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豪華な宿
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数十分車に揺られていると、だんだん眠くなってくる。
それもそのはず。夕方の披露宴から酒が入っている。しかも二次会を終えた後にBARでも二杯飲んでいるのだから酒には強い俺でも流石に睡魔が襲ってくる。
「気にしないで眠っていいよ。ほら横になって休むといい」
優しい声をかけられるけれど、そういうわけにはいかない。
大体見覚えがあったと言ってもほぼ知らない人の車で眠るなんてできない。
必死に抗うけれど、睡魔が俺を寝かそうとする。
結局負けてしまい、俺はそのまま眠りこけてしまっていた。
その間、ずっと優しくて大きな手が俺の頭を撫でていた気がする。
それからどれくらい時間が経っただろうか。
でも結構寝た気がする。
「んっ……」
柔らかな感触にここが車の中ではないとすぐにわかった。
慌てて飛び起きようとするとそっと手が握られた。
「急に起き上がると危ないよ」
「えっ、あ、ここは……?」
「覚えていないかな? 私たちが向かっていた場所を」
「えっ……あの、旅館?」
「正解。君が行きたいと選んだ離れのある温泉旅館だ。ほら、露天風呂もあるよ」
指さされた方向にベッドに寝転んだまま視線を向けると、大きな窓の外のテラスに湯気が上がっているのが見える。
「すごい……」
「希望した通りの部屋だったかな?」
「あ。はい。そう、ですね……でも、大晦日にこんな……」
あれから何時間経っているかわからないけれど、確実に日は跨いでいるだろう。
こんな真夜中においそれと入れるような旅館でもなさそうなのにどうしてこんなことができたのか……。
もしかしたら、もともと誰かと泊まる予定でフラれたとか?
だからたまたまBARに居合わせた俺を誘った?
いや、でもあの時
――私はずっと本気だよ。やっと君をこの手にできたんだからね。
俺の記憶が間違えてなければ確かにそう言っていた。
俺は一体どこで彼に会ったんだ?
「何を考えてる?」
「あ。いえ……その、どこで会ったのかなって……」
「そうか、私のことを考えていたのなら良かった」
彼の笑顔に安堵の様子が見える。俺のそんな言葉でこんなに嬉しそうにするなんて……なんだか、可愛い。
そんなふうに思ってしまう自分がいた。
「せっかく温泉に来たことだし、入ろうか」
「そうですね……」
さっきの可愛い表情に引き摺られてよく考えずに返事をしてしまったが、彼は今なんて言った?
温泉に入ろう、そう言わなかったか?
まさか一緒に?
いやいや、男同士で一緒に入るなんてよくあることだし、特別気にすることもないんだが、なんとなく恥ずかしい気がするのは俺の気のせいだろうか?
「あ、あの……それって、一緒に?」
「ああ、せっかく広い温泉に来たんだ。一人ずつ入るのも時間の無駄じゃないか?」
「え、ええ。そう、ですね……」
一緒に入ることに特に意味はない。
ただ、温泉を楽しむだけだ。
ベッドのある寝室の窓からそのままテラスに出ようとすると、そっちは寒いからあっちの脱衣所で着替えてから外に出ようと誘われる。
彼の言う通りに一度寝室を出てリビングを通り、脱衣所に向かう。
その時に目にしたリビングは、俺が今まで泊まったどこの高級ホテルよりも豪華に見えた。
ここって、かなりグレードの高い温泉旅館じゃないか?
本当にどうしてこんなすごい部屋が大晦日に空いていたんだろう……。
疑問ばかりが頭に浮かぶ。
手を引かれて脱衣所に入ると、彼は惜しげもなく服を脱ぎ始めた。
温泉に入るのだから当然だと言えばその通りだが、逞しい肌が少しずつ剥き出しになっていくのを見るのはなんとも照れる。
俺だってそこそこ鍛えてはいるが、体質上ムキムキにはなれない。
せいぜい細マッチョくらいだろう。
腹筋こそシックスパックになっているが、腕なんて彼の半分ほどの太さしかない気がする。
彼のような体型こそ、男がなりたいと望む姿なのかもしれない。
恥ずかしいがここで着替えないのもそれはおかしい。
意を決して急いで服を脱ぎ捨て、目の前にあったタオルで一応前だけを隠して、脱衣所から温泉に繋がる扉を開けた。
「うわっ、さむっ!」
「ははっ。部屋の中が暖かかったから余計寒く感じるな。とりあえず掛け湯をして温泉であったまろうか」
「は、はい」
「滑るから気をつけて」
さっとエスコートされるように温泉に近づき、置いてあった湯桶で温泉のお湯を掬い身体にかける。
かかったところがじわじわと温かい。
二度ほど掛け湯をして足を温めてから温泉に入る。さっとタオルを外して中に入るが、その瞬間彼の視線が俺の身体に向いた気がした。けれど、ここで隠すのも恥ずかしい。俺は覚悟を決めて堂々と振る舞うことにした。
それもそのはず。夕方の披露宴から酒が入っている。しかも二次会を終えた後にBARでも二杯飲んでいるのだから酒には強い俺でも流石に睡魔が襲ってくる。
「気にしないで眠っていいよ。ほら横になって休むといい」
優しい声をかけられるけれど、そういうわけにはいかない。
大体見覚えがあったと言ってもほぼ知らない人の車で眠るなんてできない。
必死に抗うけれど、睡魔が俺を寝かそうとする。
結局負けてしまい、俺はそのまま眠りこけてしまっていた。
その間、ずっと優しくて大きな手が俺の頭を撫でていた気がする。
それからどれくらい時間が経っただろうか。
でも結構寝た気がする。
「んっ……」
柔らかな感触にここが車の中ではないとすぐにわかった。
慌てて飛び起きようとするとそっと手が握られた。
「急に起き上がると危ないよ」
「えっ、あ、ここは……?」
「覚えていないかな? 私たちが向かっていた場所を」
「えっ……あの、旅館?」
「正解。君が行きたいと選んだ離れのある温泉旅館だ。ほら、露天風呂もあるよ」
指さされた方向にベッドに寝転んだまま視線を向けると、大きな窓の外のテラスに湯気が上がっているのが見える。
「すごい……」
「希望した通りの部屋だったかな?」
「あ。はい。そう、ですね……でも、大晦日にこんな……」
あれから何時間経っているかわからないけれど、確実に日は跨いでいるだろう。
こんな真夜中においそれと入れるような旅館でもなさそうなのにどうしてこんなことができたのか……。
もしかしたら、もともと誰かと泊まる予定でフラれたとか?
だからたまたまBARに居合わせた俺を誘った?
いや、でもあの時
――私はずっと本気だよ。やっと君をこの手にできたんだからね。
俺の記憶が間違えてなければ確かにそう言っていた。
俺は一体どこで彼に会ったんだ?
「何を考えてる?」
「あ。いえ……その、どこで会ったのかなって……」
「そうか、私のことを考えていたのなら良かった」
彼の笑顔に安堵の様子が見える。俺のそんな言葉でこんなに嬉しそうにするなんて……なんだか、可愛い。
そんなふうに思ってしまう自分がいた。
「せっかく温泉に来たことだし、入ろうか」
「そうですね……」
さっきの可愛い表情に引き摺られてよく考えずに返事をしてしまったが、彼は今なんて言った?
温泉に入ろう、そう言わなかったか?
まさか一緒に?
いやいや、男同士で一緒に入るなんてよくあることだし、特別気にすることもないんだが、なんとなく恥ずかしい気がするのは俺の気のせいだろうか?
「あ、あの……それって、一緒に?」
「ああ、せっかく広い温泉に来たんだ。一人ずつ入るのも時間の無駄じゃないか?」
「え、ええ。そう、ですね……」
一緒に入ることに特に意味はない。
ただ、温泉を楽しむだけだ。
ベッドのある寝室の窓からそのままテラスに出ようとすると、そっちは寒いからあっちの脱衣所で着替えてから外に出ようと誘われる。
彼の言う通りに一度寝室を出てリビングを通り、脱衣所に向かう。
その時に目にしたリビングは、俺が今まで泊まったどこの高級ホテルよりも豪華に見えた。
ここって、かなりグレードの高い温泉旅館じゃないか?
本当にどうしてこんなすごい部屋が大晦日に空いていたんだろう……。
疑問ばかりが頭に浮かぶ。
手を引かれて脱衣所に入ると、彼は惜しげもなく服を脱ぎ始めた。
温泉に入るのだから当然だと言えばその通りだが、逞しい肌が少しずつ剥き出しになっていくのを見るのはなんとも照れる。
俺だってそこそこ鍛えてはいるが、体質上ムキムキにはなれない。
せいぜい細マッチョくらいだろう。
腹筋こそシックスパックになっているが、腕なんて彼の半分ほどの太さしかない気がする。
彼のような体型こそ、男がなりたいと望む姿なのかもしれない。
恥ずかしいがここで着替えないのもそれはおかしい。
意を決して急いで服を脱ぎ捨て、目の前にあったタオルで一応前だけを隠して、脱衣所から温泉に繋がる扉を開けた。
「うわっ、さむっ!」
「ははっ。部屋の中が暖かかったから余計寒く感じるな。とりあえず掛け湯をして温泉であったまろうか」
「は、はい」
「滑るから気をつけて」
さっとエスコートされるように温泉に近づき、置いてあった湯桶で温泉のお湯を掬い身体にかける。
かかったところがじわじわと温かい。
二度ほど掛け湯をして足を温めてから温泉に入る。さっとタオルを外して中に入るが、その瞬間彼の視線が俺の身体に向いた気がした。けれど、ここで隠すのも恥ずかしい。俺は覚悟を決めて堂々と振る舞うことにした。
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