2 / 137
もう恋はやめよう
さらっと出てきただけなので覚えているかわかりませんが、あの彼が主人公のお話です。
おそらくそこまで長くはならないはずですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
「それって……別れたいってことなのか?」
最近お互いに仕事が忙しくすれ違いだったけれど、今日は1ヶ月ぶりに家に呼ばれたのを楽しみにしてきたのに。
会って早々、別れ話をされるなんて思ってもみなかった。
「ああ。そう言ってるだろ」
「なんで? 昨日だって電話で愛してるって言ってくれたじゃないか」
「ははっ。あんなのただの挨拶みたいなもんだろ。嘘だろ? ずっと真に受けてたわけ?」
「――っ!」
嘲笑う様な表情で見られてかぁっと顔が熱くなる。
愛されてると思っていたのに……あれは嘘だったのか……。
「悪いけど、もう決めたんだ。言っとくけど、お前みたいに結婚相手にもならない相手は最初からただの遊びなんだよ。お前もそれくらいわかってただろ? どうせ男同士なんて結婚できるわけでもないんだし」
結婚……ああ、そういうことか……。
何もかもわかった。
「もしかして、結婚でも決まったのか?」
「ああ。察しがいいのは助かるな。実はさ、常務の娘に惚れられちゃって。かなり話も進んでるんだよ。だから、お前と付き合ってるなんてバレたら困るだろ。お前だって、ゲイバレしたら困るんじゃないのか?」
確かに女性よりも男が好きなんてこの日本じゃまだまだ認められないかもしれない。
でも、宏樹とならいつかは公表してもいいと思っていた。
結局男女ともにいける宏樹と、男しかダメな俺じゃ最初から釣り合わなかったんだろうな。
俺との恋愛より、もう結婚にシフトしている宏樹に今更何言っても無駄だろう。
縋り付くなんて女々しい真似はしたくない。
ここは大人しく身を引くのがマナーだろうか。
「わかったよ。これで俺たち終わりだな」
「聞き分けが良くて助かるよ。じゃあ……」
「なんだよ」
急に俺に擦り寄ってきた宏樹は耳元でいつものように囁いてきた。
「ここんとこ忙しくて可愛がってやってなかっただろ? 俺のが欲しくて疼いてるんじゃないか? 最後にたっぷり愛してやるよ」
「――っ!!!」
気持ち悪いっ!!
たった今、その口で俺に別れを言ってきたくせに誘ってくるなんて……っ。
あまりの気持ち悪さに一気に宏樹への気持ちが冷めて愛情のかけらも一つ残らず消えてしまったのがわかった。
「俺を馬鹿にするなっ!」
宏樹を思いっきり跳ね除け、バタバタとジャケットと荷物を持ち急いでその場を離れた。
二年も付き合っていたのに……こんなひどい終わり方なんてな。
もう、恋愛はやめよう。
もう二度と傷つきたくない。
ゲイの俺は幸せになんかなれないんだ。
「えっ? ロサンゼルス支社に異動ですか?」
突然上司に会議室に呼ばれて異動の話を聞いたのは、宏樹と別れてから二週間ほどが経った頃だった。
「異動というか、栄転だよ。杉山くんには、支社長をお願いしたいんだ」
「私が……ロサンゼルス支社の支社長、ですか?」
「ああ。君みたいな優秀な社員に抜けられるのはこちらとしても痛手ではあるんだが、あちらで数年頑張ってもらって、役員待遇で戻ってきてもらいたいというのが上層部の意見なんだ。悪い話じゃ決してないから前向きに考えてくれないか? 杉山くんなら、英語も心配はいらないし、それにあちらのスタッフたちも十分にまとめられる素質もある。会社として、君には期待しているんだよ」
正直言って、宏樹のいる日本から離れられるのは願ってもない話だ。
このタイミングで話が来たのも、運命なのかもしれないな。
もし、宏樹とあのまま続いていたら、いくら栄転とはいえ断っていたかもしれない。
ここは一つ、環境を変えて嫌な思い出から離れるのもいいかもな。
「部長、この話……謹んでお受けします」
「いいのか? こんなにすぐに決めても」
「もう少し考えたほうがいいですか?」
「いや、こちらとしては君が決断してくれて嬉しいよ」
「では、よろしくお願いします!」
そうして、俺の海外赴任が決まった。
赴任は1ヶ月後。
その間にマンションの解約手続きを済ませ、荷造りも早々に済ませた。
引越し業者は会社が提携しているところに頼めばすぐだった。
ただ、ロサンゼルス支社の社宅が短期出張用しか空いておらず、とりあえず一旦そちらに引っ越すことになっていた。
俺の任期は一応5年の予定。
その間にいいところが見つかればそこに引っ越せばいいか。
そんな短絡的な考えでいられたのも俺が単身者だからだろう。
いろんな手続きをしている間にあっという間に1ヶ月が経ち、俺はロサンゼルスへと旅立った。
おそらくそこまで長くはならないはずですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
「それって……別れたいってことなのか?」
最近お互いに仕事が忙しくすれ違いだったけれど、今日は1ヶ月ぶりに家に呼ばれたのを楽しみにしてきたのに。
会って早々、別れ話をされるなんて思ってもみなかった。
「ああ。そう言ってるだろ」
「なんで? 昨日だって電話で愛してるって言ってくれたじゃないか」
「ははっ。あんなのただの挨拶みたいなもんだろ。嘘だろ? ずっと真に受けてたわけ?」
「――っ!」
嘲笑う様な表情で見られてかぁっと顔が熱くなる。
愛されてると思っていたのに……あれは嘘だったのか……。
「悪いけど、もう決めたんだ。言っとくけど、お前みたいに結婚相手にもならない相手は最初からただの遊びなんだよ。お前もそれくらいわかってただろ? どうせ男同士なんて結婚できるわけでもないんだし」
結婚……ああ、そういうことか……。
何もかもわかった。
「もしかして、結婚でも決まったのか?」
「ああ。察しがいいのは助かるな。実はさ、常務の娘に惚れられちゃって。かなり話も進んでるんだよ。だから、お前と付き合ってるなんてバレたら困るだろ。お前だって、ゲイバレしたら困るんじゃないのか?」
確かに女性よりも男が好きなんてこの日本じゃまだまだ認められないかもしれない。
でも、宏樹とならいつかは公表してもいいと思っていた。
結局男女ともにいける宏樹と、男しかダメな俺じゃ最初から釣り合わなかったんだろうな。
俺との恋愛より、もう結婚にシフトしている宏樹に今更何言っても無駄だろう。
縋り付くなんて女々しい真似はしたくない。
ここは大人しく身を引くのがマナーだろうか。
「わかったよ。これで俺たち終わりだな」
「聞き分けが良くて助かるよ。じゃあ……」
「なんだよ」
急に俺に擦り寄ってきた宏樹は耳元でいつものように囁いてきた。
「ここんとこ忙しくて可愛がってやってなかっただろ? 俺のが欲しくて疼いてるんじゃないか? 最後にたっぷり愛してやるよ」
「――っ!!!」
気持ち悪いっ!!
たった今、その口で俺に別れを言ってきたくせに誘ってくるなんて……っ。
あまりの気持ち悪さに一気に宏樹への気持ちが冷めて愛情のかけらも一つ残らず消えてしまったのがわかった。
「俺を馬鹿にするなっ!」
宏樹を思いっきり跳ね除け、バタバタとジャケットと荷物を持ち急いでその場を離れた。
二年も付き合っていたのに……こんなひどい終わり方なんてな。
もう、恋愛はやめよう。
もう二度と傷つきたくない。
ゲイの俺は幸せになんかなれないんだ。
「えっ? ロサンゼルス支社に異動ですか?」
突然上司に会議室に呼ばれて異動の話を聞いたのは、宏樹と別れてから二週間ほどが経った頃だった。
「異動というか、栄転だよ。杉山くんには、支社長をお願いしたいんだ」
「私が……ロサンゼルス支社の支社長、ですか?」
「ああ。君みたいな優秀な社員に抜けられるのはこちらとしても痛手ではあるんだが、あちらで数年頑張ってもらって、役員待遇で戻ってきてもらいたいというのが上層部の意見なんだ。悪い話じゃ決してないから前向きに考えてくれないか? 杉山くんなら、英語も心配はいらないし、それにあちらのスタッフたちも十分にまとめられる素質もある。会社として、君には期待しているんだよ」
正直言って、宏樹のいる日本から離れられるのは願ってもない話だ。
このタイミングで話が来たのも、運命なのかもしれないな。
もし、宏樹とあのまま続いていたら、いくら栄転とはいえ断っていたかもしれない。
ここは一つ、環境を変えて嫌な思い出から離れるのもいいかもな。
「部長、この話……謹んでお受けします」
「いいのか? こんなにすぐに決めても」
「もう少し考えたほうがいいですか?」
「いや、こちらとしては君が決断してくれて嬉しいよ」
「では、よろしくお願いします!」
そうして、俺の海外赴任が決まった。
赴任は1ヶ月後。
その間にマンションの解約手続きを済ませ、荷造りも早々に済ませた。
引越し業者は会社が提携しているところに頼めばすぐだった。
ただ、ロサンゼルス支社の社宅が短期出張用しか空いておらず、とりあえず一旦そちらに引っ越すことになっていた。
俺の任期は一応5年の予定。
その間にいいところが見つかればそこに引っ越せばいいか。
そんな短絡的な考えでいられたのも俺が単身者だからだろう。
いろんな手続きをしている間にあっという間に1ヶ月が経ち、俺はロサンゼルスへと旅立った。
あなたにおすすめの小説
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。