エリート医師は偶然出会った可愛い子猫を囲い込んで離さない

波木真帆

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絶対に手放さない!

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あっという間に身体についた水分を吸い取ってくれる大きなバスタオルでひかりくんを包み、脱衣所に置いている背もたれのないソファに寝かせる。そこで待たせている間に、バスローブを羽織った。
同じものをさっきひかりくんも着ていたが、全く別物と思えるほど可愛かったのを思い出す。
バスローブの合わせから可愛い乳首が見えていたし、袖も丈も長くて本当に可愛かった。

これからここに住まわせるならひかりくんサイズのバスローブを用意したほうがいいのだが、あの姿が可愛かったから悩むところだ。

そんなことを思いつつ、バスタオルで包んだひかりくんの着替えを済ませる。
だが下着もパジャマもひかりくんサイズのものはない。

とりあえず私のパジャマの上だけを着せることにした。

「くっ! 裸よりもこっちのほうがエロくないか?」

裸のままで居させると我慢できないかもしれないと思ってパジャマを着せたのだが、下着もなく私の上着だけを着ている姿はとてつもなくそそられる。
あまりにも可愛すぎて、バスローブの中でまたもや首を擡げてしまっているのがわかる。

このままもう一度愛し合いたい欲望に駆られたが、ここは我慢だ。

必死に欲望を押し留めて、ひかりくんを抱き上げ寝室に戻る。
部屋にあるソファに寝かせて、さっとシーツを交換する。
この時間がもどかしい。

それでも新しいシーツに交換しなければひかりくんを寝かせられない。
ようやくシーツを替えてひかりくんを寝かせた。

このまま目を覚ますまで一緒にいたいが、真壁への連絡はひかりくんが寝ている間に済ませたい。
とりあえず、私が着ていた上着をひかりくんの横に置いておく。
するとひかりくんは寝ながらその上着を嬉しそうに抱きしめた。

「いい、におぃ……」

ひかりくんからポツリと溢れた言葉に全身の血が沸き立った。

ああ、もう絶対に何があっても手放さない。
そう心に誓った。

そっと寝室を出て、リビングでスマホを見る。

真壁からの連絡はない。
もう、夜の十時近いが、私からかけてくるのを待ってくれているんだろう。

私はフゥと息を吐き、真壁に電話をかけた。

ー沖野。待ってたぞ。

ワンコールしか鳴っていないのにすぐに取るとは、待っていたと言うのは本心からなんだろう。

ー待たせて悪い。それで、何を話せばいい? 私からも聞きたいことがあるんだが……

ー彼とは直接話せないか?

ー悪いが、それはできない。今、眠ってるんだ。

ーそうか……じゃあ、沖野に話そう。今日、お前との約束をキャンセルしたのも彼が関係する事件が発生したからなんだ。

そう言って真壁は事件の概要を話してくれた。

ここ一ヶ月の間に、出会い系アプリで『タク』なる人物と出会った未成年が次々と行方不明になっていて、保護者から捜索願がいくつも出されていたらしい。その『タク』がその未成年たちの誘拐に関与していると確証を得て、所在を突き止め逮捕したのが私との約束をした一時間前のことだったようだ。それで部下だけを私の元に行かせようと思ったが、『タク』のスマホを調べた結果、今日新たな獲物として彼と約束を交わしていたことがわかった。その裏付け作業に部下があたることになり、部下も来られなくなったということだった。
『タク』が彼と約束をしていた場所に真壁と部下たちが急いで向かったが、彼の姿はどこにもなかったらしい。

ーどうやら被疑者と有川ひかりの間に、待ち合わせ場所の齟齬があったようだ。

ーどういうことだ?

ー被疑者はいつもと同じ⚪︎⚪︎駅のモニュメントの前で約束したと言っていたが、有川ひかりはその場所を間違えたんだ。

ーあ、そのモニュメント。新しくあの駅にできたからか……

別の路線の同じ名前の駅。そこにも同じモニュメントができていた。
正確には少し呼び名が違う名前だが都内在住ではない彼には分からなかったんだろう。

ーそうだ。おそらくモニュメントを調べた時に一番最初に出てきた駅が待ち合わせ場所だと勘違いしたんだろう。それがわかって、急いで保護に向かったが見つけられなかったんだ。

なるほど。その前に私がひかりくんを真壁の部下だと間違えて連れて行ってしまったというわけか。

ー有川ひかりが間違えて向かった場所が偶然にも沖野と待ち合わせをしていた場所だったから、沖野が彼を見ていないかと思って連絡したんだよ。

ーそういうことだったのか。それじゃあ、連れて行って悪かったな。向こうから話しかけてきたから、てっきり真壁の部下だと思ったんだ。

ーいや、沖野が保護したのがわかってこっちは安心したから大丈夫だ。それで、ここからが本題なんだが……有川ひかりが被疑者と連絡をとっていた理由を聞きたいんだが、お前は聞いているか?

ーああ、少しだけ聞いたよ。大学を卒業したら結婚させられることが決まっているから、その前にその……

ーなるほど。だからか……。彼の親がうすうすそうじゃないかと思っていたらしい。だから、どうしても止めて欲しいって警察署に乗り込んできたんだ。

ー親が、警察に? どういうことだ? 

ひかりくんの身体を心配して、ということか?

ー実はな、ひかりくんの両親は町工場を経営しているそうなんだが、その経営が思わしくなくて融資の代わりに彼を欲しいと言ってきた資産家がいるそうだ。名目上はその資産家の娘と結婚した体にして、実際はその男の愛人になるという約束を取り交わしたらしい。それで、その男が絶対の条件として穢れのない清い身体を求めてきたんだそうだ。

金の代わりに自分の息子を?
しかも男の愛人にさせるつもりで?

ーなんてひどい親だ。

ーああ、私も話を聞いてゾッとしたよ。だから、お前が保護してくれてホッとしたんだ。お前、もう手放すつもりはないんだろう?

ーやっぱりわかったか?

ーまぁな。成瀬の話を聞いていたから、沖野の対応でそうじゃないかって思ってたよ。彼がお前と一緒にいたいと意思表示をしてくれたら教えてくれ。成瀬に協力を依頼して、すぐにお前の籍に入れよう。そうしたら彼の両親はもう何もできないよ。

ーわかった。ひかりくんが起きたら話をして、また連絡するよ。

そう言って電話を切った。

驚くほど碌でもない両親だったな。
そんな両親からひかりくんのような子が生まれたのが不思議なくらいだ。

だが、そのおかげでもう二度と両親とは会わせないと思えた。

ひかりくんが起きたらこれからの私たちのことについて話をしよう。
私たちなら幸せになれる。

私はすっきりとした気持ちで寝室に向かった。
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