17 / 137
完璧な彼氏
「ふぅーっ、お腹いっぱいっ」
「あっ、大智さん」
「んっ?」
満腹になったお腹をさすりながら、透也くんを見上げた瞬間、透也くんの指が俺の唇に触れた。
「ご飯粒、ついてましたよ」
「あ、ありが――っ!!」
嬉しそうに指で摘んだ俺のごはん粒を見せたと思ったら、そのままパクリと口の中に入れてしまった。
「い、今……」
「ふふっ。ご馳走さまです。大智さんがたくさん食べてくれて嬉しいですよ」
今、確かに俺の唇についていたご飯粒を……食べた、よな?
それって、普通なのか?
――奥さんとして当然のことですよ。
そう言われたことが頭の中に甦る。
本当に、本気なんじゃ……?
そう思ったら、一気に顔に熱が集まっていく。
それを隠すように、
「――っ、か、片付けは私がするよ」
と言って立ち上がったものの、
「いえ、準備も手伝ってもらったんですから大丈夫ですよ」
とにこやかに交わされる。
でもそういうわけにはいかない。
「あんなの切っただけだし、美味しいの食べさせてもらったからするよ」
「ふふっ。じゃあ、一緒にしましょうか」
強めに言うと、透也くんは嬉しそうに俺の手を引いて二人でキッチンに並んだ。
「大智さん、これをお願いします」
「ああ、任せてくれ」
手際よく綺麗に洗った、野菜を切って入れていた盛り付け皿をタオルと共に最初に手渡され、意気揚々とそれを拭いている間に全ての食器が食洗機にかけられて、するべきことが全て終わってしまっていた。
「えっ? もう終わったのか?」
「大智さんが大物を拭いてくれていたおかげですよ。あれが意外と手間がかかるんです」
結局あれだけを拭いて終わって、手伝えたのかどうなのかもわからないけれど、にっこりと笑って言われれば、そうなのかと納得してしまう。
「食後のデザートに桃を剥きましょうか」
「あっ、そうだった!」
今頃冷えひえになっているだろう桃を冷蔵庫から取り出すと、透也くんは潰さないようにゆっくりと片手で持った。
「これはどうやって剥くのが正しいんだ?」
「色々剥き方はあるんですけど、私の場合は……」
そう言いながら、透也くんは桃の窪んだところを一周包丁を入れた。
でも中に大きな種があるから流石にこのまま切ることはできないだろうし、どうするんだろう?
そう思っていると、透也くんは包丁を置き、徐に両手で桃を捻り始めた。
「えっ?」
「ふふっ。みててください」
思いがけないやり方に驚いていると、ねじった桃が二つに分かれた。
片側に種がついている状態だ。
「わっ、すごっ」
そして、種のついていない方を櫛形に切り、さっと皮を器用に外していくとまるで切ったリンゴのような桃が現れた。
「えっ? 何、すごっ!」
種の付いている方も櫛形に切り、最後に種がぼろっと取れた。
「わっ、すごっ!」
もはやすごいとしか言いようがない技に驚きが止まらない。
「ふふっ。そんなに良い反応してくれるとやり甲斐がありますね」
「いや、ほんとすごいよ。こんな剥き方? というか、切り方、初めて見たし」
「学生のころ、ホテルのレストランでアルバイトしていた時にシェフに教えてもらったんですよ」
「もしかして厨房にいたのか?」
「いえ、ギャルソンです。英語だけでなく、一応フランス語も日常会話なら話せるので採用にしてもらえてラッキーでした。その時から料理に興味があったので、シェフと仲良くなっていろいろ教えてもらったんですよ」
「すごい経歴だな」
英語もネイティブ並みに話していたし、その上フランス語まで?
コミュニケーション能力は高いし、聞き上手で話し上手だし、料理も上手で、痒い所にまで手が届くくらいあれこれやってくれるし……学生時代の彼の恋人とやらは、本当にもったいないことしたな。
こんな完璧な彼氏なんてそうそういないのに……。
「あの時、桃の剥き方を聞いておいてよかったですよ、こうやって大智さんに喜んでもらえたんですから」
「――っ!!」
俺のために覚えてくれたわけじゃないけれど、なんだかそんなふうに言われたみたいで胸がときめいてしまうのは、さっきの
――奥さんとして当然のことですよ
と笑顔で言われたことを思い出してしまうからだ。
「大智さん、あっちで桃を食べましょう」
ソファーの前にあるテーブルに桃が入った器を置くと、透也くんはソファーの隣にあるキャビネットを開け、そこからワイングラスを取り出し、
「甘い桃に合う白ワインがあるんですよ」
と、いつの間に冷やしていたのか、ワインクーラーに入った白ワインをキッチンから持ってきた。
「これは、甘い桃との相性が抜群なんですよ」
手際よくワインを開け、グラスに注いでくれる姿はまるでソムリエのよう。
「これもレストランで学んだんですよ。やっぱり学生時代のバイトってその後の糧になりますよね」
そう簡単なことのように言うけれど、ここまで習得するにはかなり真剣に向き合わない限り、無理だろう
本当に好きなことには一直線なんだろうな。
「あっ、大智さん」
「んっ?」
満腹になったお腹をさすりながら、透也くんを見上げた瞬間、透也くんの指が俺の唇に触れた。
「ご飯粒、ついてましたよ」
「あ、ありが――っ!!」
嬉しそうに指で摘んだ俺のごはん粒を見せたと思ったら、そのままパクリと口の中に入れてしまった。
「い、今……」
「ふふっ。ご馳走さまです。大智さんがたくさん食べてくれて嬉しいですよ」
今、確かに俺の唇についていたご飯粒を……食べた、よな?
それって、普通なのか?
――奥さんとして当然のことですよ。
そう言われたことが頭の中に甦る。
本当に、本気なんじゃ……?
そう思ったら、一気に顔に熱が集まっていく。
それを隠すように、
「――っ、か、片付けは私がするよ」
と言って立ち上がったものの、
「いえ、準備も手伝ってもらったんですから大丈夫ですよ」
とにこやかに交わされる。
でもそういうわけにはいかない。
「あんなの切っただけだし、美味しいの食べさせてもらったからするよ」
「ふふっ。じゃあ、一緒にしましょうか」
強めに言うと、透也くんは嬉しそうに俺の手を引いて二人でキッチンに並んだ。
「大智さん、これをお願いします」
「ああ、任せてくれ」
手際よく綺麗に洗った、野菜を切って入れていた盛り付け皿をタオルと共に最初に手渡され、意気揚々とそれを拭いている間に全ての食器が食洗機にかけられて、するべきことが全て終わってしまっていた。
「えっ? もう終わったのか?」
「大智さんが大物を拭いてくれていたおかげですよ。あれが意外と手間がかかるんです」
結局あれだけを拭いて終わって、手伝えたのかどうなのかもわからないけれど、にっこりと笑って言われれば、そうなのかと納得してしまう。
「食後のデザートに桃を剥きましょうか」
「あっ、そうだった!」
今頃冷えひえになっているだろう桃を冷蔵庫から取り出すと、透也くんは潰さないようにゆっくりと片手で持った。
「これはどうやって剥くのが正しいんだ?」
「色々剥き方はあるんですけど、私の場合は……」
そう言いながら、透也くんは桃の窪んだところを一周包丁を入れた。
でも中に大きな種があるから流石にこのまま切ることはできないだろうし、どうするんだろう?
そう思っていると、透也くんは包丁を置き、徐に両手で桃を捻り始めた。
「えっ?」
「ふふっ。みててください」
思いがけないやり方に驚いていると、ねじった桃が二つに分かれた。
片側に種がついている状態だ。
「わっ、すごっ」
そして、種のついていない方を櫛形に切り、さっと皮を器用に外していくとまるで切ったリンゴのような桃が現れた。
「えっ? 何、すごっ!」
種の付いている方も櫛形に切り、最後に種がぼろっと取れた。
「わっ、すごっ!」
もはやすごいとしか言いようがない技に驚きが止まらない。
「ふふっ。そんなに良い反応してくれるとやり甲斐がありますね」
「いや、ほんとすごいよ。こんな剥き方? というか、切り方、初めて見たし」
「学生のころ、ホテルのレストランでアルバイトしていた時にシェフに教えてもらったんですよ」
「もしかして厨房にいたのか?」
「いえ、ギャルソンです。英語だけでなく、一応フランス語も日常会話なら話せるので採用にしてもらえてラッキーでした。その時から料理に興味があったので、シェフと仲良くなっていろいろ教えてもらったんですよ」
「すごい経歴だな」
英語もネイティブ並みに話していたし、その上フランス語まで?
コミュニケーション能力は高いし、聞き上手で話し上手だし、料理も上手で、痒い所にまで手が届くくらいあれこれやってくれるし……学生時代の彼の恋人とやらは、本当にもったいないことしたな。
こんな完璧な彼氏なんてそうそういないのに……。
「あの時、桃の剥き方を聞いておいてよかったですよ、こうやって大智さんに喜んでもらえたんですから」
「――っ!!」
俺のために覚えてくれたわけじゃないけれど、なんだかそんなふうに言われたみたいで胸がときめいてしまうのは、さっきの
――奥さんとして当然のことですよ
と笑顔で言われたことを思い出してしまうからだ。
「大智さん、あっちで桃を食べましょう」
ソファーの前にあるテーブルに桃が入った器を置くと、透也くんはソファーの隣にあるキャビネットを開け、そこからワイングラスを取り出し、
「甘い桃に合う白ワインがあるんですよ」
と、いつの間に冷やしていたのか、ワインクーラーに入った白ワインをキッチンから持ってきた。
「これは、甘い桃との相性が抜群なんですよ」
手際よくワインを開け、グラスに注いでくれる姿はまるでソムリエのよう。
「これもレストランで学んだんですよ。やっぱり学生時代のバイトってその後の糧になりますよね」
そう簡単なことのように言うけれど、ここまで習得するにはかなり真剣に向き合わない限り、無理だろう
本当に好きなことには一直線なんだろうな。
あなたにおすすめの小説
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。