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嬉しい誘い
今日は出社した時から社内の雰囲気がなんだかいつもと違う気がする。
なんだろうと思っていると、すぐにわかった。
宇佐美くんだ。
プロジェクトも大詰めになり、今日は内勤業務で書類作りに励んでいるのだがこれがかなり神経を使う業務なのだ。
数字と画面を見比べながらの慎重な作業はできれば避けたいくらいのものだが、宇佐美くんのキーボードを打つ指はかなりリズミカルに動いている。
やけに上機嫌な宇佐美くんの様子に驚いてしまう。
きっとみんなこの宇佐美くんの様子が気になって仕方ないんだろう。
だから、やけに社内の雰囲気がいつもよりふわふわしているんだ。
宇佐美くんは内勤業務も得意だとは聞いていたが、それにしてもあのご機嫌な様子はなんだろう。
横から見てもわかるほどに嬉しそうな表情を浮かべているし、何分かおきにスマホを見てはまた画面に視線を移す。
何か嬉しい予定でも入っているのか……。
そう考えた時に頭に浮かんだのが、あの上田先生の話だった。
――実は、今……宇佐美さんを落とそうと必死なんですよ、私。
そう言っていたが、もしかしたらあの先生とあのままうまくいっているのかも知れない。
ここに残ることも早々と断ってきたし、少しは二人の仲も進展しているのかも知れないな。
傷つけられた分、いい出会いになったのかも。
俺と同じだなんて思っちゃいけないけれど、幸せになるのはいいことだ。
こうなったら本当に千鶴をここに呼ぶのはいいことかもしれないな。
なんてそんなことを考えていると、
「支社長も気づきました? 今日の宇佐美さん、なんだかすごくご機嫌ですよね。もうすぐプロジェクトが終わるから日本に帰れるのが嬉しいんですかね」
なんて高遠くんが声をかけてきたが、高遠くんは逆に寂しそうだ。
きっと今の宇佐美くんとのバディを組んでの仕事が楽しくて仕方がないんだろうな。
「今日浮かれているのは違う理由だと思うよ。宇佐美くんも高遠くんとの仕事、楽しんでいたからね」
「それならいいんですけど……」
「ほら、そんな心配しないで、プロジェクト最後まで気を抜かないように。無事に終わったら、みんなで食事でも行こう」
「はーい。それなら頑張れそうです」
嬉しそうに自分のデスクに戻っていく高遠くんを見守りながら、そっと宇佐美くんに近づいた。
相変わらず上機嫌にキーボードを押している。
浮かれていても仕事が捗っているのはすごいな。
「宇佐美くん、今日はやけに嬉しそうだな」
そういうと、驚いてパッと俺に振り返った。
ほんのりと頬を赤く染めながら、いつもと一緒だと返してくるけれど、その反応がすでにいつもと一緒じゃないんだよな。
特に日本から帰国してからは、心ここにあらずという感じの時間が時々感じられた。
そう言ってみれば、今の俺と同じ状態。
仕事しながらも常に透也のことが頭にある俺と同じだ。
きっと今頃、宇佐美くんの頭の中を占めているのは……。
そんな期待を持ちながら、この後何か楽しいことでもあるのかと尋ねてみると、
「日本から友人というか、知り合いが訪ねてきてくれることになっていて……」
と教えてくれた。
ああ、もう間違いない。
上田先生の魅力に落ちたんだろうな。
傷ついた顔をしているより今の方がよっぽどいい。
宇佐美くんが幸せならそれで。
「今日はやること終わったらすぐに帰っても構わないよ」
そういうと、彼は嬉しそうにお礼を言い、またパソコンに向き直ってひたすらに手を動かしていた。
そんな彼を見て、俺ももう一息頑張ろうと思えたんだ。
「お疲れさまでーす」
定時より少し早く業務を終えた宇佐美くんは嬉しそうにオフィスを出ていった。
もちろん手にはいつでも連絡を取れるようにスマホを持っていた。
「宇佐美さん、本当に今日はずっとご機嫌でしたね」
「ああ、友人が日本から会いにきたみたいだよ」
「そうなんですね、それなら浮かれるのもわかるかも」
「こうやって遠くまで会いにきてくれるなんて嬉しいからな」
「はい。あっ、支社長。今日、夕食一緒に食べにいきませんか?」
「でも、今日は祥也さんのお仕事が休みの日じゃないのか?」
「はい。だからですよ。たまにはゆっくり三人で食事しながらお話ししませんか?」
恋人同士のお邪魔虫にはなりたくないと思ったけれど、
「祥也さんも支社長と話をしたいみたいなんですよ」
と言われたらこれ以上断れなかった。
「高遠くんが嫌じゃなかったら、行かせてもらおうかな」
「ふふっ。嫌だったら最初から誘いませんよ。言ったでしょう? 支社長とたまにはゆっくりお話ししたいって」
「わかった。ありがとう。じゃあ、行かせてもらうよ」
そういうと高遠くんは嬉しそうに笑ってくれた。
急いで帰る支度をして高遠くんとロビーに出ると、
「大夢っ!」
と嬉しそうに高遠くんを呼ぶ声が聞こえた。
なんだろうと思っていると、すぐにわかった。
宇佐美くんだ。
プロジェクトも大詰めになり、今日は内勤業務で書類作りに励んでいるのだがこれがかなり神経を使う業務なのだ。
数字と画面を見比べながらの慎重な作業はできれば避けたいくらいのものだが、宇佐美くんのキーボードを打つ指はかなりリズミカルに動いている。
やけに上機嫌な宇佐美くんの様子に驚いてしまう。
きっとみんなこの宇佐美くんの様子が気になって仕方ないんだろう。
だから、やけに社内の雰囲気がいつもよりふわふわしているんだ。
宇佐美くんは内勤業務も得意だとは聞いていたが、それにしてもあのご機嫌な様子はなんだろう。
横から見てもわかるほどに嬉しそうな表情を浮かべているし、何分かおきにスマホを見てはまた画面に視線を移す。
何か嬉しい予定でも入っているのか……。
そう考えた時に頭に浮かんだのが、あの上田先生の話だった。
――実は、今……宇佐美さんを落とそうと必死なんですよ、私。
そう言っていたが、もしかしたらあの先生とあのままうまくいっているのかも知れない。
ここに残ることも早々と断ってきたし、少しは二人の仲も進展しているのかも知れないな。
傷つけられた分、いい出会いになったのかも。
俺と同じだなんて思っちゃいけないけれど、幸せになるのはいいことだ。
こうなったら本当に千鶴をここに呼ぶのはいいことかもしれないな。
なんてそんなことを考えていると、
「支社長も気づきました? 今日の宇佐美さん、なんだかすごくご機嫌ですよね。もうすぐプロジェクトが終わるから日本に帰れるのが嬉しいんですかね」
なんて高遠くんが声をかけてきたが、高遠くんは逆に寂しそうだ。
きっと今の宇佐美くんとのバディを組んでの仕事が楽しくて仕方がないんだろうな。
「今日浮かれているのは違う理由だと思うよ。宇佐美くんも高遠くんとの仕事、楽しんでいたからね」
「それならいいんですけど……」
「ほら、そんな心配しないで、プロジェクト最後まで気を抜かないように。無事に終わったら、みんなで食事でも行こう」
「はーい。それなら頑張れそうです」
嬉しそうに自分のデスクに戻っていく高遠くんを見守りながら、そっと宇佐美くんに近づいた。
相変わらず上機嫌にキーボードを押している。
浮かれていても仕事が捗っているのはすごいな。
「宇佐美くん、今日はやけに嬉しそうだな」
そういうと、驚いてパッと俺に振り返った。
ほんのりと頬を赤く染めながら、いつもと一緒だと返してくるけれど、その反応がすでにいつもと一緒じゃないんだよな。
特に日本から帰国してからは、心ここにあらずという感じの時間が時々感じられた。
そう言ってみれば、今の俺と同じ状態。
仕事しながらも常に透也のことが頭にある俺と同じだ。
きっと今頃、宇佐美くんの頭の中を占めているのは……。
そんな期待を持ちながら、この後何か楽しいことでもあるのかと尋ねてみると、
「日本から友人というか、知り合いが訪ねてきてくれることになっていて……」
と教えてくれた。
ああ、もう間違いない。
上田先生の魅力に落ちたんだろうな。
傷ついた顔をしているより今の方がよっぽどいい。
宇佐美くんが幸せならそれで。
「今日はやること終わったらすぐに帰っても構わないよ」
そういうと、彼は嬉しそうにお礼を言い、またパソコンに向き直ってひたすらに手を動かしていた。
そんな彼を見て、俺ももう一息頑張ろうと思えたんだ。
「お疲れさまでーす」
定時より少し早く業務を終えた宇佐美くんは嬉しそうにオフィスを出ていった。
もちろん手にはいつでも連絡を取れるようにスマホを持っていた。
「宇佐美さん、本当に今日はずっとご機嫌でしたね」
「ああ、友人が日本から会いにきたみたいだよ」
「そうなんですね、それなら浮かれるのもわかるかも」
「こうやって遠くまで会いにきてくれるなんて嬉しいからな」
「はい。あっ、支社長。今日、夕食一緒に食べにいきませんか?」
「でも、今日は祥也さんのお仕事が休みの日じゃないのか?」
「はい。だからですよ。たまにはゆっくり三人で食事しながらお話ししませんか?」
恋人同士のお邪魔虫にはなりたくないと思ったけれど、
「祥也さんも支社長と話をしたいみたいなんですよ」
と言われたらこれ以上断れなかった。
「高遠くんが嫌じゃなかったら、行かせてもらおうかな」
「ふふっ。嫌だったら最初から誘いませんよ。言ったでしょう? 支社長とたまにはゆっくりお話ししたいって」
「わかった。ありがとう。じゃあ、行かせてもらうよ」
そういうと高遠くんは嬉しそうに笑ってくれた。
急いで帰る支度をして高遠くんとロビーに出ると、
「大夢っ!」
と嬉しそうに高遠くんを呼ぶ声が聞こえた。
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