きく跳ねる。
「じょ、冗談なんかじゃ……」
自分でも驚くくらい、小さくて震えた声だった。
でも溢れでた言葉は本音だ。あんなこと、冗談で言えない。
ゆっくりと身体を離される。
けれど、背中に回された腕はそのままだ。
至近距離で先生の顔が見えてドキドキする。
「良かった、嬉しいよ」
真っすぐに俺を見つめる目。
その目が心から喜んでいるように見えて、胸が高鳴る。
先生の、こんな顔……初めてだ。
「私も、隼人くんが好きだよ。愛してる」
「っ!」
ものすごく直球な言葉に、顔が一気に熱くなる。
「あ、あの……せ、せんせい……」
言葉がうまく出てこない。
頭が真っ白になる。
そんな俺を見て、先生は小さく笑った。
「そんな顔をされると、こちらのほうが困ってしまうな」
そう言いながら、そっと頬に手が触れる。
それがたまらなく優しくて、ドキドキが止まらない。
このまま何かが起きてしまいそうで、怖いくらいに意識してしまう。
もちろん、俺だってそんな気持ちがないわけじゃないけど……
まだ心の準備が……
「隼人くん」
名前を呼ばれて、先生を見つめる。
「このまま、もう少し……」
その先の言葉を聞く前に、
「ぐぅぅ……」
間の抜けた音が、静かな部屋に響いた。
「す、すみません……」
慌ててお腹を抑えたけれど、はっきり聞かれてしまっただろう。
穴があったら入りたい、とはこのことだ。
さっきまでのドキドキした空気が一気にどこかへ飛んでいく。
なんでこのタイミングでお腹なんか……恥ずかしすぎて、先生の顔が見られない。
思わず顔を覆うと、くすっと笑う声が頭上から聞こえた。
「ごめん、ごめん。ご飯にしよう」
「ほんと、すみません」
「いや、いいんだ」
優しくそう言って、ぽん、と頭を軽く叩かれる。
「このままだったら、止まれそうになかったから」
さらりとそう言って、先生は俺に笑みを向けた。
「大事なことは、ご飯の後でゆっくり、と。ね」
ぱちん、とウインクされて、心臓が大きく跳ねる。
「ほら、ご飯にしよう」
さっと手を取られて、一緒にダイニングに向かった。
昨日と同じ席に座ろうとすると、先生が自分の隣の椅子を引く。
「隼人くんの席は、こっち」
「え、あの……」
「ほら、おいで」
笑顔で呼ばれて断る理由もない。
おずおずと腰を下ろすと、先生は嬉しそうにキッチンに行き、料理を運んできてくれる。
「さぁ、食べよう」
先生が隣に座ると、距離の近さに一気に緊張が戻ってくる。
目の前には美味しそうな料理が並んでいるのに、俺の意識は全て先生に向いてしまっていた。
「隼人くん?」
「え、あっ、いただきます」
声をかけられて、慌てて箸を持つ。
でも、緊張してしまっているのかなんだか箸づかいがおぼつかない。
「慌てないでいいよ。ほら、あーん」
さっと目の前に一口サイズのハンバーグを差し出されて、俺は反射的に口を開けてしまった。
「どう?」
「んーひー、れす」
もぐもぐと口を動かしながら答えると、先生は嬉しそうに笑っていた。
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いぬぞ〜さま。コメントありがとうございます!
ずっと手に入れるために画策していた相手に好きかもって言われたら、抱きしめちゃいますよね。
ご飯は食べさせてあげたいところですが、くま先生に我慢してもらわないとですね。
愛し合って、病院に行った球磨先生を見た看護師さんたちの様子はぜひ書きたいところですね(笑)
穂積も知成も、かなり雄のオーラを漂わせて学校行っちゃいそうですから
(多分その日はとしくんも一実くんもおやすみwww)
どちらの学校もその日からしばらく盛り上がりそうですね(笑)
四葩さま。コメントありがとうございます!
ふふ🤭とうとうですね。
ついに自覚しちゃいました。
それが嬉しすぎてつい抱きしめちゃったくま先生。
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小鹿確定は間違いなしですねwww
いぬぞ〜さま。コメントありがとうございます!
ロベールと一緒にいたおかげで隼人に可愛く手を振ってもらえたくま先生。
これがヒロのおかげだと知って、お礼が届いちゃうかもですね。
自分見て赤くなってドギマギしてたら脈アリなのは確実にわかってますね(笑)