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あなたは一体誰?
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もし、異世界から突然現れたらどうなるんだろう?
そんな思いつきで書いてしまった逆異世界転移のお話。
楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
「お疲れさまで~す!!」
「ああ、お疲れさん。今日も長々とありがとな。最後まで残ってくれるから助かってるよ」
「いえ、こちらこそ働かせてもらって感謝してますから」
「智己は明日は休みだろ。ゆっくり休めよ」
「はい。じゃあ、お先に失礼します」
バイト先の喫茶店の裏口を開け、外に出た途端ピューッと冷たい風に身体を突き刺された。
「うわっ、さむっ」
ずっと店内にいたから、こんなに寒くなってるって気づかなかった。
朝はそこまで寒くなかったけどな……。
でも、膝まであるロングパーカを着てきていたからまだマシだったか。
パーカの袖を指先まで伸ばして首を竦め、小さな身体をギュッと縮こまらせながら、僕は急いで帰宅の途についた。
「わっ!」
自分が踏んだ枯れ枝の折れるパキッという小さな音に思わず声が出る。
ただでさえ、暗くて怖いのに、人の気配がなさすぎてしんと静まり返っているのがさらに恐怖感を増す。
だけど、ここを通ると15分も早く家に着けるんだよね。
朝から晩まで働いて、少しでも睡眠時間を確保するためにはこの15分が何よりも大切なんだ。
でも、もう少しこの辺にも街灯でもつけてくれたらな……。
こんなにビクビク怯えながら帰らなくてもいいのに。
怖がりの僕にはこの道がお化け屋敷よりも怖い。
だって……僕の目の前にある、この大きくてボロボロの神社。
あそこから今にも何かが出てきそうだもん。
僕の頼りは手の中にあるスマホの明かりのみ。
それで足元を照らしながら、先へと進んでいく。
あまりにもおどろおどろしいその雰囲気にゴクリと息を呑みながら、僕は歩くスピードをさらに速めた。
すると、突然僕の行手を阻むように強い向かい風に押し戻された。
「――っ、急に風が……っ」
突然、竜巻のような突風が起こったと思ったら、ドドーンとまるで落雷のような大きな音と眩い光が僕の周りを包み込んだ。
「わぁーっ!!! 何、これっ!!!」
目の前で何かが爆発したんじゃないかという大きな地響きと目を開けていられないような眩さに怖くてその場にしゃがみ込んだ。
両手で耳を覆い、震える身体を必死に縮めながら時が過ぎ去るのを待った。
「――っ」
地響きが止まった?
気づけば目に感じていた眩しさも消えたような気がして、僕はギュッと閉じていた目をゆっくりと開いた。
目の前には真っ暗なあの道がいつもと同じ姿で見えた。
はぁーーっ。よかった。
でも、さっきのなんだったんだろう?
絶対に何かが落ちたようなそんな激しい音がしたのに。
まだ心臓がバクバクしている。
怖かったな……。
今日はシャワーでいいやと思っていたけど、さっさと家に帰って、あったかいお風呂にでも浸かって心を落ち着けよう。
すぐ近くにあった大木を支えにゆっくりと立ち上がると、
「ここは、どこだ?」
後ろから低く鋭い声が僕の耳に飛び込んできた。
さっきまで誰も居なかったはずなのに……。
「だ、だれ?」
声のする方にさっと振り向き、スマホの光を当てると見慣れない服装に身を包んだ背の高い男性が眩しそうに腕で目元を覆い隠した。
「え――っ!」
まるで中世ヨーロッパの世界から抜け出してきたような彼の格好に目を奪われる。
マント姿……それに、腰に刺しているのは、剣……?
まさか本物じゃないよね?
ってことは、ドラマか映画の撮影中とか?
じゃあ、この人は俳優さん?
「眩しいっ! なんだ、この光は?!」
「あっ、ごめんなさい」
ぼーっと光を当てたまま見つめていると大声で怒鳴られて慌ててスマホをさげた。
スマホの光で彼の足元を照らしたまま、
「あ、あの……あなたは?」
と恐る恐る尋ねた。
「人に名を尋ねるときはまず己から名乗るものだと思うが」
「えっ? あ、あの……ごめんなさい、僕……」
彼の指摘に混乱していると、スマホの光の先に彼の指先からぽとぽとと何かが垂れているのが見えた。
「そ、れ……」
そっと光を当てると地面が赤く染まって小さな血溜まりができていた。
「ああ、これか。少し怪我をしているだけだ。問題ない」
「少しって……」
いやいや、伝い落ちている量を見る限り、少しとは到底思えない。
「あの、とりあえず僕の家、すぐそこなので来てください。大したことはできないですけど応急処置くらいはできますから」
「いや、だが……」
「いいから、早く! あっ、これ着てください!」
「いや、ちょ――っ」
「早くっ!」
彼の奇抜な格好を見られたらいけないと思い、咄嗟に自分のパーカーを脱いで彼に羽織らせた。
彼の格好も、それに怪我も気になって僕はもう寒さも何もかも忘れて、怪我をしてない方の腕を取って半ば強引に彼を家へと連れ帰った。
そんな思いつきで書いてしまった逆異世界転移のお話。
楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
「お疲れさまで~す!!」
「ああ、お疲れさん。今日も長々とありがとな。最後まで残ってくれるから助かってるよ」
「いえ、こちらこそ働かせてもらって感謝してますから」
「智己は明日は休みだろ。ゆっくり休めよ」
「はい。じゃあ、お先に失礼します」
バイト先の喫茶店の裏口を開け、外に出た途端ピューッと冷たい風に身体を突き刺された。
「うわっ、さむっ」
ずっと店内にいたから、こんなに寒くなってるって気づかなかった。
朝はそこまで寒くなかったけどな……。
でも、膝まであるロングパーカを着てきていたからまだマシだったか。
パーカの袖を指先まで伸ばして首を竦め、小さな身体をギュッと縮こまらせながら、僕は急いで帰宅の途についた。
「わっ!」
自分が踏んだ枯れ枝の折れるパキッという小さな音に思わず声が出る。
ただでさえ、暗くて怖いのに、人の気配がなさすぎてしんと静まり返っているのがさらに恐怖感を増す。
だけど、ここを通ると15分も早く家に着けるんだよね。
朝から晩まで働いて、少しでも睡眠時間を確保するためにはこの15分が何よりも大切なんだ。
でも、もう少しこの辺にも街灯でもつけてくれたらな……。
こんなにビクビク怯えながら帰らなくてもいいのに。
怖がりの僕にはこの道がお化け屋敷よりも怖い。
だって……僕の目の前にある、この大きくてボロボロの神社。
あそこから今にも何かが出てきそうだもん。
僕の頼りは手の中にあるスマホの明かりのみ。
それで足元を照らしながら、先へと進んでいく。
あまりにもおどろおどろしいその雰囲気にゴクリと息を呑みながら、僕は歩くスピードをさらに速めた。
すると、突然僕の行手を阻むように強い向かい風に押し戻された。
「――っ、急に風が……っ」
突然、竜巻のような突風が起こったと思ったら、ドドーンとまるで落雷のような大きな音と眩い光が僕の周りを包み込んだ。
「わぁーっ!!! 何、これっ!!!」
目の前で何かが爆発したんじゃないかという大きな地響きと目を開けていられないような眩さに怖くてその場にしゃがみ込んだ。
両手で耳を覆い、震える身体を必死に縮めながら時が過ぎ去るのを待った。
「――っ」
地響きが止まった?
気づけば目に感じていた眩しさも消えたような気がして、僕はギュッと閉じていた目をゆっくりと開いた。
目の前には真っ暗なあの道がいつもと同じ姿で見えた。
はぁーーっ。よかった。
でも、さっきのなんだったんだろう?
絶対に何かが落ちたようなそんな激しい音がしたのに。
まだ心臓がバクバクしている。
怖かったな……。
今日はシャワーでいいやと思っていたけど、さっさと家に帰って、あったかいお風呂にでも浸かって心を落ち着けよう。
すぐ近くにあった大木を支えにゆっくりと立ち上がると、
「ここは、どこだ?」
後ろから低く鋭い声が僕の耳に飛び込んできた。
さっきまで誰も居なかったはずなのに……。
「だ、だれ?」
声のする方にさっと振り向き、スマホの光を当てると見慣れない服装に身を包んだ背の高い男性が眩しそうに腕で目元を覆い隠した。
「え――っ!」
まるで中世ヨーロッパの世界から抜け出してきたような彼の格好に目を奪われる。
マント姿……それに、腰に刺しているのは、剣……?
まさか本物じゃないよね?
ってことは、ドラマか映画の撮影中とか?
じゃあ、この人は俳優さん?
「眩しいっ! なんだ、この光は?!」
「あっ、ごめんなさい」
ぼーっと光を当てたまま見つめていると大声で怒鳴られて慌ててスマホをさげた。
スマホの光で彼の足元を照らしたまま、
「あ、あの……あなたは?」
と恐る恐る尋ねた。
「人に名を尋ねるときはまず己から名乗るものだと思うが」
「えっ? あ、あの……ごめんなさい、僕……」
彼の指摘に混乱していると、スマホの光の先に彼の指先からぽとぽとと何かが垂れているのが見えた。
「そ、れ……」
そっと光を当てると地面が赤く染まって小さな血溜まりができていた。
「ああ、これか。少し怪我をしているだけだ。問題ない」
「少しって……」
いやいや、伝い落ちている量を見る限り、少しとは到底思えない。
「あの、とりあえず僕の家、すぐそこなので来てください。大したことはできないですけど応急処置くらいはできますから」
「いや、だが……」
「いいから、早く! あっ、これ着てください!」
「いや、ちょ――っ」
「早くっ!」
彼の奇抜な格好を見られたらいけないと思い、咄嗟に自分のパーカーを脱いで彼に羽織らせた。
彼の格好も、それに怪我も気になって僕はもう寒さも何もかも忘れて、怪我をしてない方の腕を取って半ば強引に彼を家へと連れ帰った。
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