突然やってきたイケメン騎士団長と甘々同棲生活始まりました

波木真帆

文字の大きさ
14 / 81

愚か者たち

しおりを挟む
<sideクリス>

初めての衣服に身を包み、トモキの前に出た時からトモキの様子がおかしかった。
どうしても気になって理由を聞き出せば、真っ赤な顔をして私に見惚れたと言ってくれた。

しかも私を見ただけでドキドキするとは……。

これはトモキも私に好意を持ってくれていると思ってもいいのだろうか?

いや、純粋なトモキのことだ。
昨夜も風呂といい、食事の時といい、寝る時も性的な感じは一切感じられなかったではないか。

嫌われてはいないと思うが、そういう・・・・対象としては見られていない。
そうとしか考えられないな。

だが、私もまだこの世界には不慣れな身。
恋愛や交わりのことを考えるよりも、先にやらなければいけないことがある。

まずはこの生活からの脱却だ。
トモキはとにかく働きすぎだ。

あれだけ小さな身体にも関わらず、朝から晩まで働いていると言っていた。
そこに私の世話まで入り、食い扶持が増えればさらにトモキの負担が増える。

あれで少しは足しになれば、トモキの生活にもゆとりができるはずだ。

トモキが買い物に行こうと誘ってくれたのをきっかけに、私は上着についていた勲章メダルを見せ、これを金に換えられるところに連れて行って欲しいと頼んだ。

しかし、トモキはこれが国王からいただいた勲章メダルだと知ると、自分が働くからそれを売らないでいいといい出した。

やはりか……。
そんな気がした。

トモキならそう言い出すだろうと思ったのだ。

あれほど自分の利益にならないことを率先してしてくれるトモキが、私のもの……特に国王からいただいたものを売るのを承知するとは思わなかった。

だが、今の私には金を作り出すのはこれしかない。
トモキのためにしてあげられる唯一のことなのだ。

だから私はトモキが負担に感じないように言い聞かせた。
こんなメダルなど戻れば山の如くあるのだと。
帰れなければ必要ないものなのだから、今はトモキとの生活を守りたい。

真剣にそう告げるとようやく納得してくれた。

上着には全部で9つの勲章メダルをつけていたが、とりあえずは一つだけ持っていくとしよう。
売る場所がわかれば、あとはトモキに知られないようにこっそり売ればいい。

トモキの渡してくれた小さな袋にそのメダルを入れ、私はトモキと共に家を出た。
先ほどの服に父上のものだという暖かな上着を借り、まず出かけたのは宝飾品を買取してくれるという店。

とりあえず金を作らなければ買い物もままならないからな。

店に入ると、店主は私とトモキの姿に値踏みをしているような視線を向け、鼻で笑いながら

「私どもは宝飾品の買取店でございます。失礼ですが、お店をお間違えではございませんか?」

と言い放った。

その言葉にトモキはカァっと顔を赤らめ、

「クリスさん、他のところに行きましょう」

と私の腕を引っ張った。

なるほど。
見た目で判断しているということか。

どこにでもこういう愚かな輩はいるものなのだな。

まぁ、いい。
私もこのような店で大切な品を売る気にはならない。
だが、このままスゴスゴと引き下がるような私ではないぞ。

「そうだな。このようなものにこの価値は一生わからぬだろうからな」

そう言ってあの袋からキラキラと輝くメダルを取り出すと、それを目にした瞬間、奴らは急に目の色を変えた。

「お、お待ちください。失礼いたしました。どうかその美しいお品を拝見させていただけませんか?」

なるほど。
やはりこの世界でもこれはかなりの価値がありそうだ。

いきなり手のひらを返しても触らせるわけがないだろうが。

「其方たちは我々の見た目で勝手に貧乏人だと決めつけ、この店に相応しくないと判断したのであろう? それが其方たちの目利きというものだ。そのような濁った目をしている者に、これを売る気はない。失礼する」

トモキをそっと抱き寄せ、店の外に出ると

「クリスさん、嫌な思いをさせてしまってごめんなさい……。僕がちゃんと調べてから連れて行ったらよかったのに……」

と謝られてしまった。

「ふふっ。トモキが責任を感じることはない。ああいう輩との交渉には慣れているから、何も気にしていない。それにあの店でかなり勉強になったのだぞ」

「えっ? どういう意味ですか?」

「あの店に並んでいた宝石、あれは買取したものを売っているのだろう?」

「あ、はい。そう、ですね……」

「あれについていた金額を覚えてきた。あれで私の持っているメダルのおおよその買取金額が想像ついたから、こちらが何も知らないと思って足元を見られずに済む」

「え――っ、すごい、ですっ」

「ふふっ。記憶力には自信があるのでな」

その言葉に、トモキは尊敬の眼差しで私を見つめてくれた。
今まで自分に飛び抜けた記憶力があることを自慢などしたことは一度もないが、トモキに尊敬してもらいたくてついついそんな子どもじみたことをして気を引こうとしてしまう。

やはり私はトモキにかなり惹かれているようだ。



「あ、あそこが買取店です」

トモキが指差した方向にある店は先ほどの店と違って古そうではあったが、いわゆる老舗という言葉が似合いそうなそんな店に見えた。

「トモキ、今度は私一人で行ってくる。しばらくここで待っていてくれ」

そういうとトモキは小さく頷いた。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...