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〜二人で一緒に side明
真守がセオドアさまと一緒に寝ると言って大喜びしている姿に若干の、いやかなりの衝撃を受けたが、おそらくあれは大きなベッドに惹かれただけ。真守にしてみれば、一帆や両親、それに私と一緒に寝るのと変わらない感情だろう。
だが、真守がセオドアさまと一緒に寝るということは、一帆が一人になるということ。
一帆が望むなら私と一緒に寝ても全く構わないが、正直なところを言うと、真守抜きで一帆と二人っきりで寝たことは一度もない。血の繋がりもだが、私が一帆と出会った時、すでに小学生になっていた一帆と二人で一緒に寝てはいけないと私の本能が訴えたのだ。
もちろん一帆に対して良からぬ感情を抱いたことは一度もないが、今回一帆がラミロさまの運命の相手だったこと察するに、もしかしたら一種の防衛反応のようなものが働いたのかもしれない。
おそらく一帆はラミロさまと一緒に寝ることになるだろう。
ラミロさまは未成年の一帆に手を出されるようなお方ではないから、たとえ運命であっても一帆が成人にならぬ限りはそのようなことはないと言える。だから一緒に寝ることは反対はしない。
けれど、一帆から今からお風呂に入ってくると聞かされた時は正直驚いた。
一帆は一体誰と風呂に入るのか?
それをしっかりと聞いておくべきか?
だが、一帆の口からラミロさまと一緒に入ると聞かされたらさすがにこれは智春さんには言えない。
一緒に寝るだけならまだしも風呂に入るのは反対した方がいいだろうか。
いろんな感情が込み上げる中、
「おにーちゃんといっしょにはいるのー!」
と真守が嬉しそうに教えてくれる。
ああ、なんだ……風呂には真守と入るのか。
それならいい。一気に脱力してしまう。
そうだよな、さすがに風呂は一帆でも一緒には入らないな。
お星さまが見えるお風呂に二人で入るとはしゃいでいる真守と一帆に、ホッとして楽しんでおいでと見送った。
ところが、着替えを持ってセオドアさまのお部屋に入ったと思ったら、
『二人で、裸に、なります』
と耳を疑うヒビスクス語が聞こえてきた。
「ちょっ、ちょっと一帆っ!!」
慌ててセオドアさまの部屋に駆けつけると、そこには、茫然と佇む一帆と何もわかっていない真守。
そしてその二人の前で床に倒れ込んだ真っ赤な顔のセオドアさまとラミロさまという異様な空間が広がっていた。
「一帆、風呂にと言う単語は最後ヨールじゃない。ルーヨだ。それに、入るはサイラだよ。ライラじゃない」
「えっ? あ、そっか。間違えちゃった」
私が間違いを指摘すると、賢い一帆はすぐにそれを理解し、正しい発音で二人にもう一度告げた。
『二人で、お風呂に、入ってきます』
その滑らかなヒビスクス語に、ラミロさまもセオドアさまも床に倒れ込んだまま、笑顔で頷いた。
それを見て嬉しそうに一帆は真守の手を取って部屋の奥のバスルームに入って行った。
パタンと扉が閉まるのを確認して私は安堵のため息を漏らした。
そして、また床に倒れ込んだままのラミロさまとセオドアさまの前にしゃがみ込み、先ほどの一帆の間違いを詫びた。
『申し訳ありません。日本人にとってあの発音は間違えやすいんです。一帆もまさか、発音を間違えたとは思っていないはず。しかもその発音のせいで全く違う意味の言葉がお二人に通じていたとは気づいていないんです。ですから、一帆がその……お誘いをしたわけではない、と言うのは理解していただきたい……』
『い、いや。アキラ、頭を上げてくれ。まさか私たちもカズホがそんな誘いをするとは思っていない。ただ、驚いただけだ。気にしないでくれ。なぁ、ラミロ』
『あ、ああ。そうだ。まさかカズホがヒビスクス語を話すとは思わなかったから衝撃を受けてしまっただけだ』
衝撃というのはおそらく、あの誘い文句の衝撃も入っているだろう。
きっと今頃、ラミロさまの……は、一帆から受けた衝撃でとんでもない状態になっているだろうが、床に倒れ込んだこの状態では私にはわからないのが不幸中の幸いとでもいうのだろうか。
はぁぁーーーっ。
三人同時に大きなため息が溢れる中、二人が入っていったバスルームから楽しげな真守と一帆の声だけがいつまでも漏れ聞こえていた。
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