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バレてる?
「じゃあ、宇佐美くんは金曜日にはこっちに来れそうか?」
「はい。ちょうど今日でこっちの仕事も終わりますし、早くそちらにいって流れを見ておきたいので」
「こちらの社宅には全て揃っているから、身の回りのものだけ持ってきてくれたらいいから」
「ちょうど新居に引っ越す予定で荷物を纏めてたんですよ。その意味ではタイミング良かったですよ」
「そうか、そう言ってくれると助かるよ。君の下にはこの高遠くんが付くが、何かわからないことがあれば私に聞いてくれていいよ。高遠くんとは全て情報を共有しているから」
「わかりました。支社長。では金曜日にそちらについて週明け月曜からの勤務で大丈夫ですか?」
「ああ。それでいい。何かあれば連絡してくれ。何もなくても連絡してくれていいよ」
「はい。ありがとうございます」
もうすっかりやる気モードになってくれているようだ。
やはり応援してくれている人がいると、仕事の張り合いもあるんだろう。
彼がやる気になってくれているだけで、このプロジェクトの成功はもうほぼ決まったも同然だ。
「支社長。宇佐美さん、すごくいい人ですね。仕事もしやすそうで助かります」
「そうか、高遠くんは宇佐美くんと一緒に仕事をしたことがなかったんだな」
「はい。僕は最初からここの支社での配属を希望していましたから。僕が本社で研修の時は、宇佐美さんがこちらにきていた時期でしたし、ちょうどすれ違いでした」
「彼と一緒に組めば、きっとこれからの仕事の役に立つよ。それくらい、彼は仕事ができるからね。宇佐美くんのいいところを吸収して、高遠くんの長所と合わせたらもう敵なしだぞ」
「はい! 頑張ります!!」
「ああ、期待してるよ。ああ、もう定時過ぎてるな。片付けして帰っていいよ」
「はい。お疲れさまです」
高遠くんはバタバタと荷物を片付けると急いで会議室を出ていった。
もしかしたら約束でもあるのかもしれない。
週が明けたばかりだが、さすが若い子だな。
まぁ仕事も頑張ってくれているし、プライベートに口を出すつもりはさらさらない。
そもそも、ここの支社では基本的に残業はなしと決められている。
深夜まで働いて帰宅途中に何か事件に巻き込まれても大変だし、そんなにギチギチなスケジュールを組んでいないため、残業してまで終わらせる仕事もない。
宇佐美くんは婚約者と離れて寂しいだろうが、残業もないこの支社での仕事をこなしながら、しばらくはゆったりと過ごしてもらうとしよう。
ああっ!
そういえば、もう透也が迎えにきてくれているんじゃないか?
俺は急いで
<今、会議終わったから片付けてロビーに向かうよ>
とメッセージを送り、スマホをポケットに戻した。
会議室を片付けて、自分のデスクに戻ろうと階段を駆け上がると、オフィスのある階の階段のすぐ近くの給湯室から数人の女性がお喋りしているのが聞こえた。
うわぁ……っ。
急いでいるのに、通りづらいな。
なんで女性っていうのは、こういう場所で集まって話をするんだろう。
普通に休憩室に行けばいいのに。
なんてこんなことを言ったら、一気に女性社員たちから総スカンを喰らいそうだ。
とりあえず、話の切れ目にさりげなく通るしかないか。
意図せず、彼女たちの話を耳にする羽目になったが、本当は何も聞きたくない。
噂話なんて聞く意味もない。
だが、聞こえてきたのは、
「支社長……」
と思いがけず自分の名前だった。
なんだ?
俺は知らない間に何かをしてしまったのか?
なぜかとてつもなく緊張しながら息を潜めていると、
「今日、お弁当持ってきてたでしょ?」
と聞き覚えのある声が聞こえた。
これは……金沢さん?
「あ、そうそう! あれって、買ってきたやつ?」
「違うのよ! それがね!! 本当にすごかったの!」
「えー、すごいって何が? 実際に見たの?」
「うん。支社長、料理しないって自分で言ってたのにお弁当持ってきたっていうから気になっちゃって。味見させてくださいって頼んだら、いいよって言ってくれたの」
「えーっ、めっちゃいいじゃん。それで?」
「それがさ、ちゃんと出汁のとった味噌汁をスープ入れに持ってきてて」
「それ、支社長が?」
「うそーっ」
「いや、私も最初はそう思ったんだけどね。多分支社長じゃないよ」
「なんで?」
「お弁当箱開けて、びっくりしたの。3つ入ってたおにぎりはどれも綺麗な三角でね、しかも全部味が違ってて……」
「えー、すごっ!」
「卵焼きは焦げもないくらいにふわふわに仕上がってて、しかもあの煮物!」
「煮物?」
「うん。ひじきの煮物と同じ場所に綺麗に飾り切りされた人参があったの」
「えっ? それって……」
「でしょう? 間違い無いよね?」
「もう確定!」
何?
なんだ?
何が間違いないんだ?
飾り切りの、人参?
っていうか、飾り切りって?
人参って……ああ、そういえば花の形みたいな人参が入ってたな。
出汁が染みててすごく美味しかった。
って、ええっ!?
あれって、ああいう形で売ってるんじゃなくて、透也が作ったってこと?
嘘だろっ?
「あれはかなりマウント取ってるよね。支社長の胃袋掴んでるから邪魔するなってすごい牽制されてるみたいで怖かったよ」
「しかも、支社長……すっごく美味しそうに食べてたよね。」
「そうそう、すっごく幸せオーラ振りまいてたし」
幸せオーラ?
そんなの出した覚えはないけど……。
確かに弁当は美味しかったけどさ。
「ねぇ、でも支社長ってまだこっちにきてそんなに日が経ってないよね? もう恋人ができたってこと? まぁイケメンだし出来てても納得はするけど」
「もしかして知らない? 支社長の恋人の噂」
「えー、なに? どんな人?」
もしかして、透也のことがバレてる?
そう思っただけで胸のドキドキが破裂しそうになっていた。
「はい。ちょうど今日でこっちの仕事も終わりますし、早くそちらにいって流れを見ておきたいので」
「こちらの社宅には全て揃っているから、身の回りのものだけ持ってきてくれたらいいから」
「ちょうど新居に引っ越す予定で荷物を纏めてたんですよ。その意味ではタイミング良かったですよ」
「そうか、そう言ってくれると助かるよ。君の下にはこの高遠くんが付くが、何かわからないことがあれば私に聞いてくれていいよ。高遠くんとは全て情報を共有しているから」
「わかりました。支社長。では金曜日にそちらについて週明け月曜からの勤務で大丈夫ですか?」
「ああ。それでいい。何かあれば連絡してくれ。何もなくても連絡してくれていいよ」
「はい。ありがとうございます」
もうすっかりやる気モードになってくれているようだ。
やはり応援してくれている人がいると、仕事の張り合いもあるんだろう。
彼がやる気になってくれているだけで、このプロジェクトの成功はもうほぼ決まったも同然だ。
「支社長。宇佐美さん、すごくいい人ですね。仕事もしやすそうで助かります」
「そうか、高遠くんは宇佐美くんと一緒に仕事をしたことがなかったんだな」
「はい。僕は最初からここの支社での配属を希望していましたから。僕が本社で研修の時は、宇佐美さんがこちらにきていた時期でしたし、ちょうどすれ違いでした」
「彼と一緒に組めば、きっとこれからの仕事の役に立つよ。それくらい、彼は仕事ができるからね。宇佐美くんのいいところを吸収して、高遠くんの長所と合わせたらもう敵なしだぞ」
「はい! 頑張ります!!」
「ああ、期待してるよ。ああ、もう定時過ぎてるな。片付けして帰っていいよ」
「はい。お疲れさまです」
高遠くんはバタバタと荷物を片付けると急いで会議室を出ていった。
もしかしたら約束でもあるのかもしれない。
週が明けたばかりだが、さすが若い子だな。
まぁ仕事も頑張ってくれているし、プライベートに口を出すつもりはさらさらない。
そもそも、ここの支社では基本的に残業はなしと決められている。
深夜まで働いて帰宅途中に何か事件に巻き込まれても大変だし、そんなにギチギチなスケジュールを組んでいないため、残業してまで終わらせる仕事もない。
宇佐美くんは婚約者と離れて寂しいだろうが、残業もないこの支社での仕事をこなしながら、しばらくはゆったりと過ごしてもらうとしよう。
ああっ!
そういえば、もう透也が迎えにきてくれているんじゃないか?
俺は急いで
<今、会議終わったから片付けてロビーに向かうよ>
とメッセージを送り、スマホをポケットに戻した。
会議室を片付けて、自分のデスクに戻ろうと階段を駆け上がると、オフィスのある階の階段のすぐ近くの給湯室から数人の女性がお喋りしているのが聞こえた。
うわぁ……っ。
急いでいるのに、通りづらいな。
なんで女性っていうのは、こういう場所で集まって話をするんだろう。
普通に休憩室に行けばいいのに。
なんてこんなことを言ったら、一気に女性社員たちから総スカンを喰らいそうだ。
とりあえず、話の切れ目にさりげなく通るしかないか。
意図せず、彼女たちの話を耳にする羽目になったが、本当は何も聞きたくない。
噂話なんて聞く意味もない。
だが、聞こえてきたのは、
「支社長……」
と思いがけず自分の名前だった。
なんだ?
俺は知らない間に何かをしてしまったのか?
なぜかとてつもなく緊張しながら息を潜めていると、
「今日、お弁当持ってきてたでしょ?」
と聞き覚えのある声が聞こえた。
これは……金沢さん?
「あ、そうそう! あれって、買ってきたやつ?」
「違うのよ! それがね!! 本当にすごかったの!」
「えー、すごいって何が? 実際に見たの?」
「うん。支社長、料理しないって自分で言ってたのにお弁当持ってきたっていうから気になっちゃって。味見させてくださいって頼んだら、いいよって言ってくれたの」
「えーっ、めっちゃいいじゃん。それで?」
「それがさ、ちゃんと出汁のとった味噌汁をスープ入れに持ってきてて」
「それ、支社長が?」
「うそーっ」
「いや、私も最初はそう思ったんだけどね。多分支社長じゃないよ」
「なんで?」
「お弁当箱開けて、びっくりしたの。3つ入ってたおにぎりはどれも綺麗な三角でね、しかも全部味が違ってて……」
「えー、すごっ!」
「卵焼きは焦げもないくらいにふわふわに仕上がってて、しかもあの煮物!」
「煮物?」
「うん。ひじきの煮物と同じ場所に綺麗に飾り切りされた人参があったの」
「えっ? それって……」
「でしょう? 間違い無いよね?」
「もう確定!」
何?
なんだ?
何が間違いないんだ?
飾り切りの、人参?
っていうか、飾り切りって?
人参って……ああ、そういえば花の形みたいな人参が入ってたな。
出汁が染みててすごく美味しかった。
って、ええっ!?
あれって、ああいう形で売ってるんじゃなくて、透也が作ったってこと?
嘘だろっ?
「あれはかなりマウント取ってるよね。支社長の胃袋掴んでるから邪魔するなってすごい牽制されてるみたいで怖かったよ」
「しかも、支社長……すっごく美味しそうに食べてたよね。」
「そうそう、すっごく幸せオーラ振りまいてたし」
幸せオーラ?
そんなの出した覚えはないけど……。
確かに弁当は美味しかったけどさ。
「ねぇ、でも支社長ってまだこっちにきてそんなに日が経ってないよね? もう恋人ができたってこと? まぁイケメンだし出来てても納得はするけど」
「もしかして知らない? 支社長の恋人の噂」
「えー、なに? どんな人?」
もしかして、透也のことがバレてる?
そう思っただけで胸のドキドキが破裂しそうになっていた。
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