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ユヅルの願い
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それからどれくらいユヅルを抱きしめていただろう。
冷えた身体はずっと抱きしめていたせいか、少し熱を取り戻したがいつもよりはまだ随分と冷たい。
ユヅルを抱きしめたままベッドに横たわり布団をかけると、ユヅルが嬉しそうに微笑んだ。
寒かったろうに……私が抱きしめてくれているから暖かいとなんとも健気なことを言ってくれる。
それにしてもここのところ、朝までぐっすりと眠ていたユヅルが目を覚ますとは……。
なにか心配事でもあったのかと不安になり問い掛ければ、
「いつも抱きしめて寝てくれるからあったかかったのに、エヴァンさんがいなくて寒かったから……目が覚めたんです」
と教えてくれた。
そういえば、出会ったあの日からずっとユヅルを抱きしめて眠っていた。
小さなベッドでなくなってからもずっとユヅルを腕の中に閉じ込めて眠っていたんだ。
私もユヅルを抱きしめているとよく眠れる。
そうか……ユヅルも同じだったのだな。
ユヅルの睡眠を妨げた上に、ユヅルの恐怖を思い出させるなどとんでもないことをしてしまった。
私はどうやってその罪を償ったら良いのだろう。
けれど、ユヅルは私を責めるどころか、勝手に怖くなってしまっただけだから自分が悪いのだと言ってくれる。
ああ、私はこうやってユヅルの優しさに守られるんだ。
だから約束しよう。
もう二度とひとりにはしないと。
「エヴァンさん……大好きです」
ユヅルの愛の言葉に癒される。
けれど、今ユヅルの優しさに乗じて、ユヅルから聞きたい言葉がある。
「ユヅル……あの言葉をもう一度言ってくれないか?」
これで気づいてくれるか心配だったが、ユヅルはすぐに気づき天使のような微笑みを浮かべながら、
『テュ et ラムール de ma ゔぃ』
と行ってくれた。
回を重ねるごとに少しずつ、辿々しかった発音が上手になっていく。
この成長の過程を見られるほどユヅルと時を過ごしているのだと嬉しくなってくる。
ああ本当に私はJe t’aime à la folie!
何か欲しいものはないか?
ひとりで怖い思いをさせてしまった償いではないが、どうしてもユヅルの願いを叶えたくて、そう尋ねた。
ロレーヌ家の人脈と財力を合わせれば、世界中の何を望んでも叶えられる自信がある。
ユヅルが慎ましいとわかってはいるが、私が唯一無二の伴侶なのだと皆に知らしめる良い機会でもあるのだ。
その昔、下界の帝や貴族たちと伴侶になる見返りに無理難題を申したという月の姫の話が日本にはあるようだが、あの帝たちは結局姫の願いを叶えられず、姫を手中から逃してしまったという。
私は決してその帝たちのようにはならない。
ユヅルの願いを叶えるためなどんなことでもしてやろう。
わざとプライベートジェットやクルーザー、ホテルなどを持ち出し、ユヅルが願いを言いやすいように仕向けたが、
「僕……エヴァンさんがいいです」
とポツリと呟いた。
一瞬何を言ったのか分からず聞き返すと、
「エヴァンさんと過ごせる時間が欲しいです。二人っきりで時間を気にせずに何日も過ごせたら嬉しいな……」
今度ははっきりとそう言ってくれたのだ。
宝石でもない、飛行機やクルーザーでもなく、私と二人で過ごす時間が欲しいと行ってくれたユヅル。
私はどれほどユヅルに愛されているのだろう……。
私をこんなにも愛してくれる人をこの世に送り出してくれたニコラとアマネには感謝のしようがない。
この恩に報いるにはユヅルを一生幸せにすることだけだ。
「結婚式が終わって、日本の友人たちが帰ったら二人だけで旅行に出かけよう」
そういうと、ユヅルの目が嬉しそうに輝いた。
ちょうどクリスマスでよかったのだろう。
フランスではクリスマスとニューイヤーに休みがあるが、そのほかは通常は仕事がある。
だが、私はアメリカや日本などとの取引の関係上、彼らの仕事が休みになるのに合わせて、私も長期間の休みを取ることにしているのだ。
昨年までは、この屋敷でのんびりと過ごしていたが今年はなんと言ってもユヅルがいるのだ。
全て独占してはジュールがうるさいだろうが、その中の数日をユヅルと無人島のコテージで過ごすのもいい。
食料は際限なく用意させておくし、汚れ物は日に一度回収にやってくるものがいる。
もちろんユヅルには気づかれないように島の周辺には警備隊を常駐させておくから安全面も問題ない。
二人で食事の支度をしようというと、私のためにシャルルに料理を習うと言ってくれた。
それは嬉しいが、シャルルと二人なのはどうにも許し難い。
そんな私の嫉妬を笑って許してくれるユヅルの寛大さにさらに惚れ直しながら、私たちはしばらくの間無人島旅行について楽しく語り合った。
* * *
次回から結婚式のお話に入りますので、しばらくこちらのお話はお休みして、
イケメンスパダリシリーズ(社長・医師・弁護士)の結婚式までのお話をお届けします。
どうぞお楽しみに♡
冷えた身体はずっと抱きしめていたせいか、少し熱を取り戻したがいつもよりはまだ随分と冷たい。
ユヅルを抱きしめたままベッドに横たわり布団をかけると、ユヅルが嬉しそうに微笑んだ。
寒かったろうに……私が抱きしめてくれているから暖かいとなんとも健気なことを言ってくれる。
それにしてもここのところ、朝までぐっすりと眠ていたユヅルが目を覚ますとは……。
なにか心配事でもあったのかと不安になり問い掛ければ、
「いつも抱きしめて寝てくれるからあったかかったのに、エヴァンさんがいなくて寒かったから……目が覚めたんです」
と教えてくれた。
そういえば、出会ったあの日からずっとユヅルを抱きしめて眠っていた。
小さなベッドでなくなってからもずっとユヅルを腕の中に閉じ込めて眠っていたんだ。
私もユヅルを抱きしめているとよく眠れる。
そうか……ユヅルも同じだったのだな。
ユヅルの睡眠を妨げた上に、ユヅルの恐怖を思い出させるなどとんでもないことをしてしまった。
私はどうやってその罪を償ったら良いのだろう。
けれど、ユヅルは私を責めるどころか、勝手に怖くなってしまっただけだから自分が悪いのだと言ってくれる。
ああ、私はこうやってユヅルの優しさに守られるんだ。
だから約束しよう。
もう二度とひとりにはしないと。
「エヴァンさん……大好きです」
ユヅルの愛の言葉に癒される。
けれど、今ユヅルの優しさに乗じて、ユヅルから聞きたい言葉がある。
「ユヅル……あの言葉をもう一度言ってくれないか?」
これで気づいてくれるか心配だったが、ユヅルはすぐに気づき天使のような微笑みを浮かべながら、
『テュ et ラムール de ma ゔぃ』
と行ってくれた。
回を重ねるごとに少しずつ、辿々しかった発音が上手になっていく。
この成長の過程を見られるほどユヅルと時を過ごしているのだと嬉しくなってくる。
ああ本当に私はJe t’aime à la folie!
何か欲しいものはないか?
ひとりで怖い思いをさせてしまった償いではないが、どうしてもユヅルの願いを叶えたくて、そう尋ねた。
ロレーヌ家の人脈と財力を合わせれば、世界中の何を望んでも叶えられる自信がある。
ユヅルが慎ましいとわかってはいるが、私が唯一無二の伴侶なのだと皆に知らしめる良い機会でもあるのだ。
その昔、下界の帝や貴族たちと伴侶になる見返りに無理難題を申したという月の姫の話が日本にはあるようだが、あの帝たちは結局姫の願いを叶えられず、姫を手中から逃してしまったという。
私は決してその帝たちのようにはならない。
ユヅルの願いを叶えるためなどんなことでもしてやろう。
わざとプライベートジェットやクルーザー、ホテルなどを持ち出し、ユヅルが願いを言いやすいように仕向けたが、
「僕……エヴァンさんがいいです」
とポツリと呟いた。
一瞬何を言ったのか分からず聞き返すと、
「エヴァンさんと過ごせる時間が欲しいです。二人っきりで時間を気にせずに何日も過ごせたら嬉しいな……」
今度ははっきりとそう言ってくれたのだ。
宝石でもない、飛行機やクルーザーでもなく、私と二人で過ごす時間が欲しいと行ってくれたユヅル。
私はどれほどユヅルに愛されているのだろう……。
私をこんなにも愛してくれる人をこの世に送り出してくれたニコラとアマネには感謝のしようがない。
この恩に報いるにはユヅルを一生幸せにすることだけだ。
「結婚式が終わって、日本の友人たちが帰ったら二人だけで旅行に出かけよう」
そういうと、ユヅルの目が嬉しそうに輝いた。
ちょうどクリスマスでよかったのだろう。
フランスではクリスマスとニューイヤーに休みがあるが、そのほかは通常は仕事がある。
だが、私はアメリカや日本などとの取引の関係上、彼らの仕事が休みになるのに合わせて、私も長期間の休みを取ることにしているのだ。
昨年までは、この屋敷でのんびりと過ごしていたが今年はなんと言ってもユヅルがいるのだ。
全て独占してはジュールがうるさいだろうが、その中の数日をユヅルと無人島のコテージで過ごすのもいい。
食料は際限なく用意させておくし、汚れ物は日に一度回収にやってくるものがいる。
もちろんユヅルには気づかれないように島の周辺には警備隊を常駐させておくから安全面も問題ない。
二人で食事の支度をしようというと、私のためにシャルルに料理を習うと言ってくれた。
それは嬉しいが、シャルルと二人なのはどうにも許し難い。
そんな私の嫉妬を笑って許してくれるユヅルの寛大さにさらに惚れ直しながら、私たちはしばらくの間無人島旅行について楽しく語り合った。
* * *
次回から結婚式のお話に入りますので、しばらくこちらのお話はお休みして、
イケメンスパダリシリーズ(社長・医師・弁護士)の結婚式までのお話をお届けします。
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