大富豪ロレーヌ総帥の初恋

波木真帆

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天使たちのサプライズ

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話を終えたユヅルが私の元に戻ってきた。
無意識なんだろうが、私にピッタリと寄り添ってくるのが実に可愛らしい。

ユヅルの嬉しそうな表情を見るに、打ち合わせはうまくいったのだろう。
ふふっ。サプライズも予定通りということか。

そう思っていると、ミヅキたち4人が下りてきてしばらくしたら、リビングに4人を留めて欲しいと頼まれた。

その間に演奏会の準備をするのだそうだ。

なるほど、それならば協力しないとな。

『セルジュ、ミヅキたちをここに引き止めるために話を振るから、お前もそれに加わるんだぞ』

『承知しました。どういったお話をなさるのですか?』

『ミヅキがフランス移住を考えていたようだったからな、リオとソラも試験に合格したことだし、フランスの大学の話でもしようと思っている。ユヅルもゆくゆくは大学を考えているからちょうどいい話だろう?』

『はい。それなら皆様方の興味を引くことは間違い無いでしょうね。ユヅルさまの行かれるシュベルニー大学ならば警護の点においても安心してお預けになれますし』

数百年の歴史を持つ名門シュベルニー大学の創設者はわがロレーヌ家の当時の当主。
その関係もあって、ロレーヌ一族の者は皆、この大学に入るというのが暗黙のルールになっている。
とはいえ、フランス国内でも一二を争うシュベルニー大学に入れる実力を持っていることが求められる。
ロレーヌ一族だからといって無条件で入れるわけではないのだ。
私も、そしてセルジュもこの大学に首席で入り、首席で卒業をした。

学業は大変厳しいものがあるが大学内は賊の侵入を防ぐための警備に長けていて、安心して大学生活を過ごすことが約束されている。

私の伴侶であるユヅルもシュベルニー大学以外の入学はほぼないと言っていい。
ユヅルの場合は、フランス語さえ習得できれば、学力にはさほど問題はないだろう。

リオとソラも今すぐには難しいだろうが、目標は高い方がいい。
きっとこの話にも興味を持ってくれるはずだ。

リオたちが部屋から下りて来て、ユヅルたちとおやつを食べながら雑談を始めてしばらくしてから、ユヅルから合図があった。

私はすぐに作戦を開始し、ミヅキとユウキにシュベルニー大学についての話を振ってみた。
セルジュも合いの手を入れてくれたおかげか、すぐに二人は興味を持ち始め、すぐにリオとソラに呼びかけ、一緒に私の話を聞き始めた。

その間に、4人の姿越しに、ユヅルたちがリビングから出ていくのが見える。
4人はそれに全く気付かずに私とセルジュの話に釘付けになっている。
もちろん話の内容に誇張や嘘は一切ない。

だからこそ、私の話に夢を抱きユヅルたちが出て行ったことに気づいていないのだろう。

「その大学なら安心して理央を通わせられますね」

「ああ。そもそも、ミヅキたちはどうやってリオたちを大学に行かせるつもりだったのだ? そこの大学はそこまで警備が整っているのか? 二人だけで行かせるのはかなり無謀だろう?」

「実は私も悠木も元々大学から特別講師をして欲しいと頼まれていたんです。ですから、理央たちが通うことになった時は講師として一緒に大学に通おうかと思っていたのですよ」

「ああ、なるほど。そういうことか。それならば、安心だな。それにしても二人揃って大学から講師に招かれるとはすごいな……」

ミヅキはそんなことはないと謙遜していたが、日本最高峰の大学で教授たちから特別講師にと直々に頼まれるくらいだからかなりの実力を持っているのだろう。

いつの日か、本当にシュベルニー大学に講師として彼らを引き抜くのもいいかもしれないな。


セルジュからアイコンタクトを受け、さりげなく話を切り上げる。

「そうだ、君たちに案内したい場所があるんだがみんな来てもらえるか?」

「はい。もちろんです」

なんの警戒もなく立ち上がったミヅキたちを連れ、リビングを出る。

「あ、そういえば弓弦くんたちは?」

ユヅルたちがいないことに気づいたソラが辺りをキョロキョロと見回すのをみて、セルジュがさっと

「これからいく場所に先に行かれているのですよ」

と笑顔で教えると、

「あっ、そうなんだ」

とすぐに納得してくれた。
やはりユヅル同様素直で可愛らしい。

「さぁ、ここだよ」

演奏室の扉をセルジュとジョルジュがさっと扉を開け、皆を中へ進ませる。
扉をバタンと閉めると、真っ暗でお互いの顔さえ見えない。

「ここ? なんですか?」

真っ暗で何も見えないからリオの声が少し怯えているようだ。

その瞬間、舞台にパッと照明が当たり、

「理央くん!」 「空良くん!」
「「「「「合格おめでとう!!!!!」」」」」

とユヅルたちの声が響き渡り、その後すぐに『Vive le venジングルベルt!』の曲が流れ始めた。

「わぁーーっ!! この曲聞いたことある!!」
「すごーーいっ!! ジングルベルだ!!」

目を輝かせているリオとソラの隣で私たちは全員驚きのあまり、その場に立ち尽くすことしかできない。

『なんだ……あの可愛い天使は……』
「くっ――!! なんて可愛さだ!!」
『嘘だろ、こんなの聞いてないぞ!俺は夢を見てるのか?』
「秀吾が……ミニスカ……似合いすぎ……」
『脚が……ミシェルの脚が……』
「くそっ! 可愛すぎだろ!」

ヴァイオリンやピアノを弾くそれぞれの伴侶の可愛らしい衣装に私たちは目が釘付けになってしまっている。

「サンタさん、可愛いー!!」
「あの服、ほんと可愛いよね」
「見て! 洋服も違ってるよ」
「ほんとだ! どれも可愛いね」

無邪気にユヅルたちを眺めるリオたちとは対照的に、もはや自分の伴侶しかとらえていないが、茫然としつつも私たちはスマホを取り出し、伴侶の可愛い姿を動画におさめた。

可愛い衣装に身を包み、きゃっきゃと楽しそうにヴァイオリンを弾くユヅルを見ながら、私の愚息は密かに服の下で昂りを見せていた。
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