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〜あなたを喜ばせるには side一帆
「わぁーっ! すっごーいっ!」
脱衣所で裸になり、浴室に足を踏み入れた途端、零れ落ちて来そうなほどたくさんの星に出迎えられた。
真守は外の景色に釘付けになって窓際に駆けていく。少し離れた場所から見ていると、真守が空に浮かんでいるように見える。
「おにーちゃん、すごいよー!」
真守の無邪気な笑顔に少し怖いかも……なんて思っていた気持ちが一気に霧散する。
「おほしさまがあかるいから、でんきいらないねー!」
「本当だね。こんなお風呂、ここでしか入れないよ」
「おにーちゃん、はやくかみあらってー!」
真守は星が見えるように椅子を置いて座り、僕にせがんでくる。
ここだけ見ると機内とは思えないほどの豊富なお湯の量に驚きしかない。
どうやってこんなにたくさんの水を運んでいるんだろう?
不思議だな……。
そんなことを考えつつ真守の髪と身体を洗い終えて、自分もささっと洗った。
「おにーちゃん。みてみてー!」
湯船に浸かった真守が見せてくれたのは、真守のお気に入りのアヒルのおもちゃ。
「あっ、持って来てたの?」
「うん! だっておるすばんはかわいそーだもん!」
お湯に浮かべると足をバタバタして進むこのアヒルくんは、僕が真守にプレゼントしたもの。
その時からずっとお風呂には一緒に入ってくれているんだ。
「そっか。じゃあアヒルくんもこの景色見られて喜んでるね」
「うん! あひるさんもきてよかったよねー!」
頭の上をポチッと押すと、可愛い鳴き声をあげるアヒルくんと会話するように真守はずっと笑顔を見せてくれた。
「あ、そういえばおにーちゃんがさっきはなしてたことばって、なに? えいごじゃないよね?」
「あれはヒビスクス語だよ」
「ひ、びすすす?」
聞きなれない言葉に真守の舌が回らない。本当、可愛いな。
「ヒビスクス語。ラミロの母国語だよ。世界でもすごく綺麗な言語だって言われてるんだって」
「へぇー、おにーちゃんはなんでもしっててすごいなー。まもるは、えいごもわからないよー」
残念そうな表情をしているけれど小学一年生では真守は賢いほうだと思う。
英語とヒビスクス語を聞き分けられているし、きっと勉強したらすぐに話せるようになりそうだ。
「英語はこれから勉強したらいいし、今はまだセオドアさまが日本語わかるから大丈夫だよ」
「でも、ラミロさま……おにーちゃんがひびすすす、はなしたらかおまっかにしてよろこんでたよー」
あれは喜んでいたっていうか、僕が間違えたから驚いているぽかったけど、明おじさんのアドバイスでちゃんといえた時は確かに嬉しそうに笑ってくれたな。
「まもるもなにかえいごはなして、セオドアをよろこばせたいなー」
「英語で、セオドアさまを?」
「うん! なんていったらいいー?」
真守がセオドアさまにいったら喜ぶ英語か……。
「だいすきーはなんていうの?」
「大好き……えっと……」
確か、アイラブユーはものすごく重いんだよね。
パパがママに言ったりするやつ。
真守がセオドアさまに言うなら多分こっちかな。
「『Love you』かな」
「らぶゆー?」
「そう、『Love you,Theodore』
「らぶゆー、せおどあ、か。わかったー!」
真守はお風呂の中で何度も練習しているのが、可愛かった。
これならセオドアさまも喜ぶかな。
ほかほかになって二人でお風呂を出て、パジャマに着替える。
ママがお揃いのパジャマを入れてくれていたから真守も嬉しそう!
カチャリと扉を開けて出ると、すぐ目の前にラミロとセオドアさまがいた。
『お先に失礼しました。すごく気持ちよかったです』
英語で挨拶をすると、二人は笑顔で頷いてくれた。
「そうか、それならよかった。マモル、ゆっくりあったまったか?」
「うん! おふろ、すっごくきれーだった!」
「そうか、よかった」
セオドアさまは真守を軽々と抱き上げて、腕に乗せる。
その表情はとても嬉しそうだ。
「あっ! そうだ。セオドアー」
「どうした?」
「らぶゆー。せおどあ!」
真守がキラキラした笑顔で覚えたての英語を伝えると、セオドアさまの顔が一気に赤くなっていく。
想像以上の反応に驚いていると、さっとラミロに腕を取られた。
『カズホ、いくぞ』
突然抱きかかえられて、そのまま真守とセオドアさまを残し部屋から出ていく。
『あの、一体何が?』
『セオドアたちを少しの間、二人っきりにさせてあげてくれ。きっと今の言葉はセオドアは嬉しかったはずだから』
ラミロの言葉に先ほどのセオドアさまの表情を思い出す。
軽い言葉を教えたはずだけど、セオドアさまにとってはそれだけ真守のことを思っていると言うことなんだろうか?
僕はそのままラミロの部屋に連れて行かれた。
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