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番外編
こっそり様子をのぞいてみよう
磯山先生の家の庭でロレーヌ家のサンタクロース計画を実施することが可能になり、きっと先生たちも喜んでくれるだろう。その約束を取り付けたところで、ロレーヌ総帥が先ほどのタブレットを操作し始めた。
『そろそろクラハシ殿も気になっている頃でしょう』
嬉しそうな笑顔を見せ、俺にも見えるように画面を見せてくれる。
そこには先ほどの部屋のソファーに座っている航と弓弦くんの姿が映っていた。
『クラハシ殿が開発したあの死角なしカメラの性能は実に素晴らしい。このカメラのおかげでユヅルと離れて過ごす時も常にユヅルの様子が確認できますよ』
昨年、彼らの結婚式を行うロレーヌ家所有の城に最新の高性能死角なしカメラの購入依頼があり、せっかくならばと俺の開発したものの中でも特に高性能なものをありとあらゆる場所に取り付けた。
結婚式後にその映像を見たロレーヌ総帥がその性能と最高の映像に惚れ込み、今度はこの屋敷にも同じカメラを付けたいと依頼してきた。
元々、この屋敷には防犯目的でカメラがつけられていたのだが、それと比較しても俺のカメラのほうが性能がよかったようで、今はこのカメラしか考えられないとまで言って、弓弦くんが通うシュベルニー大学構内にもこのカメラの取り付けを依頼された。
広い大学では弓弦くんが動く範囲もほぼ決められているため、今はまだ弓弦くんの動線上にしか取り付けていないが、段階を経て将来的には全ての学部にこのカメラを取り付ける予定だという。
なんせ死角なしカメラだからこれ以上のセキュリティはない。
だからこそ、ロレーヌ総帥は安心して弓弦くんを大学に行かせられるのだ。
ロレーヌ総帥が社交界でヨーロッパの王族や貴族に率先してこのカメラを宣伝してくれているおかげで今はヨーロッパ各国でこのカメラの需要が増えていて、これから数十年は確実に売れ続けるだろうと確信している。
航との愛し合う時間の全てを映像として残したいという気持ちで作ったものだったが、これほど喜んでもらえるのは嬉しいことだ。愛しい人との全てを手に入れたいというのは俺だけじゃなかったというのがよくわかる。
画面の中ではすっかり意気投合した様子の航と弓弦くんが楽しそうに会話しているのが見える。
ロレーヌ総帥がさっと操作するとあちらの声が俺たちにも聞こえてきた。
「弓弦くんの髪色ってすごく綺麗だね。あのロレーヌさんとよく似てる」
「そう言ってもらえるのが一番嬉しいです。日本にいた時はこの髪色ですごく揶揄われてたから……」
「ええー、こんな綺麗な色なのに?」
「ものすごく田舎だったから、黒髪以外は認めないみたいなそんな感じだったんですよ」
「ああ、わかるー! 田舎ってそういうところあるよね。俺が住んでたところもものすごく田舎だったから外国人さんを見ること自体珍しいみたいな感じだった」
「そう! そうなんですよ! でもこの髪色がお父さんとエヴァンと一緒だってわかってからはこの髪色でよかったって思えるようになったんです」
「そっか。お父さんとも一緒なんだ。いいね! 弓弦くんによく似合ってるよ。それにフランスだといろんな髪色の人がいるから全然気にされることもないでしょ?」
「はい。だから僕、フランスに来てよかったなっていつも思ってます」
弓弦くんの心から嬉しそうな表情にロレーヌ総帥の表情が緩んでいるのがわかる。
『ワタル殿のおかげでユヅルの嬉しい言葉が聞けました』
『航は素直だから、弓弦くんを見て思った通りに話しているだけですよ』
『ええ、だからこそ余計に嬉しいんですよ』
確かにロレーヌ総帥のような立場なら、口先だけのお世辞もよく耳にしているだろう。
航の心からの言葉が何よりも弓弦くんとロレーヌ総帥を喜ばせたのは間違いない。
「そういえば、弓弦くんってヴァイオリンが上手なんだって?」
「上手がどうかはわからないですけど、弾くのは好きです。両親がヴァイオリン奏者だったんです」
「弓弦くんの演奏聴いてみたいな、だめ?」
「いえ。僕の演奏で良ければぜひ!」
そんな会話が始まったのをみて、ロレーヌ総帥が立ち上がる。
『我々も行きましょうか。ユヅルの演奏はぜひクラハシ殿にも聴いていただきたい』
あのニコラ・ロレーヌと、彼に才能を見出された江波天音のヴィオリンの才能を引き継いだ彼の演奏。
かなりのものだという噂は聞いていたが、ここで聴けるとは思わなかった。
俺たちは急いで先ほどの部屋に向かった。
『そろそろクラハシ殿も気になっている頃でしょう』
嬉しそうな笑顔を見せ、俺にも見えるように画面を見せてくれる。
そこには先ほどの部屋のソファーに座っている航と弓弦くんの姿が映っていた。
『クラハシ殿が開発したあの死角なしカメラの性能は実に素晴らしい。このカメラのおかげでユヅルと離れて過ごす時も常にユヅルの様子が確認できますよ』
昨年、彼らの結婚式を行うロレーヌ家所有の城に最新の高性能死角なしカメラの購入依頼があり、せっかくならばと俺の開発したものの中でも特に高性能なものをありとあらゆる場所に取り付けた。
結婚式後にその映像を見たロレーヌ総帥がその性能と最高の映像に惚れ込み、今度はこの屋敷にも同じカメラを付けたいと依頼してきた。
元々、この屋敷には防犯目的でカメラがつけられていたのだが、それと比較しても俺のカメラのほうが性能がよかったようで、今はこのカメラしか考えられないとまで言って、弓弦くんが通うシュベルニー大学構内にもこのカメラの取り付けを依頼された。
広い大学では弓弦くんが動く範囲もほぼ決められているため、今はまだ弓弦くんの動線上にしか取り付けていないが、段階を経て将来的には全ての学部にこのカメラを取り付ける予定だという。
なんせ死角なしカメラだからこれ以上のセキュリティはない。
だからこそ、ロレーヌ総帥は安心して弓弦くんを大学に行かせられるのだ。
ロレーヌ総帥が社交界でヨーロッパの王族や貴族に率先してこのカメラを宣伝してくれているおかげで今はヨーロッパ各国でこのカメラの需要が増えていて、これから数十年は確実に売れ続けるだろうと確信している。
航との愛し合う時間の全てを映像として残したいという気持ちで作ったものだったが、これほど喜んでもらえるのは嬉しいことだ。愛しい人との全てを手に入れたいというのは俺だけじゃなかったというのがよくわかる。
画面の中ではすっかり意気投合した様子の航と弓弦くんが楽しそうに会話しているのが見える。
ロレーヌ総帥がさっと操作するとあちらの声が俺たちにも聞こえてきた。
「弓弦くんの髪色ってすごく綺麗だね。あのロレーヌさんとよく似てる」
「そう言ってもらえるのが一番嬉しいです。日本にいた時はこの髪色ですごく揶揄われてたから……」
「ええー、こんな綺麗な色なのに?」
「ものすごく田舎だったから、黒髪以外は認めないみたいなそんな感じだったんですよ」
「ああ、わかるー! 田舎ってそういうところあるよね。俺が住んでたところもものすごく田舎だったから外国人さんを見ること自体珍しいみたいな感じだった」
「そう! そうなんですよ! でもこの髪色がお父さんとエヴァンと一緒だってわかってからはこの髪色でよかったって思えるようになったんです」
「そっか。お父さんとも一緒なんだ。いいね! 弓弦くんによく似合ってるよ。それにフランスだといろんな髪色の人がいるから全然気にされることもないでしょ?」
「はい。だから僕、フランスに来てよかったなっていつも思ってます」
弓弦くんの心から嬉しそうな表情にロレーヌ総帥の表情が緩んでいるのがわかる。
『ワタル殿のおかげでユヅルの嬉しい言葉が聞けました』
『航は素直だから、弓弦くんを見て思った通りに話しているだけですよ』
『ええ、だからこそ余計に嬉しいんですよ』
確かにロレーヌ総帥のような立場なら、口先だけのお世辞もよく耳にしているだろう。
航の心からの言葉が何よりも弓弦くんとロレーヌ総帥を喜ばせたのは間違いない。
「そういえば、弓弦くんってヴァイオリンが上手なんだって?」
「上手がどうかはわからないですけど、弾くのは好きです。両親がヴァイオリン奏者だったんです」
「弓弦くんの演奏聴いてみたいな、だめ?」
「いえ。僕の演奏で良ければぜひ!」
そんな会話が始まったのをみて、ロレーヌ総帥が立ち上がる。
『我々も行きましょうか。ユヅルの演奏はぜひクラハシ殿にも聴いていただきたい』
あのニコラ・ロレーヌと、彼に才能を見出された江波天音のヴィオリンの才能を引き継いだ彼の演奏。
かなりのものだという噂は聞いていたが、ここで聴けるとは思わなかった。
俺たちは急いで先ほどの部屋に向かった。
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