年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

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未来のために

ーあの、それでこれから宇佐美くんは何度か日本に帰国することもありますか?

ーいえ。そちらはご安心ください。この件は全てこちらで対処いたしますので、宇佐美さんに直接お越しいただくことはありません。

ーそうですか、それなら安心です。それで……宇佐美くんの様子はどうですか? 婚約者さんに裏切られて傷ついているでしょうから仕事は休ませたほうがいいでしょうか?

ー杉山さんはお優しいですね。でも、宇佐美さんは大丈夫だと思いますよ。彼女に対してももう吹っ切れたようでしたから。まぁ、あれだけの現場を目の当たりにすれば、宇佐美さんでなくとも百年の恋も冷めるでしょうね。

その言葉に、彼がとんでもない現場を目撃したのだと理解した。
やっぱり彼女に会いにいくのを止めればよかった。
みすみす宇佐美くんに辛い思いをさせてしまったな。

ー杉山さん、今何か後悔していますか?

俺が黙ってしまったから、気を遣わせてしまったようだ。

ー実は彼女に会いにいくと宇佐美くんが話していた後で、その……彼女さんに不貞の事実があるようだと知って、もしかしから嫌な目に遭うのではないかと心配していたんです。あの時会いに行こうとするのをすぐにでも止めていれば、宇佐美くんが傷つくことにはならなかったのかもしれないと思ってしまって……。

ー杉山さんがそうお思いになるお気持ちはよくわかります。ですが、もし、今回彼が気づかなかったとしたら、彼女の裏の顔を知らないまま、彼は結婚していたかもしれません。その方が辛いと思いませんか? 

ーあ――っ、確かに、そうですね……。事実を知ることが遅ければ遅い分、傷は深くなるでしょうし。

ーその通りです。ですから、今回宇佐美さんが真実をお知りになったことは彼の未来のために必要だったと思いましょう。

上田先生の言葉が俺の心に深く刺さる。
もし、あの時宏樹が結婚するという事実を隠していたら……。
きっと俺は宏樹のことを何も疑うことなくあのまま付き合っていたかもしれない。
身体を繋げてから捨てられていたかもしれない。
いや、そもそもこちらにくることさえ、断っていたのかもしれない。
そうしたら今の俺の幸せはなかったかもしれないんだ。

宇佐美くんも今は傷ついて苦しくてもきっといい出会いに恵まれるかもしれない。

そんな未来が待っているはずだ。

ー宇佐美くんの未来のために……そうなるといいですね。

ーふふっ。大丈夫ですよ。

そう自信満々に言い切る上田先生の言葉に、なんだか安心してしまう。
彼みたいな頼り甲斐がある先生が味方だから、宇佐美くんも吹っ切れたのかもしれないな。

兄弟揃って、宇佐美くんとは縁があるんだな。

ー上田先生のおかげで少し安心しました。ありがとうございます。

ーいえいえ。私も宇佐美くんにこんなに優しい上司がいらっしゃるのを知って安心しました。あの……それで、先ほどのお話なんですが……

ー先ほどの話? なんの話でしょう?

ーあ、いえ。お忘れなら気にしないでいただいていいのですが……。

さっきまでとは違って、かなり歯切れの悪い上田先生の様子に、俺は先生との会話を思い出していた。

宇佐美くんの話以外に何か話をしていたか?
なんの話だったんだ?

頭の中で必死に振り返った時、

ーあっ!!!

自分がとんでもないことを口にしていたことを思い出した。

ー思い出されましたか?

ーあっ、あの……っあれは、その……つい、興奮して……てっきり、その話だと思い込んで……っ。

ーふふっ。大丈夫ですよ。私は弁護士です。職務上知り得た情報を無闇に人に流したりはしませんからご安心ください。

ーありがとうございます。

ーでも、そうは言っても不安でしょう?

ーえっ……っ。

核心をつかれてつい、言葉が止まってしまう。

ーすみません。上田先生を疑っているわけではないんです。

ーわかりますよ。まだまだ日本ではセンシティブな内容ですからね。ですから、杉山さんが安心するように私も一つ告白します。

ーえっ? 告白、ですか?

ーええ。実は、今……宇佐美さんを落とそうと必死なんですよ、私。

ーはっ? えっ、今、なんて……?

宇佐美くんを、落とす?
それって、そういう意味?

ー宇佐美さんに惹かれているんです。まだ彼は私の気持ちには気づいていないですけどね。

ーあの、私は……その、元々ゲイなんですが、上田先生も……その、ゲイ、なんですか?

ーうーん、どうでしょうね。今まで、宇佐美くん以外に本気で好きになったことがないので、正直にいうと自分の性的指向が女性なのか、男性なのかはわからないというのが正しいかもしれません。強いていうなら、宇佐美くんしか好きになれないということかもしれませんね。でも、それは杉山さんも同じなのではないですか? 杉山さんは自分がゲイで、男だからという理由だけで彼を好きになったわけではないでしょう? 彼だから好きになったんじゃないですか?

――っ!!!
そうだ、その通りだ。

ー男同士はよくないとか、異性じゃないといけないとか考えずに、その人と一緒に過ごして楽しいと思えるのが一番だと思いますよ。

ー上田先生……ありがとうございます。あの、私……宇佐美くんとのことを応援します。頑張ってください。

ーふふっ。ありがとうございます。本当に杉山さんは優しいですね。あ、それなら一つお願い事を聞いていただけませんか?

ー私にできることならお引き受けしますが、なんでしょう?

ー彼が明日出社したら、婚約解消の件を聞いたと伝えて、もしよければ、このままこの支社で働かないかと打診して欲しいんです。

ーえっ、でもそれじゃあ離れ離れになってしまうんじゃないですか?

ー実は、帰国したら一緒に住もうと提案しているんです。彼が私のことを少しでも思うなら、きっと杉山さんの話を断るはずです。彼の気持ちがまだ定まっていないので、ここで少し私の存在をしっかりさせておきたいんですよ。

ーなるほど。でも、もし彼がこのまま海外赴任を受け入れたらどうするんですか?

ーその時は私もそちらに行きますよ。国際弁護士の資格さえとればそちらでも仕事はできますし、問題ありません。

ここに一緒についてきてまでも宇佐美くんを思ってくれている上田先生なら、彼の傷ついた心を癒してくれるかもしれないな。
元々、彼は女性より男性と合いそうだと思っていたし。
それが彼にとっての幸せな未来なのかもしれない。

ーわかりました。それでは宇佐美くんに話をしてみますね。

ーありがとうございます。杉山さんの彼の話もご安心くださいね。それでは。またご連絡します。

そう言って、電話は切れた。
なんだかいろんな情報が入ってきて、頭がパンクしそうだけど、でも心はものすごく満足してる。
きっといい未来が来るはずだ。
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