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番外編
俺の生きる糧
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重厚な扉が開かれると、明るい光と共に歓喜の声に迎え入れられる。
「わぁーっ! 綺麗っ!」
『素敵っ!!」
「おめでとう! 理央くん、とっても綺麗っ!!」
緊張していた理央もみんなからの祝福の声に笑顔が溢れている。
ああ、最高の笑顔だ。
こんな特別な日のこの笑顔すら独り占めしてしまいたいと思うほど、狭量な俺に呆れる。
だが理央がこんな最高の笑顔になるのも俺との結婚式だからと自分に言い聞かせながら、歩を進める。
「観月! おめでとう!」
聞き馴染みのある声に顔を向ければ、綾城が今までに見たこともないような嬉しそうな表情を見せている。
あいつの式で思わず涙を流してしまったことを覚えているが、綾城の目にはもううっすら涙が溜まっているのが見える。
「ありがとう、でも早すぎだろ」
「うるさい! 仕方ないだろ!」
すでに佳都くんという一生のパートナーを得た綾城には特別な思いがあるのだろう。
それがわかるから余計に嬉しかった。
「綾城、本当にありがとう」
綾城から繋がった糸のおかげで俺は理央に出会えたんだ。
高校の入学式前の春休みにあいつと出会った、正確には再会した、あの日から今日のこの日に向けて運命は進んでいたんだろう。
綾城と、そして悠木と出会えたことは一生の俺の宝だ。
そして理央と出会えたことの奇跡に感謝しながら、俺は司祭さまの待つ祭壇に上がった。
慣れないドレスで歩くのは大変だったろうと思いながら、そっと理央を見ると、目にいっぱい涙を溜めながら必死に堪えている。
俺はすぐにポケットからハンカチを取り出し、理央の涙に当ててやると真っ白なハンカチに涙が吸い込まれていった。
「理央、大丈夫か?」
「僕……嬉しくて……」
「ああ、そうだな。俺も最高に嬉しいよ。今日この日に理央が隣にいてくれることが何よりも」
「凌也さん……っ」
理央が両手を伸ばし、嬉しそうに抱きついてくるのを受け止めながら幸せを噛み締めていると、また扉が開き礼拝堂が歓声に包まれた。
誰からも負の感情が一切ない、幸せだけに包まれた空間。
その中を悠木と空良くんが祝福の声を受けながら歩いてくるのが見える。
「理央、悠木と空良くんもさっき俺たちが味わったような幸せを感じているんだろうな」
「はい。空良くん、とっても嬉しそう」
「ああ。俺もあんな嬉しそうな悠木の顔を初めてみたよ」
「幸せですね」
「ああ、幸せだな」
俺たちは近づいてくる二人の様子を見ながら、自分たちの余韻に浸り静かに見守っていた。
祭壇で俺たち四人が並んで見守るなか、最後にロレーヌ総帥と弓弦くんが入ってきた。
「――っ!!」
一瞬、二人の後ろにもうひと組の姿が見えたような……。
だが、隣にいる理央には弓弦くんたちだけしか見えていないようだ。
おかしいなと思いながら、そっと悠木に目を向けると悠木もまた信じられないものを見たとでもいうような表情で俺を見ていた。
俺が頷くと、悠木も目を丸くしつつも頷くのが見えた。
医者であり、弁護士である俺たちがそんな非科学的なことを言うのはおかしいのかもしれない。
だがそう考えなければ説明がつかないのだ。
あれはきっと、弓弦くんの両親だ。
ニコラさんと天音さん。
愛し合いながら、その仲を引き裂かれそして永遠に離れてしまった二人。
ロレーヌ総帥と弓弦くんの糸が繋がったことで、ここフランスで再会を果たした二人。
たとえ、骨であっても魂が宿っていたんだろう。
ロレーヌ総帥と弓弦くんの愛を結びつけた二人の想い。
この城で共に愛を誓いたい、そう思っても不思議はないだろう。
決して二人に悪影響を及ぼすことがないのだから、大騒ぎすることもない。
俺たちはそう目で合図しあった。
たくさんの歓声に包まれながら、ロレーヌ総帥と弓弦くんが俺たちの間に入り、式が始まった。
フランス語で朗読される聖書の語りは、理央には理解できないだろうが真剣に話を聞いている。
そんな健気な姿に心を打たれる。
きっと耳ではなく、心で話を聞いているのだろうな。
ひとしきり聖書の話を終えると、司祭さまはパタンと聖書を閉じ、我々に視線を向けた。
そして、俺たちを見ながら口を開いた。
「キョウ、このバに、アツマってくれた、みなさまの、シュクフクを、ウけ、あなたガタは、シアワせに、ならな、ケレバ、イケマセン。リオ、あなたのエガオは、リョウヤの、イきるカテ。あなたがいつも、エガオを、たやさぬヨウニ。そして、リョウヤは、リオの、このエガオを、ケッして、くもらせないヨウニ。おタガイを、ソンケイしあって、イきるコト、がダイジ」
辿々しい日本語ではあったが、司祭さまの言葉が胸を打つ。
そう。
理央の笑顔は俺の生きる糧、そのもの。
理央が笑顔でいられることが俺の喜びだ。
素直な理央は、司祭さまの言葉にしっかりと返事を返した。
涙を浮かべながら、笑顔でいると返事をしてくれたのだ。
だから俺は誓おう。
決して悲しい思いなどさせないと。
理央だけを心の底から愛している。
その誓いを胸に俺は理央を抱きしめた。
「わぁーっ! 綺麗っ!」
『素敵っ!!」
「おめでとう! 理央くん、とっても綺麗っ!!」
緊張していた理央もみんなからの祝福の声に笑顔が溢れている。
ああ、最高の笑顔だ。
こんな特別な日のこの笑顔すら独り占めしてしまいたいと思うほど、狭量な俺に呆れる。
だが理央がこんな最高の笑顔になるのも俺との結婚式だからと自分に言い聞かせながら、歩を進める。
「観月! おめでとう!」
聞き馴染みのある声に顔を向ければ、綾城が今までに見たこともないような嬉しそうな表情を見せている。
あいつの式で思わず涙を流してしまったことを覚えているが、綾城の目にはもううっすら涙が溜まっているのが見える。
「ありがとう、でも早すぎだろ」
「うるさい! 仕方ないだろ!」
すでに佳都くんという一生のパートナーを得た綾城には特別な思いがあるのだろう。
それがわかるから余計に嬉しかった。
「綾城、本当にありがとう」
綾城から繋がった糸のおかげで俺は理央に出会えたんだ。
高校の入学式前の春休みにあいつと出会った、正確には再会した、あの日から今日のこの日に向けて運命は進んでいたんだろう。
綾城と、そして悠木と出会えたことは一生の俺の宝だ。
そして理央と出会えたことの奇跡に感謝しながら、俺は司祭さまの待つ祭壇に上がった。
慣れないドレスで歩くのは大変だったろうと思いながら、そっと理央を見ると、目にいっぱい涙を溜めながら必死に堪えている。
俺はすぐにポケットからハンカチを取り出し、理央の涙に当ててやると真っ白なハンカチに涙が吸い込まれていった。
「理央、大丈夫か?」
「僕……嬉しくて……」
「ああ、そうだな。俺も最高に嬉しいよ。今日この日に理央が隣にいてくれることが何よりも」
「凌也さん……っ」
理央が両手を伸ばし、嬉しそうに抱きついてくるのを受け止めながら幸せを噛み締めていると、また扉が開き礼拝堂が歓声に包まれた。
誰からも負の感情が一切ない、幸せだけに包まれた空間。
その中を悠木と空良くんが祝福の声を受けながら歩いてくるのが見える。
「理央、悠木と空良くんもさっき俺たちが味わったような幸せを感じているんだろうな」
「はい。空良くん、とっても嬉しそう」
「ああ。俺もあんな嬉しそうな悠木の顔を初めてみたよ」
「幸せですね」
「ああ、幸せだな」
俺たちは近づいてくる二人の様子を見ながら、自分たちの余韻に浸り静かに見守っていた。
祭壇で俺たち四人が並んで見守るなか、最後にロレーヌ総帥と弓弦くんが入ってきた。
「――っ!!」
一瞬、二人の後ろにもうひと組の姿が見えたような……。
だが、隣にいる理央には弓弦くんたちだけしか見えていないようだ。
おかしいなと思いながら、そっと悠木に目を向けると悠木もまた信じられないものを見たとでもいうような表情で俺を見ていた。
俺が頷くと、悠木も目を丸くしつつも頷くのが見えた。
医者であり、弁護士である俺たちがそんな非科学的なことを言うのはおかしいのかもしれない。
だがそう考えなければ説明がつかないのだ。
あれはきっと、弓弦くんの両親だ。
ニコラさんと天音さん。
愛し合いながら、その仲を引き裂かれそして永遠に離れてしまった二人。
ロレーヌ総帥と弓弦くんの糸が繋がったことで、ここフランスで再会を果たした二人。
たとえ、骨であっても魂が宿っていたんだろう。
ロレーヌ総帥と弓弦くんの愛を結びつけた二人の想い。
この城で共に愛を誓いたい、そう思っても不思議はないだろう。
決して二人に悪影響を及ぼすことがないのだから、大騒ぎすることもない。
俺たちはそう目で合図しあった。
たくさんの歓声に包まれながら、ロレーヌ総帥と弓弦くんが俺たちの間に入り、式が始まった。
フランス語で朗読される聖書の語りは、理央には理解できないだろうが真剣に話を聞いている。
そんな健気な姿に心を打たれる。
きっと耳ではなく、心で話を聞いているのだろうな。
ひとしきり聖書の話を終えると、司祭さまはパタンと聖書を閉じ、我々に視線を向けた。
そして、俺たちを見ながら口を開いた。
「キョウ、このバに、アツマってくれた、みなさまの、シュクフクを、ウけ、あなたガタは、シアワせに、ならな、ケレバ、イケマセン。リオ、あなたのエガオは、リョウヤの、イきるカテ。あなたがいつも、エガオを、たやさぬヨウニ。そして、リョウヤは、リオの、このエガオを、ケッして、くもらせないヨウニ。おタガイを、ソンケイしあって、イきるコト、がダイジ」
辿々しい日本語ではあったが、司祭さまの言葉が胸を打つ。
そう。
理央の笑顔は俺の生きる糧、そのもの。
理央が笑顔でいられることが俺の喜びだ。
素直な理央は、司祭さまの言葉にしっかりと返事を返した。
涙を浮かべながら、笑顔でいると返事をしてくれたのだ。
だから俺は誓おう。
決して悲しい思いなどさせないと。
理央だけを心の底から愛している。
その誓いを胸に俺は理央を抱きしめた。
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