大富豪ロレーヌ総帥の初恋

波木真帆

文字の大きさ
164 / 177
日本旅行編

可愛い習慣

「ユヅル、随分と部屋にこもっていたがそんなに楽しかったか?」

私の問いかけに焦った表情を見せながらも、おしゃべりをしていたと返してきた。
リオとソラにも同意を求め、嘘がつけない三人は必死に誤魔化してくる。
それがなんとも可愛くて自然と笑顔が溢れてしまう。

これ以上揶揄うのは良くないな。
この辺にしておこうかと思っていると、リオが少しモジモジしながら私とユウキに向かって声をかけてきた。

「あの……ご飯食べ終わったらまた弓弦くんと空良くんとここでおしゃべりしたいんですけど、エヴァンさんと悠木さん……許してもらえますか?」

リオのその言葉にすぐにソラとユヅルも言葉を重ねる。

「寛人さん、僕からもお願いします!」

「エヴァンさん、僕も二人と過ごしたい……いい?」

やっぱり今日中に終わらせたいと見える。
こんなにも可愛くおねだりされてはダメだなんて言えるはずないな。

私がユウキに視線を向けると、ユウキは小さく頷いた。
やはり同じ気持ちか。滅多にあることではないし、ここは好きにやらせてやるか。

「私たちも日本滞在中の予定をしっかりと話し合おうと思っていたからな。ただ、明日は朝から出かけることになっているから夜更かしはやめたほうがいいだろう。だから、そうだな……夜の11時までなら許可しよう。ミヅキ、ユウキ。いいか?」

その提案にミヅキもユウキも納得してくれた。おそらくあの調子なら11時には完成するだろう。

私たちが了承すると、ユヅルはリオとソラと手を取り合って喜んでいた。

すっかりご機嫌になった姫たちをリビングに連れていきながら、私はユヅルに、リオの部屋はそんなに楽しかったかと尋ねてみた。

「僕……お友だちの部屋に入るって初めてだったんです。だからなんだかすごく新鮮でした」

なるほど、そういうことだったか。
確かにフランスでもその経験はさせたことがなかったな。

だからこそ余計に楽しかったんだろう。
この日本で体験させてあげられて本当に良かった。

そう思っていると、後ろから

「今度は僕の家にも遊びに来てほしいなぁ」

とソラが声をかけてくれた。
その言葉にユヅルが条件反射のように行きたい! と告げると、ソラがユウキに自分の家に招待したいとねだる声が聞こえた。

もちろんユウキも私たちが行きたいといえば断らないだろう。
ソラが望んでいるなら余計に叶えてあげたいと思うだろう。
だが、日本滞在の時間は限りがある。

ソラの家に行くなら、ケイトやシューゴたちの家にもきて欲しいという話になりそうだし、しっかりと予定を立てないとどれも中途半端になってしまう。

それをどうやって伝えようかと思っていると、ユウキがソラに

「空良が理央くんの部屋でおしゃべりしている間に、しっかりと予定を立てておくさ。もし、今回無理でも次に遊びに来てもらった時でもいいんだからな」

と優しく言っていた。

ソラは次がある、その言葉に納得していたように見えた。

そうだ。私たちが日本に来るのは今回が最初で最後というわけではないのだ。
今回行けなくともまた次の機会がある。私たちはいつでも連絡の取り合える友人なのだから。
それがわかったからソラも納得してくれたのだろう。

ユヅルもソラの言葉に嬉しそうに笑っていた。

「さぁさぁ、座ってくれ。ロレーヌさんと弓弦くんはこっち。寛海たち家族はそこだ」

ダイニングルームに連れて行ってもらうとすぐにミヅキの父上が私たちの席を教えてくれた。
テーブルにはすでにたくさんの料理が並べられている。

昼に食べたおせち料理とローストビーフもあるが、それ以外にも料理が並べられている。
本当にミヅキの父上は料理が得意なようだ。

「さぁ、どうぞ」

渡されたご飯茶碗には具がたくさん入った色付きの米が盛られている。
これはなんというのだったか……。

考えていると、

「わぁ、炊き込みご飯だ!」

とユヅルの嬉しそうな声が聞こえた。

ああ、そうだ。炊き込みご飯だ。
フランスでもたまに食卓にご飯を出すように行っているが、炊き込みご飯は出してなかったな。
こんなにもユヅルが喜ぶのなら、時々出すように伝えておかねばな。これはジュールに報告だ。

その後運ばれてきたのは、モチが入っていないゾウニ。
これもゾウニと呼ぶのかはわからないが、昼見たものも同じようなものだからきっとそうなんだろう。

「やっぱり麗花の雑煮も食べて欲しくてね。うちは雑煮だけは麗花の味に決めてるんだよ。お義母さん譲りで最高に美味しいんだ」

「お昼に食べたお雑煮もすっごく美味しかったけど、ママのお雑煮もすっごく美味しいんだよ!」

そういえば、昼のゾウニの中にミヅキの母上が作ったものはなかったな。
ミヅキの父上とリオが絶賛するゾウニか。それは楽しみだ。

「ふぅー、美味しかった!」

食事を終えて、ユヅルが可愛いお腹を摩っていると、リオとソラも同じようにお腹を摩っているのが見える。
これはユヅルだけかと思っていたが、みんなするものなのか?
流石にミヅキたちはしないようだが、ユヅルもリオもソラも可愛いからいいか。
感想 91

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

私の弟なのに

あんど もあ
ファンタジー
パン屋の娘マリーゼの恋人は、自警団のリートさん。だけど、リートには超ブラコンの姉ミラがいる。ミラの妨害はエスカレートしてきて……。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年