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違和感といい匂い
「じゃあ、大智。荷物置いたらうちに来てくださいね。着替えはうちにありますから、スーツのままでいいですよ」
「あ、ああ。わかった」
部屋の前まで送られて、俺は自分の部屋に入った。
「あれ?」
なんだか、不思議な感じがする。
週末を透也の部屋で過ごしただけなのに、なんか俺の居場所はここじゃない感が強い。
なんか調子狂うなぁ。
あんなに自分の部屋が好きだったはずなのに。
なんでだろうと考えて、浮かんできた答えに少し顔が熱くなる。
この部屋に透也のものが何もないからだ。
まだ出会って少ししか経っていないのに、こんなにも自分の生活に透也が入り込んでしまっているんだ。
こんなんで、透也が帰国したら俺……どうやってこの部屋で一人で過ごすんだろう。
想像もつかない。
こっちの支社に申請を出しているとは言っていたけど、入社三年で長期出張を任されるくらいの人材だ。
本社が行かせてくれるかどうか……。
最低でも数ヶ月は離れ離れになるのを覚悟しておかないとな。
はぁーっ。なんだか一気に寂しくなってしまう。
その心を必死に奮い立たせて、俺は荷物を置き、透也の部屋に向かった。
「どうかしましたか?」
「えっ? なんで?」
「いえ、荷物を置いてくるだけにしては少し時間がかかったような気がしたので。そろそろ迎えに行こうと思っていたんですよ」
そんなにかかっていたとは思わなかった。
思っていた以上に、俺は透也とのことを考えていたらしい。
「聞いて欲しい話があるって言ってましたよね? そのことですか?」
「えっ? あっ、違うんだ。さっき、部屋に入ったら違和感がすごくて……」
「えっ? 違和感、ですか?」
「ああ。週末を透也のところで過ごしただけなのに、なんか自分の部屋が落ち着かなくて……どうしてかなって考えてたらわかったんだ。俺の部屋に透也のものがないからだなって……」
「――っ!!!」
「俺……透也の匂いも何も感じられないと落ち着かなくなってるみたいなんだよ。だから、透也が帰国した後、どうや――わぁっ!」
「もうっ! あなたって人は! 自分がどれだけすごいことを言っているのか自覚ありますか?」
急に強い力で抱きしめられたかと思ったら、なんだか怒られてる気がする。
でもそんな時でもふわりと漂ってくる透也の匂いにホッとする自分がいた。
「いい匂い……」
「――っ! 大智……今の、心の声ですか?」
「えっ? い、ま……出てた?」
「はぁーっ。もう……本当に……」
「透也? わっ!!」
急に抱きかかえられて、スタスタとソファーまで連れて行かれる。
「ちょ――っ、重いのにっ」
「何言ってるんですか。軽すぎてびっくりするくらいですよ」
俺よりも5つも年下なのに、軽々と抱きかかえられて……なんか恥ずかしい。
透也は俺を抱きかかえたままソファーに腰を下ろすと、俺をじっと見つめた。
「あの、透也……?」
「俺、決めました。ここにいる間は、大智の部屋で過ごします」
「えっ? 俺の部屋で? なんで?」
「俺のものがなくて寂しいんでしょう? だから、全部大智の部屋に運んで、いつでも俺を感じられるようにしておきます。そうしないと、俺と少し離れている間辛いでしょう?」
「そう、だけど……」
「俺も何もない部屋で一人で居させるのは心配で仕方がないんです。だから、そうしましょう」
「でも……離れている時間が長くなれば、逆に寂しくなる気がするんだけど……」
透也のものに囲まれている分、本人に会いたくてたまらなくなりそうだ。
「大丈夫ですよ。本当にすぐ戻ってきますから」
「でもまだ決まってないんだろう?」
「会社が認めてくれないなら辞めると言ってますから、大丈夫ですよ」
「そんなこと言ってるのか?」
「はい。それで引き止められるほどの仕事はしてますし、引き止められなくてもここですぐに仕事を見つける自信があります。だから、ほんの少しだけ我慢してください。そうですね、二週間以内に戻ってきますから」
「透也……」
透也がそういうなら、もうそれを信じよう。
俺は透也にギュッと抱きついた。
突然の俺の行動に驚いているようだったけれど、透也はそれを拒まなかった。
ふわりと漂ってくる透也の爽やかな匂いと温もりに俺はしばらくの間、離れられなかった。
「大智……聞いて欲しいことって、今から聞いても良いですか? それとも食事をしてからにしますか?」
「あ、そうだな……。あの、じゃあ……食事してからゆっくり聞いてもらって良いか?」
「はい。もちろんです」
「それで……申し訳ないんだけど、今日そのままここに泊めてもらってもいいかな?」
「――っ!!! もちろんです!!! 俺が部屋のものを移すまではずっとここに居てください!」
ものすごい勢いでそう言われて、俺はもう頷くしかできなかった。
「じゃあ、すぐに夕食の準備をしますね。大智、先にお風呂に入りますか?」
「でも、夕食作ってもらってるのに、俺が先に風呂に入るのは……」
「気にしないでください。下着も着替えも全部用意してますので、すぐ入れますよ」
「下着も?」
「はい。いつでも泊まれるように大智用の下着も全部揃えてるんです」
「――っ、そ、そうなのか……」
あまりにも用意周到で驚きつつも、透也ならやりそうだともはや納得してしまう。
「入浴剤も脱衣所に用意してますから好きなのを選んで入れてくださいね。あ、洗濯もしておきますからワイシャツも洗濯機に入れてください」
「あ、ありがとう」
結局そのまま流されて、風呂に入ることになった。
脱衣所に入ると本当に棚の一段全てが俺のもので埋まっていた。
仕事が早すぎてびっくりするな……。
服を脱ぎ、なんとなく甘い匂いに浸りたくて、バニラの香りを選んでみた。
ボール型の入浴剤を入れると、みるみるうちに甘い匂いが立ち込めていった。
ふふっ。美味しそうだ。
髪と身体をさっと洗い、湯に浸かると甘い香りに癒される。
心が落ち着いてくると、これからのことが頭をよぎった。
宏樹とのことを話そうと思っているけれど、透也はどう思うだろう……。
話をして俺はスッキリするだろうけど、元カレの話を聞いて嫌にならないだろうか……。
でも……このまま何も話さないのは違う気がする。
話をするって決めたんだし、言うしかないか。
よし!
自分を勢いづけるようにさっと立ち上がると、俺は急いで脱衣所に向かった。
「あ、ああ。わかった」
部屋の前まで送られて、俺は自分の部屋に入った。
「あれ?」
なんだか、不思議な感じがする。
週末を透也の部屋で過ごしただけなのに、なんか俺の居場所はここじゃない感が強い。
なんか調子狂うなぁ。
あんなに自分の部屋が好きだったはずなのに。
なんでだろうと考えて、浮かんできた答えに少し顔が熱くなる。
この部屋に透也のものが何もないからだ。
まだ出会って少ししか経っていないのに、こんなにも自分の生活に透也が入り込んでしまっているんだ。
こんなんで、透也が帰国したら俺……どうやってこの部屋で一人で過ごすんだろう。
想像もつかない。
こっちの支社に申請を出しているとは言っていたけど、入社三年で長期出張を任されるくらいの人材だ。
本社が行かせてくれるかどうか……。
最低でも数ヶ月は離れ離れになるのを覚悟しておかないとな。
はぁーっ。なんだか一気に寂しくなってしまう。
その心を必死に奮い立たせて、俺は荷物を置き、透也の部屋に向かった。
「どうかしましたか?」
「えっ? なんで?」
「いえ、荷物を置いてくるだけにしては少し時間がかかったような気がしたので。そろそろ迎えに行こうと思っていたんですよ」
そんなにかかっていたとは思わなかった。
思っていた以上に、俺は透也とのことを考えていたらしい。
「聞いて欲しい話があるって言ってましたよね? そのことですか?」
「えっ? あっ、違うんだ。さっき、部屋に入ったら違和感がすごくて……」
「えっ? 違和感、ですか?」
「ああ。週末を透也のところで過ごしただけなのに、なんか自分の部屋が落ち着かなくて……どうしてかなって考えてたらわかったんだ。俺の部屋に透也のものがないからだなって……」
「――っ!!!」
「俺……透也の匂いも何も感じられないと落ち着かなくなってるみたいなんだよ。だから、透也が帰国した後、どうや――わぁっ!」
「もうっ! あなたって人は! 自分がどれだけすごいことを言っているのか自覚ありますか?」
急に強い力で抱きしめられたかと思ったら、なんだか怒られてる気がする。
でもそんな時でもふわりと漂ってくる透也の匂いにホッとする自分がいた。
「いい匂い……」
「――っ! 大智……今の、心の声ですか?」
「えっ? い、ま……出てた?」
「はぁーっ。もう……本当に……」
「透也? わっ!!」
急に抱きかかえられて、スタスタとソファーまで連れて行かれる。
「ちょ――っ、重いのにっ」
「何言ってるんですか。軽すぎてびっくりするくらいですよ」
俺よりも5つも年下なのに、軽々と抱きかかえられて……なんか恥ずかしい。
透也は俺を抱きかかえたままソファーに腰を下ろすと、俺をじっと見つめた。
「あの、透也……?」
「俺、決めました。ここにいる間は、大智の部屋で過ごします」
「えっ? 俺の部屋で? なんで?」
「俺のものがなくて寂しいんでしょう? だから、全部大智の部屋に運んで、いつでも俺を感じられるようにしておきます。そうしないと、俺と少し離れている間辛いでしょう?」
「そう、だけど……」
「俺も何もない部屋で一人で居させるのは心配で仕方がないんです。だから、そうしましょう」
「でも……離れている時間が長くなれば、逆に寂しくなる気がするんだけど……」
透也のものに囲まれている分、本人に会いたくてたまらなくなりそうだ。
「大丈夫ですよ。本当にすぐ戻ってきますから」
「でもまだ決まってないんだろう?」
「会社が認めてくれないなら辞めると言ってますから、大丈夫ですよ」
「そんなこと言ってるのか?」
「はい。それで引き止められるほどの仕事はしてますし、引き止められなくてもここですぐに仕事を見つける自信があります。だから、ほんの少しだけ我慢してください。そうですね、二週間以内に戻ってきますから」
「透也……」
透也がそういうなら、もうそれを信じよう。
俺は透也にギュッと抱きついた。
突然の俺の行動に驚いているようだったけれど、透也はそれを拒まなかった。
ふわりと漂ってくる透也の爽やかな匂いと温もりに俺はしばらくの間、離れられなかった。
「大智……聞いて欲しいことって、今から聞いても良いですか? それとも食事をしてからにしますか?」
「あ、そうだな……。あの、じゃあ……食事してからゆっくり聞いてもらって良いか?」
「はい。もちろんです」
「それで……申し訳ないんだけど、今日そのままここに泊めてもらってもいいかな?」
「――っ!!! もちろんです!!! 俺が部屋のものを移すまではずっとここに居てください!」
ものすごい勢いでそう言われて、俺はもう頷くしかできなかった。
「じゃあ、すぐに夕食の準備をしますね。大智、先にお風呂に入りますか?」
「でも、夕食作ってもらってるのに、俺が先に風呂に入るのは……」
「気にしないでください。下着も着替えも全部用意してますので、すぐ入れますよ」
「下着も?」
「はい。いつでも泊まれるように大智用の下着も全部揃えてるんです」
「――っ、そ、そうなのか……」
あまりにも用意周到で驚きつつも、透也ならやりそうだともはや納得してしまう。
「入浴剤も脱衣所に用意してますから好きなのを選んで入れてくださいね。あ、洗濯もしておきますからワイシャツも洗濯機に入れてください」
「あ、ありがとう」
結局そのまま流されて、風呂に入ることになった。
脱衣所に入ると本当に棚の一段全てが俺のもので埋まっていた。
仕事が早すぎてびっくりするな……。
服を脱ぎ、なんとなく甘い匂いに浸りたくて、バニラの香りを選んでみた。
ボール型の入浴剤を入れると、みるみるうちに甘い匂いが立ち込めていった。
ふふっ。美味しそうだ。
髪と身体をさっと洗い、湯に浸かると甘い香りに癒される。
心が落ち着いてくると、これからのことが頭をよぎった。
宏樹とのことを話そうと思っているけれど、透也はどう思うだろう……。
話をして俺はスッキリするだろうけど、元カレの話を聞いて嫌にならないだろうか……。
でも……このまま何も話さないのは違う気がする。
話をするって決めたんだし、言うしかないか。
よし!
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