28 / 137
距離が近くなる
「ご馳走さまでした。本当に美味しかったです」
「気に入ってもらえて嬉しいよ。うちは鰻以外にも和食ならほとんど出しているから、いつでも食べに来て」
「いいんですか?」
「ああ、杉山さんなら大歓迎だよ」
「わぁ、ありがとうございます」
男同士の恋愛なんてずっと隠さないといけないと思っていたのに、俺たちが付き合っているとわかっても態度が変わらないどころか、こんなにも歓待してくれるなんて思いもしなかった。
本当にお兄さんって優しい人だな。
透也くんとはまた違う安心感がある。
「大智さん、あんまりそんなに可愛い顔を兄貴に見せないでください」
「えっ? 可愛いって……っ。そんなの思うの、透也くんだけだろう」
「そんなことないです! 大智さん、本当に可愛いんですよ」
「――っ、ほ、ほら、そんなことばっかり言ってないで、そろそろ行かないと!」
「ああ、そうでした」
慌てて話題を変えると、透也くんは時計を見てからお兄さんに視線を向けた。
「兄貴、今日はありがとう。あのさ、一つ言い忘れてたんだけど……」
「なんだ?」
「その、大智さん……兄貴とタメだよ」
「はっ?」
「えっ?」
タメ、って……同じ年、ってことだっけ?
はぁ? うそっ!
いや、絶対俺より2、3個は上だと思ってた。
そう思ったのはきっと俺だけじゃなかったみたいだ。
お兄さんがすごくびっくりした顔で俺をみてる。
鳩が豆鉄砲食ったような顔ってこういうのをいうんだろうな。
「それ……本当、なのか?」
「大智さん、先月30歳になったって言ってましたよね?」
「あ、ああ。そう、だけど……」
「じゃあ、実質兄貴の方が下だな。兄貴は来月30になるんだから」
そうなんだ……って、か二ヶ月くらいなら上も下もないけど。
「マジか……。正直言って、透也と同じか下だと思ってた……杉山さん、すみません」
「いいえ。そんなっ! 結局同級生なんですし、今まで通り敬語なしで大丈夫です」
「あの、じゃあ杉山さんも気楽に話して。その方が話しやすい」
「えっ、いい、のかな……?」
「ああ、そっちの方がいいな。じゃあ、苗字じゃなくて名前でもいい?」
「はい、いいで――」
「ダメだ! 大智さんを名前で呼んでいいのは俺だけなんだよ」
俺の言葉を遮るように透也くんがお兄さんに声を張り上げた。
どうやら自分と同じ呼び方になるのが気に入らないみたいだ。
ふふっ。
なんかこういうところは弟っぽい。
「じゃあ、透也くんは呼び捨てで呼んでくれたら良い。そうしたらお兄さんとは同じにはならないだろう?」
「えっ? 良いんですか?」
「ああ、その代わり俺も透也って呼んでいい?」
「――っ!! はいっ! もちろんです」
「ふふっ」
さっきまで拗ねていたくせに、もう嬉しそうに笑ってる。
本当におっきなワンコみたいだ。
「透也、大智さんを呼び捨てにできるようになったのは、俺のおかげだって忘れるなよ」
「うるさいよ、兄貴は」
「ははっ。大智さん、本当ワガママで典型的な弟なやつだけど、これからもよろしく頼む。あ、俺のことも祥也で良いよ」
「あ、はい。祥也さん、あの……透也、は……その、いつも優しいし、俺のことばかり優先して心配になるくらいだよ」
「えっ? 透也が優しくて、優先する? マジか、信じられないな」
驚いた顔で透也を見る。
その顔の方が俺はびっくりだ。
「言ったろ? 俺、本気なんだよ」
「そうか……よかったな」
二人が意味深に顔を見合わせて笑っているのを俺はただ見つめるしかなかった。
「大智、行きましょうか」
「えっ、あ、ああ。お兄さん、ご馳走さまでした」
もう一度お兄さんに声をかけて店を出た。
俺の手をとってスタスタと歩いていく透也の後ろをついていく。
まるで来た時と逆みたいだ。
それにしても初めて呼び捨てで呼ばれた時……なんだかすごくドキッとした。
でも呼び捨て、悪くないな。
むしろ嬉しい。
「透也? 何か怒ってる?」
「えっ? いえ、違いますよ。なんだかちょっと照れ臭くて……」
「そうか、ならよかった。今日は驚いたけど、お兄さんに紹介してもらえて嬉しかったよ」
「日本に帰った時はぜひ両親にも会ってください。もう話はしてるんです」
「えっ? もう? そ、それでなんて言ってた?」
「ものすごく喜んでくれてました。早く大智に会いたいって言ってましたよ。うちの母、大智みたいな息子が欲しいってずっと言ってたんで、俺や兄貴が帰国するより喜びそうですよ」
屈託のない笑顔を見せる透也に、社交辞令なんかは感じなかった。
きっと本当に喜んでくれているんだろう。
ああ、俺は幸せ者だな。
透也と出会って、一生分の運を使い果たしたのかもしれない。
支社まで送ってもらって、セキュリティーゲートの中に入るまで見送ると透也は自分の会社へ戻って行った。
今までずっと一緒だったくせに、離れてからほんの数分しか経っていないのにもう会いたくなる。
もうすっかり一緒にいるのが普通になってきたな。
本当に透也が帰国した後、生きていける気がしない。
心の中でため息をついていると、
「支社長。例のプロジェクトの件、うまく行きそうなんですけど、相手先が発案者と直接話して、できればその人を今回のプロジェクトのリーダーに据えて欲しいと仰ってるんですけど、本社からこっちにきてもらえないですか?」
と部下の子が相談に来た。
「このプロジェクトの発案者は……ああ、宇佐美くんか。そうだな彼に来てもらえればスムーズにことが進むだろうな。わかった。とりあえず本社に話を通してみるよ。うちに来てくれるのが一番だが、あの子はかなりのやり手だからね。本社の方が手放すかどうか……。まぁ何とか掛け合ってみよう。こっちのプロジェクトの成功がかかってるからな」
「はい。支社長、お願いします!」
宇佐美くんか……。
あの子がこのままこっちの支社にいてくれたら、俺の赴任期間も短くなるかもしれないな。
って、いくら早く透也と日本に戻りたいからってそんなこと考えたらダメか。
自分の話は置いといて、とりあえず、本社に連絡しておこう。
「気に入ってもらえて嬉しいよ。うちは鰻以外にも和食ならほとんど出しているから、いつでも食べに来て」
「いいんですか?」
「ああ、杉山さんなら大歓迎だよ」
「わぁ、ありがとうございます」
男同士の恋愛なんてずっと隠さないといけないと思っていたのに、俺たちが付き合っているとわかっても態度が変わらないどころか、こんなにも歓待してくれるなんて思いもしなかった。
本当にお兄さんって優しい人だな。
透也くんとはまた違う安心感がある。
「大智さん、あんまりそんなに可愛い顔を兄貴に見せないでください」
「えっ? 可愛いって……っ。そんなの思うの、透也くんだけだろう」
「そんなことないです! 大智さん、本当に可愛いんですよ」
「――っ、ほ、ほら、そんなことばっかり言ってないで、そろそろ行かないと!」
「ああ、そうでした」
慌てて話題を変えると、透也くんは時計を見てからお兄さんに視線を向けた。
「兄貴、今日はありがとう。あのさ、一つ言い忘れてたんだけど……」
「なんだ?」
「その、大智さん……兄貴とタメだよ」
「はっ?」
「えっ?」
タメ、って……同じ年、ってことだっけ?
はぁ? うそっ!
いや、絶対俺より2、3個は上だと思ってた。
そう思ったのはきっと俺だけじゃなかったみたいだ。
お兄さんがすごくびっくりした顔で俺をみてる。
鳩が豆鉄砲食ったような顔ってこういうのをいうんだろうな。
「それ……本当、なのか?」
「大智さん、先月30歳になったって言ってましたよね?」
「あ、ああ。そう、だけど……」
「じゃあ、実質兄貴の方が下だな。兄貴は来月30になるんだから」
そうなんだ……って、か二ヶ月くらいなら上も下もないけど。
「マジか……。正直言って、透也と同じか下だと思ってた……杉山さん、すみません」
「いいえ。そんなっ! 結局同級生なんですし、今まで通り敬語なしで大丈夫です」
「あの、じゃあ杉山さんも気楽に話して。その方が話しやすい」
「えっ、いい、のかな……?」
「ああ、そっちの方がいいな。じゃあ、苗字じゃなくて名前でもいい?」
「はい、いいで――」
「ダメだ! 大智さんを名前で呼んでいいのは俺だけなんだよ」
俺の言葉を遮るように透也くんがお兄さんに声を張り上げた。
どうやら自分と同じ呼び方になるのが気に入らないみたいだ。
ふふっ。
なんかこういうところは弟っぽい。
「じゃあ、透也くんは呼び捨てで呼んでくれたら良い。そうしたらお兄さんとは同じにはならないだろう?」
「えっ? 良いんですか?」
「ああ、その代わり俺も透也って呼んでいい?」
「――っ!! はいっ! もちろんです」
「ふふっ」
さっきまで拗ねていたくせに、もう嬉しそうに笑ってる。
本当におっきなワンコみたいだ。
「透也、大智さんを呼び捨てにできるようになったのは、俺のおかげだって忘れるなよ」
「うるさいよ、兄貴は」
「ははっ。大智さん、本当ワガママで典型的な弟なやつだけど、これからもよろしく頼む。あ、俺のことも祥也で良いよ」
「あ、はい。祥也さん、あの……透也、は……その、いつも優しいし、俺のことばかり優先して心配になるくらいだよ」
「えっ? 透也が優しくて、優先する? マジか、信じられないな」
驚いた顔で透也を見る。
その顔の方が俺はびっくりだ。
「言ったろ? 俺、本気なんだよ」
「そうか……よかったな」
二人が意味深に顔を見合わせて笑っているのを俺はただ見つめるしかなかった。
「大智、行きましょうか」
「えっ、あ、ああ。お兄さん、ご馳走さまでした」
もう一度お兄さんに声をかけて店を出た。
俺の手をとってスタスタと歩いていく透也の後ろをついていく。
まるで来た時と逆みたいだ。
それにしても初めて呼び捨てで呼ばれた時……なんだかすごくドキッとした。
でも呼び捨て、悪くないな。
むしろ嬉しい。
「透也? 何か怒ってる?」
「えっ? いえ、違いますよ。なんだかちょっと照れ臭くて……」
「そうか、ならよかった。今日は驚いたけど、お兄さんに紹介してもらえて嬉しかったよ」
「日本に帰った時はぜひ両親にも会ってください。もう話はしてるんです」
「えっ? もう? そ、それでなんて言ってた?」
「ものすごく喜んでくれてました。早く大智に会いたいって言ってましたよ。うちの母、大智みたいな息子が欲しいってずっと言ってたんで、俺や兄貴が帰国するより喜びそうですよ」
屈託のない笑顔を見せる透也に、社交辞令なんかは感じなかった。
きっと本当に喜んでくれているんだろう。
ああ、俺は幸せ者だな。
透也と出会って、一生分の運を使い果たしたのかもしれない。
支社まで送ってもらって、セキュリティーゲートの中に入るまで見送ると透也は自分の会社へ戻って行った。
今までずっと一緒だったくせに、離れてからほんの数分しか経っていないのにもう会いたくなる。
もうすっかり一緒にいるのが普通になってきたな。
本当に透也が帰国した後、生きていける気がしない。
心の中でため息をついていると、
「支社長。例のプロジェクトの件、うまく行きそうなんですけど、相手先が発案者と直接話して、できればその人を今回のプロジェクトのリーダーに据えて欲しいと仰ってるんですけど、本社からこっちにきてもらえないですか?」
と部下の子が相談に来た。
「このプロジェクトの発案者は……ああ、宇佐美くんか。そうだな彼に来てもらえればスムーズにことが進むだろうな。わかった。とりあえず本社に話を通してみるよ。うちに来てくれるのが一番だが、あの子はかなりのやり手だからね。本社の方が手放すかどうか……。まぁ何とか掛け合ってみよう。こっちのプロジェクトの成功がかかってるからな」
「はい。支社長、お願いします!」
宇佐美くんか……。
あの子がこのままこっちの支社にいてくれたら、俺の赴任期間も短くなるかもしれないな。
って、いくら早く透也と日本に戻りたいからってそんなこと考えたらダメか。
自分の話は置いといて、とりあえず、本社に連絡しておこう。
あなたにおすすめの小説
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。