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素晴らしい才能
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「名嘉村くん、それならレシピは必要ないかな」
「えっ? 伊織さん、どうしてですか?」
「これ、八尋さんに教えてもらったんです。だから、八尋さんに教えてもらったらこれよりもっと美味しいものが食べられますよ」
「そう、なんですか?」
「ええ。お互いに知らないレシピを教え合ってますが、私が八尋さんに教えてもらうことのほうが多いですし、八尋さんの料理センスは素晴らしいですよ。イリゼホテルグループのオーナーの浅香さんも引き抜きたいくらいだと仰ってるくらいですから」
「ええ――っ、すごいんですね」
あの高級ホテル、イリゼグループのオーナー自らスカウトされるだなんて……。
でも納得だな。
八尋さんの料理はどれもすごく美味しいんだから。
「じゃあ、平松くんが八尋さんに習ったら、ものすごく上達するだろうね」
名嘉村さんはそう言ってくれるけれど、自分が料理が上手くなっている未来は全然見えないけど……。
ご飯を炊くのを教えてもらったばかりのど素人だけど、いつかこんなすごいローストビーフを作れる日がくるんだろうか……。
想像つかないな。
「そうだといいんですけど……」
半ば諦めモードで答えると、目の前に座っていた安慶名さんが優しく声をかけてくれた。
「もし、八尋さんに料理を習って上手くできなくてもがっかりすることはないですよ。人には向き不向きがありますから。料理を習ってすぐにその通りにできる人もいれば、どれだけ練習してもできない人がいるんです。どれだけ練習してもできない人は無理して料理をする必要なんてないんですよ。そういう人は他に素晴らしい才能があるんです」
「えっ……他の、才能、ですか?」
安慶名さんの言葉に思わず聞き返してしまう。
「ええ。私の大学の恩師の一人に片付けと料理が苦手な人がいるんですが、洗濯に関しては驚くほどプロフェッショナルで、どんなシミでも必ず落とすことができるそうですよ。それにアイロンも機械でやったようにしわ一つなくかけることができるそうです。それってすごい才能だと思いませんか?」
「はい。すごいです……」
いや、ある意味、料理よりその才能欲しいかも……。
「ふふっ。伊織さん、平松くんの物凄い才能なら私も名嘉村くんももう知ってますよ」
「悠真、そうなんですか?」
「ええ、ねぇ。平松くん」
「そんな、俺なんか何も……」
「何言ってるんですか。すごい絵の才能を持っているでしょう?」
「あっ!」
そう言われて、砂川さんに俺の絵をものすごく褒めてもらったことを思い出した。
「絵の才能ですか、それはすごいですね。私には絵の才能はありませんから」
そう言ってくれる安慶名さんの表情がすごく優しい。
「本当にすごいんですよ、平松くんの絵は。今度イリゼホテルのパンフレットにも採用されましたから、伊織さんも完成したものが見られますよ」
「それは楽しみですね」
砂川さんと安慶名さんにものすごく褒められて恥ずかしくなってしまう。
でも、なんだか嬉しくてあったかい気持ちになる。
砂川さんはいい人だってわかっていたけど、安慶名さんもすごく優しくていい人だな。
食事を終えて、安慶名さんが持ってきてくれた美味しいデザートを食べていると、
「そういえば、明日から数日東京に行ってきますので、会社のことは名嘉村くんに任せています。何かあれば名嘉村くんに声をかけてくださいね」
と砂川さんが教えてくれた。
「出張、ということですか?」
「ええ。前に平松くんと東京で会った時のように、時々社長の仕事の関係で私も東京での仕事をすることがあるんですよ。今回はあちらで社長と合流することになっています。私は三日ほどで帰ってきますが、社長は先日もお話しした通り、もうしばらく東京で過ごして来週には藤乃くんと一緒にこちらにきますよ」
そうか、もう来週になったんだ。
藤乃くんは俺を覚えているだろうか。
俺を見た瞬間、嫌だったこととか思い出さなかったらいいけど。
それにしても八尋さんもいないのに砂川さんもここからいなくなるなんてなんだか寂しいな……。
八尋さんも早ければ明日って言ってくれたけど、難しいだろうな。
「あの……明日から、砂川さんが東京だから安慶名さんは砂川さんの家に泊まりにきたんですか?」
しばらく会えなくなるから寂しくて泊まりに来たのかなと思ったら、つい聞いてしまった。
けれど、俺の質問に砂川さんと安慶名さんは顔を見合わせて笑って、
「いえ、明日一緒に東京に行くので、伊織さんは私を迎えに来てくださったんですよ」
と教えてくれた。
「えっ? 一緒に?」
「ええ、伊織さんはうちの顧問弁護士ですからその関係で一緒に東京に行くことも多いんですよ」
「あっ、そうなんですね……」
普段は離れていても一緒に仕事をすることもあるんだ……。
それって、なんか羨ましい気がする。
「えっ? 伊織さん、どうしてですか?」
「これ、八尋さんに教えてもらったんです。だから、八尋さんに教えてもらったらこれよりもっと美味しいものが食べられますよ」
「そう、なんですか?」
「ええ。お互いに知らないレシピを教え合ってますが、私が八尋さんに教えてもらうことのほうが多いですし、八尋さんの料理センスは素晴らしいですよ。イリゼホテルグループのオーナーの浅香さんも引き抜きたいくらいだと仰ってるくらいですから」
「ええ――っ、すごいんですね」
あの高級ホテル、イリゼグループのオーナー自らスカウトされるだなんて……。
でも納得だな。
八尋さんの料理はどれもすごく美味しいんだから。
「じゃあ、平松くんが八尋さんに習ったら、ものすごく上達するだろうね」
名嘉村さんはそう言ってくれるけれど、自分が料理が上手くなっている未来は全然見えないけど……。
ご飯を炊くのを教えてもらったばかりのど素人だけど、いつかこんなすごいローストビーフを作れる日がくるんだろうか……。
想像つかないな。
「そうだといいんですけど……」
半ば諦めモードで答えると、目の前に座っていた安慶名さんが優しく声をかけてくれた。
「もし、八尋さんに料理を習って上手くできなくてもがっかりすることはないですよ。人には向き不向きがありますから。料理を習ってすぐにその通りにできる人もいれば、どれだけ練習してもできない人がいるんです。どれだけ練習してもできない人は無理して料理をする必要なんてないんですよ。そういう人は他に素晴らしい才能があるんです」
「えっ……他の、才能、ですか?」
安慶名さんの言葉に思わず聞き返してしまう。
「ええ。私の大学の恩師の一人に片付けと料理が苦手な人がいるんですが、洗濯に関しては驚くほどプロフェッショナルで、どんなシミでも必ず落とすことができるそうですよ。それにアイロンも機械でやったようにしわ一つなくかけることができるそうです。それってすごい才能だと思いませんか?」
「はい。すごいです……」
いや、ある意味、料理よりその才能欲しいかも……。
「ふふっ。伊織さん、平松くんの物凄い才能なら私も名嘉村くんももう知ってますよ」
「悠真、そうなんですか?」
「ええ、ねぇ。平松くん」
「そんな、俺なんか何も……」
「何言ってるんですか。すごい絵の才能を持っているでしょう?」
「あっ!」
そう言われて、砂川さんに俺の絵をものすごく褒めてもらったことを思い出した。
「絵の才能ですか、それはすごいですね。私には絵の才能はありませんから」
そう言ってくれる安慶名さんの表情がすごく優しい。
「本当にすごいんですよ、平松くんの絵は。今度イリゼホテルのパンフレットにも採用されましたから、伊織さんも完成したものが見られますよ」
「それは楽しみですね」
砂川さんと安慶名さんにものすごく褒められて恥ずかしくなってしまう。
でも、なんだか嬉しくてあったかい気持ちになる。
砂川さんはいい人だってわかっていたけど、安慶名さんもすごく優しくていい人だな。
食事を終えて、安慶名さんが持ってきてくれた美味しいデザートを食べていると、
「そういえば、明日から数日東京に行ってきますので、会社のことは名嘉村くんに任せています。何かあれば名嘉村くんに声をかけてくださいね」
と砂川さんが教えてくれた。
「出張、ということですか?」
「ええ。前に平松くんと東京で会った時のように、時々社長の仕事の関係で私も東京での仕事をすることがあるんですよ。今回はあちらで社長と合流することになっています。私は三日ほどで帰ってきますが、社長は先日もお話しした通り、もうしばらく東京で過ごして来週には藤乃くんと一緒にこちらにきますよ」
そうか、もう来週になったんだ。
藤乃くんは俺を覚えているだろうか。
俺を見た瞬間、嫌だったこととか思い出さなかったらいいけど。
それにしても八尋さんもいないのに砂川さんもここからいなくなるなんてなんだか寂しいな……。
八尋さんも早ければ明日って言ってくれたけど、難しいだろうな。
「あの……明日から、砂川さんが東京だから安慶名さんは砂川さんの家に泊まりにきたんですか?」
しばらく会えなくなるから寂しくて泊まりに来たのかなと思ったら、つい聞いてしまった。
けれど、俺の質問に砂川さんと安慶名さんは顔を見合わせて笑って、
「いえ、明日一緒に東京に行くので、伊織さんは私を迎えに来てくださったんですよ」
と教えてくれた。
「えっ? 一緒に?」
「ええ、伊織さんはうちの顧問弁護士ですからその関係で一緒に東京に行くことも多いんですよ」
「あっ、そうなんですね……」
普段は離れていても一緒に仕事をすることもあるんだ……。
それって、なんか羨ましい気がする。
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