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番外編
もし、あの時ひかりと出会わずに待ち合わせ場所から離れていたら…… 3
向かったのは以前、病棟の看護師たちに差し入れをすることになり、同僚の榎木くんに教えてもらったケーキ屋。
その時は、食べやすいものがいいかと思ってシュークリームとプリン、そしてマカロンを買って行ったが、たくさんのフルーツで彩られたケーキはかなり人気があるようだった。
ケーキ屋の駐車場に車を止め、ひかりくんを連れて正面に回ると、その可愛らしい外観に彼は目をキラキラと輝かせていた。
「さすが東京のケーキ屋さんですね。すごく綺麗!」
ここから感動してくれるなんて思わなかったな。
純粋で可愛い彼の手をとって店の扉を開けた。
チリンチリンと可愛いドアベルに迎えられ、ひかりくんはゆっくりと店の中に入った。
ショーケースを見て、またも目を輝かせる。
「わぁー! 宝石みたい!」
照明の関係もあるだろうが、艶やかな果物がのったケーキは確かに宝石のように輝いて見える。
「なんでも好きなものを選んでいいよ。今日食べられなくても明日も食べられるから」
「えっ……明日も? 先生のところにいていいんですか?」
「うちはどれだけいてもらっても構わないよ。大学生なら今は長期休みに入っているだろうし、ひかりくんに予定がないのなら好きに過ごしてくれていいよ」
これは私の本心だ。
というか、もうすでにこの子を手放したくないとさえ思ってしまっている。
今夜預かるだけの保護者として呼ばれたにすぎない私に、ひかりくんは戸惑っているかもしれないが。
実際、ひかりくんは私の申し出に困っているように見える。
すぐに断られたくなくて、私はサッと話題を変えた。
「まぁそのことはおいおい決めるとして、今は好きなものを選んで」
「は、はい」
ちょうどその時チリンチリンとドアベルが鳴る音が聞こえて、他の客が入ってきたおかげでひかりくんはショーケースに視線を向けた。
「んー、あれもいいな。これも……どうしよう。どれも美味しそうで困っちゃうな」
タルトだけでも五種類。
そのほかチョコ系、生クリーム系、チーズ系に加えて、モンブランやティラミス、ロールケーキ、そして以前私が買ったプリンやシュークリームなどもあるから選べないのも無理はない。それでも何とか四つまで絞り込んだようだ。
「それじゃあ四つとも買おうか。あとはプリンも」
ひかりくんの目が何度もプリンに向いたのを私は見逃さなかった。
「いいんですか?」
「もちろんだよ。一緒に食べよう」
普段ならケーキなんて口にしないが、自然と一緒に食べようと誘ってしまっていた。
彼が口つけたものなら喜んで食べられる気がしたんだ。
箱に詰めてもらい、店を出る。
車の助手席でひかりくんはそのケーキの箱を宝物のように抱えていた。
そうして車を走らせ、自宅に到着。
元は両親と暮らしていた一軒家の地下駐車場に車を入れると、ひかりくんは驚いていた。
「あの、一人暮らしって……」
「ああ、そうだよ。両親は定年退職後に夫婦でギリシャに移住してね、私は実家で一人暮らしをしているんだ」
「ギリシャ……すごい、ですね」
なかなか聞かない国だからという反応だろうか。
そんなところもなんだか可愛く思える。
エレベーターで一階に上がり、リビングに案内する。
一緒に洗面所に行き、手洗いを済ませた後でソファでゆっくりしていてと声をかけた。
その間に、私は夕食の支度をしようと思っていたのだが、
「あの、先生が作るところを見ててもいいですか?」
と可愛いお願いをされた。もちろん断る理由もない。
「じゃあ、こっちにおいで」
キッチンがよく見えるダイニングテーブルに案内して座らせる。
エプロンをサッとつけてキッチンに入ると、ひかりくんはずっと私を見ていた。
あの目は私に見惚れている目だ。
きっと彼も私に気がある。
彼の好意的な視線が私をじわじわと昂らせていた。
肉と魚用の大きな冷凍庫から牛肉の塊を取り出した。
「これでハンバーグを作るよ」
「わっ、おっきい!」
その言葉がアレに向けられたものでないとわかっていてもついついそっちに考えがいってしまうのは、私が可愛いひかりくんを前にそんなことばかり考えてしまっているからだろう。
それをひかりくんには悟られないように必死に冷静を装い、笑顔を見せた。
「ハンバーグってミンチを使うんですよね? これで作れるんですか?」
「ああ、大丈夫」
特殊な保存袋に入っているその肉を水道水につけて解凍し、家庭用のミートミンサーを取り出した。
「それ、なんですか?」
見慣れない機械にひかりくんが興味津々に尋ねてくる。
「塊の肉をミンチにする機械だよ。これで好きな配合で合い挽きにしたりできるんだ。今日はせっかくだから牛肉百パーセントで作ろう」
若い子だし、その方が喜ぶだろう。
「すごい! そんなハンバーグ、僕初めてです!」
すっかり期待してくれている様子のひかりくんを可愛いと思いながら、私は牛肉を機械に入れた。
その時は、食べやすいものがいいかと思ってシュークリームとプリン、そしてマカロンを買って行ったが、たくさんのフルーツで彩られたケーキはかなり人気があるようだった。
ケーキ屋の駐車場に車を止め、ひかりくんを連れて正面に回ると、その可愛らしい外観に彼は目をキラキラと輝かせていた。
「さすが東京のケーキ屋さんですね。すごく綺麗!」
ここから感動してくれるなんて思わなかったな。
純粋で可愛い彼の手をとって店の扉を開けた。
チリンチリンと可愛いドアベルに迎えられ、ひかりくんはゆっくりと店の中に入った。
ショーケースを見て、またも目を輝かせる。
「わぁー! 宝石みたい!」
照明の関係もあるだろうが、艶やかな果物がのったケーキは確かに宝石のように輝いて見える。
「なんでも好きなものを選んでいいよ。今日食べられなくても明日も食べられるから」
「えっ……明日も? 先生のところにいていいんですか?」
「うちはどれだけいてもらっても構わないよ。大学生なら今は長期休みに入っているだろうし、ひかりくんに予定がないのなら好きに過ごしてくれていいよ」
これは私の本心だ。
というか、もうすでにこの子を手放したくないとさえ思ってしまっている。
今夜預かるだけの保護者として呼ばれたにすぎない私に、ひかりくんは戸惑っているかもしれないが。
実際、ひかりくんは私の申し出に困っているように見える。
すぐに断られたくなくて、私はサッと話題を変えた。
「まぁそのことはおいおい決めるとして、今は好きなものを選んで」
「は、はい」
ちょうどその時チリンチリンとドアベルが鳴る音が聞こえて、他の客が入ってきたおかげでひかりくんはショーケースに視線を向けた。
「んー、あれもいいな。これも……どうしよう。どれも美味しそうで困っちゃうな」
タルトだけでも五種類。
そのほかチョコ系、生クリーム系、チーズ系に加えて、モンブランやティラミス、ロールケーキ、そして以前私が買ったプリンやシュークリームなどもあるから選べないのも無理はない。それでも何とか四つまで絞り込んだようだ。
「それじゃあ四つとも買おうか。あとはプリンも」
ひかりくんの目が何度もプリンに向いたのを私は見逃さなかった。
「いいんですか?」
「もちろんだよ。一緒に食べよう」
普段ならケーキなんて口にしないが、自然と一緒に食べようと誘ってしまっていた。
彼が口つけたものなら喜んで食べられる気がしたんだ。
箱に詰めてもらい、店を出る。
車の助手席でひかりくんはそのケーキの箱を宝物のように抱えていた。
そうして車を走らせ、自宅に到着。
元は両親と暮らしていた一軒家の地下駐車場に車を入れると、ひかりくんは驚いていた。
「あの、一人暮らしって……」
「ああ、そうだよ。両親は定年退職後に夫婦でギリシャに移住してね、私は実家で一人暮らしをしているんだ」
「ギリシャ……すごい、ですね」
なかなか聞かない国だからという反応だろうか。
そんなところもなんだか可愛く思える。
エレベーターで一階に上がり、リビングに案内する。
一緒に洗面所に行き、手洗いを済ませた後でソファでゆっくりしていてと声をかけた。
その間に、私は夕食の支度をしようと思っていたのだが、
「あの、先生が作るところを見ててもいいですか?」
と可愛いお願いをされた。もちろん断る理由もない。
「じゃあ、こっちにおいで」
キッチンがよく見えるダイニングテーブルに案内して座らせる。
エプロンをサッとつけてキッチンに入ると、ひかりくんはずっと私を見ていた。
あの目は私に見惚れている目だ。
きっと彼も私に気がある。
彼の好意的な視線が私をじわじわと昂らせていた。
肉と魚用の大きな冷凍庫から牛肉の塊を取り出した。
「これでハンバーグを作るよ」
「わっ、おっきい!」
その言葉がアレに向けられたものでないとわかっていてもついついそっちに考えがいってしまうのは、私が可愛いひかりくんを前にそんなことばかり考えてしまっているからだろう。
それをひかりくんには悟られないように必死に冷静を装い、笑顔を見せた。
「ハンバーグってミンチを使うんですよね? これで作れるんですか?」
「ああ、大丈夫」
特殊な保存袋に入っているその肉を水道水につけて解凍し、家庭用のミートミンサーを取り出した。
「それ、なんですか?」
見慣れない機械にひかりくんが興味津々に尋ねてくる。
「塊の肉をミンチにする機械だよ。これで好きな配合で合い挽きにしたりできるんだ。今日はせっかくだから牛肉百パーセントで作ろう」
若い子だし、その方が喜ぶだろう。
「すごい! そんなハンバーグ、僕初めてです!」
すっかり期待してくれている様子のひかりくんを可愛いと思いながら、私は牛肉を機械に入れた。
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