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思いがけない縁
「んんっ! 美味しいっ!!」
「ふふっ。でしょう? あっ、大智さん。ソースついてますよ」
「――っ!!」
案内されたハンバーガー屋さんで、大きな口を開けても入らないほどのボリュームのあるハンバーグに舌鼓を打っていると、唇の端から垂れたソースをさりげなく指で拭われてしまった。
こ、これって普通のことなのか?
それに知らない間に名前呼びされてるし……。
俺、5つも年上だった気がするんだけど……妙に世話焼かれてる気がするんだが……。
まぁでも拭いてもらったんだし、人として、お礼は言っておくべきか。
「あ、ありがとう」
「いいえ、お安い御用ですよ」
「――っ、あっ! えっと、ここのハンバーガーは食べたことないくらい美味しいな」
満面の笑みにどう反応していいか分からずにとりあえず味の感想を伝えると、
「そうでしょう? 日本人オーナーがやってるお店なんで、日本人の口に合ってるんでしょうね。この焼いたトマトととろとろのチーズとの相性とか最高でしょう?」
と目を輝かせながら教えてくれた。
ああ、田辺くんは純粋にここの昼食を楽しんでいるんだ。
俺がそれを美味しいって言ったから喜んでくれてるんだろうな。
「なんか食感が面白いと思ったら、わざわざトマトを焼いてるんだな。だから少し香ばしくて美味しいのか」
「そうなんですよ。いやぁ、大智さんがわかってくれて嬉しいです」
あのボリュームのあるハンバーガーを二つもぺろりと完食したうえに、俺の限界を超えてしまいそうなポテトも全て食べてくれた。
「田辺くん、君……お腹、大丈夫か?」
「はい。こんなの楽勝ですよ」
「ははっ。やっぱり若いな。30になるとそんなには食べられなくなるから」
「いやいや、こっち来る前に運動してきたんでそのせいですね。朝食をすっかり消費していたみたいです」
自虐的に年齢のことを話した俺を気遣ってくれたのか、そんなことを言ってくれた。
「すごいな、運動しているのか?」
「こっちに来て、車移動が増えたんで少し走ったり、たまにジム行ったりしているくらいですよ。東京だと知らない間に1万歩とか歩いてますけど、こっちに来てから急激に減ったので、運動不足になってるかと」
「ああ、それはありそうだな。私もどこかジムでも探してみようかな。そういえば社宅の近くに結構有名なジムがあった気がするな」
「えっ? そこはちょっとやめたほうが……」
「どうしてだ?」
「えっと、あの……こっちのジムはかなり激しいプログラムが多いんで、アジア人には結構辛いって聞きますよ」
「ああ、そうなのか……」
「あの、社宅から会社まではどうしてるんですか?」
「うちの社宅から会社までは歩いても30分くらいかな。そこを歩けば何もしないよりは運動になるはずなんだが、役職付きには社用車での送迎が義務付けられてるから、いつも車移動だよ」
「そうなんですね。じゃあ、私が行っているパーソナルトレーニングジムを紹介しましょうか? 湖のある公園、わかりますか? その公園のすぐ近くにあるんですけど……」
「確か……社宅の近くに湖のある公園があったはず。だけど、悪い、まだ来たばかりで周りの環境もわからなくて……」
「そうですよね。ってことは社宅もかなり近いかもですね。私はベルンシュトルフ ホールディングスの短期出張用社宅に住まわせてもらってるんですけど――」
「えっ?? ベルンシュトルフ って……それ、本当に??」
「はい。あの、どうかしました?」
「いや……」
こんな偶然ある?
この広いアメリカでしかもロサンゼルスのど真ん中で同じ社宅に住む人に出会うなんて……。
でも、田辺くんが嘘をつく理由もないし、それに嘘なんかついてもすぐにバレる。
そんなリスク背負って話すことじゃない。
俺は思いがけない偶然に手を震わせながら、持っていた名刺入れから一枚引き抜いて、田辺くんに渡した。
「私、ベルンシュトルフ ホールディングスL.A支社の支社長なんだよ」
「えっ――!!」
田辺くんは茫然としたまま、俺を見つめていた。
「まさか、君も同じ会社だとは思わなかったな。というか、君みたいな優秀な人材だったら知っているはずなんだが……」
「あっ、違うんです。私は『笹川コーポレーション』に勤めていて、同じ傘下ということでロサンゼルス出張の際はベルンシュトルフの短期出張用の社宅をお借りしてるんですよ」
「ああ、そういうことか。どおりで知らないはずだ。でもこんな偶然あるんだな」
「そうですね、驚きました。でもこれで、今日だけでなくこっちにいる間は大智さんと過ごせますね」
「えっ? 過ごせるって……」
「一人で観光するのもつまらないでしょう? あと2ヶ月しかいないので、いろんなところ付き合ってくださいよ。車なら喜んで出しますから」
「あ、ああ。そういうことか。そうだな。確かに一人で観光するよりは楽しそうだ」
「でしょう? じゃあ、大智さんの連絡先、教えてください」
「行動が早いな」
「ふふっ。そんなの営業の基本でしょう?」
にっこりとした笑顔を向けられると断る気持ちもあっという間に失せてしまう。
田辺くんが優秀なのがわかる気がする。
結局、断る理由も見つからず、俺は田辺くんと連絡先を交換した。
「ふふっ。でしょう? あっ、大智さん。ソースついてますよ」
「――っ!!」
案内されたハンバーガー屋さんで、大きな口を開けても入らないほどのボリュームのあるハンバーグに舌鼓を打っていると、唇の端から垂れたソースをさりげなく指で拭われてしまった。
こ、これって普通のことなのか?
それに知らない間に名前呼びされてるし……。
俺、5つも年上だった気がするんだけど……妙に世話焼かれてる気がするんだが……。
まぁでも拭いてもらったんだし、人として、お礼は言っておくべきか。
「あ、ありがとう」
「いいえ、お安い御用ですよ」
「――っ、あっ! えっと、ここのハンバーガーは食べたことないくらい美味しいな」
満面の笑みにどう反応していいか分からずにとりあえず味の感想を伝えると、
「そうでしょう? 日本人オーナーがやってるお店なんで、日本人の口に合ってるんでしょうね。この焼いたトマトととろとろのチーズとの相性とか最高でしょう?」
と目を輝かせながら教えてくれた。
ああ、田辺くんは純粋にここの昼食を楽しんでいるんだ。
俺がそれを美味しいって言ったから喜んでくれてるんだろうな。
「なんか食感が面白いと思ったら、わざわざトマトを焼いてるんだな。だから少し香ばしくて美味しいのか」
「そうなんですよ。いやぁ、大智さんがわかってくれて嬉しいです」
あのボリュームのあるハンバーガーを二つもぺろりと完食したうえに、俺の限界を超えてしまいそうなポテトも全て食べてくれた。
「田辺くん、君……お腹、大丈夫か?」
「はい。こんなの楽勝ですよ」
「ははっ。やっぱり若いな。30になるとそんなには食べられなくなるから」
「いやいや、こっち来る前に運動してきたんでそのせいですね。朝食をすっかり消費していたみたいです」
自虐的に年齢のことを話した俺を気遣ってくれたのか、そんなことを言ってくれた。
「すごいな、運動しているのか?」
「こっちに来て、車移動が増えたんで少し走ったり、たまにジム行ったりしているくらいですよ。東京だと知らない間に1万歩とか歩いてますけど、こっちに来てから急激に減ったので、運動不足になってるかと」
「ああ、それはありそうだな。私もどこかジムでも探してみようかな。そういえば社宅の近くに結構有名なジムがあった気がするな」
「えっ? そこはちょっとやめたほうが……」
「どうしてだ?」
「えっと、あの……こっちのジムはかなり激しいプログラムが多いんで、アジア人には結構辛いって聞きますよ」
「ああ、そうなのか……」
「あの、社宅から会社まではどうしてるんですか?」
「うちの社宅から会社までは歩いても30分くらいかな。そこを歩けば何もしないよりは運動になるはずなんだが、役職付きには社用車での送迎が義務付けられてるから、いつも車移動だよ」
「そうなんですね。じゃあ、私が行っているパーソナルトレーニングジムを紹介しましょうか? 湖のある公園、わかりますか? その公園のすぐ近くにあるんですけど……」
「確か……社宅の近くに湖のある公園があったはず。だけど、悪い、まだ来たばかりで周りの環境もわからなくて……」
「そうですよね。ってことは社宅もかなり近いかもですね。私はベルンシュトルフ ホールディングスの短期出張用社宅に住まわせてもらってるんですけど――」
「えっ?? ベルンシュトルフ って……それ、本当に??」
「はい。あの、どうかしました?」
「いや……」
こんな偶然ある?
この広いアメリカでしかもロサンゼルスのど真ん中で同じ社宅に住む人に出会うなんて……。
でも、田辺くんが嘘をつく理由もないし、それに嘘なんかついてもすぐにバレる。
そんなリスク背負って話すことじゃない。
俺は思いがけない偶然に手を震わせながら、持っていた名刺入れから一枚引き抜いて、田辺くんに渡した。
「私、ベルンシュトルフ ホールディングスL.A支社の支社長なんだよ」
「えっ――!!」
田辺くんは茫然としたまま、俺を見つめていた。
「まさか、君も同じ会社だとは思わなかったな。というか、君みたいな優秀な人材だったら知っているはずなんだが……」
「あっ、違うんです。私は『笹川コーポレーション』に勤めていて、同じ傘下ということでロサンゼルス出張の際はベルンシュトルフの短期出張用の社宅をお借りしてるんですよ」
「ああ、そういうことか。どおりで知らないはずだ。でもこんな偶然あるんだな」
「そうですね、驚きました。でもこれで、今日だけでなくこっちにいる間は大智さんと過ごせますね」
「えっ? 過ごせるって……」
「一人で観光するのもつまらないでしょう? あと2ヶ月しかいないので、いろんなところ付き合ってくださいよ。車なら喜んで出しますから」
「あ、ああ。そういうことか。そうだな。確かに一人で観光するよりは楽しそうだ」
「でしょう? じゃあ、大智さんの連絡先、教えてください」
「行動が早いな」
「ふふっ。そんなの営業の基本でしょう?」
にっこりとした笑顔を向けられると断る気持ちもあっという間に失せてしまう。
田辺くんが優秀なのがわかる気がする。
結局、断る理由も見つからず、俺は田辺くんと連絡先を交換した。
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