婚約者に裏切られたのに幸せすぎて怖いんですけど……

波木真帆

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番外編

会いに行こう! <前編>

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時系列では前話<天職>より前のお話になります。

  *   *   *


<side誉>

「あの、誉さん……」

週の半ばの水曜日の夜、翌日の仕事に障るからと一度の軽い挿入だけで我慢して、イチャイチャと戯れの時間を過ごしていると、頬を赤く染めてねだるような目で敦己が俺の名前を呼んできた。

「どうした? 足りなかったか?」

「えっ、あ、そうじゃなくて……あの、ちょっと大事な話があって……」

「大事な話? どうしたんだ?」

「あの、週末に泊まりがけでテーマパークに行こうって約束してたでしょう?」

そう。今週末はたまには外でデートでもしようかということで、王道だが行ってみることにしたのだ。

「パーク内のホテルももう取れてるから心配しないでいいよ」

パーク内のホテルの親会社の顧問弁護士をやっている関係で、いつでも好きな時に泊まっていいと言われている。

「あの、それが……今日、母から連絡があって……」

「お母さまから?」

「はい。実は父の個展を香港で開くことになって、その打ち合わせで週末に香港に行くんだそうです。それで数時間空き時間があるからその間に会えないかって……あまりにも急すぎるって言ったんですけど、この機会を逃すとあと数年は会えないかもしれないって言われて……僕、両親と誉さんを早く実際に会わせたくて……だから、その……一緒に香港に行ってもらえないかなって……」

「そういうことか」

「本当にすみません。もっと早く連絡もらえたらよかったんですけど……」

敦己は本当に申し訳なさそうにしているが、テーマパークはいつだって行けるし、敦己の両親と会えるのなら何をおいても優先するのが当然だ。

「いや、気にしないでいいよ。ご多忙な方たちだというのはわかっているし、俺たちのために数時間空けてくれたなら喜んで伺おう」

「いいんですか?」

「ああ。俺も画面越しじゃなく、面と向かって敦己をつまとして一生大切にするって言いたかったからな」

「誉さん……」

「じゃあ、週末は二人で香港に行こう。ちょうど三連休だし、土曜の朝の飛行機で行って月曜日の昼頃帰ってきてそのあとはのんびりと自宅で過ごそう。香港までは五時間くらいで着くはずだからそれでも十分楽しめるはずだよ」

「ありがとうございます、誉さん」

「そういう時は敦己からのキスが欲しいな」

「――っ、はい」

敦己は恥ずかしそうにしながらも、唇を重ねてくれた。甘く優しいキスが嬉しくて気づいたら、舌を入れて敦己の口内を堪能していた。もう可愛くてたまらない。

それから敦己が両親に香港で会えると連絡している間に、俺は香港行きの往復チケットとホテルの手配、そしてテーマパークのホテルのキャンセルを済ませ、後は香港行きを待つだけとなった。

そしてあっという間に出発の朝。

敦己はアメリカやヨーロッパには出張でよく行くそうだが、香港は学生時代に日下部兄弟と日下部会長と一緒に旅行に出かけた一度きりらしい。

俺は仕事で数回訪れているから香港には慣れている。五時間足らずでいける海外だし、あまり海外という感覚もない。とはいえ、敦己を疲れさせたくないし、二人の時間を邪魔されたくないからもちろんファーストクラスを予約した。これで往復の時間もたっぷりと敦己との楽しい時間を過ごすとしよう。

帰りのことも考えて自分の車で敦己と空港に向かい、さっさと搭乗手続きと出国審査を終わらせてラウンジで休憩を取り、機内に向かう。

もちろん俺たちの席はペアシート。そのためにこの席がある飛行機を選んだんだ。

あっという間に離陸して安定飛行に入ると、食事が運ばれてきた。

それをお互いに食べさせあいながら完食すると、敦己は早速眠ってしまった。旅慣れた人ほど機内では寝て過ごすというが敦己はまさにその通り、可愛い寝顔を俺だけに見せながら深い眠りに落ちていった。可愛い寝顔をたっぷりと堪能して、あっという間に香港に到着した。

タクシーで宿泊予定のホテルに向かい、荷物を預けて約束の時間まで香港を散策することにした。

「母たちとの約束の場所の近くによく当たるって評判の占いのお店があるんです。誉さん、一緒に行ってみませんか?」

正直に言って、今まで占いの類いを信じたことは一度もない。だが敦己が行きたいというのを拒むことはしない。ただの余興の一つだと思えばいい。

「いいよ、行ってみようか」

二人でタクシーに乗り込み、目的の店に向かった。近くで車を降り、二人で散策していると少し怪しげな店が目に留まった。

「あ、ここみたいですよ」

「ここ? 大丈夫なのか?」

「大丈夫ですって。前に透也も行ったって言ってましたし」

透也くんが? 彼もあまり占いの類いは信じなさそうなのに。
少し違和感を感じたものの、敦己が言うことに間違いはないだろうと思い、一緒に店に入った。
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