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番外編
制服の魔法 3
彼が私のベッドにいる。
それを目の当たりにして、良からぬ妄想が膨らんでしまう。
だめだ、だめだ!
彼を守るためにここに連れてきたはずなのに。
私がそんなことを思ってしまってはいけない。
一度この場から離れて気持ちを落ち着かせなければいけない。
「コーヒーでいいかな?」
「はい。ありがとうございます」
「ゆっくり寛いでいてくれ」
なんとか冷静を装って言葉を交わし、扉を閉めた。
急いで一階に下り、干してある洗濯物から自分の服を選び取った。
着替えを済ませて、キッチンに向かう。
何か、茶菓子を……
そう考えて、母へのお土産の焼き菓子を買ったのを思い出した。
母には申し訳ないが、また買ってくればいい。
食器棚から、母がうちでお茶会を開くときに使うケーキスタンドを取り出し、焼き菓子を並べた。
私が選んだものを敬介くんが気に入ってくれたら嬉しいが。
トレイに二人分のコーヒーとケーキスタンドを載せて自室に向かう。
自分の部屋を開けるのに、なんだかとても緊張してしまう。
一応ノックして扉を開けると、彼は先ほどと変わらず私のベッドにちょこんと座っていた。
ただ一つ違っていたのは、ジャケットを脱いでいたことだけ。
だが彼の服装が薄手のシャツになったことで私の興奮は高まってしまっていた。
「お待たせ」
それでも必死に興奮を隠して声をかける。
「あっ……」
敬介くんは私をみて、ちょっと残念そうな表情を見せた。
もしかして私が興奮していることに気づいたか?
「あの、どうかした?」
「あ、いえ。制服……着替えちゃったんだなって……」
「制服?」
「はい。すごくカッコ良かったからもう少し見ていたかったんですけど……」
「えっ! わっ!」
まさかそんな言葉が返ってくるとは思わず、危うく持っていたトレイを落としそうになってしまった。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ」
私を心配して立ちあがろうとする彼を制して、急いでテーブルにトレイを置いた。
多分さっきのは私の聞き間違いだろう。
彼がそんなことを言うはずがない。
あれは私の願望が聞かせた空耳だ。
心の中で深呼吸をして何事もなかったように声をかけた。
「良かったら、このお菓子も摘んで」
「わぁ、ちょうど甘いもの食べたかったので嬉しいです」
ベッドから立ち上がり、ローテーブルを置いているラグの上にちょこんと座る。
「砂糖とミルクも良かったら使って」
「じゃあミルクだけ。甘いものと一緒の時は砂糖は入れないようにしているんです」
そう言ってミルクをカップに注ぐ。
「いただきます」
口をつけると少し苦そうな表情をするが、小さな焼き菓子を口に入れるとふわりとした可愛らしい笑顔を見せた。
「ん、美味しいです」
「気に入ってもらえて嬉しいよ。まだあるからたくさん食べて」
「はい。これ、もしかしてfascinateのですか?」
そう言われて店の名前を思い出す。確かそんな名前だったな。
「よくわかったね」
「俺、ここのクッキーが好きで。だから周平さんが出してくれて嬉しいです。覚えててくれたのかなって」
「えっ?」
言葉の最後が聞き取れなくてなんと言ったのかわからない。
「あ、なんでもないです。美味しいですね、これ」
彼の細い指が小さな焼き菓子を摘んで口に入れる。
それが妙にエロく感じてついじっと見つめてしまった。
「周平さんも食べますか?」
どうやら食べたがっていると勘違いされてしまったようだ。
だが、私は甘いものは一切食べない。
「いや、わた――」
「どうぞ、あーん」
断ろうと思った矢先に、彼がさっき口に入れた指で私に小さな焼き菓子を差し出してくる。
しかも可愛らしい笑顔とともに。
それがあまりにも魅惑的で、私は茫然としながら口を開けた。
「美味しいですよ」
その笑顔に見惚れてしまった私は、優しく食べさせてくれた彼の指ごと口の中に入れてしまった。
それを目の当たりにして、良からぬ妄想が膨らんでしまう。
だめだ、だめだ!
彼を守るためにここに連れてきたはずなのに。
私がそんなことを思ってしまってはいけない。
一度この場から離れて気持ちを落ち着かせなければいけない。
「コーヒーでいいかな?」
「はい。ありがとうございます」
「ゆっくり寛いでいてくれ」
なんとか冷静を装って言葉を交わし、扉を閉めた。
急いで一階に下り、干してある洗濯物から自分の服を選び取った。
着替えを済ませて、キッチンに向かう。
何か、茶菓子を……
そう考えて、母へのお土産の焼き菓子を買ったのを思い出した。
母には申し訳ないが、また買ってくればいい。
食器棚から、母がうちでお茶会を開くときに使うケーキスタンドを取り出し、焼き菓子を並べた。
私が選んだものを敬介くんが気に入ってくれたら嬉しいが。
トレイに二人分のコーヒーとケーキスタンドを載せて自室に向かう。
自分の部屋を開けるのに、なんだかとても緊張してしまう。
一応ノックして扉を開けると、彼は先ほどと変わらず私のベッドにちょこんと座っていた。
ただ一つ違っていたのは、ジャケットを脱いでいたことだけ。
だが彼の服装が薄手のシャツになったことで私の興奮は高まってしまっていた。
「お待たせ」
それでも必死に興奮を隠して声をかける。
「あっ……」
敬介くんは私をみて、ちょっと残念そうな表情を見せた。
もしかして私が興奮していることに気づいたか?
「あの、どうかした?」
「あ、いえ。制服……着替えちゃったんだなって……」
「制服?」
「はい。すごくカッコ良かったからもう少し見ていたかったんですけど……」
「えっ! わっ!」
まさかそんな言葉が返ってくるとは思わず、危うく持っていたトレイを落としそうになってしまった。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ」
私を心配して立ちあがろうとする彼を制して、急いでテーブルにトレイを置いた。
多分さっきのは私の聞き間違いだろう。
彼がそんなことを言うはずがない。
あれは私の願望が聞かせた空耳だ。
心の中で深呼吸をして何事もなかったように声をかけた。
「良かったら、このお菓子も摘んで」
「わぁ、ちょうど甘いもの食べたかったので嬉しいです」
ベッドから立ち上がり、ローテーブルを置いているラグの上にちょこんと座る。
「砂糖とミルクも良かったら使って」
「じゃあミルクだけ。甘いものと一緒の時は砂糖は入れないようにしているんです」
そう言ってミルクをカップに注ぐ。
「いただきます」
口をつけると少し苦そうな表情をするが、小さな焼き菓子を口に入れるとふわりとした可愛らしい笑顔を見せた。
「ん、美味しいです」
「気に入ってもらえて嬉しいよ。まだあるからたくさん食べて」
「はい。これ、もしかしてfascinateのですか?」
そう言われて店の名前を思い出す。確かそんな名前だったな。
「よくわかったね」
「俺、ここのクッキーが好きで。だから周平さんが出してくれて嬉しいです。覚えててくれたのかなって」
「えっ?」
言葉の最後が聞き取れなくてなんと言ったのかわからない。
「あ、なんでもないです。美味しいですね、これ」
彼の細い指が小さな焼き菓子を摘んで口に入れる。
それが妙にエロく感じてついじっと見つめてしまった。
「周平さんも食べますか?」
どうやら食べたがっていると勘違いされてしまったようだ。
だが、私は甘いものは一切食べない。
「いや、わた――」
「どうぞ、あーん」
断ろうと思った矢先に、彼がさっき口に入れた指で私に小さな焼き菓子を差し出してくる。
しかも可愛らしい笑顔とともに。
それがあまりにも魅惑的で、私は茫然としながら口を開けた。
「美味しいですよ」
その笑顔に見惚れてしまった私は、優しく食べさせてくれた彼の指ごと口の中に入れてしまった。
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