年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

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完全介護生活

「ふふっ。大智。落ち着いてください」

「えっ、いや、聞き間違いかな? 高遠くんが……お兄さんの、彼氏とかって……聞こえたんだけど」

「大丈夫、合ってますよ。高遠さんと兄貴、もう結構前から付き合ってるんです」

「ほ、ほんとに?」

「はい。まぁ詳しい馴れ初めなんかは本人の口から聞いたほうがいいと思うんですけど」

それは確かにそうかも。
透也は兄弟だし、いろいろと知ってるんだろうけどそんなふうにベラベラと人に話すことでもないしな。

「でも聞く時は覚悟しておいたほうがいいですよ。惚気が半端ないんで」

「ああ、そうなんだ」

心底嫌そうな顔に今まで相当惚気られてきたんだろうなと思ってしまう。

「あ、もしかして、高遠くんがこっちの支社での配属を希望していたのはもしかしてお兄さんがこっちにいるから?」

「ふふっ。あれはお互いなんですよ」

「お互い?」

「兄貴は高遠さんがアメリカで働くのが夢だったからそれを応援したくてこっちに来たって言ってるし。高遠さんは兄貴が日本料理店をアメリカに出店するのが夢だったからそれを応援したかったって言ってるし。どっちもお互いの夢を叶えるためにここで働くのを決めたみたいですよ」

「へぇー、そうなんだ。それは……いい話だな」

「だから、俺も同じ気持ちです。大智が数年ここを離れられないのなら、俺がこっちに来る。もう決めたことなので変えられないですよ」

実際にそうしている二人が近くにいるだけで、なんだかすごく心強く感じる。

「透也……ありがとう」

「ふふっ。大智と離れたら使い物にならないんで、俺たちはそばにいるほうがメリットが大きいんですよ」

ギュッと抱きしめられる温もりに安心する。

「あ、食事持ってきますね。すぐ取ってきますから少しだけ待っててくださいね」


俺の身体に負担がかからないように優しく抱き起こし、大きなクッションと枕を背当てにしてくれて、もう至れり尽くせりだ。
子どものようにお世話されて申し訳ないけれど、今の俺にはものすごくありがたい。

寝室を出て行ったと思ったら、すぐに戻ってきてベッドテーブルを用意してくれた。

「こんなのいつの間に用意したんだ?」

「俺の部屋の収納に置いてあった気がして持ってきました。多分、大智さんの部屋にも置いてあると思うんで、あとで探してみますね」

俺が寝ていたから部屋を探さずに自分の部屋からわざわざ持ってきたらしい。
別に起こしてくれてよかったのに。
本当に優しすぎる。

テーブルの上に小さな土鍋が置かれる。
これもうちでは見慣れないものだ。

「ああ、これも俺の部屋から持ってきました」

「悪い、最初から俺が透也の部屋で休ませてもらったらよかったな。そこまで気が回らなくて……」

「そんなこと気にしないでいいですよ。さぁ、食事にしましょう」

そう言って土鍋の蓋を開けると、中にはたっぷりとカニの身が入った美味しそうな雑炊。

「わぁー、いい匂いだな」

「ふふっ。ちょうど兄貴から蟹を貰ってたんで雑炊にしたんですよ。これなら消化にもいいし、食べやすいでしょう?」

「ありがとう」

こんなに大きな身が本物。
すごいな……。
見ているだけで涎が出そうだ。

透也はそれを器に装うと、レンゲに乗せてふうふうと冷ましてくれる。

「あ、いいよ。自分で……」

「今日のお世話は俺が全部やりますから。ゆっくりしていてください」

透也がやさしさで言ってくれているのがわかるだけに、そう言われるともうそれ以上断ることもできなくて、

「あーん」

と差し出されたレンゲを口に迎え入れた。

「んんっ!! おいひぃっ!!」

カニの出汁がよく出ていて、ふんわりとした卵とよく合っている。

「ふふっ。いっぱいありますからたくさん食べてください」

そう言いながら、同じレンゲで自分の口にも運び入れる。
一人分にしては土鍋が大きめだと思ったけど、自分の分も入っていたらしい。
同じ鍋をつつくってこれでもそう言うのかはわからないけれど、透也と一緒に食べていると思うだけでとてつもなく美味しく感じて、あっという間に二人で雑炊を平らげた。

「ふぅーっ、お腹いっぱい。すごくおいしかったよ」

「ふふっ。よかったです」

さっきまで眠っていたのに、お腹がいっぱいになると途端に眠くなる。
お世話ばかりされていたから、身体も子どもみたいになってしまっているのかもしれない。

「今日は休みですから、ゆっくりと休養しましょうね。俺も休暇とったんで、たっぷりとお世話しますよ」

「えっ? 透也も休んだのか?」

「当たり前でしょう? 世話する人がいなければ休んでも意味ないじゃないですか。あ、寝る前にトイレに行っておきましょうね」

ますます子どもみたいになってきたなと思いつつ、ふと考えるとかなりの時間トイレに行った記憶がない。

「あのさ、俺っていつ、トイレに……?」

「えっ、そうですね。もう二回は行ってますよ。俺が連れて行って座らせてさせようとしたら嫌がったんで、立って後ろから支えてやらせましたけど」

何も覚えてない……。
ってか、後ろから支えてって……もしかして、アレを持たれてた?

想像しただけで恥ずかしいんだけど……。

「ふふっ。俺たちは恋人ですし、もうそれ以上のこともしてるんですから、トイレくらい気にしないでいいでしょう? 大智が意識失ったあと、身体も洗って着替えもさせたんですから」

トイレだけじゃなくて、お風呂も……。
でもそういえば気づいてなかったけど確かに綺麗になってる。

うわ、俺……もうすでに世話されまくりじゃないか。

戸惑っている間にささっとトイレに連れて行かれて、恥ずかしさで死にそうになっている間にもう終わってしまっていた。

「あの、これからはトイレは自分で……」

「無理してたら、今週はずっと休まないといけなくなりますよ」

「それは困る!」

だって、金曜には宇佐美くんがこっちに着くことになっている。
あの真面目な宇佐美くんのことだから、到着したら支社に挨拶に寄りそうだ。
無理を言って来させたのに、俺がいないなんてそんなことできるはずがない。

「今週、何か大事な用事でもあるんですか?」

「今回大事なプロジェクトを控えてて、先方の要望でその発案者であるうちの社員をこっちに来させて欲しいって言われて、無理言って三ヶ月来てもらうことになってるんだ。彼が挨拶に来るかもしれない日に休むなんてできないだろう?」

「プロジェクトの発案者って……それって、誰ですか?」

「透也より年上だから知らないかもしれないけど、うちのかなり有望な社員だよ」

そういうと、透也は真剣な表情を向けた。
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