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大型犬と子犬
「大智っ!」
定時より少しだけ遅くなって、ロビーに下りると今日もすでに透也が来てくれていた。
「お疲れさまです。今日は忙しかったでしょう?」
「なんで知っているんだ?」
「ふふっ。高遠さんから連絡が来ていましたから。自分を先に帰らせるために少し残ってくれていますって」
「ああ、そうなのか」
「なんで高遠さんを先に帰らせたんですか?」
「いや、いつも定時近くになったらソワソワして早く帰っていたのは、お兄さんに会いに行くためだったんじゃないかって思ったから早く会わせてあげたかったんだよ」
「兄貴のためですか? 何だか嫉妬しますよ」
いつだってずっと頼り甲斐のある格好いい大型犬なのに、こんな時は年下だって子犬のように甘えてくる。
そのギャップが可愛くて仕方がない。
「高遠くんは宇佐美くんと一緒にプロジェクトに参加するから、週明けから帰りが少し定時を過ぎるかもしれないんだ。忙しくなる前に、少しでも一緒の時間を過ごさせてやりたいだろう?」
「大智……」
「それに俺たちは今からずっと一緒なんだし、いいだろう? 俺は時間が短くても透也と濃密な時間を過ごしたいと思ってるけど透也は違うのか?」
「――っ!! 大智っ!! その通りです!! じゃあ、濃密な時間を過ごすために早く帰りましょう!!」
さっきまでの子犬はどこに行ったんだろうと思うくらい、鼻息が荒くあっという間に俺の腕をとってキースの車に押し込んだ。
「そうだ。宇佐美くんに話をしてみてからだが、宇佐美くんがくるまでの送迎を望むならキースは彼の専属にするから、前話していたように、透也が俺を送ってくれるか?」
「はい。もちろんですよ。車はもうすでにいつでも使える状態になってます。でも、敦己が車での送迎を拒んだらどうするんですか?」
「一応本社からは専属護衛をつけるようにと言われているから、どちらを選んでもらっても構わないんだ」
「そうなんですね。でも敦己のことだから車を選びますよ。だから、大智は俺が送迎しますから安心してください」
そう自信満々に言い切る透也をみていると、期待してしまう自分がいる。
キースの運転は本当に安心安全で申し分ないのだけれど、やっぱり透也と二人っきりの空間に居られるのならそっちがいい。
散々部屋で一緒にいるくせにと言われようが、日に日に透也の帰国が近づいているのだと思うと、少しの時間でも離れていたくないと思ってしまう。
正直言って、宇佐美くんにはキースの車を選んで欲しいと願わずにいられないんだ。
自宅に戻り、今日は透也の部屋に泊まることになった。
着替えも何もいらないと言われて、そのまま透也の部屋に行ったけれど、知らない間にどんどん俺の服が増えている気がする。
「透也……いつの間にこんなに服が増えてるんだ?」
「外回りの休憩時間を使って買い物してるんです。休憩時間だから、なんの問題もないですよ」
「いや、そんなことは心配していないけど……でも、休憩時間は休んでおかないと疲れが取れないんじゃないか?」
「大丈夫です。大智のを選んでいるときこそが癒しの時間ですから」
そんな恍惚とした表情で言われると、なんと返していいかわからなくなる。
ありがとう……はおかしいよな?
癒しの時間だって言うなら……そうだな。
「じゃあ、家でも癒してやろうか?」
「――っ!! はいっ! お願いしますっ!!」
本気と冗談と半々だったとは今更言い出せないほど、嬉しそうに俺をソファーに連れて行く。
「少しだけでいいですから……」
そう言って、座った俺の膝に嬉しそうに頭をのせた。
透也の大きな手が俺の足を撫でていく。
スーツのスラックスの上からなのに、なぜかものすごく嬉しそうな顔をしている。
「あの、透……ちょっと」
「あっ、すみません。やっぱり、ちょっと図々しかったですか?」
さっきまでの嬉しそうな顔が一転、透也は慌てて飛び起きてきた。
「違うよ。こんなスーツじゃない方がいいんじゃないか?」
「えっ? それって……?」
「だから、風呂上がりにしてやるよ。前みたいに透也のTシャツだけ着て、下は穿かないで……」
「――っ!!! それ、本気ですか?」
「ああ。いや、透也が嫌なら別に――」
「嫌なわけ無いでしょう!! ぜひっ! お願いしますっ!! あっ、俺はすぐに食事の支度をしますね。ご飯食べたらお風呂入ってすぐですよ!」
そういうと、透也は嬉しそうにキッチンへと飛んでいった。
それからあっという間に夕食を仕上げた透也と、楽しいおしゃべりをしながらご飯をお腹いっぱい食べ今日も大満足だ。
「大智、一緒にお風呂に入りましょうか?」
「えっ? あの、それは……今度……っ」
もう全てを見られてしまっているから今更だといえばそうなのだが、なんとなく一緒にお風呂は気恥ずかしい。
明るいから余計に恥じらってしまうのかもしれない。
「ふふっ。わかりました。今日は膝枕も待ってますし、無理強いはしませんから、ゆっくり入ってきてください」
そう言って送り出されるとそれはそれで恥ずかしさも増すのだけど。
俺は結局どれも恥ずかしいんだろう。
そう思いながら、手早く服を脱いで風呂に入った。
定時より少しだけ遅くなって、ロビーに下りると今日もすでに透也が来てくれていた。
「お疲れさまです。今日は忙しかったでしょう?」
「なんで知っているんだ?」
「ふふっ。高遠さんから連絡が来ていましたから。自分を先に帰らせるために少し残ってくれていますって」
「ああ、そうなのか」
「なんで高遠さんを先に帰らせたんですか?」
「いや、いつも定時近くになったらソワソワして早く帰っていたのは、お兄さんに会いに行くためだったんじゃないかって思ったから早く会わせてあげたかったんだよ」
「兄貴のためですか? 何だか嫉妬しますよ」
いつだってずっと頼り甲斐のある格好いい大型犬なのに、こんな時は年下だって子犬のように甘えてくる。
そのギャップが可愛くて仕方がない。
「高遠くんは宇佐美くんと一緒にプロジェクトに参加するから、週明けから帰りが少し定時を過ぎるかもしれないんだ。忙しくなる前に、少しでも一緒の時間を過ごさせてやりたいだろう?」
「大智……」
「それに俺たちは今からずっと一緒なんだし、いいだろう? 俺は時間が短くても透也と濃密な時間を過ごしたいと思ってるけど透也は違うのか?」
「――っ!! 大智っ!! その通りです!! じゃあ、濃密な時間を過ごすために早く帰りましょう!!」
さっきまでの子犬はどこに行ったんだろうと思うくらい、鼻息が荒くあっという間に俺の腕をとってキースの車に押し込んだ。
「そうだ。宇佐美くんに話をしてみてからだが、宇佐美くんがくるまでの送迎を望むならキースは彼の専属にするから、前話していたように、透也が俺を送ってくれるか?」
「はい。もちろんですよ。車はもうすでにいつでも使える状態になってます。でも、敦己が車での送迎を拒んだらどうするんですか?」
「一応本社からは専属護衛をつけるようにと言われているから、どちらを選んでもらっても構わないんだ」
「そうなんですね。でも敦己のことだから車を選びますよ。だから、大智は俺が送迎しますから安心してください」
そう自信満々に言い切る透也をみていると、期待してしまう自分がいる。
キースの運転は本当に安心安全で申し分ないのだけれど、やっぱり透也と二人っきりの空間に居られるのならそっちがいい。
散々部屋で一緒にいるくせにと言われようが、日に日に透也の帰国が近づいているのだと思うと、少しの時間でも離れていたくないと思ってしまう。
正直言って、宇佐美くんにはキースの車を選んで欲しいと願わずにいられないんだ。
自宅に戻り、今日は透也の部屋に泊まることになった。
着替えも何もいらないと言われて、そのまま透也の部屋に行ったけれど、知らない間にどんどん俺の服が増えている気がする。
「透也……いつの間にこんなに服が増えてるんだ?」
「外回りの休憩時間を使って買い物してるんです。休憩時間だから、なんの問題もないですよ」
「いや、そんなことは心配していないけど……でも、休憩時間は休んでおかないと疲れが取れないんじゃないか?」
「大丈夫です。大智のを選んでいるときこそが癒しの時間ですから」
そんな恍惚とした表情で言われると、なんと返していいかわからなくなる。
ありがとう……はおかしいよな?
癒しの時間だって言うなら……そうだな。
「じゃあ、家でも癒してやろうか?」
「――っ!! はいっ! お願いしますっ!!」
本気と冗談と半々だったとは今更言い出せないほど、嬉しそうに俺をソファーに連れて行く。
「少しだけでいいですから……」
そう言って、座った俺の膝に嬉しそうに頭をのせた。
透也の大きな手が俺の足を撫でていく。
スーツのスラックスの上からなのに、なぜかものすごく嬉しそうな顔をしている。
「あの、透……ちょっと」
「あっ、すみません。やっぱり、ちょっと図々しかったですか?」
さっきまでの嬉しそうな顔が一転、透也は慌てて飛び起きてきた。
「違うよ。こんなスーツじゃない方がいいんじゃないか?」
「えっ? それって……?」
「だから、風呂上がりにしてやるよ。前みたいに透也のTシャツだけ着て、下は穿かないで……」
「――っ!!! それ、本気ですか?」
「ああ。いや、透也が嫌なら別に――」
「嫌なわけ無いでしょう!! ぜひっ! お願いしますっ!! あっ、俺はすぐに食事の支度をしますね。ご飯食べたらお風呂入ってすぐですよ!」
そういうと、透也は嬉しそうにキッチンへと飛んでいった。
それからあっという間に夕食を仕上げた透也と、楽しいおしゃべりをしながらご飯をお腹いっぱい食べ今日も大満足だ。
「大智、一緒にお風呂に入りましょうか?」
「えっ? あの、それは……今度……っ」
もう全てを見られてしまっているから今更だといえばそうなのだが、なんとなく一緒にお風呂は気恥ずかしい。
明るいから余計に恥じらってしまうのかもしれない。
「ふふっ。わかりました。今日は膝枕も待ってますし、無理強いはしませんから、ゆっくり入ってきてください」
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俺は結局どれも恥ずかしいんだろう。
そう思いながら、手早く服を脱いで風呂に入った。
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