年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

文字の大きさ
9 / 136

楽しい朝食

「お待たせしました」
「わっ!」

「すみません、急に声をかけて驚かせてしまいましたか?」

「い、いや。大丈夫。悪い、大きな声を出したりして――っ!!」

「どうかしましたか?」

「い、いや。なんでもない」

ほんのり頬を上気させて、髪の毛から少し雫が垂れている透也くんの姿がやけに色気があって、ドキドキしてしまう。

「すぐにご飯炊きますね。30分くらいで食べられるんですが……遅くなってすみません」

「いや、炊き立てを食べられるなら30分くらい大したことないよ。それよりも炊くところを見ていてもいいか?」

「ええ、もちろんです。どうぞ」

キッチンに案内されると、造り自体は俺の部屋と大して変わらないように見えた。
違うところと言えば、電化製品や調味料、スパイスの類が充実しているところだろうか。

「本当に自炊しているんだな」

「ふふっ。好きになると一途なんで」

「えっ?」

「ついつい凝ったものを作ってしまうんですよ」

「ああ、そういうことか」

びっくりした。
透也くんの口から好きだなんて出てくるだけで反応しすぎだ。

なんだか透也くんに会ってからいつもの自分じゃないみたいだ。

なんとなく透也くんから視線をそらそうと下に目をやって、自分が手土産にと持ってきていたものを思い出した。

「ああっ。あの……これ、大したものじゃなくて申し訳ないんだけど、手土産というかなんというか……」

「そんなっ、手土産なんて気にされないでよかったんですよ」

「いや、本当に大したものじゃないんだ。うちにあるよりは透也くんのところにあった方が使ってもらえるかと思って持ってきただけだから」

「うちにある方が……? あの、中身拝見しますね」

「あ、ああ」

透也くんは俺から箱を受け取ると丁寧に箱を開け、中身を見て一瞬動きを止めた。

あっ、もしかして賞味期限でも切れていたのか?
そこまで見てくるの忘れていたな。

「あっ、ごめん。何かおかしなところでもあったか?」

「これ……彼女、さんからですか?」

「えっ? 彼女、って……ああ、違うよ。妹からの餞別なんだ」

「……妹、さんですか?」

「ああ。料理はしなくても海外にずっといたら流石に欲しくなるだろうからって、言われて持ってきていたんだけど、すっかり忘れててさっきクローゼットから見つけ出したんだ。私だと確実にダメにしてしまいそうだから、透也くんに使ってもらった方がいいと思ったんだが……邪魔だったかな?」

「いいえっ、喜んでいただきます」

「そうか? 無理しなくてもいいぞ」

「いいえ、これすごい出汁シリーズなんですよ。私も欲しかったんですけど限定品で諦めてたんですよ。だからびっくりしました。妹さん、大智さんのことを大切に思ってるんですね」

「そう、なのかな? まぁでも料理は好きみたいだな。いつも何かしら振る舞ってくれるから」

「ふふっ。仲がいいんですね。おいくつ違いなんですか?」

「あ、いや。妹と言っても双子なんだ。男女の双子だから顔は似ていないけどね」

「へぇー、そうなんですね。あっとっ!」

土鍋から吹きこぼれそうになったのに気づいて透也くんは慌てたように土鍋の火を消した。

「間に合ってよかったです。これであと10分蒸らしたら食べられますよ。今のうちに魚を焼きますね」

「すごい、干物もあるのか?」

「はい。これが一昨日日本から届いたもので、大智さんに食べてもらえることになってよかったですよ」

香ばしく焼ける干物の香りに思わずごくりと唾を飲み込む。
やっぱり俺は日本人なんだなと感じずにはいられない。


「さぁ、できました」

鯵の干物と卵焼き、豆腐と長ネギの味噌汁に胡瓜の浅漬け。
そして、テーブルの真ん中に置かれた大きな土鍋

どれからもいい匂いが漂っていて、もうお腹の音が鳴り止まない。

透也くんがパッと蓋を開けると、湯気とともに美味しそうなお米の炊けた匂いが部屋中に広がる。

「ああっ、美味しそうだな」

「ふふっ。ご飯よそいますね」

よそいたてのつやっつやのご飯が手渡される。
米が光ってるってこういうことを言うんだろうか。

「「いただきます」」


挨拶と同時に、おかずより何よりも炊き立てのご飯に箸を入れる。

「はふっ、はふっ。おいしぃっ!」

「ふふっ。お代わりありますから、好きなだけ食べてください」

お米ってこんなに美味しかったんだなとしみじみ思わされる。

ご飯だけの味を楽しんだ後は、綺麗な形をした卵焼き。
パクリと口に入れるとじわっと出汁が溢れ出てくる。
甘さもちょうどいい。

「うまっ!」

「この浅漬けも食べて見てください」

透也くんが浅漬けを箸で持って口の前に運んでくる。
あまりにも美味しそうでそのままパクリと食べてしまった。

あれ? 今、あーんされなかったか?
そう一瞬思ったけれど、浅漬けがあまりにも美味しくてその衝撃が吹き飛んでしまった。

結局おかわりもしてしまって、目の前のおかずも全て完食した。

「ふぅ……お腹いっぱいだ」

「ふふっ。喜んでもらえてよかったです」

「本当に料理上手なんだな」

「はい。だから、夕食だけでなく朝食も食べにきてください」

「いや、流石にそれは……」

「でも、一人分作るより、二人分作る方が経済的なんですよ。この土鍋で一人分炊くのはかえって水加減も難しいですし」

「そういうものなのか?」

「はい。だから食べてくださった方がありがたいんです」

そう真剣に言われると、断るのも困ってしまう。
正直すごく美味しかったし、これが毎日食べられるのはありがたい。

「じゃあ、食費を出させてくれ。そうしたら朝食も夕食も頼みやすい」

「はい。わかりました」

思ったよりもすんなり受け入れてくれて助かった。

食費を払うなら対等でいられる気がする。
料理ができない分、食材費にはお金をかけてもらっていい。
それくらいの稼ぎはあるつもりだから。

今までつまらないと思っていた食事時間が、なんだかとても楽しみになってきた。
これも全部透也くんのおかげだな。
感想 134

あなたにおすすめの小説

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない

綿毛ぽぽ
BL
 アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。 ━━━━━━━━━━━ 現役人気アイドル×脱落モブ男 表紙はくま様からお借りしました https://www.pixiv.net/artworks/84182395

闇を照らす愛

モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。 与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。 どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。 抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。