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隣は……
扉を開けた瞬間、
「おはよう、お父さん」
「父さん、おはよう」
真宙と大我の明るい声が飛び込んできた。
「おはよう。やっぱり早かったな」
苦笑まじりにそう返すと、真宙が「えへへ」と悪びれもなく笑う。
「だって、楽しみだったんだもん」
その隣で、大我もどこか浮き足だった顔をしている。
「もしかして、もう出かける準備できてる?」
「ああ。早く来そうな気がしたからな」
「さすが、お父さん! じゃあ、早速出かけよう!」
嬉しそうな真宙の声に、一慶はすぐに荷物を持ってきた。
そのまま四人でガレージに向かう。
地下駐車場には、たくさんの車が並んでいた。
一慶がピッと鍵のボタンを押すと、奥に止められていた車がピカッと光った。
「わ……っ」
思わず声が漏れる。
普段、一慶が乗っている車よりさらに大きい。
旅行用なのだろうか。車内も広そうだ。
「これ、ですか?」
「ええ。今日は人数も多いですし、荷物もありますからね。今日はこっちで行きましょう」
さっと荷物を積み込みながら、笑顔を向けられる。
「でもこんな大きな車、運転できるかどうか……」
四人で交代で運転するつもりだったのに、あまり大きな車で高速に乗るのは少し不安だ。
きっと真宙も同じだろう。
「運転なら心配しないでください。私と大我で十分ですから」
「でも……」
片道三時間もかかる場所で、乗ってるだけなのは正直申し訳ない気がする。
この間も、結局任せっきりだったのに。
「お父さん。大丈夫だよ。大我、運転するの好きなんだよ。僕と出かける時もずっと運転してくれるよ」
さらりと言われて、大我と一慶を見る。
「父さんも俺も運転好きなんで、大丈夫ですよ」
「途中で疲れたら交代しますから、真人さんは気にしないでください」
二人にまでそう言われたら、それ以上強くは言えなくなってしまう。
「それじゃあ、お言葉に甘えて……」
そういうと、大我が「俺、先に運転するよ」と一慶から鍵を受け取っていた。
「じゃあ、乗ろう!」
真っ先に後部座席のドアを開けながら、真宙はこっちを振り返る。
「お父さん、こっち!」
「えっ?」
思わず間の抜けた声が出た。
大我が運転するのなら、真宙はてっきり助手席に乗るものだと思っていた。
「一緒に後ろ座ろうよ」
「助手席に行かないのか?」
「うん! だって、お父さんと乗るの久しぶりだし」
その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
自然と頬が緩むのを感じながら、後部座席に乗り込んだ。
車内は想像していた以上に広く、座席もゆったりしている。
隣では真宙が嬉しそうに身体を寄せてきた。
「こうやって隣座るの、なんか久しぶりだね」
「ああ……そうだな」
少し照れくさい。
でも、それ以上に嬉しい。
前の席では、大我が自然な動きで運転席に座り、一慶が助手席へ乗り込む。
シートベルトを締めながら、一慶がルームミラー越しにこちらを見た。
その表情に少しドキッとしてしまう。
考えてみれば、車の中で運転している横顔以外の一慶を見たのは初めてだ。
ニコッと笑みを向けられて、頬が熱くなる。
「お父さん? どうかした?」
「え、なっ、何が?」
「なんか、顔赤いけど……」
「ちょ、ちょっと、車の中が暑いのかな。気にしないでいいよ」
「そう? それより、これから行くカフェなんだけど……」
なんとか誤魔化せたようでほっとする。
ちらりと前に視線を向けると、ミラー越しに一慶と目が合った。
楽しそうに笑っている。
「では、出発しましょうか」
「はーい!」
真宙の元気な返事とともに、大我が車をゆっくり発進させた。
休日のまだ早い時間だからか、街はどこか静かだった。
けれど、車内だけは、不思議なくらい賑やかで温かい。
「今から行くカフェ、本当にすごいんだよ」
真宙がスマートフォンを取り出して、楽しそうに画面を見せてくる。
「ほら、これ見て! パンも焼きたてだし、スープも十種類以上あるんだよ」
「うわ、これはすごいな……」
写真には、湯気の立つスープと焼きたてらしいパンがたくさん並んでいる。
「お父さん、絶対気にいると思うんだよね。このブリオッシュシュクレも美味しそうじゃない?」
卵とバターをたっぷりと使った生地にバターと砂糖をたっぷりとつけて焼いたパン。
甘い菓子パンだが、見ているだけで食べたくなる。
「それは、真人さん好きそうですね」
前の席から一慶も覗き込み、話に加わってくる。
「一慶お義父さんも甘いパン、食べますか?」
真宙の質問に、一慶は穏やかに笑った。
「真人さんと一緒なら、なんでも食べるよ」
さらりと言われて、思わず言葉に詰まる。
「父さん、息子の前で口説くなよ」
大我が呆れたように笑う。
「本当のことを言っているだけだろう」
一慶は至って真面目な顔で言い返した。
そのやりとりを見た真宙は「お父さん。愛されてるね」と私の耳元でそっと囁いた。
「おはよう、お父さん」
「父さん、おはよう」
真宙と大我の明るい声が飛び込んできた。
「おはよう。やっぱり早かったな」
苦笑まじりにそう返すと、真宙が「えへへ」と悪びれもなく笑う。
「だって、楽しみだったんだもん」
その隣で、大我もどこか浮き足だった顔をしている。
「もしかして、もう出かける準備できてる?」
「ああ。早く来そうな気がしたからな」
「さすが、お父さん! じゃあ、早速出かけよう!」
嬉しそうな真宙の声に、一慶はすぐに荷物を持ってきた。
そのまま四人でガレージに向かう。
地下駐車場には、たくさんの車が並んでいた。
一慶がピッと鍵のボタンを押すと、奥に止められていた車がピカッと光った。
「わ……っ」
思わず声が漏れる。
普段、一慶が乗っている車よりさらに大きい。
旅行用なのだろうか。車内も広そうだ。
「これ、ですか?」
「ええ。今日は人数も多いですし、荷物もありますからね。今日はこっちで行きましょう」
さっと荷物を積み込みながら、笑顔を向けられる。
「でもこんな大きな車、運転できるかどうか……」
四人で交代で運転するつもりだったのに、あまり大きな車で高速に乗るのは少し不安だ。
きっと真宙も同じだろう。
「運転なら心配しないでください。私と大我で十分ですから」
「でも……」
片道三時間もかかる場所で、乗ってるだけなのは正直申し訳ない気がする。
この間も、結局任せっきりだったのに。
「お父さん。大丈夫だよ。大我、運転するの好きなんだよ。僕と出かける時もずっと運転してくれるよ」
さらりと言われて、大我と一慶を見る。
「父さんも俺も運転好きなんで、大丈夫ですよ」
「途中で疲れたら交代しますから、真人さんは気にしないでください」
二人にまでそう言われたら、それ以上強くは言えなくなってしまう。
「それじゃあ、お言葉に甘えて……」
そういうと、大我が「俺、先に運転するよ」と一慶から鍵を受け取っていた。
「じゃあ、乗ろう!」
真っ先に後部座席のドアを開けながら、真宙はこっちを振り返る。
「お父さん、こっち!」
「えっ?」
思わず間の抜けた声が出た。
大我が運転するのなら、真宙はてっきり助手席に乗るものだと思っていた。
「一緒に後ろ座ろうよ」
「助手席に行かないのか?」
「うん! だって、お父さんと乗るの久しぶりだし」
その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。
自然と頬が緩むのを感じながら、後部座席に乗り込んだ。
車内は想像していた以上に広く、座席もゆったりしている。
隣では真宙が嬉しそうに身体を寄せてきた。
「こうやって隣座るの、なんか久しぶりだね」
「ああ……そうだな」
少し照れくさい。
でも、それ以上に嬉しい。
前の席では、大我が自然な動きで運転席に座り、一慶が助手席へ乗り込む。
シートベルトを締めながら、一慶がルームミラー越しにこちらを見た。
その表情に少しドキッとしてしまう。
考えてみれば、車の中で運転している横顔以外の一慶を見たのは初めてだ。
ニコッと笑みを向けられて、頬が熱くなる。
「お父さん? どうかした?」
「え、なっ、何が?」
「なんか、顔赤いけど……」
「ちょ、ちょっと、車の中が暑いのかな。気にしないでいいよ」
「そう? それより、これから行くカフェなんだけど……」
なんとか誤魔化せたようでほっとする。
ちらりと前に視線を向けると、ミラー越しに一慶と目が合った。
楽しそうに笑っている。
「では、出発しましょうか」
「はーい!」
真宙の元気な返事とともに、大我が車をゆっくり発進させた。
休日のまだ早い時間だからか、街はどこか静かだった。
けれど、車内だけは、不思議なくらい賑やかで温かい。
「今から行くカフェ、本当にすごいんだよ」
真宙がスマートフォンを取り出して、楽しそうに画面を見せてくる。
「ほら、これ見て! パンも焼きたてだし、スープも十種類以上あるんだよ」
「うわ、これはすごいな……」
写真には、湯気の立つスープと焼きたてらしいパンがたくさん並んでいる。
「お父さん、絶対気にいると思うんだよね。このブリオッシュシュクレも美味しそうじゃない?」
卵とバターをたっぷりと使った生地にバターと砂糖をたっぷりとつけて焼いたパン。
甘い菓子パンだが、見ているだけで食べたくなる。
「それは、真人さん好きそうですね」
前の席から一慶も覗き込み、話に加わってくる。
「一慶お義父さんも甘いパン、食べますか?」
真宙の質問に、一慶は穏やかに笑った。
「真人さんと一緒なら、なんでも食べるよ」
さらりと言われて、思わず言葉に詰まる。
「父さん、息子の前で口説くなよ」
大我が呆れたように笑う。
「本当のことを言っているだけだろう」
一慶は至って真面目な顔で言い返した。
そのやりとりを見た真宙は「お父さん。愛されてるね」と私の耳元でそっと囁いた。
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