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突然の連絡
上田という弁護士から俺宛に電話が来たのは、宇佐美くんがこちらに帰って来て自宅に到着したと社宅の管理人であるジャックから連絡が来てすぐのことだった。
ー私、弁護士の上田誉と申します。支社長の杉山さまとお話をさせていただきたいのですが、お取次いただけますか?
弁護士さん?
なんで、弁護士さんが俺に?
突然のことに焦りながらも口調は極めて冷静を装った。
ーはい。私が杉山ですが、弁護士さんがどのようなご用件でしょうか?
支社内については弁護士案件になりそうなことは一切思い付かない。
金沢さんたちが突然辞めたのは、旦那さんの仕事関連だったから問題はないはず。
だとしたらプライベート?
でもそれこそ思いつかないけど……。
あっ、まさか……いまさら宏樹が何か?
いや、さすがにそれはないか。
あのとき突き飛ばしはしたけど別に怪我をさせるほど押したわけでもないし、それをいうなら俺のほうが宏樹に襲われそうになったんだからたとえ訴えられたとしても俺は負けない、と思うし……じゃあなんだろう?
弁護士さんに尋ねながらも頭の中で必死に考えてはみたが全く分からなかった。
ー申し訳ありませんが、ここから先のお話はかなりプライベートなことになりますので、周りにご配慮いただけますか?
ーは、はい、わかりました。あの、場所を移動しますので、少々お待ちいただけますか?
周りに配慮しなければいけないほどのプライベート……あっ、もしかして透也のことか?
次期社長の透也と付き合っているのが社長か、もしくは会長にバレて、弁護士を通して別れてもらおうとかそんな話かもしれない。
俺には調査はしないと透也は言ってくれていたけれど、やっぱり調査されたんだ。
それで透也の相手が男だとか、俺が透也と付き合う前に付き合っていた人がいたのが知られてしまったのかもしれない。
もしかしたらこんな未来が来るかもなんて、頭の片隅に少しあってずっと怯えていたのは事実だ。
ベルンシュトルフ ホールディングスみたいな大きな会社で、次期社長の恋人が俺みたいな男だなんて格好のスキャンダルだからな。
知られたら別れさせられるかもなんて一度も思わなかったわけじゃない。
もう……覚悟を決めた方がいいのかな。
場所を移動しながら、心の中で大きく深呼吸をし電話口の弁護士さんに声をかけた。
ーお待たせしました。場所を移動しましたので、お話くださって結構です。ですが、どんなお話をされても私の気持ちは変わりませんので、それは最初からお伝えしておきます。
ーえっ? それはどういう意味でしょうか?
ーお隠しにならなくてももうわかっているんです。私がベルンシュトルフ ホールディングスの次期社長である日下部透也さんとお付き合いしていることがわかって、別れさせるおつもりなのでしょう? ですが、はっきり言っておきます。私は彼が次期社長だからお付き合いしているわけじゃないんです。本当に心から彼を愛しているから一緒にいるんです。彼だって私を愛していると言ってくれていますから、別れさせようとしても無駄――
ーちょ――っ、ちょっと待ってください。何か勘違いをなさっているようです。
さっきまでの冷静な言葉から一転、弁護士さんの焦った声に、興奮していた俺も少し冷静を取り戻した。
ーえっ? 勘違い、ですか?
ーはい。先ほどは詳しくお話しできませんでしたので、改めてご挨拶させていただきます。
私は宇佐美敦己さんの代理人で弁護士の上田と申します。今回は宇佐美さんと婚約者でいらっしゃった伊山由依さんとの婚約解消の件でご連絡させていただきました。
ーい、ま……なんて、えっ? 宇佐美くんが……っ、婚約解消?
ーはい。実は婚約を継続し難い事実を宇佐美さんがお知りになって、そのまま婚約破棄となる予定なのです。
ー婚約を継続し難い事実……まさか、宇佐美くんと別の男と付き合っていたというのを知ったんですか?
ー杉山さんもご存知だったんですね。そうです。それですぐに婚約破棄をしたいと私に相談されてこの運びとなりました。
ーあの、ものすごく対応が早いですが、上田さんはもしかして上田くんの……?
ーはい。兄です。実は以前から紘から相談を受けていたんです。宇佐美さんのお相手に気になるところがあったようで……。
ーそうだったんですね、なるほど。それでこんなに早く……納得しました。あの、それで私はどうしたら?
ー宇佐美さんから支社長さんにはお話をしておいて欲しいと頼まれていたものですから、ご連絡差し上げたので、特に何かをしていただきたいわけではないと思います。
ーそうなんですね。真面目な宇佐美くんらしいな。きっと婚約していると教えてくれていたから、解消したことも話さないといけないと思ったんでしょうね。そんなこと気にしなくていいのに。
ーそうですね。宇佐美さんは本当に真面目で、紘の友人とは思えないくらい素晴らしい方ですよ。
ーふふっ。そんなことを言ったら上田くんが怒りますよ。
俺の言葉に弁護士さんは楽しげに笑った。
きっと兄弟仲もいいんだろう。
だから弟の友人が困った時にこんなにも丁寧に対応してくれるんだろうな。
上田先生のようないい弁護士さんが味方できっと宇佐美くんもほっとしていることだろう。
ー私、弁護士の上田誉と申します。支社長の杉山さまとお話をさせていただきたいのですが、お取次いただけますか?
弁護士さん?
なんで、弁護士さんが俺に?
突然のことに焦りながらも口調は極めて冷静を装った。
ーはい。私が杉山ですが、弁護士さんがどのようなご用件でしょうか?
支社内については弁護士案件になりそうなことは一切思い付かない。
金沢さんたちが突然辞めたのは、旦那さんの仕事関連だったから問題はないはず。
だとしたらプライベート?
でもそれこそ思いつかないけど……。
あっ、まさか……いまさら宏樹が何か?
いや、さすがにそれはないか。
あのとき突き飛ばしはしたけど別に怪我をさせるほど押したわけでもないし、それをいうなら俺のほうが宏樹に襲われそうになったんだからたとえ訴えられたとしても俺は負けない、と思うし……じゃあなんだろう?
弁護士さんに尋ねながらも頭の中で必死に考えてはみたが全く分からなかった。
ー申し訳ありませんが、ここから先のお話はかなりプライベートなことになりますので、周りにご配慮いただけますか?
ーは、はい、わかりました。あの、場所を移動しますので、少々お待ちいただけますか?
周りに配慮しなければいけないほどのプライベート……あっ、もしかして透也のことか?
次期社長の透也と付き合っているのが社長か、もしくは会長にバレて、弁護士を通して別れてもらおうとかそんな話かもしれない。
俺には調査はしないと透也は言ってくれていたけれど、やっぱり調査されたんだ。
それで透也の相手が男だとか、俺が透也と付き合う前に付き合っていた人がいたのが知られてしまったのかもしれない。
もしかしたらこんな未来が来るかもなんて、頭の片隅に少しあってずっと怯えていたのは事実だ。
ベルンシュトルフ ホールディングスみたいな大きな会社で、次期社長の恋人が俺みたいな男だなんて格好のスキャンダルだからな。
知られたら別れさせられるかもなんて一度も思わなかったわけじゃない。
もう……覚悟を決めた方がいいのかな。
場所を移動しながら、心の中で大きく深呼吸をし電話口の弁護士さんに声をかけた。
ーお待たせしました。場所を移動しましたので、お話くださって結構です。ですが、どんなお話をされても私の気持ちは変わりませんので、それは最初からお伝えしておきます。
ーえっ? それはどういう意味でしょうか?
ーお隠しにならなくてももうわかっているんです。私がベルンシュトルフ ホールディングスの次期社長である日下部透也さんとお付き合いしていることがわかって、別れさせるおつもりなのでしょう? ですが、はっきり言っておきます。私は彼が次期社長だからお付き合いしているわけじゃないんです。本当に心から彼を愛しているから一緒にいるんです。彼だって私を愛していると言ってくれていますから、別れさせようとしても無駄――
ーちょ――っ、ちょっと待ってください。何か勘違いをなさっているようです。
さっきまでの冷静な言葉から一転、弁護士さんの焦った声に、興奮していた俺も少し冷静を取り戻した。
ーえっ? 勘違い、ですか?
ーはい。先ほどは詳しくお話しできませんでしたので、改めてご挨拶させていただきます。
私は宇佐美敦己さんの代理人で弁護士の上田と申します。今回は宇佐美さんと婚約者でいらっしゃった伊山由依さんとの婚約解消の件でご連絡させていただきました。
ーい、ま……なんて、えっ? 宇佐美くんが……っ、婚約解消?
ーはい。実は婚約を継続し難い事実を宇佐美さんがお知りになって、そのまま婚約破棄となる予定なのです。
ー婚約を継続し難い事実……まさか、宇佐美くんと別の男と付き合っていたというのを知ったんですか?
ー杉山さんもご存知だったんですね。そうです。それですぐに婚約破棄をしたいと私に相談されてこの運びとなりました。
ーあの、ものすごく対応が早いですが、上田さんはもしかして上田くんの……?
ーはい。兄です。実は以前から紘から相談を受けていたんです。宇佐美さんのお相手に気になるところがあったようで……。
ーそうだったんですね、なるほど。それでこんなに早く……納得しました。あの、それで私はどうしたら?
ー宇佐美さんから支社長さんにはお話をしておいて欲しいと頼まれていたものですから、ご連絡差し上げたので、特に何かをしていただきたいわけではないと思います。
ーそうなんですね。真面目な宇佐美くんらしいな。きっと婚約していると教えてくれていたから、解消したことも話さないといけないと思ったんでしょうね。そんなこと気にしなくていいのに。
ーそうですね。宇佐美さんは本当に真面目で、紘の友人とは思えないくらい素晴らしい方ですよ。
ーふふっ。そんなことを言ったら上田くんが怒りますよ。
俺の言葉に弁護士さんは楽しげに笑った。
きっと兄弟仲もいいんだろう。
だから弟の友人が困った時にこんなにも丁寧に対応してくれるんだろうな。
上田先生のようないい弁護士さんが味方できっと宇佐美くんもほっとしていることだろう。
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