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日本旅行編
最善の方法
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『そういえば、ロレーヌさんはうちの理央と凌也にフランス移住を勧めていらっしゃるそうですね』
『えっ? ええ。二人にとってもそれが最善の方法かと思っています』
突然のミヅキの父上からの話題に驚きつつも、私は冷静に言葉を返した。
『我がロレーヌ一族が創設したシュベルニー大学は素晴らしい教授たちも集まっていますし、セキュリティの観点から言ってもリオを学ばせるには最適な場所です。私の愛しいユヅルもいずれはその大学に進学させるつもりですよ』
『シュベルニー大学の功績はこちらにも轟いていますよ。ロレーヌさんが弓弦くんを行かせるというのなら、それは本当に素晴らしい大学なのでしょうね』
『ええ。それはもう。安心して預けてくださってかまいませんよ』
『ただ、今の時点でリオをフランスに行かせるのはかなり難しいでしょう』
ミヅキの父上のキッパリとした言葉に、一瞬その場がしんと静まり返った。
『その理由を伺っても?』
『ええ。理央は高卒認定試験に合格したとはいえ、まだまだ学校には不慣れな状況です。大学進学と同時に学校の勉強だけでなく言葉のハンデもある場所で新生活を始めるのは理央の心にかなりの負担がかかるでしょう。たとえ、凌也がそばにいても、弓弦くんのような友人がそばにいても、きっと理央は無理をし過ぎます。私は理央の父としても、主治医としても今現在でのフランス移住は認められません』
父上が心からリオを大切にしているというのが言葉の端々から伝わってくる。だからこそ、隣に座るミヅキも反論しないのだろう。
『まずはこちらの大学に進学させて、学校生活というものを学ばせてから編入という形でフランスに移住しても遅くはないでしょう』
『確かにリオの負担を考えればそれが最善なのかもしれないな……ユヅルもまだフランスの生活に慣れたというわけではない。だがそこにもっと不慣れなリオが来たら、リオを守ろうとしてユヅルも無理をしかねない。ユヅル自身ももう少し慣れさせてからリオたちを受け入れる方がいいのかもしれない』
『ええ、その通りだと思います。ロレーヌさんはさすが弓弦くんのことをよく考えていらっしゃる』
『ユウキにも同じ話を伝えた方がいいな』
『ええ、もうすぐ戻ってくるでしょうから話をしますよ。空良くんも理央とほとんど変わらない状況ですからね』
春にでも友人がフランスに移住してくれる。それを夢見ていたユヅルには少し残念な結果となったが、ユヅルのためにもリオとソラのためにもそれが最善だと分かれば、ユヅルは理解してくれるだろう。それに遅くなっても必ず来てくれるのだ。それがわかっているからこそ待つのもまた楽しいに違いない。
それからすぐにユウキがやってきた。
ユウキの母上はミヅキの母上に迎えられ奥の和室へと入っていき、ユウキとユウキの父上はミヅキに誘われてテラスへやってきた。
『久嗣。いいものを飲んでいたな。私もお土産を持ってきたぞ』
ユウキの父上は笑顔で紙袋からワインを取り出した。
こちらもペトリュスと変わらぬ希少なワイン。シャトー・マルゴー。
その年代を見ればかなりの価値がある逸品だとわかる。
それを惜しげもなく持参し、彼もまた手慣れた手つきでコルクを開けていく。
すぐにミヅキが新しいワイングラスを持ってきてくれて、美しいワインがそれに注がれていくのを幸せな気持ちで見つめた。
全員が揃っての乾杯をして、ワインをいただく。本当に贅沢な時間だ。
『寛海、先日話していたことをロレーヌさんに話したよ』
どうやら先ほどの話は二人の間でしっかりと話し合って決定していたことのようだ。
こうして話ができるというのも信頼関係があるからこそだろう。
『ロレーヌさん、うちの空良と寛人をお誘いいただいたことは本当に感謝しています』
『ええ。わかっています、私もミヅキの父上からの話で答えは決まりました。私のユヅルのためにもソラとリオのためにも無理はさせない方向でいきましょう』
私の言葉に父上たちは顔を見合わせて喜んでいた。
と同時にミヅキとユウキもお互いに顔を見合わせていた。
まだまだ父は偉大だと思っているのかもしれないな。
『ロレーヌさん、理央と凌也がフランスに移住した後は、私たちも近いうちに移住するつもりでいますので、家族ぐるみでよろしくお願いしますね』
『おお、それは楽しくなりそうですね。ユウキの父上も同じですか?』
『ええ。ソラがいないとうちの茜音が寂しがりますから、家族で移住するつもりですよ』
『それは素晴らしい。私たちも楽しくなりますよ』
私たちの未来は友人たちに囲まれて楽しくなりそうだ。
『そういえば、ユヅルたちはまだリオの部屋にいるのか?』
『ええ。きっと話が弾んでいるんでしょう。あの三人は本当に三つ子のように仲がいいですから』
『ああ。確かに。だが、一体なんの話で盛り上がっているんだろうな?』
『気になりますか?』
『まぁな、愛しいユヅルのことならなんでも知っておきたいと思うのが当然だろう。ミヅキもユウキも、それに父上たちも同じでしょう?』
『そうですね。ここにいる者みんな似た者同士ですよ』
狭量で嫉妬深い。きっと私の父もそうだったように遺伝だろうな。
『えっ? ええ。二人にとってもそれが最善の方法かと思っています』
突然のミヅキの父上からの話題に驚きつつも、私は冷静に言葉を返した。
『我がロレーヌ一族が創設したシュベルニー大学は素晴らしい教授たちも集まっていますし、セキュリティの観点から言ってもリオを学ばせるには最適な場所です。私の愛しいユヅルもいずれはその大学に進学させるつもりですよ』
『シュベルニー大学の功績はこちらにも轟いていますよ。ロレーヌさんが弓弦くんを行かせるというのなら、それは本当に素晴らしい大学なのでしょうね』
『ええ。それはもう。安心して預けてくださってかまいませんよ』
『ただ、今の時点でリオをフランスに行かせるのはかなり難しいでしょう』
ミヅキの父上のキッパリとした言葉に、一瞬その場がしんと静まり返った。
『その理由を伺っても?』
『ええ。理央は高卒認定試験に合格したとはいえ、まだまだ学校には不慣れな状況です。大学進学と同時に学校の勉強だけでなく言葉のハンデもある場所で新生活を始めるのは理央の心にかなりの負担がかかるでしょう。たとえ、凌也がそばにいても、弓弦くんのような友人がそばにいても、きっと理央は無理をし過ぎます。私は理央の父としても、主治医としても今現在でのフランス移住は認められません』
父上が心からリオを大切にしているというのが言葉の端々から伝わってくる。だからこそ、隣に座るミヅキも反論しないのだろう。
『まずはこちらの大学に進学させて、学校生活というものを学ばせてから編入という形でフランスに移住しても遅くはないでしょう』
『確かにリオの負担を考えればそれが最善なのかもしれないな……ユヅルもまだフランスの生活に慣れたというわけではない。だがそこにもっと不慣れなリオが来たら、リオを守ろうとしてユヅルも無理をしかねない。ユヅル自身ももう少し慣れさせてからリオたちを受け入れる方がいいのかもしれない』
『ええ、その通りだと思います。ロレーヌさんはさすが弓弦くんのことをよく考えていらっしゃる』
『ユウキにも同じ話を伝えた方がいいな』
『ええ、もうすぐ戻ってくるでしょうから話をしますよ。空良くんも理央とほとんど変わらない状況ですからね』
春にでも友人がフランスに移住してくれる。それを夢見ていたユヅルには少し残念な結果となったが、ユヅルのためにもリオとソラのためにもそれが最善だと分かれば、ユヅルは理解してくれるだろう。それに遅くなっても必ず来てくれるのだ。それがわかっているからこそ待つのもまた楽しいに違いない。
それからすぐにユウキがやってきた。
ユウキの母上はミヅキの母上に迎えられ奥の和室へと入っていき、ユウキとユウキの父上はミヅキに誘われてテラスへやってきた。
『久嗣。いいものを飲んでいたな。私もお土産を持ってきたぞ』
ユウキの父上は笑顔で紙袋からワインを取り出した。
こちらもペトリュスと変わらぬ希少なワイン。シャトー・マルゴー。
その年代を見ればかなりの価値がある逸品だとわかる。
それを惜しげもなく持参し、彼もまた手慣れた手つきでコルクを開けていく。
すぐにミヅキが新しいワイングラスを持ってきてくれて、美しいワインがそれに注がれていくのを幸せな気持ちで見つめた。
全員が揃っての乾杯をして、ワインをいただく。本当に贅沢な時間だ。
『寛海、先日話していたことをロレーヌさんに話したよ』
どうやら先ほどの話は二人の間でしっかりと話し合って決定していたことのようだ。
こうして話ができるというのも信頼関係があるからこそだろう。
『ロレーヌさん、うちの空良と寛人をお誘いいただいたことは本当に感謝しています』
『ええ。わかっています、私もミヅキの父上からの話で答えは決まりました。私のユヅルのためにもソラとリオのためにも無理はさせない方向でいきましょう』
私の言葉に父上たちは顔を見合わせて喜んでいた。
と同時にミヅキとユウキもお互いに顔を見合わせていた。
まだまだ父は偉大だと思っているのかもしれないな。
『ロレーヌさん、理央と凌也がフランスに移住した後は、私たちも近いうちに移住するつもりでいますので、家族ぐるみでよろしくお願いしますね』
『おお、それは楽しくなりそうですね。ユウキの父上も同じですか?』
『ええ。ソラがいないとうちの茜音が寂しがりますから、家族で移住するつもりですよ』
『それは素晴らしい。私たちも楽しくなりますよ』
私たちの未来は友人たちに囲まれて楽しくなりそうだ。
『そういえば、ユヅルたちはまだリオの部屋にいるのか?』
『ええ。きっと話が弾んでいるんでしょう。あの三人は本当に三つ子のように仲がいいですから』
『ああ。確かに。だが、一体なんの話で盛り上がっているんだろうな?』
『気になりますか?』
『まぁな、愛しいユヅルのことならなんでも知っておきたいと思うのが当然だろう。ミヅキもユウキも、それに父上たちも同じでしょう?』
『そうですね。ここにいる者みんな似た者同士ですよ』
狭量で嫉妬深い。きっと私の父もそうだったように遺伝だろうな。
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