5 / 81
ふたりの食事
しおりを挟む
騎士さんってどんなものを食べるんだろう……。
ってか、こっちの食事が合うのかすらもわからない。
そもそも、食材自体もあまりないから大したものは作れないんだけど……。
冷蔵庫の中身をザーッと見渡して、はぁーっとため息が出てしまう。
それでも何か作らないとね。
ご飯だけでも温かいものを食べてもらおうと新しくご飯を炊き、残っていた野菜で野菜スープを作る。
煮込んでいる間に冷凍していた鶏肉をレンジで解凍して、柔らかくなったのを包丁で叩いていると、カタンとお風呂場の方で音が聞こえた。
あっ、出てきたのかな?
ふと顔を上げると、
「――っ!」
父さんと同じ服を着ている人とは思えないほどかっこよく着こなしたクリスさんが立っていた。
「これで合っているか?」
随分と袖や裾が短いからクリスさんが不安に思うのも無理はない。
だって、父さんよりも随分と身長が高そうだもん。
それに、手も足も恐ろしく長いから合わないのは当然だ。
でもこれで我慢してもらうしかない。
「大丈夫です。下着も一緒に入れておきましたけど、わかりましたか?」
「――っ、ああ。大丈夫だ。問題ない。それより、何やらいい匂いがしているが」
「はい。今、夕食を作ってますので、もう少し待っていてくださいね」
「トモキは医術だけでなく、料理もできるのか。多才だな」
「そんなことないです。あの、それよりも口に合うかわからないんですけど……」
「そんな心配はいらない。騎士団では野営で食糧が尽きた場合には野草だって食べるのだからな」
そう言ってくれてほっとした。
「よかったです、じゃあそっちで休んでいてください。あっ、寒かったらそこの上着、半纏っていうんですけどあったかいので着てください」
あれならかなり大きいし、クリスさんにだって着られるだろう。
でも、半纏着てる騎士さんって……申し訳ないけど、笑ってしまう。
「寒くはないから大丈夫だ。それよりもトモキは今、何をしているんだ?」
包丁で鶏肉を叩いている音が気になったのか、クリスさんが台所に近づいてきた。
「あの、つくねを作ろうと思って叩いて刻んでたんですけど、包丁があまり良くないので切れ味が悪くって……すみません。音がうるさかったですよね」
「いや、それは気にしないが。これを叩けばいいのか?」
「えっ? あ、はい」
「ならば、手伝おう」
「えっ、手伝うって――わっ!!」
そういうが早いかクリスさんは僕の手から包丁を取ると、ものすごい勢いで叩き続けあっという間にまな板の上には鶏肉のミンチが出来上がっていた。
「すごっ!!」
「これでいいのか?」
「は、はい。ありがとうございます」
「大したことではない。他にも手伝うことはないか?」
怪我人なのに手伝ってもらって申し訳ない気がしたけれど、せっかくそう言ってくれているのだからと急いでミンチをビニール袋に移し、残っていた豆腐と調味料を上からかけた。
「あの、これを全部混ぜてもらえますか? あっ、袋が破れないように気をつけてくださいね」
一言添えたのはさっきのものすごい力を思い出したからだ。
あんな調子で袋を握られたら材料が混ざる前に破れてしまう。
「わかった。手加減するとしよう」
怪我をしたのが左だったのも幸いしたんだろう。
絶妙な力加減であっという間にビニール袋の中のミンチや豆腐は綺麗に混ぜ合わされていた。
「すごいですね! ありがとうございます!」
「もうこれでいいのか?」
「はい。あとは焼くだけなので大丈夫です」
そう言って休んでいてもらおうと思ったけれど、
「ここの生活を学んでおきたいからしばらくトモキの動きをみていてもいいか?」
と尋ねられたので、どうぞという他なかった。
人に料理をしているところを見られながら作るのは緊張する。
手が震えそうになりながら、ビニール袋の中のミンチの形を整えながらフライパンに置いていくと小さめのハンバーグ5つほどができた。
醤油や味醂を入れてつくねにタレを絡めていくとタレのいい匂いが鼻腔をくすぐる。
「ほう、いい匂いだな」
匂いは嫌いじゃなさそうだ。
あとは口に合えばいい。
それだけだ。
早炊きで炊いたご飯がちょうど音楽を鳴らしたと同時に、つくねも出来上がった。
どんぶりにご飯を盛り、クリスさんのに4個乗せ、僕の分はいつも使っているお茶碗にご飯を盛り、その上につくねを一つ乗せた。
彼は騎士団の訓練が終わって帰宅途中だったと言っていたし、きっとお腹が空いているだろう。
タレをかけたどんぶりとお茶碗、そして、野菜スープを装いトレイに乗せ運ぼうとすると、
「私が持って行こう」
とトレイを軽々と持ち上げた。
「あ、でも怪我をしているのに……」
「これくらい片手で持てるから問題ない」
そう言ってスタスタと畳間にあるテーブルに並べてくれた。
慌てて後を追いかけると、
「あまりにも数に違いがなさすぎないか?」
と尋ねられた。
「あ、でもお腹が空いているでしょう? 訓練帰りだと言っていたし」
「それはトモキも同じだろう?」
「いいんです。夜はいつもそんなに食べないので。だから安心して召し上がってください。口に合うかはわかりませんが……」
「しかし……」
クリスさんはそう言いかけたけれど、
「ありがたくいただくとしよう」
そう言って座ってくれた。
「じゃあ、いただきます」
「それは……食事をするときの挨拶か?」
「えっ? はい、そうですね」
「そうか、ならば私も言おう。いただきます」
クリスさんは一生懸命僕に、そしてこの世界に慣れようとしてくれているんだ。
その気持ちがすごく嬉しかった。
それに……誰かと家で一緒にご飯を食べるなんてどれくらいぶりだろう……。
やっぱり一人より全然楽しい。
ってか、こっちの食事が合うのかすらもわからない。
そもそも、食材自体もあまりないから大したものは作れないんだけど……。
冷蔵庫の中身をザーッと見渡して、はぁーっとため息が出てしまう。
それでも何か作らないとね。
ご飯だけでも温かいものを食べてもらおうと新しくご飯を炊き、残っていた野菜で野菜スープを作る。
煮込んでいる間に冷凍していた鶏肉をレンジで解凍して、柔らかくなったのを包丁で叩いていると、カタンとお風呂場の方で音が聞こえた。
あっ、出てきたのかな?
ふと顔を上げると、
「――っ!」
父さんと同じ服を着ている人とは思えないほどかっこよく着こなしたクリスさんが立っていた。
「これで合っているか?」
随分と袖や裾が短いからクリスさんが不安に思うのも無理はない。
だって、父さんよりも随分と身長が高そうだもん。
それに、手も足も恐ろしく長いから合わないのは当然だ。
でもこれで我慢してもらうしかない。
「大丈夫です。下着も一緒に入れておきましたけど、わかりましたか?」
「――っ、ああ。大丈夫だ。問題ない。それより、何やらいい匂いがしているが」
「はい。今、夕食を作ってますので、もう少し待っていてくださいね」
「トモキは医術だけでなく、料理もできるのか。多才だな」
「そんなことないです。あの、それよりも口に合うかわからないんですけど……」
「そんな心配はいらない。騎士団では野営で食糧が尽きた場合には野草だって食べるのだからな」
そう言ってくれてほっとした。
「よかったです、じゃあそっちで休んでいてください。あっ、寒かったらそこの上着、半纏っていうんですけどあったかいので着てください」
あれならかなり大きいし、クリスさんにだって着られるだろう。
でも、半纏着てる騎士さんって……申し訳ないけど、笑ってしまう。
「寒くはないから大丈夫だ。それよりもトモキは今、何をしているんだ?」
包丁で鶏肉を叩いている音が気になったのか、クリスさんが台所に近づいてきた。
「あの、つくねを作ろうと思って叩いて刻んでたんですけど、包丁があまり良くないので切れ味が悪くって……すみません。音がうるさかったですよね」
「いや、それは気にしないが。これを叩けばいいのか?」
「えっ? あ、はい」
「ならば、手伝おう」
「えっ、手伝うって――わっ!!」
そういうが早いかクリスさんは僕の手から包丁を取ると、ものすごい勢いで叩き続けあっという間にまな板の上には鶏肉のミンチが出来上がっていた。
「すごっ!!」
「これでいいのか?」
「は、はい。ありがとうございます」
「大したことではない。他にも手伝うことはないか?」
怪我人なのに手伝ってもらって申し訳ない気がしたけれど、せっかくそう言ってくれているのだからと急いでミンチをビニール袋に移し、残っていた豆腐と調味料を上からかけた。
「あの、これを全部混ぜてもらえますか? あっ、袋が破れないように気をつけてくださいね」
一言添えたのはさっきのものすごい力を思い出したからだ。
あんな調子で袋を握られたら材料が混ざる前に破れてしまう。
「わかった。手加減するとしよう」
怪我をしたのが左だったのも幸いしたんだろう。
絶妙な力加減であっという間にビニール袋の中のミンチや豆腐は綺麗に混ぜ合わされていた。
「すごいですね! ありがとうございます!」
「もうこれでいいのか?」
「はい。あとは焼くだけなので大丈夫です」
そう言って休んでいてもらおうと思ったけれど、
「ここの生活を学んでおきたいからしばらくトモキの動きをみていてもいいか?」
と尋ねられたので、どうぞという他なかった。
人に料理をしているところを見られながら作るのは緊張する。
手が震えそうになりながら、ビニール袋の中のミンチの形を整えながらフライパンに置いていくと小さめのハンバーグ5つほどができた。
醤油や味醂を入れてつくねにタレを絡めていくとタレのいい匂いが鼻腔をくすぐる。
「ほう、いい匂いだな」
匂いは嫌いじゃなさそうだ。
あとは口に合えばいい。
それだけだ。
早炊きで炊いたご飯がちょうど音楽を鳴らしたと同時に、つくねも出来上がった。
どんぶりにご飯を盛り、クリスさんのに4個乗せ、僕の分はいつも使っているお茶碗にご飯を盛り、その上につくねを一つ乗せた。
彼は騎士団の訓練が終わって帰宅途中だったと言っていたし、きっとお腹が空いているだろう。
タレをかけたどんぶりとお茶碗、そして、野菜スープを装いトレイに乗せ運ぼうとすると、
「私が持って行こう」
とトレイを軽々と持ち上げた。
「あ、でも怪我をしているのに……」
「これくらい片手で持てるから問題ない」
そう言ってスタスタと畳間にあるテーブルに並べてくれた。
慌てて後を追いかけると、
「あまりにも数に違いがなさすぎないか?」
と尋ねられた。
「あ、でもお腹が空いているでしょう? 訓練帰りだと言っていたし」
「それはトモキも同じだろう?」
「いいんです。夜はいつもそんなに食べないので。だから安心して召し上がってください。口に合うかはわかりませんが……」
「しかし……」
クリスさんはそう言いかけたけれど、
「ありがたくいただくとしよう」
そう言って座ってくれた。
「じゃあ、いただきます」
「それは……食事をするときの挨拶か?」
「えっ? はい、そうですね」
「そうか、ならば私も言おう。いただきます」
クリスさんは一生懸命僕に、そしてこの世界に慣れようとしてくれているんだ。
その気持ちがすごく嬉しかった。
それに……誰かと家で一緒にご飯を食べるなんてどれくらいぶりだろう……。
やっぱり一人より全然楽しい。
284
あなたにおすすめの小説
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる