太陽神と水の神子 〜最強の仮面皇帝は異世界から来た可愛い伴侶に素直になれない

波木真帆

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特別だと思ってくれるのなら

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「ミオは私の伴侶だと伝えた時、無理だと言ったのはそれが理由か?」

ミオに問いかけるのに緊張してしまったが、必死に冷静をよそおって尋ねた。
どうかそうだと言ってくれ。そう願いながら……。

「えっ? はい。そうです。だって、王妃になっても将来の皇帝が生まれないと意味がないでしょう? 僕は男だから子どもは産めませんし」

キョトンとした顔でさも当然とでもいいたげなミオの言葉に大声で叫びたくなるほど嬉しいが、ここは我慢だ。

「それは……その、後継のことを考えなければ、私の伴侶になっても構わないということか?」

私の勘違いかもしれないと思って、ゆっくりとした口調で尋ねるとミオは私の言葉を理解したと思ったら顔を真っ赤にした。

「えっと……そ、それは……あの……正直にいうと、よくわからないんです」

「わからない、というのはどういうことだ?」

やっぱり勘違いだったか……。
ショックを受けつつも最後まで聞いてみる。

「僕……今まで人を好きになったことがないんです。だから、人を好きになる対象が女性なのか、男性なのかも分かってなくて……でも、ジュアが僕を望んでくれるなら、真剣に考えてみたいなと思っています」

「それは、まだ可能性があるということか?」

「もちろんです。でも、一緒にいるうちにジュアの方が僕を嫌だと思うかもしれませんよ」

「――っ!!」

まだ仄かに顔を赤らめたまま私に笑顔を向けるミオが愛おしくてたまらない。
気づけば私は目の前のミオを抱きしめていた。

「わっ!」

「そんなこと、あろうはずがない。私がミオを嫌だと思う日など決してあり得ない」

「ジュア……」

私が抱きついても離れたいというそぶりも見せない。
それどころかミオも私の身体に腕を回してくれる。

その温もりが心地良い。

「ミオ、これからゆっくりと考えてくれ。私はミオの気持ちが固まるまで待つことにしよう」

「ジュア……ありがとうございます」

「それではこれからミオの服を誂えるが、その前にその服を着替えておかないとな。ちょっと待っていてくれ」

この国で一番の仕立て屋を呼ぶのだが、流石にあの姿のミオを仕立て屋のユーリフの前には出せない。
私が成人前に着ていた服を着せておくとしよう。

部屋の外で待機していたアーキルにすぐに幼年時代の私の服を持ってくるように伝えた。
私の指示の意図をすぐに理解したアーキルは急いで駆けて行き、数分も立たないうちに腕いっぱいに服を持って現れた。

「下着も全てジュア皇帝のお召し物をお持ちいたしました」

「分かった。すぐにユーリフを呼べ。来たら応接室に待たせておくのだ」

「承知いたしました」

私はそれだけを告げ、アーキルから服を受け取り、愛しいミオの元に戻った。

ミオは私が扉を外してしまった寝室のベッドの上で動くこともなく、素直に待ってくれている。

私の腕にある大量の服に驚きを隠せないようだ。

「あの、これは……?」

「私が成人前に着ていたものだ。今のミオにも着られるだろう」

「えっ? ジュアの服ですか?」

こんな怪物が着たものを嫌がるだろうかという考えが一瞬頭をよぎったが、ミオの表情に嫌悪は見えない。

「ミオのための服を仕立てるまでの間だけ、悪いがこれを着ていてもらえぬか?」

「そんな……っ、すごく綺麗ですし、わざわざ僕の服を買ってもらわなくてもジュアのこの服があれば十分ですよ」

ミオの嬉しそうな顔にただただ驚きしかない。

「えっ? だが、それは私の古着だぞ」

「他の人のだったらちょっと考えますけど、ジュアのなら大丈夫です」

私のなら……。
私のものだけ特別だということだろうか?

ミオの中で私が特別だと思ってくれているのならこれほど嬉しいことはない。

「そうか。ミオがそう言ってくれるのなら、そうしよう」

「はい。嬉しいです」

幸せそうに私の服を見つめるミオの姿に、私は胸の高まりを抑えられなかった。

アーキルにはすぐに仕立て屋を呼ぶことを中止させた。
驚いていたが、ミオが私の服を望んでくれていると告げれば今まで見たこともない笑顔を見せた。

「承知いたしました」

今まで幾度となく聞いてきた言葉だが、今回の言葉は喜びに満ちているように聞こえた。

再びミオのもとに戻り、服を選ぶ。

「これは一人で着るのは難しいですか?」

特に難しい服ではないが、見慣れないものばかりのミオにとっては確かに難しいかもしれない。
私もミオが着ていた服を脱がせるのはかなり大変だったからな。

「下着を先につけてくれ。そうしたら私が服を着せよう」

「わかりました」

寝室の扉を外してしまったため、寝室から出てもミオの着替えを目にしてしまう。
まだミオの気持ちが私に完全に向いていない以上、着替えを覗くわけにはいかない。

「私は外で――っ!!」

ミオに声をかけようと視線を向ければ、ミオは自然な様子で着ていた夜着をスルリと肩から滑らせていた。
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