突然やってきたイケメン騎士団長と甘々同棲生活始まりました

波木真帆

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再び、ひとりに……

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途中で視点が変わります。

  *   *   *

<side智己>

見覚えのある途轍もない光。
まさか……クリスさんと出会った時のあの光?

このまま、クリスさんを連れていっちゃったりしないよね?

「やぁっ! クリスさんっ!! 怖いっ!!」

突然現れたこの光の正体より、これから自分がどうなってしまうかより、何よりも気になるのはクリスさんのことだけ。

クリスさんと離れたくないっ!
僕からクリスさんを奪わないでっ!!

クリスさんを失うのが怖くて、眩しい光で何も見えない中、必死にクリスさんに抱きついた。
どこにもいかないで!
いっちゃ嫌だ!

僕をもうひとりにしないで!!

そう必死に心の中で願いながら、クリスさんに抱きついていたのに……


突然、フッとクリスさんの感触がなくなってしまった。

え――っ、う、そ……で、しょ……


ついさっきまで感じたクリスさんの鼓動も温もりも僕の手には残っているのに……
どうしてクリスさんを感じられないの?

茫然自失の中、フッと光がおさまった気配がした。
でも、本当にクリスさんを失ったと知るのが怖くて目を開けることができない。

目を開けたらクリスさんがいるかもしれない。
でももし、いなかったら?

もう僕は立ち直れないかもしれない。

確認するのが怖い。

でも……このままではいられない。


僕は恐る恐る目を開いた。

あぁ…………い、ない………………。


広々としたお風呂には、僕だけがポツンと佇んでいた。

「く、りす……さん……が、かえ、っちゃっ、た……」

今の状況が何も信じられない。
悲しみが強すぎて涙も出ない。

クリスさん……クリスさん……。

どれだけ思ってもクリスさんの気配はどこにも感じられない。


「うっ……くっ、う、ぐすっ……く、りす……さん……うっ……っ」

本当にいなくなってしまったんだ……そう実感した途端、涙が溢れて止まらない。

一緒にいてくれるって、ずっとそばにいてくれるって、そう言ってくれたのに……。

僕はその場にしゃがみ込んで、いつまでもいつまでも泣いていた。
もしかしたら、ここにまた戻ってきてくれるかもしれない……そんな微かな可能性を捨てることができず、僕はしばらくの間、クリスさんと最後の時間を過ごしたお風呂場から出ることができなかった。

そのまま何時間そこにいたんだろう。
だんだんと身体の震えが止まらなくなってものすごく寒いのに、頭が燃えるように熱い。

このままではお風呂場で倒れるかもしれない。
でも……クリスさんのいない今、もうどうでもいい。

そんな投げやりな気持ちも浮かびつつ、鉛のように重い身体を引きずるようにフラフラとお風呂場から出て脱衣所に倒れ込んだ。
手の先にあったバスタオルを引っ張ってなんとか身体をふき、そこにある台にもたれかかりながら必死に起き上がると、

「――っ!!!」

クリスさんが着るはずだった着替えが僕の目に飛び込んできた。

「うっ……ぐすっ……っ」

もうクリスさんはいないのに……。

僕は主人のいなくなったその服を身に纏い、フラフラと部屋を出た。

まだクリスさんの痕跡があるのに、誰もいない。

ここでクリスさんとの新しい生活が始まるはずだったのに。
僕一人じゃ、広すぎる……。

もう、ひとりは嫌だよ……。

もう、いなくなってしまいたい……。

何もかももう終わりにしたい……。

身体もいうことを聞かないし、手足も動かない。

僕はそのままリビングの床に倒れ込んだまま、意識を失った。


<side龍臣>

両親を一度に亡くし、莫大な賠償金の支払いを命じられ、そのために自分の夢も何もかも捨てて、ひたすら賠償金の支払いのためにバイトをし続けるような生活の中でも必死に笑顔を忘れなかった智己に、ようやく現れた運命の相手。

あの子には女性よりもずっと、頼り甲斐のある男性が似合うと思っていただけに、クリスさんを連れてきた時は驚き以上に納得したものだ。

それでもクリスさんが異世界から来た騎士団長だということは、驚かずにはいられなかったが。

純粋な智己を騙してヒモにでもなろうとしているのではないか……そんなことを思う隙もないほど、クリスさんが智己を大切に思ってくれているのは一目瞭然だった。

彼と幸せになってくれたらいい。
そんな思いで私は自分の別宅に二人を住まわせた。

冷蔵庫に食材はたくさん用意しておいたが、それを作る余裕すらもないほど二人で甘い時間を過ごしているかもしれないな……なんて、二人の幸せを願っていると、突然マンションの警備会社から連絡が入った。

ー野上さま。お部屋に不審な動きがございましたので、ご連絡いたしました。

ー不審な動き? 何があった?

ーリビングに熱反応があり、数時間以上動きがありません。

ーそれはどういう意味だ?

ーひとつの可能性ではございますが、中で倒れていらっしゃるかもしれないということでございます。

ーなに? 倒れている?

ー数時間、微動だにしておりませんのでその可能性がございます。

まさか、智己とクリスさんに何かあったのか?
クリスさんを追って、刺客でも現れたとか……?

そんなことない、とは言い切れないのはクリスさん自身がこの世界に突然やってきたからだ。

ーわかった。すぐに確認に行く!

急いで自宅を出て、二人が住んでいるマンションへ車を走らせた。

一応チャイムを鳴らしたが、なんの反応もない。
もう嫌な予感しかしない。

悪いと思ったが、鍵を開けて部屋の中に入り、

「智己ーっ! クリスさんっ!! 大丈夫か?」

声をかけながら、リビングの扉を開けると電気は付いてはいるものの、何の音もしない無機質な空間に誰かの気配だけがする。

「智己ーっ、どこにいるんだ?」

いよいよ不安になってきて、奥へと進むと

「――っ!!!! 智己っ!!!」

リビングと廊下との間で智己が倒れているのが目に入った。

慌てて駆け寄り、抱き上げると智己はぐったりとしたままだらんと腕を垂らし微動だにしない。
智己の顔には血の気がなく、呼吸も浅い。

このままでは死んでしまう。

私は急いで救急車を呼び、智己を病院に搬送した。

処置が行われている間にもう一度マンションに戻り、部屋をくまなく探したがクリスさんの姿はどこにもなかった。


<side智己>


「う、うーん」

ここは、どこ……?

見覚えのない真っ白な天井、それに……これは薬の匂い?

「ぼ、く……」

自分の身体とは思えないほど身体が重い。
必死に顔を動かした瞬間、

「智己っ!! 目が覚めたのかっ???」

と大きな声が飛び込んできた。

「えっ……ま、すたー? ど……う、して…?」

「どうしてじゃないだろう! 本当に心配したんだぞ! 本当に、もう……死んでしまうところだったんだ」

目にいっぱい涙を溜めながら、僕を抱きしめる。
ああ、マスターが助けてくれたんだ……。
申し訳ないと思いつつも、そのまま死なせてくれていてもよかったのに……なんて、馬鹿なことも考えてしまう。

それくらい、クリスさんのいないこの世界は、もう僕の中から生きる気力を奪ってしまっていた。
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