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極上のメルヴェイユ
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ユヅルが手にしたのはミルクチョコ。
一口サイズの菓子だが、ユヅルの小さな口にはギリギリと言ったところか。
さて、どんな反応を見せてくれるだろうか。
「んんっ!!! なに、これ! すごいっ! 美味しいっ!!」
口に入れて味わった途端、目を輝かせながらその場でぴょんぴょんと可愛らしく跳ねておいしさを全身で表している。
そんなユヅルとケイトの反応を見て、リオとソラもメルヴェイユに手を伸ばす。
「せえの」
と可愛らしい掛け声で一緒に口に放り込むと、顔を見合わせて大きな目を輝かせながら、
「んんっ!! 美味しいっ!」
「溶けて無くなっちゃったっ!!」
興奮しきりの様子だ。
ユヅルたちのそのあまりの可愛らしさに周りにいる客たちが声をあげているのが聞こえてくる。
『見て! あの子たち、可愛い!!』
『本当! すっごくおいしそうに食べてるよ!』
『うわー、本当においしそうに食べてる! 可愛い!!』
『ぴょんぴょん跳ねてるよ。可愛いコート着てるしウサギみたい!!』
『ねぇ、あの可愛い子たちが食べてるのって何? 私も食べたいー!!』
そんな言葉が飛び交っているのを気にする様子もなく、シュウゴとミシェルも同じようにメルヴェイユを一粒口に放り込むと可愛らしい笑顔を浮かべながら、美味しい、美味しいと賞賛の声をあげている。
ユヅルたちが二個目のメルヴェイユに手を伸ばしているさなか、周りからはさらに違う言語も聞こえてくる。
『ねぇ、あの可愛い子たちが食べてるのって何? なんかすっごくおいしそうなんだけど』
『えー、どれどれ?』
『ほら、あそこ』
『本当だ! 何言ってるかはわからないけど、すっごくおいしそう!!』
『ってか、食べてるあの子たち可愛すぎるー!』
『あれ、メルヴェイユだよ』
『メルヴェイユ? 私も食べる!』
『私もー!! どこで売ってるの?』
『あっちじゃない? いこう! いこう!』
ふと視線を向ければ、さっきまで周りに集まっていた野次馬たちはだいぶ少なくなっていた。
どうやらユヅルたちが食べているのを見て興味を持ったようだな。
まぁ、それもそうだろう。
こんなに可愛い子たちが幸せそうな笑顔を見せながら食べているのだからな。
ユヅルたちは全く気づく様子もないがな。
「ユヅル、気に入ったか?」
そう尋ねると、キラキラとした笑顔を見せながらすごく美味しいと言ってくれる。
それが嬉しくてジョルジュにもっと買ってこさせようと近くに呼び話をしていると、ユヅルが不安そうな声で私に声をかけてきた。
さっきまでの嬉しそうな顔とは一転、不安げな表情に私は思わずユヅルを強く抱きしめた。
そしてユヅルの示す視線の先に目をやると、エプロンをつけた男がこちらをチラチラと窺っているのが見える。
警備隊たちに囲まれてそれ以上我々に近づくことができないようだが、ユヅルが不安になっているのをそのままにしてはおけない。
『ジョルジュ、奴をみろ』
『あれ? あの男は……』
『知り合いか? とりあえずユヅルが怖がっている。奴の元に行って、目的を聞いてきてくれ』
そういうとジョルジュは急いでその男の元に駆けて行った。
しばらく話をしてジョルジュはすぐに戻ってきた。
『何だったんだ?』
『彼はさっき俺とリュカが買いに行った、メルヴェイユを売っている店の店主だったよ』
『ああ、だから見覚えがあったのか? だがどうして店主が?』
『実は、ユヅルくんたちがおいしそうに食べている姿を見て、メルヴェイユを買い求める人が殺到したらしい。二日分のストックも全て完売して、通常の100倍以上の売り上げだそうだ』
『ははっ。それで礼に来たというわけか』
『ああ、だから心配しないでいい』
『わかった。だが、ユヅルたちに直接の礼はいらないと伝えてくれ。気にするだろうからな』
『ああ、わかったよ。そう言っておこう』
店主の元に駆けていくジョルジュを見送っていると、
「エヴァンさん、何があったの?」
とユヅルの声が聞こえた。
正直にただの礼だったと伝えると、ユヅルはそうやらメルヴェイユのことだと聞き取れていたようだ。
少しずつ耳が慣れてきているようだな。
「ユヅルたちがメルヴェイユを食べている姿があまりにも美味しそうで、メルヴェイユの店に人が殺到して完売してしまったそうだ」
そう教えてやると、ユヅルだけでなくリオたちも一斉に驚いていたが、ミヅキたちはそれに納得しているようだ。
まぁあれだけ可愛い顔でおいしそうに食べているのを見たら、食べたくなっても無理はない。
メルヴェイユにとってはものすごい宣伝になったことだろう。
これを機会にメルヴェイユの知名度がさらに上がるかもしれないな。
ユヅルがその店主に視線を送ると、その場所から
『Mille mercis.』
という大きな声が届く。
普通のMerciではなく、Mille mercis (1000回ありがとうと言いたいくらい感謝している)というところにユヅルたちへの最上級の感謝が見える。
ユヅルは店主の礼に答えるように笑顔で手を振って返した。
その天使のような笑顔は離れた場所にいた店主の心を打ち抜いたようで、店主はその場に崩れ落ちてしまった。
店主だけでなく、その笑顔を見たもの全ての動きが止まってしまっている。
ユヅルはそのことに一瞬怯えた表情を見せたが、
「大丈夫、気にしなくていいと言っただろう? みんなユヅルの可愛さに心を奪われてるんだ。誰にも渡さないけどね」
と言って、メルヴェイユをねだるとユヅルは素直にメルヴェイユを指で摘み、私の口に運んでくれた。
もちろんユヅルの指までいただくのが私の決めたルール。
甘くとろけるメルヴェイユの味が、さらに極上のものとなった。
一口サイズの菓子だが、ユヅルの小さな口にはギリギリと言ったところか。
さて、どんな反応を見せてくれるだろうか。
「んんっ!!! なに、これ! すごいっ! 美味しいっ!!」
口に入れて味わった途端、目を輝かせながらその場でぴょんぴょんと可愛らしく跳ねておいしさを全身で表している。
そんなユヅルとケイトの反応を見て、リオとソラもメルヴェイユに手を伸ばす。
「せえの」
と可愛らしい掛け声で一緒に口に放り込むと、顔を見合わせて大きな目を輝かせながら、
「んんっ!! 美味しいっ!」
「溶けて無くなっちゃったっ!!」
興奮しきりの様子だ。
ユヅルたちのそのあまりの可愛らしさに周りにいる客たちが声をあげているのが聞こえてくる。
『見て! あの子たち、可愛い!!』
『本当! すっごくおいしそうに食べてるよ!』
『うわー、本当においしそうに食べてる! 可愛い!!』
『ぴょんぴょん跳ねてるよ。可愛いコート着てるしウサギみたい!!』
『ねぇ、あの可愛い子たちが食べてるのって何? 私も食べたいー!!』
そんな言葉が飛び交っているのを気にする様子もなく、シュウゴとミシェルも同じようにメルヴェイユを一粒口に放り込むと可愛らしい笑顔を浮かべながら、美味しい、美味しいと賞賛の声をあげている。
ユヅルたちが二個目のメルヴェイユに手を伸ばしているさなか、周りからはさらに違う言語も聞こえてくる。
『ねぇ、あの可愛い子たちが食べてるのって何? なんかすっごくおいしそうなんだけど』
『えー、どれどれ?』
『ほら、あそこ』
『本当だ! 何言ってるかはわからないけど、すっごくおいしそう!!』
『ってか、食べてるあの子たち可愛すぎるー!』
『あれ、メルヴェイユだよ』
『メルヴェイユ? 私も食べる!』
『私もー!! どこで売ってるの?』
『あっちじゃない? いこう! いこう!』
ふと視線を向ければ、さっきまで周りに集まっていた野次馬たちはだいぶ少なくなっていた。
どうやらユヅルたちが食べているのを見て興味を持ったようだな。
まぁ、それもそうだろう。
こんなに可愛い子たちが幸せそうな笑顔を見せながら食べているのだからな。
ユヅルたちは全く気づく様子もないがな。
「ユヅル、気に入ったか?」
そう尋ねると、キラキラとした笑顔を見せながらすごく美味しいと言ってくれる。
それが嬉しくてジョルジュにもっと買ってこさせようと近くに呼び話をしていると、ユヅルが不安そうな声で私に声をかけてきた。
さっきまでの嬉しそうな顔とは一転、不安げな表情に私は思わずユヅルを強く抱きしめた。
そしてユヅルの示す視線の先に目をやると、エプロンをつけた男がこちらをチラチラと窺っているのが見える。
警備隊たちに囲まれてそれ以上我々に近づくことができないようだが、ユヅルが不安になっているのをそのままにしてはおけない。
『ジョルジュ、奴をみろ』
『あれ? あの男は……』
『知り合いか? とりあえずユヅルが怖がっている。奴の元に行って、目的を聞いてきてくれ』
そういうとジョルジュは急いでその男の元に駆けて行った。
しばらく話をしてジョルジュはすぐに戻ってきた。
『何だったんだ?』
『彼はさっき俺とリュカが買いに行った、メルヴェイユを売っている店の店主だったよ』
『ああ、だから見覚えがあったのか? だがどうして店主が?』
『実は、ユヅルくんたちがおいしそうに食べている姿を見て、メルヴェイユを買い求める人が殺到したらしい。二日分のストックも全て完売して、通常の100倍以上の売り上げだそうだ』
『ははっ。それで礼に来たというわけか』
『ああ、だから心配しないでいい』
『わかった。だが、ユヅルたちに直接の礼はいらないと伝えてくれ。気にするだろうからな』
『ああ、わかったよ。そう言っておこう』
店主の元に駆けていくジョルジュを見送っていると、
「エヴァンさん、何があったの?」
とユヅルの声が聞こえた。
正直にただの礼だったと伝えると、ユヅルはそうやらメルヴェイユのことだと聞き取れていたようだ。
少しずつ耳が慣れてきているようだな。
「ユヅルたちがメルヴェイユを食べている姿があまりにも美味しそうで、メルヴェイユの店に人が殺到して完売してしまったそうだ」
そう教えてやると、ユヅルだけでなくリオたちも一斉に驚いていたが、ミヅキたちはそれに納得しているようだ。
まぁあれだけ可愛い顔でおいしそうに食べているのを見たら、食べたくなっても無理はない。
メルヴェイユにとってはものすごい宣伝になったことだろう。
これを機会にメルヴェイユの知名度がさらに上がるかもしれないな。
ユヅルがその店主に視線を送ると、その場所から
『Mille mercis.』
という大きな声が届く。
普通のMerciではなく、Mille mercis (1000回ありがとうと言いたいくらい感謝している)というところにユヅルたちへの最上級の感謝が見える。
ユヅルは店主の礼に答えるように笑顔で手を振って返した。
その天使のような笑顔は離れた場所にいた店主の心を打ち抜いたようで、店主はその場に崩れ落ちてしまった。
店主だけでなく、その笑顔を見たもの全ての動きが止まってしまっている。
ユヅルはそのことに一瞬怯えた表情を見せたが、
「大丈夫、気にしなくていいと言っただろう? みんなユヅルの可愛さに心を奪われてるんだ。誰にも渡さないけどね」
と言って、メルヴェイユをねだるとユヅルは素直にメルヴェイユを指で摘み、私の口に運んでくれた。
もちろんユヅルの指までいただくのが私の決めたルール。
甘くとろけるメルヴェイユの味が、さらに極上のものとなった。
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