突然やってきたイケメン騎士団長と甘々同棲生活始まりました

波木真帆

文字の大きさ
39 / 81

私だけのために

しおりを挟む
<sideマイルズ>

シェフのルディがトモキさまのために作り上げたのはたくさんの野菜で作られたポタージュスープ。
柔らかなパンを浸してお召し上がりになれば、身体にも優しく栄養もバッチリだ。

だが、ここの食事がトモキさまに合うかどうかが問題だ。

私は少し悩んで、トモキ様と一緒に来られたあのお方の存在を思い出した。
あのお方に味見をしていただいたらどうだろうか?
きっとあのお方なら、この食事をトモキさまが召し上がることができるかどうかをご存知のはずだ。

あれから少し時間が経っていることだし、もうそろそろ目をお覚ましになった頃だろう。
あのお方の様子も確認しておきたいしと理由をつけて、私はあのお方のいらっしゃる客間へと向かった。

扉を叩くと、何の反応もない。
あのお方がまだ眠っていらしてもジョバンニさまがいらっしゃるはずだが……。

もしかしたらどこかに行っていらっしゃるのか?

珍しい。
ジョバンニさまからどこかへ行かれるなら必ず私にお声掛けくださるのに。

そう思いながら、もう一度だけ扉を叩くとようやく扉が開いたと思ったら少し慌てた様子のジョバンニさまの姿が見えた。

「マイルズ、どうした?」

「あのお方がそろそろお目覚めになったのではないかと思いまして……あの、ジョバンニさま、どうかなさいましたか?」

「ど、どうかとは、なんだ?」

「いえ。少しお顔が赤いように見受けられましたのでお熱でもお有りかと……」

「――っ、い。いや。大丈夫だ。心配には及ばぬ」

ジョバンニさまがこんなに焦っておられるところを見たことがない。
もしかしたら私はお二人の邪魔をしてしまったのかもしれないな。

「出過ぎたことを申し上げまして、失礼いたしました」

「気にすることはない。用事はそれだけか?」

これ以上邪魔をしてはいけないと、何も告げずに部屋を後にしようと思ったが、そう尋ねられてはお答えしないわけにはいかない。

「ああ、いえ。トモキさまのお食事をお作りしたのですが、あのお方にトモキさまのお口に合うかどうかお伺いしようと思いまして参じました。ですがお邪魔になっては――」
「私でよければお手伝いさせてください」

突然、私の言葉に被さるようにジョバンニさまの後方から頼もしい声が聞こえた。

「タツオミさん、お身体に障ります」

「いいえ。私は健康にだけは自信がありますから。それにトモキの好みの味なら私の方がよくわかっていますし」

「タツオミさん……」

「あ、いいえ。違いますよ。私はあちらでは飲食店を経営していまして、トモキに賄いをよく食べさせていたもので……ですから個人的に作っていたわけではないのです。ジョバンニさん、信じてください」

このお方はタツオミさまと仰るのか。
タツオミさまが何やら誤解でも解こうとするように必死にジョバンニさまに説明をなさると、ジョバンニさまは不安げなお顔を一気に綻ばせた。

「ふふっ。大丈夫です、わかっていますから。ですが、今度は私のために作ってくださいますか?」

「ええ、もちろんですとも。ぜひジョバンニさんにも召し上がっていただきたいです」

「ふふっ。嬉しいです」

なんだ、この甘々なご様子は……。
クリスティアーノさまとトモキさま以上に仲睦まじい様子だ。
本当に私はお二人の邪魔をしてしまったのかもしれない。

<sideジョバンニ>

「――っ!!」

熱い吐息を感じながら、甘い蕩けるような口付けを交わしていると、突然部屋の扉が叩かれ身体がビクッと震えた。
別に悪いことをしているわけでもないのに、なぜか焦ってしまうのは何故だろう……。

「ジョバンニさん……」

「タツオミさん、誰が来たのか確認して参ります」

思いが通じ合ったばかりだというのに離れ難いけれど、ここは自宅ではない。
流石に無視をするわけにもいかず、慌てて扉を開けるとそこにいたのはマイルズだった。

努めて冷静を装って受け答えをしたつもりだったが、早々に顔が赤いのに気づかれてしまい、慌てて誤魔化しだが、勘のいいマイルズのことだ。
私が何をしていたか察しているかもしれない。

タツオミさんと会う前にマイルズを引き上げさせようと思っていたけれど、トモキさまのお食事の好みを知りたいという話が聞こえたのかタツオミさんの方からお手伝いしたいと仰った。

まだお身体も本調子でないはずなのに、トモキさまのことなら多少無理でもなさるのかと、少し嫉妬してしまいそうになるが、タツオミさんはすぐに私のこの狭量な心に気づき、誤解しないようにときちんとお話をしてくださったのだ。

その必死な様子につい笑みが溢れてしまう。

クリスティアーノ団長だけでなく、皆で守らねばすぐに儚くなってしまいそうなほど弱っていらっしゃるトモキさまのお食事を心配するのは当然なのだ。
そもそもこちらの食事も、味付けもお口に合うのかもわからない。
それをこの家のシェフに教えられるのはトモキさまのお食事を作っていらしたタツオミさんしかできないことなのだから。

私もタツオミさんのように寛大な心を持たなければ……。
それでもやはりトモキさまとタツオミさんとの関係に少し嫉妬してしまう。
私もまだまだ人間ができていないようだ。

マイルズに案内され、タツオミさんと一緒に屋敷の厨房へ向かう。
通いなれた屋敷ではあるが、厨房はあまり入った記憶がない。
だが、さすが公爵家の厨房だけあって、広々として綺麗に整頓されている。

「ここが、厨房ですか。素晴らしい道具が揃っていますね。それに包丁も鍋も全て手入れが行き届いています。ここのシェフの方は料理の腕だけでなく、料理や、道具に対する尊敬が感じられますね。こんなに素晴らしい厨房は久々に拝見しました」

タツオミさんは飲食店を経営なさっていたとお話しされていた。
だからこそ、厨房の使い方でシェフの実力もわかるのだろう。

騎士団でも大切な剣を乱雑に扱うものはすぐに辞めていく。
実力があるからこそ、自分の剣もそして相手の剣も敬意を払って大切にするものだ。

「この厨房を任されております総料理長のルディと申します。お褒めいただき光栄にございます」

シェフのルディが嬉しそうにタツオミさんに頭を下げる。

「いえいえ、本当のことを申し上げただけですから。それよりもとてもいい匂いがしていますね。それがトモキの食事ですか?」

「はい。身体にやさしいものをとのことでしたので、ポタージュスープをお作りいたしました。ご試食をお願いいたします」

ルディは小さな味見用の皿に少しスープを乗せ、タツオミさんに差し出した。

「ああ……これは美味しいですね」

「本当ですか?」

安堵のため息を漏らすルディは実に嬉しそうに見えた。

「あの、ミルクはありますか?」

「はい。こちらにございます」

タツオミさんから渡されたミルクを失礼しますと断りを入れてスープ鍋に注いだ。
レードルで混ぜてから、

「元気な方がお召し上がりになるなら、こちらのスープで十分なのですが、トモキのようにかなり弱っている場合にはミルクでもう少し緩めたほうが飲みやすいかと。それに少し味もマイルドになるでしょう? いかがですか?」

と味見用小皿に入れてルディに差し出すと、ルディは一口飲んですぐにカッと目を見開いた。

「確かにこちらの方が飲みやすいです。なるほど、とても勉強になりました。ありがとうございます」

「いえいえ、味付けは全く変えていませんので。味付けに関してはこのままで大丈夫だと思います」

マイルズはタツオミさんから合格がでたスープをすぐに団長の部屋に運んで行った。
その間、ルディはタツオミさんと楽しそうに料理談義に花を咲かせていた。
ルディは料理についてこんなにも話の合う人は今までにいなかったと喜んでいる。

それにしてもタツオミさんはこの国のシェフの中でも5本の指に入るほどの実力の持ち主だと言われているルディと同じ味覚を持っていらっしゃるのか……。
本当にいつか、私だけのために料理を作っていただきたいものだ。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...