突然やってきたイケメン騎士団長と甘々同棲生活始まりました

波木真帆

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親友

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<side龍臣>

ジョバンニとの甘い時間を過ごしていると、突然クリスさんからの呼び出しがかかった。
その瞬間、ジョバンニは私の恋人から、クリスさんの部下に変わってしまう。

それは途轍もなく辛いことであるが、クリスさんは私とジョバンニをめぐり合わせてくれたという恩がある。
クリスさんが困っているのならそれを助けるのが人として当然のことだ。

パッと仕事モードに切り替わってしまったジョバンニが伝えにやってきたニコラス医師に呼び出しの理由を尋ねると、ニコラス医師はそれはそれは言いにくそうにしながらも教えてくれた。

それは智己が『交わり』を知らないということについてだった。

『交わり』という言葉を知らないのか、それとも『交わり』自体を知らないのか……。
それによって説明が変わるのだろうが、おそらく……いや、確実に『交わり』自体を知らないだろう。

『交わり』=セックスだと伝えても、それが自分とクリスさんの間にあるものとして認識するかどうか。

おそらく交わりについては一切知らないだろうとジョバンニに告げると、信じられないと言った表情で私を見つめていた。

この世界では閨教育なるものが存在するという。
ならば、成人を迎えたもので知らないものは皆無だろう。

だが、あちらの世界でも成人を迎えて一切知識の無い者はほぼ存在しないだろう。
そう、智己が特殊なのだ。

このままではクリスさんが智己と交わることはかなり難しい。
だからこそ、私たちに応援要請をしたのだろう。

ここはひと肌脱ぐしかない。
クリスさんと智己の元に出向くと、ここ数日の間にすっかり顔色が良くなった智己の顔を見ることができた。
やはりクリスさんのそばにいることが智己の健康にも直結するのだ。

困惑した表情のクリスさんのために、智己に交わりがセックスのことだと告げると途端に顔を赤くした。
どうやらセックスという言葉の意味と、男のモノを女の中に入れるという大まかな知識だけはあるようだ。

だが、そこに行き着くまでの過程も、どうやって最後まで辿り着くかも、何も知らない様子。
そもそも、智己の中ではそれは男女の仲だけの話であり、自分とクリスさんに関係があることすらもわかっていないということがわかり、どこから話したらいいものかと悩むしかなかった。

ところが、そこで手を挙げてくれたのはジョバンニだった。

智己と二人っきりで話がしたいと言い出したのはきっと、ジョバンニが私との体験を基に智己に説明するつもりなのだろう。

クリスさんはジョバンニと智己を二人っきりにすることに心配そうだったが、智己が少しなら大丈夫だと答えるとそれを信じることにしたのか、二人を残して寝室を出た。

寝室の扉が閉まると、中の声は一切聞こえない。
防音設備が整っているのだろう。

あれほどのオーラを纏っていたクリスさんの姿が嘘のように不安げに寝室を見つめている。

「そんなに心配せずとも、ジョバンニなら大丈夫ですよ。それとも、ジョバンニが智己に何かするとでもお思いですか?」

「あ、いや。そうではない。そこを心配しているわけでは無いのだ。誤解をさせてしまったなら申し訳ない」

「ならば、何をそんなに心配していらっしゃるのですか?」

「トモキはここに来て以来、私と少しでも離れることを怖がるのだ。きっと私と引き裂かれたあの日のことを思い出すのだろうな。寝なくても食事しなくてもいいから、一緒にいたいと泣きながら訴えるトモキを見て、決して離れてはいけないと思ったのだ。だから、この数日ほんの一瞬も離れずに過ごしてきた。トモキがもう二度と恐怖を味わわないように……。そして、一生離れることがないと安心できるように……。だから、この間に怯えてはいないかと心配になっただけだ。決してジョバンニを疑っているわけではない」

そんなことがあったとは……。

考えてみれば、あのときの智己はもう生きる力さえ失っていた。
それでもなんとか生きていられたのは、クリスさんに会えるかもしれないという僅かばかりの希望だけだった。

どれだけ辛くてももしかしたらという期待だけが智己を生きさせていたんだ。

そこまでして思い続けていたクリスさんとようやく再会できたのだ。
少しの時間でも離れるのが怖くなる気持ちはわかる。

私は智己がそんな恐怖に怯えている間、何も知らずにジョバンニと愛し合っていたのだな……。

それなのに、己の嫉妬のなんと醜いことだろう。

「申し訳ありません。くだらない嫉妬で至らぬことを申しました」

「いや、いいのだ。交わりを済ませたばかりの二人に余計な面倒をかけた私が悪いのだから」

「ご存じだったのですか?」

「ああ。ジョバンニの表情を見ればすぐにわかる。あいつはなんでもそつなくこなす優秀な者だったから、騎士団に推薦し私の右腕として働いてもらっていたが、如何せん他人に興味を持つことは一切なかったんだ。その点で言えば、私も同じだがお互いに一生ひとりだろうとは思っていただろうな。だが、タツオミと出会ってからのジョバンニは其方の前だけは感情豊かになった。あんなにも笑うのかと驚いたくらいだ。ふふっ。あいつは私の前では必死に隠そうとしているがな」

私には最初から笑顔を見せてくれていたな。
それほど私がジョバンニにとって特別な存在だったのか……。
まずい、顔がニヤける。

「タツオミ、私がいうことではないが……ジョバンニを頼む。トモキは私に任せてくれ」

「ふふっ。はい。智己をずっと見守ってきたのはクリスさんにお渡しするためだったと思っています。智己のこと、よろしくお願いします。ジョバンニはどうぞ私にお任せを」

「ああ、ありがとう」

公爵家嫡男で騎士団長でもあるクリスさんと心から親友になれた瞬間だった。
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