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ユヅルの涙
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ークリスマスプレゼントはサンタクロースが持ってくるものだって言ったそうなんだ。
ーサンタクロースって……Père ・Noëlのことか?
ーああ、そうだ。しかも、育った施設では『お前は悪い子だからプレゼントは貰えない』と言われ続けていたようでな。
ーなんと……。だから、クリスマスを経験していないのか?
ーそうなんだ。彼・理央くんは一度でいいからサンタクロースに会ってみたかったって話をしたそうだよ。
いまだにペール・ノエルの存在を信じているだけでもすごいことだが、なんでも欲しいものを買ってあげると言われて贅沢なものを強請るわけでもなく、プレゼントよりもペール・ノエルに会うことを望むとはな……。
アヤシロの友人を、傲慢な恋人を持った愚か者だと勝手に思ってしまった自分を恥じた。
そんな劣悪な環境で育ちようやくそこから抜け出たというのに、なんでも欲しいものを買ってあげると言われてペール・ノエルに会うことだけを望む子か。
傲慢なんて片鱗はどこにもない。
ただただ純粋な子じゃないか。
ーすごいな……こんな純粋な子はユヅルくらいだと思っていたよ……。
ーだろう? だから、ロレーヌに協力して欲しいんだ。実は、理央くんにその話を聞いた観月が咄嗟に、フランスでは18でもサンタクロースがプレゼントを持ってくるから会えると言ってしまったようなんだ……。
ーなるほど……。そういうことか。
ーしかも、理央くんの理想は赤い服を着て、白い髭を蓄えたトナカイが引く橇に乗ってやってくる絵本の中にいるサンタクロースなんだ。難しい願いだが、サンタクロースに会える最後の機会なんだ。なんとかして願いを叶えてあげたいんだよ。
ーふむ……。そうだな……。わかった、なんとかやってみよう。
ー本当か?
ーああ、ロレーヌ家の総帥である私の言葉に嘘はない。元々ユヅルのために何かをしようと思っていたところだ。こうなったら盛大にしてやろう。
ーそうか。弓弦くんもクリスマスは……。
ーああ、母親とクリスマスを過ごした分、リオよりは恵まれているだろうが、ユヅルもまたプレゼントなどはもらえる環境になかったからな。せっかくだから、ケイトともう一人、ソラだったか、彼も一緒に喜ばせてやるとしよう。
ーロレーヌ、助かるよ。本当にありがとう。
ーじゃあ、アヤシロたちは友人たちに声をかけて、たくさんの贈り物を準備しておくようにな。うちにどんどん贈ってくれたらいい。クリスマスの日までユヅルたちにはわからないようにしておくから。フランスでは良い子であればあるほど、たくさんの贈り物をもらえることになっているからな。クリスマスの日にツリーや暖炉の前がプレゼントでいっぱいになるくらいに並べておかないと!
ーそうか、そうだったな。わかったよ。あいつらにもそう言っておく。
ーペール・ノエルのことはこちらに任せておいてくれ。当日、アヤシロたちも驚くといい。
ーははっ。久しぶりに俺たちも童心に戻れそうな気がしてきたよ。何か必要なものがあれば、なんでも言ってくれ。
ーわかった。じゃあな。
そう言って電話を切り、私はペール・ノエルについて頭の中で計画を始めた。
ふふっ。きっとユヅルも喜んでくれるだろうな。
ユヅルの喜ぶ顔を想像するだけで嬉しくなる。
ああ、持ちきれないほどの贈り物は一体何にしようか。
きっとジュールもリュカもユヅルへの贈り物を用意するだろうな。
ペール・ノエルを用意するという思いがけないミッションに心躍らせながら、ユヅルが待つ寝室へ向かった。
起こしてはいけないとそーっと扉を開け中に入ろうとした瞬間、
「エヴァンさんっ!!!」
と涙声のユヅルが私の胸に飛び込んできた。
「ユヅルっ! どうしたんだ? 何があった?」
ギュッと抱きつきながら、私の胸に顔を埋め泣いている様子のユヅルを抱き上げた。
ベッドに戻り優しく背中を撫でていると、少し落ち着きを取り戻したユヅルが涙で頬を濡らしたまま顔を上げた。
「お、きたら……っ、え、ゔぁんさん、が……いな、かったから……っ、さみ、しくて……」
「――っ!」
「えゔぁんさん! どこにもいっちゃ、やだっ!! ぼく……また、ひとりになったかとおもって……こわくて、それで……」
「――っ!!! ユヅルっ! 悪かった!! もう絶対に一人にはしない!! 約束する!!!」
この暗い部屋の中で目覚めた時、いるはずの私がいない。
その状況がどれほど怖かっただろう……。
突然アマネを失って怖い思いをしたユヅルにあの時と同じような恐怖を味わわせるなんて……。
私は一体何をしているんだ!!
冷えてしまったユヅルの身体をギュッと抱きしめながら、私は必死に謝り続けた。
ーサンタクロースって……Père ・Noëlのことか?
ーああ、そうだ。しかも、育った施設では『お前は悪い子だからプレゼントは貰えない』と言われ続けていたようでな。
ーなんと……。だから、クリスマスを経験していないのか?
ーそうなんだ。彼・理央くんは一度でいいからサンタクロースに会ってみたかったって話をしたそうだよ。
いまだにペール・ノエルの存在を信じているだけでもすごいことだが、なんでも欲しいものを買ってあげると言われて贅沢なものを強請るわけでもなく、プレゼントよりもペール・ノエルに会うことを望むとはな……。
アヤシロの友人を、傲慢な恋人を持った愚か者だと勝手に思ってしまった自分を恥じた。
そんな劣悪な環境で育ちようやくそこから抜け出たというのに、なんでも欲しいものを買ってあげると言われてペール・ノエルに会うことだけを望む子か。
傲慢なんて片鱗はどこにもない。
ただただ純粋な子じゃないか。
ーすごいな……こんな純粋な子はユヅルくらいだと思っていたよ……。
ーだろう? だから、ロレーヌに協力して欲しいんだ。実は、理央くんにその話を聞いた観月が咄嗟に、フランスでは18でもサンタクロースがプレゼントを持ってくるから会えると言ってしまったようなんだ……。
ーなるほど……。そういうことか。
ーしかも、理央くんの理想は赤い服を着て、白い髭を蓄えたトナカイが引く橇に乗ってやってくる絵本の中にいるサンタクロースなんだ。難しい願いだが、サンタクロースに会える最後の機会なんだ。なんとかして願いを叶えてあげたいんだよ。
ーふむ……。そうだな……。わかった、なんとかやってみよう。
ー本当か?
ーああ、ロレーヌ家の総帥である私の言葉に嘘はない。元々ユヅルのために何かをしようと思っていたところだ。こうなったら盛大にしてやろう。
ーそうか。弓弦くんもクリスマスは……。
ーああ、母親とクリスマスを過ごした分、リオよりは恵まれているだろうが、ユヅルもまたプレゼントなどはもらえる環境になかったからな。せっかくだから、ケイトともう一人、ソラだったか、彼も一緒に喜ばせてやるとしよう。
ーロレーヌ、助かるよ。本当にありがとう。
ーじゃあ、アヤシロたちは友人たちに声をかけて、たくさんの贈り物を準備しておくようにな。うちにどんどん贈ってくれたらいい。クリスマスの日までユヅルたちにはわからないようにしておくから。フランスでは良い子であればあるほど、たくさんの贈り物をもらえることになっているからな。クリスマスの日にツリーや暖炉の前がプレゼントでいっぱいになるくらいに並べておかないと!
ーそうか、そうだったな。わかったよ。あいつらにもそう言っておく。
ーペール・ノエルのことはこちらに任せておいてくれ。当日、アヤシロたちも驚くといい。
ーははっ。久しぶりに俺たちも童心に戻れそうな気がしてきたよ。何か必要なものがあれば、なんでも言ってくれ。
ーわかった。じゃあな。
そう言って電話を切り、私はペール・ノエルについて頭の中で計画を始めた。
ふふっ。きっとユヅルも喜んでくれるだろうな。
ユヅルの喜ぶ顔を想像するだけで嬉しくなる。
ああ、持ちきれないほどの贈り物は一体何にしようか。
きっとジュールもリュカもユヅルへの贈り物を用意するだろうな。
ペール・ノエルを用意するという思いがけないミッションに心躍らせながら、ユヅルが待つ寝室へ向かった。
起こしてはいけないとそーっと扉を開け中に入ろうとした瞬間、
「エヴァンさんっ!!!」
と涙声のユヅルが私の胸に飛び込んできた。
「ユヅルっ! どうしたんだ? 何があった?」
ギュッと抱きつきながら、私の胸に顔を埋め泣いている様子のユヅルを抱き上げた。
ベッドに戻り優しく背中を撫でていると、少し落ち着きを取り戻したユヅルが涙で頬を濡らしたまま顔を上げた。
「お、きたら……っ、え、ゔぁんさん、が……いな、かったから……っ、さみ、しくて……」
「――っ!」
「えゔぁんさん! どこにもいっちゃ、やだっ!! ぼく……また、ひとりになったかとおもって……こわくて、それで……」
「――っ!!! ユヅルっ! 悪かった!! もう絶対に一人にはしない!! 約束する!!!」
この暗い部屋の中で目覚めた時、いるはずの私がいない。
その状況がどれほど怖かっただろう……。
突然アマネを失って怖い思いをしたユヅルにあの時と同じような恐怖を味わわせるなんて……。
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