理想の相手見つけました! 〜イケメン33才童貞男がノンケなあの子に恋をする

波木真帆

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視察社員はゲイ?

鷹野たかの、ちょっといいか」

「はい。なんでしょう?」

「ここじゃなんだから、あっちの会議室で」

ようやく昼休憩の時間かと一息吐いたのを見計らったように声をかけてきたのは神村かみむら部長。
令和になった今でも昭和の上司のように振る舞っていて会社での評判はあまり良くない。

それでも部長という役職につけているのは、彼の父がこの会社の先代社長の右腕として働いていたからだ。
彼の功績なしには今の会社はなかったと言われるほどだったから、その恩に報いるために彼の息子をコネ入社させたというわけだ。

ただ、彼の父は仕事に対する才能はあったが、子どもの育て方は間違えたようだ。
全くの無能っぷりに今の彼の主な仕事は、彼の父から引き継いだ会社との接待だけ。
それが終われば、彼は即クビを切られるだろう。

そんな部長との話で貴重な昼休憩の時間を削りたくはないが、一応上司だ。
仕方がない。

会議室に移動して、話を聞くと部長は鼻息荒く嫌悪感たっぷりに話を始めた。

「明日から三日間。アメリカ本社から社長一族の社員が視察に来るのは知っているだろう?」

「はい。それが何か?」

「実はな、明日やってくる奴のとんでもない情報が舞い込んできたんだ」

「奴って……本社の上司ですよ」

「上司と言っても俺より年下だろうが! 年上を敬うのが当然――」
「はいはい。それで、とんでもない情報ってなんですか?」

途中で話を遮って怒り出すかと思ったが、部長も早くその情報を言いたかったらしくすぐにそっちの話題に戻った。

「実はな、そいつゲイなんだそうだ」

「はっ?」

「なぁ? 気持ち悪いだろ? 男が男に欲情するなんてな。そんな奴が視察に来るとか最悪だろ! 大体、新規事業の進捗状況を聞きにわざわざ日本に視察に来るとかおかしいんだよ。どうせ日本に男探しに来るだけなんだよ、あー気持ち悪い!」

「部長……流石に今の言葉はちょっと……。今の時代にそんなことを言ってはすぐに炎上しますよ」

「炎上? どこが燃えるっていうんだ? 大体、今は個性がどうたらこうたら綺麗事を言ってるが、この世の常として男は女に欲情するって決まってんだよ。でっかい乳と、ぷりぷりした尻がたまらんだろうが。鷹野、すました顔してるがお前だってそうだろう?」

「部長、そんなことを聞くのも今の時代、セクハラでコンプラ違反ですよ」

「またそうやって横文字で言えばいいと思ってるんだろ」

「そうじゃなくて――」
「ああ、もういいから! とにかく、視察に来る奴の接待はお前に全て任せる。俺みたいな逞しい男に欲情されても困るから俺は奴が来ている間、有給とってるから連絡して来んなよ。それから、今日の夜9時に奴が成田に到着するから迎えに行ってこい。わかったな!」

「あっ、ちょ――!」

俺との話が鬱陶しくなってきたのか、部長は言いたいだけ言い放って会議室を出ていってしまった。

はぁー、面倒くさいからって部下に丸投げかよ。
ほんと最悪だな、あの部長。

夜9時に成田に迎えにって……これも残業代出るんだろうな?

それにしても、本社から視察にくる社員がゲイか……。

やっぱりアメリカでは大っぴらにしているんだろうか。
それとも社長一族である彼の情報がたまたま漏れただけなのか。

いずれにしてもゲイバレしてるのは気持ち的には楽なんだろうか。
俺にはわからない。


俺は鷹野たかの浚介しゅんすけ
入社10年を超えた、東京支社勤務の33歳。
役職は課長だが、会社からは部長と同等の扱いをされている。
あの形だけの部長がいる間だけ頼むと懇願されてこの役職に落ち着いているが、それでも同期の中では一番の出世頭だ。

物心ついた時から整った顔立ちと、頭の良さでいつも女性たちにモテまくっている俺だが、中学生になった頃から自分はゲイだと認識していた。

女性の胸や尻にはなんの興味もない。
それよりも男性の裸の方に興味がある。

真っ白な陶器のような肌。
華奢で折れそうなほど細い腰。
ぷるりとした果実のような可愛らしいペニス。

そんな可愛い子を組み敷いて自分のアレ・・挿入いれて喘がせてみたいという願望はあるが、そんなアニメの主人公のような完璧な子が存在するとは思っていない。

どんな子でもいい。
俺の愛を受け入れてくれる子なら……そう思ったが、日本に住んでいればそもそも同じゲイとの出会いの場もない。
取引先の人間も含めていろんな人と会う機会が山のようにあるが、その中で誰がゲイかなんてわかるはずもない。
みんな俺のように大っぴらにできずに隠して生きているんだろうから。

かといって、外を歩けば否が応にも目立つ俺が、そんな出会いを求めて二丁目のゲイバーなんかに行けば、翌日には確実にソッチだという噂が流れてしまうだろうと考えたら行動することは憚られた。

女性たちからはひっきりなしに告白される毎日。
だが、それを受け入れることもできず、結局、誰とも経験しないまま俺は33になってしまっていた。

そんな矢先の今回の彼の訪問。
ゲイだろうかと悩む手順をすっ飛ばして、初めて出会うことができる相手だ。
もしかしてこれが俺にとっての最初で最後の出会いじゃないか?
そう思ったら、途端に胸が高鳴った。

相手もゲイ。
俺のことがタイプでなくても、一度遊んでくれるだけでもいい。
俺の童貞をあげる代わりに一度だけで良いから楽しませてもらえないか?

そんな邪な考えが頭をよぎった。

もしかしたら相手も突っ込みたいのかもしれないが、その時は俺の尻を捧げればいい。
そんな願望は一ミリもないが、童貞を卒業できるのなら、最初で最後の肌の温もりを感じられるのなら、そこは妥協しよう。
彼も同じだとしても、お互いに挿れ合うと提案したら納得してくれるかもしれない。

もしかして相性さえ良ければこのまま恋人に……なんてことにもなれるかも。

そんな微かな希望が見えて、俺は迎えに行くのが楽しみになっていた。

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