大富豪ロレーヌ総帥の初恋

波木真帆

文字の大きさ
72 / 177

嬉しい贈り物

思いがけず素晴らしい贈り物を貰ったものだ。
この映像はユヅルだけでなく、私やジュール、それこそ、このロレーヌ家にとっても素晴らしいクリスマスプレゼントになった。

スクリーンを見ながら涙を流しているジュールを見ているとこちらまで嬉しくなる。
久しぶりにみるニコラとアマネの姿に、ユヅルの次に喜んでいるのはジュールかもしれないな。

ジュールが涙を流していることに気づいたシュウゴがさっとジュールの元に近づいた。
ジュールのあの嬉しそうな顔を見ると、母君から聞いたというニコラとアマネの思い出話でもしてあげているのかもしれない。
本当に優しくて良い子だ。

ジョルジュもマサオミを気に入っていることだし、フランスで一緒に生活してくれないだろうか……。
リオとミヅキもこちらに来てくれたら、ユヅルの行動範囲が広くできるのだがな。

ユヅルはジュールの涙に気づいたようでもらい泣きをしているようだった。
ポケットからハンカチを取り出して拭ってやると、嬉しそうに笑っていた。

ユヅルは自分が選んだ贈り物が喜んでもらえるかと躊躇っていたようだったが、ユヅルが一生懸命彼らのために選んだものを喜ばないわけがない。
安心させてやると、ユヅルは嬉しそうに彼らにプレゼントを渡しにいった。

それを少し離れた場所から見守っていると、ミヅキが声をかけてきた。

「弓弦くんも相当悩んだんですか? プレゼント探し」

「ああ、そうだな。だが、最後は自分でちゃんと選んでいたよ」

「そうですか。やはり、うちの理央よりはまだ弓弦くんの方が贈り物という概念をわかっているようですね」

「というと、やはり難しかったのか?」

「ええ。自分のものすら満足に与えられずに過ごしてきたから、誰かに物を贈るという事がわからなかったようですね。バッグも文房具も持っているからあげられないと話していましたから」

「そうか、一人ひとつの中に自分の贈った物をいれられないと思ったのだろうな。ならば、今回の贈り物はどうしたんだ?」

「ふふっ。少し考え方を変えさせたんですよ」

「考え方を?」

「はい。楽しみにしていてください」

ミヅキの意味深な微笑みに、きっと素晴らしい物であることはわかった。
それもこの世に一つしかないもの。

だが、リオが選ぶものとつながらない。
しかも考え方を変えさせたと言っていた。

一体どういうものなのか……気になるな。


「ふふっ。リュカ……好きっ!」

そんなことを考えていた私の耳に衝撃的なユヅルの言葉が飛び込んできて、慌ててそちらに目をやるとユヅルがリュカと抱き合っているのが見える。

ジョルジュもその二人の姿に驚いているようだが、それよりも今はさっさと引き離しにいかなければ!

急いでユヅルに駆け寄り、リュカから引き離して腕の中に閉じ込めると、

「え、エヴァンさん……びっくりした……どうしたんですか?」

なぜ私がこんなことをしたのかわからないとでもいう様子で、ユヅルが私を見つめた。

いやいや、ユヅルとリュカが抱き合っているのを見過ごせるわけがないだろう。
しかも愛の言葉まで囁いているというのに。

私の前で他の男と抱き合い、愛の言葉を囁くなんて持ってのほかだというと、ユヅルは焦りながら、

「あの、違いますよ。その好きは、好きじゃなくて……えっと……好きなものはいっぱいあっても、僕がこの世で大好きなのはエヴァンさんだけですから!」

と大広間中に響き渡るような大きな声で私への愛を叫んでくれた。

恥ずかしがり屋のユヅルからの愛の言葉を、友人たちの前で聞かせてもらえるとは思っていなかった。

リュカと抱き合っていたことは許し難いが、こんなに大きな声で愛を叫んでくれたからよしとしようか。
私は満面の笑みでユヅルにキスを贈った。

真っ赤な顔で私を見上げるユヅルに愛の告白の礼を言いながらも、他の者とのハグは禁止だとしっかり釘を刺しておいた。
ユヅルにもリュカにもそんな気がないのはわかっていても、ユヅルの身体を私以外が触れるのは許すわけにはいかない。

狭量だと言われようがそこは許すわけにはいかないのだ。

「ふふっ。ユヅル、大胆な愛の告白だったね」

そんな私たちの元にミシェルとセルジュがやってきた。
まだ顔の赤いユヅルはミシェルの言葉にさらに恥ずかしそうにしていたが、わざわざ揶揄いにきたのかと尋ねると、どうやらユヅルからの贈り物について気になってきたらしい。

ふふっ。さすがセルジュ。
やはり気づいたか。

ユヅルがあの日、あの店でミシェルのために選んだスカーフがどうも気になって、私はあれを手がけたデザイナーの元に直接連絡をした。

ロレーヌ家総帥である私からの連絡にデザイナーはかなり恐縮しながらも、あのスカーフについて話をしてくれた。

限定20枚で作られたあのスカーフのデザインを頼まれた時に、天使とヴァイオリンというモチーフで描くことになり、一枚だけいたずら心で天使の姿をミシェルに少し似せて描いたようだ。

デザイナーはミシェルの大ファンで、その依頼が来たときにすぐにミシェルを思い浮かべたらしい。
一枚だけならとこっそり描いてみたようだが、それが我がロレーヌ家にあり、ミシェルの手に渡ると知ってかなり驚いていた。

それを選んだユヅルのことを神のように崇めていたくらいだから、ミシェルの手に渡ることが嬉しくて仕方なかったのだろう。
そのお礼に今度、非売品でユヅルをモデルにしたデザインを描いてもらうことになった。
何に描いてもらうかは検討中だが、ユヅルと一緒に考えるのも楽しいかもしれない。

「ユヅルさまが見つけてくださったおかげで、私たちの元に天使のミシェルがやってきてくれたんです。本当に素敵な贈り物をありがとうございます」

セルジュは本当に嬉しそうにユヅルに礼を言っている。
まぁ礼も言いたくなるな。
もしかしたらミシェルモデルのスカーフが他所に行っていたのかもしれないのだから。

この贈り物はミシェルにとってもセルジュにとっても嬉しい贈り物になったようだ。
感想 91

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

私の弟なのに

あんど もあ
ファンタジー
パン屋の娘マリーゼの恋人は、自警団のリートさん。だけど、リートには超ブラコンの姉ミラがいる。ミラの妨害はエスカレートしてきて……。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。