5 / 22
二人きりの自宅
「えっ……ここが、先生のお家、ですか?」
店を出て、ひかりくんとともに帰ってきた自宅は、病院から車で十分ほどの場所にある一軒家。ここは私が生まれ育った実家でもある。
ただし、両親はここには住んでいない。
私が帰国したタイミングで、今度は両親のほうが海外移住を決めた。
定年まで勤め上げた会社を退職後、子会社の役員として数年勤めていたが、ずっと支え続けてくれた母とのんびり過ごすと言ってギリシャに移り住んだ。
ギリシャの魅力といえば美しい海はもちろんのことだが、医療制度もしっかりと整っている。
物価もヨーロッパ諸国と比べると安く、住むには最高の場所なのだそうだ。
というわけで、私は両親が残していった実家に一人暮らし。
料理は海外にいた時から自炊していたし、特に問題はなかったが、家が広すぎて掃除の手が行き届かないことが悩みだった。とはいえ、自宅に他人を入れるのもなんとなく憚られて住み始めた当初、忙しくて掃除に時間をかけられないと真壁と呑んだ際に愚痴った。すると、トイレや風呂場といった水回りをスイッチ一つで綺麗にしてくれるものを教えてくれてすぐにそれを自宅に取り入れた。床は掃除ロボットが綺麗にしてくれるし、掃除の手間がかからなくなって格段に住みやすくなった。
それ以外にも気になるところは随時手を入れているから、気楽な一人暮らしを続けている。
その家に到着した途端、車の中から家をみたひかりくんは驚きの表情で見つめていた。
「ああ。元々実家だが、今は一人で暮らしているよ」
「え、あっ、そうなんですか?」
その表情に安堵の色が見えてわかった。
家族が住んでいると思ったから心配になったのだろう。
確かに誰かがいる家で今から愛し合うとなれば緊張するのも無理はない。
「この家には私たちだけだ。気楽にして寛いでくれたらいいよ」
地下の駐車場に車を止め、助手席の扉を開ける。
手を差し出しながら告げると頬を赤らめながら手を取ってくれた。
後部座席に置いていた荷物を取り、肩を抱いて地下からエレベーターでそのまま二階に上がった。
二階には私の寝室がある。
「どうする? 先にシャワーを浴びようか? それともそのまま寝室がいい?」
「えっ、えっと……普通はどうするのがいいんですか? 初めてだからわからなくて……」
真っ赤な顔をしながらもそんなことを言ってくる。
可愛くてたまらない。
「どっちが普通なんてないよ。ひかりくんが好きなほうを選んで」
「えっと……あの、じゃあシャワーを、浴びたいです」
「オッケー」
抱き寄せるだけで甘い匂いがしていた。
あれはひかりくんの体臭だろう。
それをそのまま味わいたかった気持ちはもちろんある。
だが、怖がらせないし優しくすると約束したんだ。
ひかりくんの望むようにしてあげたい。
それにシャワーを浴びてほんのりピンク色になった肌を味わうのも楽しそうだ。
いずれにしても私の興奮を誘うことは間違いない。
「ここがシャワールームね」
ひかりくんには寝室の奥にあるシャワールームに案内した。
広い浴槽がある風呂場には、たっぷりと愛し合った後で連れていけばいい。
「シャンプーやボディーソープが使いたかったらこれを使ってくれ。肌に優しいものだから」
私と同じ匂いを纏わせるのもいいが、肌に触れる感じからあまり強そうに見えないからな。
「シャワーを浴びたら、これを羽織って出てきてくれたらいいよ。下着は着なくていいから」
「これ……」
「私が使っているバスローブ。大きいだろうけど、どうせ脱ぐから大丈夫だろう?」
そう尋ねると、さらに顔を赤らめる。
「は、はい。あ、ありがとうございます」
こんなにもウブなのに、金を払って差し出そうとしたなんて……
本当にこの子を救えて良かったと心から思う。
シャワームールに入っていく彼を見送り、私は寝室に戻った。
ベッドに腰掛けて、ポケットから取り出したのはスマホ。
何度か震えていたから、何かが来ていたのは知っていた。
見ると、着信とメッセージが一件ずつ。
相手はどちらも真壁からだ。
私はシャワーの音をバックに、メッセージを開いた。
<今日はドタキャンして悪かった。ところで一つ聞きたいことがあって電話をかけたが取らなかったからメッセージに入れておく。今日、沖野が待ち合わせをしていた場所に、旅行バッグのような大きなバッグを斜めがけにしていた大学生くらいの男性はいなかったか? 何か知っていたらなんでもいい情報提供をしてほしい>
そのメッセージの内容的にかなり焦っている様子が窺えた。
旅行バッグのような大きなバッグ……
チラリとソファに目をやるとひかりくんが持っていたバッグが目に入る。
もしかしてこれのことか?
とすると、真壁が情報を聞きたがっているのはひかりくんのことなのか?
まだ確証を得ないまま真壁に連絡するわけにはいかないな。
だが既読になっているし、何も言わないわけにはいかない。
<悪い。後で連絡する>
考えた挙句、それだけ送り通知をオフにした。
店を出て、ひかりくんとともに帰ってきた自宅は、病院から車で十分ほどの場所にある一軒家。ここは私が生まれ育った実家でもある。
ただし、両親はここには住んでいない。
私が帰国したタイミングで、今度は両親のほうが海外移住を決めた。
定年まで勤め上げた会社を退職後、子会社の役員として数年勤めていたが、ずっと支え続けてくれた母とのんびり過ごすと言ってギリシャに移り住んだ。
ギリシャの魅力といえば美しい海はもちろんのことだが、医療制度もしっかりと整っている。
物価もヨーロッパ諸国と比べると安く、住むには最高の場所なのだそうだ。
というわけで、私は両親が残していった実家に一人暮らし。
料理は海外にいた時から自炊していたし、特に問題はなかったが、家が広すぎて掃除の手が行き届かないことが悩みだった。とはいえ、自宅に他人を入れるのもなんとなく憚られて住み始めた当初、忙しくて掃除に時間をかけられないと真壁と呑んだ際に愚痴った。すると、トイレや風呂場といった水回りをスイッチ一つで綺麗にしてくれるものを教えてくれてすぐにそれを自宅に取り入れた。床は掃除ロボットが綺麗にしてくれるし、掃除の手間がかからなくなって格段に住みやすくなった。
それ以外にも気になるところは随時手を入れているから、気楽な一人暮らしを続けている。
その家に到着した途端、車の中から家をみたひかりくんは驚きの表情で見つめていた。
「ああ。元々実家だが、今は一人で暮らしているよ」
「え、あっ、そうなんですか?」
その表情に安堵の色が見えてわかった。
家族が住んでいると思ったから心配になったのだろう。
確かに誰かがいる家で今から愛し合うとなれば緊張するのも無理はない。
「この家には私たちだけだ。気楽にして寛いでくれたらいいよ」
地下の駐車場に車を止め、助手席の扉を開ける。
手を差し出しながら告げると頬を赤らめながら手を取ってくれた。
後部座席に置いていた荷物を取り、肩を抱いて地下からエレベーターでそのまま二階に上がった。
二階には私の寝室がある。
「どうする? 先にシャワーを浴びようか? それともそのまま寝室がいい?」
「えっ、えっと……普通はどうするのがいいんですか? 初めてだからわからなくて……」
真っ赤な顔をしながらもそんなことを言ってくる。
可愛くてたまらない。
「どっちが普通なんてないよ。ひかりくんが好きなほうを選んで」
「えっと……あの、じゃあシャワーを、浴びたいです」
「オッケー」
抱き寄せるだけで甘い匂いがしていた。
あれはひかりくんの体臭だろう。
それをそのまま味わいたかった気持ちはもちろんある。
だが、怖がらせないし優しくすると約束したんだ。
ひかりくんの望むようにしてあげたい。
それにシャワーを浴びてほんのりピンク色になった肌を味わうのも楽しそうだ。
いずれにしても私の興奮を誘うことは間違いない。
「ここがシャワールームね」
ひかりくんには寝室の奥にあるシャワールームに案内した。
広い浴槽がある風呂場には、たっぷりと愛し合った後で連れていけばいい。
「シャンプーやボディーソープが使いたかったらこれを使ってくれ。肌に優しいものだから」
私と同じ匂いを纏わせるのもいいが、肌に触れる感じからあまり強そうに見えないからな。
「シャワーを浴びたら、これを羽織って出てきてくれたらいいよ。下着は着なくていいから」
「これ……」
「私が使っているバスローブ。大きいだろうけど、どうせ脱ぐから大丈夫だろう?」
そう尋ねると、さらに顔を赤らめる。
「は、はい。あ、ありがとうございます」
こんなにもウブなのに、金を払って差し出そうとしたなんて……
本当にこの子を救えて良かったと心から思う。
シャワームールに入っていく彼を見送り、私は寝室に戻った。
ベッドに腰掛けて、ポケットから取り出したのはスマホ。
何度か震えていたから、何かが来ていたのは知っていた。
見ると、着信とメッセージが一件ずつ。
相手はどちらも真壁からだ。
私はシャワーの音をバックに、メッセージを開いた。
<今日はドタキャンして悪かった。ところで一つ聞きたいことがあって電話をかけたが取らなかったからメッセージに入れておく。今日、沖野が待ち合わせをしていた場所に、旅行バッグのような大きなバッグを斜めがけにしていた大学生くらいの男性はいなかったか? 何か知っていたらなんでもいい情報提供をしてほしい>
そのメッセージの内容的にかなり焦っている様子が窺えた。
旅行バッグのような大きなバッグ……
チラリとソファに目をやるとひかりくんが持っていたバッグが目に入る。
もしかしてこれのことか?
とすると、真壁が情報を聞きたがっているのはひかりくんのことなのか?
まだ確証を得ないまま真壁に連絡するわけにはいかないな。
だが既読になっているし、何も言わないわけにはいかない。
<悪い。後で連絡する>
考えた挙句、それだけ送り通知をオフにした。
あなたにおすすめの小説
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
別れたはずの元彼に口説かれています
水無月にいち
BL
高三の佐倉天は一歳下の松橋和馬に一目惚れをして告白をする。お世話をするという条件の元、付き合えることになった。
なにかと世話を焼いていたが、和馬と距離が縮まらないことに焦っている。
キスを強請った以降和馬とギクシャクしてしまい、別れを告げる。
だが別れたのに和馬は何度も会いに来てーー?
「やっぱりアレがだめだった?」
アレってなに?
別れてから始まる二人の物語。