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変わらない気持ち
「あ、いえ……、その、ちが――っ、くはない、んですけど……あの……」
どうしよう。
嘘は言いたくないけど、流石にこんなところで突然カミングアウトはするべきじゃなかったのに……。
なんであんなこと言ってしまったんだろう?
自分で自分がわからない。
どうしよう、どうしよう……。
頭が真っ白で何も考えられない。
膝がガクガク震えて立っていられないと思った時、
「大智さん! 大丈夫ですから!」
と透也くんに優しく抱きしめられた。
もうほとんど力が抜け掛けていた足が崩れそうになっていたけれど、透也くんにがっしりと抱きしめられてなんとか持ち堪えている状態だ。
透也くんにすっかり身を預けている状態で、
「ごめん、俺……」
と謝ると
「謝らないでください。大丈夫だっていったでしょう?」
といつもと変わらない、いや、いつも以上に優しい笑顔が見えてホッとした。
「兄貴、話していた通り可愛い人だろう?」
「ああ、本当に。お前には勿体無いくらいの人だな」
「えっ? 話して、いた? って、どういうこと?」
にこやかに笑い合う透也くんとお兄さんの様子に僕は驚きの声をあげた。
「大智さん。すみません。兄貴には今日大切な恋人を連れていくって話をしていたんです。もちろん、それが男性で大智さんだということも全て……」
「――っ、じゃあ……お兄さんは、全てご存知で?」
「はい。席についてからちゃんと紹介するつもりだったんです。それなのに、兄貴が突然声をかけたりしたから……ここで紹介することになって、それで大智さんを惑わせることになってしまって……すみません」
そんな……透也くんが謝ることなんて何もない。
まだ付き合ったばかりだから、お兄さんに紹介してくれているなんて思いもしなかった僕の方が申し訳ない。
だって、宏樹はずっと僕の存在を隠そうとしていた。
外に出た時に恋人っぽく振舞われたこともないし、知人に出会っても、あくまでも友人としてしか紹介されなかった。
――同性の恋人がいるなんて知られたらお互い困るだけだろ。
ずっとそう言われていたし、何年も付き合ってもっと深い仲になるまでは紹介なんてしてもらえないものだと思ってた。
だけど、今日突然お兄さんだと紹介されてパニックになってしまって思わず、自分からカミングアウトしてしまった。
もしかしたら僕の中に、誰かに透也くんが僕の恋人だといってしまいたい気持ちがあったのかもしれない。
それはきっと、さっきのロビーでの出来事のせいだ。
透也くんのウィンクを見ていいのは俺だけなのにってずっとモヤモヤしていたからだ、きっと。
それがここで溢れ出ちゃうなんて思いもしなかった。
「透也、俺のせいにするなよ。お前がちゃんと話をして連れてこないからだろ。すみません、杉山さん。驚かせてしまって」
「い、いいえ。私の方が焦って勝手にカミングアウトしてしまっただけなので。でも……本当にお許しくださるんですか? 透也さん、さっきもうちの会社の子たちにモテてて、私みたいな男をわざわざ選ばなくても……」
「大智さん? 何を言ってるんですか? 俺には大智さんだけって言ったでしょう?」
「透也、落ち着け。杉山さん、私は喜んでるんですよ。透也が私に恋人を紹介したいって言ってきたのは、初めてなんです。しかも、その時なんて言ったと思います?」
「えっ? なんて、言ったんですか?」
「ふふっ。『本当はもったいなくて兄貴には紹介したくないけど、一時的に彼をここに残して日本に帰国しないといけない間、守ってもらわないといけないから。だけど、絶対に手は出すなよ!!!』って、頼んでるくせに、思いっきり釘を刺してきたんですよ。透也がこんなにも独占欲を露わにしながら、私に何かを頼んでくるなんてこと、今まで一度もなかったんです。それくらい杉山さんが特別な存在だってことですよ。だから、そんな相手に出会えたことが嬉しいとしか思えないんです。言っておきますけど、透也は自分のものにしたら、どんなことがあっても絶対に手放したりしないし、よそ見をすることもありませんから、覚悟しておいた方がいいですよ」
パチンとウィンクをする姿が透也くんによく似ている。
でも、不思議とドキドキはしなかった。
「兄貴っ、余計なこと言うなよ。引かれて逃げられたらどうする気だよ」
「ははっ。逃がす気なんてさらさらないくせに」
「それはそうだけど……。大智さん、俺のこと重すぎて困るとか思ってませんか?」
悲しげな表情で俺を見つめる顔が、本当に大きなワンコにしか見えなくなってきた。
可愛すぎて困るな。
「絶対に、離れないでくれ……って言っただろう? その気持ちは変わってないよ」
「――っ!! 大智さんっ!!」
ギュッと抱きしめられるその力が心地良い。
「はいはい。幸せそうで何よりだ」
「――っ!!」
「兄貴、邪魔するなよ!」
「邪魔はしたくないが、そろそろ食事をしないと休憩時間が終わるんじゃないか?」
「あっ!! 忘れてたっ」
「ハハッ。お前がそんなふうになるとは相当だな。すぐに食事を出すから部屋で待っていてくれ。杉山さん、ゆっくりしていってください」
「あ、ありがとうございます」
お兄さんは俺の声に笑顔で返すと、急いで奥へと駆けて行った。
どうしよう。
嘘は言いたくないけど、流石にこんなところで突然カミングアウトはするべきじゃなかったのに……。
なんであんなこと言ってしまったんだろう?
自分で自分がわからない。
どうしよう、どうしよう……。
頭が真っ白で何も考えられない。
膝がガクガク震えて立っていられないと思った時、
「大智さん! 大丈夫ですから!」
と透也くんに優しく抱きしめられた。
もうほとんど力が抜け掛けていた足が崩れそうになっていたけれど、透也くんにがっしりと抱きしめられてなんとか持ち堪えている状態だ。
透也くんにすっかり身を預けている状態で、
「ごめん、俺……」
と謝ると
「謝らないでください。大丈夫だっていったでしょう?」
といつもと変わらない、いや、いつも以上に優しい笑顔が見えてホッとした。
「兄貴、話していた通り可愛い人だろう?」
「ああ、本当に。お前には勿体無いくらいの人だな」
「えっ? 話して、いた? って、どういうこと?」
にこやかに笑い合う透也くんとお兄さんの様子に僕は驚きの声をあげた。
「大智さん。すみません。兄貴には今日大切な恋人を連れていくって話をしていたんです。もちろん、それが男性で大智さんだということも全て……」
「――っ、じゃあ……お兄さんは、全てご存知で?」
「はい。席についてからちゃんと紹介するつもりだったんです。それなのに、兄貴が突然声をかけたりしたから……ここで紹介することになって、それで大智さんを惑わせることになってしまって……すみません」
そんな……透也くんが謝ることなんて何もない。
まだ付き合ったばかりだから、お兄さんに紹介してくれているなんて思いもしなかった僕の方が申し訳ない。
だって、宏樹はずっと僕の存在を隠そうとしていた。
外に出た時に恋人っぽく振舞われたこともないし、知人に出会っても、あくまでも友人としてしか紹介されなかった。
――同性の恋人がいるなんて知られたらお互い困るだけだろ。
ずっとそう言われていたし、何年も付き合ってもっと深い仲になるまでは紹介なんてしてもらえないものだと思ってた。
だけど、今日突然お兄さんだと紹介されてパニックになってしまって思わず、自分からカミングアウトしてしまった。
もしかしたら僕の中に、誰かに透也くんが僕の恋人だといってしまいたい気持ちがあったのかもしれない。
それはきっと、さっきのロビーでの出来事のせいだ。
透也くんのウィンクを見ていいのは俺だけなのにってずっとモヤモヤしていたからだ、きっと。
それがここで溢れ出ちゃうなんて思いもしなかった。
「透也、俺のせいにするなよ。お前がちゃんと話をして連れてこないからだろ。すみません、杉山さん。驚かせてしまって」
「い、いいえ。私の方が焦って勝手にカミングアウトしてしまっただけなので。でも……本当にお許しくださるんですか? 透也さん、さっきもうちの会社の子たちにモテてて、私みたいな男をわざわざ選ばなくても……」
「大智さん? 何を言ってるんですか? 俺には大智さんだけって言ったでしょう?」
「透也、落ち着け。杉山さん、私は喜んでるんですよ。透也が私に恋人を紹介したいって言ってきたのは、初めてなんです。しかも、その時なんて言ったと思います?」
「えっ? なんて、言ったんですか?」
「ふふっ。『本当はもったいなくて兄貴には紹介したくないけど、一時的に彼をここに残して日本に帰国しないといけない間、守ってもらわないといけないから。だけど、絶対に手は出すなよ!!!』って、頼んでるくせに、思いっきり釘を刺してきたんですよ。透也がこんなにも独占欲を露わにしながら、私に何かを頼んでくるなんてこと、今まで一度もなかったんです。それくらい杉山さんが特別な存在だってことですよ。だから、そんな相手に出会えたことが嬉しいとしか思えないんです。言っておきますけど、透也は自分のものにしたら、どんなことがあっても絶対に手放したりしないし、よそ見をすることもありませんから、覚悟しておいた方がいいですよ」
パチンとウィンクをする姿が透也くんによく似ている。
でも、不思議とドキドキはしなかった。
「兄貴っ、余計なこと言うなよ。引かれて逃げられたらどうする気だよ」
「ははっ。逃がす気なんてさらさらないくせに」
「それはそうだけど……。大智さん、俺のこと重すぎて困るとか思ってませんか?」
悲しげな表情で俺を見つめる顔が、本当に大きなワンコにしか見えなくなってきた。
可愛すぎて困るな。
「絶対に、離れないでくれ……って言っただろう? その気持ちは変わってないよ」
「――っ!! 大智さんっ!!」
ギュッと抱きしめられるその力が心地良い。
「はいはい。幸せそうで何よりだ」
「――っ!!」
「兄貴、邪魔するなよ!」
「邪魔はしたくないが、そろそろ食事をしないと休憩時間が終わるんじゃないか?」
「あっ!! 忘れてたっ」
「ハハッ。お前がそんなふうになるとは相当だな。すぐに食事を出すから部屋で待っていてくれ。杉山さん、ゆっくりしていってください」
「あ、ありがとうございます」
お兄さんは俺の声に笑顔で返すと、急いで奥へと駆けて行った。
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