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二人が望むなら……
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ユヅルが危険な目に遭うようなことがなくて本当に良かった。
私の腕の中にユヅルがいることに安堵していると、小さな泣き声が聞こえてきた。
驚いてそちらを見れば、リオが涙を流しているのが見える。
何かあったかと心配になるが、リオはそのまま何かを託すようにミヅキに抱きついた。
ミヅキはそんなリオを優しく宥めながら、
「理央は弓弦くんの演奏に感動したんだよ。もしかして、理央たちのことを考えて弾いてくれたんじゃないかな?」
とユヅルに問いかけた。
ああ、なるほど。
その涙だったか。
あの演奏を聴いて、これほど涙を流すとは……リオは感受性が強いのだろうな。
ユヅルがあの演奏にこめた気持ちを全て理解したのだから。
そんなリオの姿にユヅルも感動しているようだ。
自分の演奏がこんなにも人の心を打つなんて思っていなかったのだろう。
あれほど美しい音を奏でられるというのに。
本当にユヅルは自分の素晴らしさに気づかないのだ。
「す、っごく、き、れい、だった……」
涙に震えながらも必死に言葉を紡いでくれるリオの心からの言葉を聞いていると、私も感動してしまう。
ああ、本当にユヅルたちの演奏は素晴らしく綺麗だったよ。
ユヅルはそんなリオに
「最後にいい思い出できたね」
と笑顔で伝える。
だがその言葉を聞いた瞬間、リオの表情が曇り
「最後は、やだ……っ」
と言ってユヅルに抱きついた。
声を押し殺しながらユヅルの胸元で泣き続けるリオをユヅルが優しく抱きしめて頭を撫でる。
その自然な姿に私もミヅキも、そしてジョルジュたちも見守ることしかできなかった。
「ごめんね。最後じゃなかったね。僕たちはこれからもずっと友達だって言ったでしょう? だから、いつだって会えるよ」
そう言ってリオを宥める。
いつもは私の腕の中で守られているはずのユヅルの男気溢れる姿にドキッとする。
見たことがないユヅルの一面に思わずミヅキと顔を見合わせてしまった。
そんな私の動揺に気づかないままにユヅルとリオ、そしてリュカを交えて話は続いている。
「私もリオとずっと友達ですよ。それに心配なさらなくても、エヴァンさまやミヅキさまがついていらしたら、日本とフランスなんて近いのです。会いたいと思ったらすぐに連れてきてもらえますよ」
そうですよね、ミヅキさま……とミヅキに話が振られたところで、ようやくミヅキはユヅルの腕の中で安心しきっているリオを自分の胸に取り戻した。
と同時に私もユヅルを自分の胸に抱くと、ふわっと嬉しそうな笑みを浮かべるユヅルの表情が見えてホッとする自分がいた。
ミヅキはリュカの言葉に応えながら、ずっと心に留めていた話を始めた。
私がずっとミヅキにフランスに来ないかと誘っていた話だ。
その話にリオはもちろん、ユヅルも驚きの声を上げた。
だが、これは私とユヅルのためだけに提案した話ではない。
ミヅキと出会う前にリオに関わっていた奴らの全てが警察に捕まるなり制裁を与えられたりして、今はリオと関わりを持たずに過ごしているが、そいつらが日本にいる限りこれから先二度とリオと会わないと断言はできない。
リオが何も危険を感じることもなくのびのびと過ごすためには、日本から遠く離れたこのフランスで生活するのが良いと思ったのだ。
ここなら私と同様の要人として警護をつけることもできるし、大学にだって安心して通わせることができる。
ミヅキほどの実力があれば、ここで日本同様に弁護士として活躍することもできるし、セルジュのように私の秘書として働いてもらうのもいい。
これからロレーヌ家を今よりもさらに広げていくためにはミヅキのような優秀な人材に来てもらうのは必要不可欠だ。
ミヅキがリオにその話をしたということはミヅキの中では移住への気持ちが固まったということだろう。
と言ってもリオが嫌だといえばそれでこの話は終わり。
リオが納得して初めてこの話が進むのだ。
私はミヅキとリオの決断にあれこれ言うつもりは全くない。
フランスに移住を決めたら手を貸すし、日本にとどまることを決めても私のミヅキへの態度が変わるわけではない。
ただ、ミヅキとリオにとって幸せであればいいだけだ。
リオはあまりにも突然の話に驚きを隠せないようだったが、心配事がミヅキの両親、いや今はリオの両親でもあるのか。
その二人が寂しがらないかということだけなら、問題はないだろう。
なんせミヅキよりもリオを溺愛しているという話だ。
リオが望むならその通りにしてやるだろうし、いざとなれば家族で移住でもやれるだろう。
「ミヅキもリオもすぐに結論は出さなくていいんだ。とにかく、リオとユヅルは最後にならないってことだけをわかっていたらいい。私も二人がいつでも会えるように環境を整えるよ」
そう声をかけると、ミヅキだけでなくリオも安堵の表情を見せた。
「弓弦くん……リュカさんも、ずっと友達でいてね」
「ふふっ。もちろんだよ」
「ええ。もうずっと友達ですよ」
リオはユヅルとリュカの言葉に幸せそうにミヅキに抱きついていた。
私の腕の中にユヅルがいることに安堵していると、小さな泣き声が聞こえてきた。
驚いてそちらを見れば、リオが涙を流しているのが見える。
何かあったかと心配になるが、リオはそのまま何かを託すようにミヅキに抱きついた。
ミヅキはそんなリオを優しく宥めながら、
「理央は弓弦くんの演奏に感動したんだよ。もしかして、理央たちのことを考えて弾いてくれたんじゃないかな?」
とユヅルに問いかけた。
ああ、なるほど。
その涙だったか。
あの演奏を聴いて、これほど涙を流すとは……リオは感受性が強いのだろうな。
ユヅルがあの演奏にこめた気持ちを全て理解したのだから。
そんなリオの姿にユヅルも感動しているようだ。
自分の演奏がこんなにも人の心を打つなんて思っていなかったのだろう。
あれほど美しい音を奏でられるというのに。
本当にユヅルは自分の素晴らしさに気づかないのだ。
「す、っごく、き、れい、だった……」
涙に震えながらも必死に言葉を紡いでくれるリオの心からの言葉を聞いていると、私も感動してしまう。
ああ、本当にユヅルたちの演奏は素晴らしく綺麗だったよ。
ユヅルはそんなリオに
「最後にいい思い出できたね」
と笑顔で伝える。
だがその言葉を聞いた瞬間、リオの表情が曇り
「最後は、やだ……っ」
と言ってユヅルに抱きついた。
声を押し殺しながらユヅルの胸元で泣き続けるリオをユヅルが優しく抱きしめて頭を撫でる。
その自然な姿に私もミヅキも、そしてジョルジュたちも見守ることしかできなかった。
「ごめんね。最後じゃなかったね。僕たちはこれからもずっと友達だって言ったでしょう? だから、いつだって会えるよ」
そう言ってリオを宥める。
いつもは私の腕の中で守られているはずのユヅルの男気溢れる姿にドキッとする。
見たことがないユヅルの一面に思わずミヅキと顔を見合わせてしまった。
そんな私の動揺に気づかないままにユヅルとリオ、そしてリュカを交えて話は続いている。
「私もリオとずっと友達ですよ。それに心配なさらなくても、エヴァンさまやミヅキさまがついていらしたら、日本とフランスなんて近いのです。会いたいと思ったらすぐに連れてきてもらえますよ」
そうですよね、ミヅキさま……とミヅキに話が振られたところで、ようやくミヅキはユヅルの腕の中で安心しきっているリオを自分の胸に取り戻した。
と同時に私もユヅルを自分の胸に抱くと、ふわっと嬉しそうな笑みを浮かべるユヅルの表情が見えてホッとする自分がいた。
ミヅキはリュカの言葉に応えながら、ずっと心に留めていた話を始めた。
私がずっとミヅキにフランスに来ないかと誘っていた話だ。
その話にリオはもちろん、ユヅルも驚きの声を上げた。
だが、これは私とユヅルのためだけに提案した話ではない。
ミヅキと出会う前にリオに関わっていた奴らの全てが警察に捕まるなり制裁を与えられたりして、今はリオと関わりを持たずに過ごしているが、そいつらが日本にいる限りこれから先二度とリオと会わないと断言はできない。
リオが何も危険を感じることもなくのびのびと過ごすためには、日本から遠く離れたこのフランスで生活するのが良いと思ったのだ。
ここなら私と同様の要人として警護をつけることもできるし、大学にだって安心して通わせることができる。
ミヅキほどの実力があれば、ここで日本同様に弁護士として活躍することもできるし、セルジュのように私の秘書として働いてもらうのもいい。
これからロレーヌ家を今よりもさらに広げていくためにはミヅキのような優秀な人材に来てもらうのは必要不可欠だ。
ミヅキがリオにその話をしたということはミヅキの中では移住への気持ちが固まったということだろう。
と言ってもリオが嫌だといえばそれでこの話は終わり。
リオが納得して初めてこの話が進むのだ。
私はミヅキとリオの決断にあれこれ言うつもりは全くない。
フランスに移住を決めたら手を貸すし、日本にとどまることを決めても私のミヅキへの態度が変わるわけではない。
ただ、ミヅキとリオにとって幸せであればいいだけだ。
リオはあまりにも突然の話に驚きを隠せないようだったが、心配事がミヅキの両親、いや今はリオの両親でもあるのか。
その二人が寂しがらないかということだけなら、問題はないだろう。
なんせミヅキよりもリオを溺愛しているという話だ。
リオが望むならその通りにしてやるだろうし、いざとなれば家族で移住でもやれるだろう。
「ミヅキもリオもすぐに結論は出さなくていいんだ。とにかく、リオとユヅルは最後にならないってことだけをわかっていたらいい。私も二人がいつでも会えるように環境を整えるよ」
そう声をかけると、ミヅキだけでなくリオも安堵の表情を見せた。
「弓弦くん……リュカさんも、ずっと友達でいてね」
「ふふっ。もちろんだよ」
「ええ。もうずっと友達ですよ」
リオはユヅルとリュカの言葉に幸せそうにミヅキに抱きついていた。
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