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番外編
甘い口づけ
「哉藍と二人きりでお出かけできるなんて夢みたいです」
「ふふっ。私も嬉しいよ。だが、瑞季。決して私から離れてはいけないよ」
「はい。哉藍から決して離れません」
そう言ってギュッと私の腕に絡みつき、手を握る。
隙間のないほどにピッタリと寄り添うと、瑞季の柔らかな肌の温もりが伝わってくる。
ああ、本当に可愛らしい。
こんなに可愛らしい瑞季を見せるのも惜しい気もするが、私のものだと見せつけるのも悪くはない。
なんせ瑞季は私のことしか目に入っていないのだから。
今日私たちのすぐそばに護衛の姿はない。
瑞季はそれを喜んでいるが、実はこっそりと兵士たちに守らせている。
瑞季に決して見つからないように、それでも万が一の場合にはすぐに守ってくれるように滄波に大勢の兵士たちを配備させているのだ。
それも全て瑞季を守るため。
瑞季さえ、気づかずに楽しい時間を過ごしてくれればそれでいい。
「哉藍、城下にはお店がいっぱいですね」
「ああ。そうだな。行きたい場所があれば入ろう」
「いいんですか?」
「ああ、もちろんだとも」
瑞季はΩだとわかってから、実家の離れに軟禁状態で住まわされていて、ほとんど外に出ることがなかったと話していた。
だから城下を散策したこともないのだろう。
店を通るたびに嬉しそうな表情をする瑞季を見ると、少し胸が痛むが、瑞季とこうして楽しい時間を過ごせると思えばよかったのだろう。
これから楽しいことは全て私が教えてやろう。
「あっ! あのお店ですよ! 甜品が美味しいと話題のお店は」
侍女の小鈴に教えてもらったのだと嬉しそうに話していた。
あの子は瑞季の良い話し相手になっているようだな。
前もって小鈴から店の名前を聞き出していた滄波が、店に私たちの席をとっている。
個室はないらしいが、他の客たちが見えにくい場所を用意してくれるという話になっているから大丈夫だろう。
店の者には、すでに予約済みだということを決して瑞季に知られないようにと告げているから、そこはしっかりと対応して貰えばいい。。
「あそこか、楽しみだな」
扉を開けて中に入ると、すぐに店主の男が駆け寄ってくる。
「い、いらっしゃいませ」
「二人だが、席はあるか?」
「は、はい。こちらにどうぞ」
「瑞季、足元に気をつけるのだぞ」
「はい」
席に着くまで数組の客がいたが、私よりも瑞季の方に視線を向けている。
ふふっ。皇帝である私よりも人目を惹くとは……瑞季の美しさには勝てないな。
瑞季を私の隣に座らせれば、この店のどこからも瑞季の姿は見えない。
誰にも瑞季が食べている可愛い姿を見せずに済むのはいい。
「瑞季、何が食べたい?」
「わぁー、たくさんあって悩みますね。どれにしようかな」
「ふふっ。悩んだら全て頼めばいい。瑞季が食べられないものは私が食べよう」
「哉藍、いいんですか?」
「ああ、問題ない」
私の言葉に瑞季は嬉しそうに微笑むと、悩みながらも三つに絞った。
芒果布丁と月餅、蛋撻、そして瑞季の好きな茉莉花茶、私の普洱茶を頼むと、すぐに店主が席に運んできた。
「わぁ、美味しそう!!」
甜品たちを前に、目を輝かせる瑞季に癒される。
瑞季は必ず、甘いものを口にする前に お茶を口に入れる。
それを知っていたから、さっと茉莉花茶を取り、ふぅふぅと冷ましてやってから手渡した。
「火傷をしないようにゆっくりと飲むのだぞ」
「私は子どもではないですよ。ふふっ、でも哉藍優しいですね」
そう言って笑って美味しそうにお茶を飲んだ。
「ああ、このお茶。とっても美味しいです」
「そうか、ならこの茶葉を買って帰るとしよう。そうしたら家でも楽しめるだろう?」
「ふふっ。ありがとうございます」
「さぁ、どれから食べる?」
「うーん、じゃあ芒果布丁にします」
「わかった」
綺麗な色をしている芒果布丁を匙で掬い、瑞季の口に運ぶ。
「んー、美味しいです」
「そうか、よかった」
「哉藍も食べてください。あーん」
可愛らしく差し出され、条件反射のように口を開ける。
甘く香りの良い芒果が口いっぱいに広がって美味しい。
きっと瑞季が食べさせてくれるから余計に美味しいのだろう。
それからも一口ごとにお互い食べさせあい、甜品はあっという間に空になった。
「瑞季、もっと頼もうか?」
「ふふっ。嬉しいですが、もう入らなさそうなので」
と可愛いお腹をさすりながらそう言ってくる。
ああ、もう本当に可愛らしい。
「あの、滄波さんや、小鈴たちにお土産を買って行ってもいいですか?」
「ああ、いいよ。好きなだけ頼みなさい」
「わぁ、哉藍。ありがとうございます」
自分が楽しみに行っても使用人たちのことまで考えている。
そんな瑞季の優しさにさらに愛しさが募る。
ああ、本当に瑞季が私の運命でよかった。
みんなへのお土産の甜品を選び、両手で持って店を出ると
「いっぱい買いすぎちゃいましたね。重たくないですか?」
と瑞季が心配してくれるが、こんな袋の一つや二つ、私には大した問題ではない。
「大丈夫だ。瑞季は私の腕に捕まっているのだぞ」
「でも……」
「どうした?」
「私が一つ持ったら、手が繋げますよ」
「――っ!!! そうか! じゃあ、そうしよう」
私は二つあった荷物の中身を一つの袋にさっと詰め替えて、片方の袋には小さな蛋撻を一つだけ入れ、瑞季に手渡した。
「さぁ、瑞季はこれをもってくれ」
「えっ……でも、流石に重くないですか?」
「大丈夫だ。体力が違うのだからな。瑞季にこれだけもってもらえたら助かる」
「ふふっ。はい。じゃあお手伝いしますね」
そう言って、その袋を片手に持ち、もう片方は私の手を繋いでくれた。
一緒に荷物を持って歩く。
皇帝である私は生まれて一度も体験したことがない。
それを瑞季とともにできるとはなんて幸せなことだろう。
「瑞季、また城下に二人で出かけよう」
「――っ、はいっ!! 哉藍大好きです!!」
満面の笑みで見上げてくる瑞季に興奮した私は、天宮に戻ってすぐに滄波に荷物を渡し、瑞季との甘い時間を過ごした。
瑞季との口づけはほのかに芒果の甘い味がした。
「ふふっ。私も嬉しいよ。だが、瑞季。決して私から離れてはいけないよ」
「はい。哉藍から決して離れません」
そう言ってギュッと私の腕に絡みつき、手を握る。
隙間のないほどにピッタリと寄り添うと、瑞季の柔らかな肌の温もりが伝わってくる。
ああ、本当に可愛らしい。
こんなに可愛らしい瑞季を見せるのも惜しい気もするが、私のものだと見せつけるのも悪くはない。
なんせ瑞季は私のことしか目に入っていないのだから。
今日私たちのすぐそばに護衛の姿はない。
瑞季はそれを喜んでいるが、実はこっそりと兵士たちに守らせている。
瑞季に決して見つからないように、それでも万が一の場合にはすぐに守ってくれるように滄波に大勢の兵士たちを配備させているのだ。
それも全て瑞季を守るため。
瑞季さえ、気づかずに楽しい時間を過ごしてくれればそれでいい。
「哉藍、城下にはお店がいっぱいですね」
「ああ。そうだな。行きたい場所があれば入ろう」
「いいんですか?」
「ああ、もちろんだとも」
瑞季はΩだとわかってから、実家の離れに軟禁状態で住まわされていて、ほとんど外に出ることがなかったと話していた。
だから城下を散策したこともないのだろう。
店を通るたびに嬉しそうな表情をする瑞季を見ると、少し胸が痛むが、瑞季とこうして楽しい時間を過ごせると思えばよかったのだろう。
これから楽しいことは全て私が教えてやろう。
「あっ! あのお店ですよ! 甜品が美味しいと話題のお店は」
侍女の小鈴に教えてもらったのだと嬉しそうに話していた。
あの子は瑞季の良い話し相手になっているようだな。
前もって小鈴から店の名前を聞き出していた滄波が、店に私たちの席をとっている。
個室はないらしいが、他の客たちが見えにくい場所を用意してくれるという話になっているから大丈夫だろう。
店の者には、すでに予約済みだということを決して瑞季に知られないようにと告げているから、そこはしっかりと対応して貰えばいい。。
「あそこか、楽しみだな」
扉を開けて中に入ると、すぐに店主の男が駆け寄ってくる。
「い、いらっしゃいませ」
「二人だが、席はあるか?」
「は、はい。こちらにどうぞ」
「瑞季、足元に気をつけるのだぞ」
「はい」
席に着くまで数組の客がいたが、私よりも瑞季の方に視線を向けている。
ふふっ。皇帝である私よりも人目を惹くとは……瑞季の美しさには勝てないな。
瑞季を私の隣に座らせれば、この店のどこからも瑞季の姿は見えない。
誰にも瑞季が食べている可愛い姿を見せずに済むのはいい。
「瑞季、何が食べたい?」
「わぁー、たくさんあって悩みますね。どれにしようかな」
「ふふっ。悩んだら全て頼めばいい。瑞季が食べられないものは私が食べよう」
「哉藍、いいんですか?」
「ああ、問題ない」
私の言葉に瑞季は嬉しそうに微笑むと、悩みながらも三つに絞った。
芒果布丁と月餅、蛋撻、そして瑞季の好きな茉莉花茶、私の普洱茶を頼むと、すぐに店主が席に運んできた。
「わぁ、美味しそう!!」
甜品たちを前に、目を輝かせる瑞季に癒される。
瑞季は必ず、甘いものを口にする前に お茶を口に入れる。
それを知っていたから、さっと茉莉花茶を取り、ふぅふぅと冷ましてやってから手渡した。
「火傷をしないようにゆっくりと飲むのだぞ」
「私は子どもではないですよ。ふふっ、でも哉藍優しいですね」
そう言って笑って美味しそうにお茶を飲んだ。
「ああ、このお茶。とっても美味しいです」
「そうか、ならこの茶葉を買って帰るとしよう。そうしたら家でも楽しめるだろう?」
「ふふっ。ありがとうございます」
「さぁ、どれから食べる?」
「うーん、じゃあ芒果布丁にします」
「わかった」
綺麗な色をしている芒果布丁を匙で掬い、瑞季の口に運ぶ。
「んー、美味しいです」
「そうか、よかった」
「哉藍も食べてください。あーん」
可愛らしく差し出され、条件反射のように口を開ける。
甘く香りの良い芒果が口いっぱいに広がって美味しい。
きっと瑞季が食べさせてくれるから余計に美味しいのだろう。
それからも一口ごとにお互い食べさせあい、甜品はあっという間に空になった。
「瑞季、もっと頼もうか?」
「ふふっ。嬉しいですが、もう入らなさそうなので」
と可愛いお腹をさすりながらそう言ってくる。
ああ、もう本当に可愛らしい。
「あの、滄波さんや、小鈴たちにお土産を買って行ってもいいですか?」
「ああ、いいよ。好きなだけ頼みなさい」
「わぁ、哉藍。ありがとうございます」
自分が楽しみに行っても使用人たちのことまで考えている。
そんな瑞季の優しさにさらに愛しさが募る。
ああ、本当に瑞季が私の運命でよかった。
みんなへのお土産の甜品を選び、両手で持って店を出ると
「いっぱい買いすぎちゃいましたね。重たくないですか?」
と瑞季が心配してくれるが、こんな袋の一つや二つ、私には大した問題ではない。
「大丈夫だ。瑞季は私の腕に捕まっているのだぞ」
「でも……」
「どうした?」
「私が一つ持ったら、手が繋げますよ」
「――っ!!! そうか! じゃあ、そうしよう」
私は二つあった荷物の中身を一つの袋にさっと詰め替えて、片方の袋には小さな蛋撻を一つだけ入れ、瑞季に手渡した。
「さぁ、瑞季はこれをもってくれ」
「えっ……でも、流石に重くないですか?」
「大丈夫だ。体力が違うのだからな。瑞季にこれだけもってもらえたら助かる」
「ふふっ。はい。じゃあお手伝いしますね」
そう言って、その袋を片手に持ち、もう片方は私の手を繋いでくれた。
一緒に荷物を持って歩く。
皇帝である私は生まれて一度も体験したことがない。
それを瑞季とともにできるとはなんて幸せなことだろう。
「瑞季、また城下に二人で出かけよう」
「――っ、はいっ!! 哉藍大好きです!!」
満面の笑みで見上げてくる瑞季に興奮した私は、天宮に戻ってすぐに滄波に荷物を渡し、瑞季との甘い時間を過ごした。
瑞季との口づけはほのかに芒果の甘い味がした。
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